まあばあちゃんは寂しい気持ちに……

今日も、吉川さんとお昼を食べています。
今朝も一緒に散歩をしました。お春ちゃんは、ずっとお家賃のことを言えずにいます。
まあばあちゃんには
「もう! いい加減にしてほしいわ。そうやろ? 今度は絶対に言うたるわ!」
と鼻息荒く言っているのに、本人を前にすると言い出せないようです。
「ねぇ、お豊ちゃんは、どうして朝の散歩に来ないの?」
と吉川さんが聞いてきました。
「知らんがな。あんた、もうかまいなや!」
とお春ちゃんが言うと、肩をすくめてごまかすように笑いました。
お豊ちゃんは、あの日から散歩に来ていません。吉川さんと疎遠になりたいので、朝の散歩は止めると言っていました。
まあばあちゃんもそれがいいと思いました。少しずつ離れるのが一番です。
「まあちゃん、吉川さん、またお豊ちゃんの所に行ったんやって!」
買い物から帰ってきたお春ちゃんが、開口一番言いました。
「ええ!」
「今な、そこで鈴木さんに会ってな。吉川さん、何回も呼び鈴押した後にな、長い間、縁石に座ってたらしいわ。」
「まあ……」
「鈴木さん、出直しはったらええのにって首傾げてたわ。」
出不精のお豊ちゃんのことなので、きっと居留守を使ったのでしょう。
「お豊ちゃん、気にしぃやから無視すんの、しんどかったやろな。」
お春ちゃんも居留守と思ったのかそんなことを言いました。
気のいいお散歩仲間になれると思っていたのにと、まあばあちゃんは寂しい気持ちになりました。


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お春ちゃんは言いづらい

夜になり、まあばあちゃんもお春ちゃんもお布団に入りました。
ジロもミミも、クークーと気持ちの良い寝息を立てて眠っています。
「……なあ、まあちゃん……」
お春ちゃんが、悲しそうな声で言いました。
「どうしたの?」
「吉川さんの家賃な……。もう大分になるやんか……。吉川さん、家賃のこと忘れてるみたいと思えへんか? 私も年金から払える程度の額やし……もうええかと思いながら、やっぱり気になってなぁ……」
「……お春ちゃん……」
お春ちゃんが悩むのは当然のことです。
「あの時は、息子らに年金から何から取り上げられて、可哀そうな人やなぁと思って、あの家、大家さんから借りたげたけど、あれからずいぶん経つのに家賃払ってもろたことあらへん。私はいつも気になってるのに、吉川さんから遅れてごめんねもあらへん。私、なんか馬鹿にされてるような気がすんねん。まあちゃん、どない思う?」
「どうって……お春ちゃんが好意でしてあげたことでしょ? 普通はお家賃をちゃーんと持ってくるのが当たり前なのに、吉川さんがおかしいわ。それなのに、お春ちゃんが遠慮してるんだもの。」
「そやねん、言おう言おう思ってもなかなか言いづろうて……」
お春ちゃんはそこまで言うと、黙ってしまいました。


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だんだんイヤに……

「それで、どうなったの?」
まあばあちゃんは、緊張気味に聞きました。
「それは、即座に断ったらしいわ。」
「そう……」
まあばあちゃんは、ほっと胸をなでおろしました。
「なんか吉川さんて、付き合えば付き合うほど嫌になる人やなぁ。初めは控えめで上品な物言いやし、絵はうまいし手芸もプロ並みやん。私、尊敬してたんや。今は嫌で嫌でしょうがないわ。」
お春ちゃんは、そう言うなり、しょぼんとしてキッチンの椅子に腰を下ろしました。まあばあちゃんが暖かいお茶を出すと、
「おいしいなぁ。」
と言いながらすすりました。
ガラガラっと玄関の扉があくと、
「ただいま~!」
と元気のよい声が聞こえてきました。
「あ、トモちゃん! お帰り!」
お春ちゃんが、急に明るい顔になりました。
「おばあちゃん、ただいま。わぁ、いい匂い!」
「早く着替えてらっしゃい。」
「はーい!」
トモちゃんの明るい顔を見ていると、まあばあちゃんの心も明るくなってきました。


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吉川さんの頼み事

「……そやねん。ほんでな。まあちゃんが、ピアノの先生のことで行った日な。吉川さんおった? ……えー! ホンマかいな。……うん……なんでやな。……あんた、はよ言わなアカンやん。……へぇ……、なんやな……」
しばらくして、お春ちゃんは受話器を置きました。そして、
「まあちゃん、あの日、吉川さんいたんやて!」
「でも、それならどうして、姿を見せなかったのかしら……」
「変やろ? それ私も聞いたわ。吉川さん言うたらな。キッチンの隅に隠れて『まあちゃんに、私が来てること絶対に言わんといて』って言われてんて。」
「え?」
まあばあちゃんはますます気分が悪くなってきました。
「お豊ちゃんに、拝むように頼み込んだらしいわ。」
まあばあちゃんはため息しか出ませんでした。
「それだけちゃうで! まあちゃんが帰った後、堺に住んでる嫁の働き口を紹介してほしいてマコちゃんに言うたらしいわ。」
「え、こっちのお嫁さんて言ったら……」
「そうや。吉川さんの家に上がり込んで通帳をひったくって行ったあの嫁さんや。」
まあばあちゃんは次の言葉が出ませんでした。


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まあばあちゃんは気づかなかった

「なあ、まあちゃん、吉川さん、またお豊ちゃんのところに行くやろか。」
お春ちゃんが、夕ご飯の支度をしているまあばあちゃんに聞きました。
「どうかしら……、吉川さんのことは分からないけど、マコちゃんの態度でお豊ちゃんのことは大丈夫だと思ったわ。お春ちゃんはどう?」
「私もそない思うわ。さすがはマコちゃんやと思ったわ。」
まあばあちゃんも頷きました。
「なぁ、吉川さんは、マコちゃんの留守を狙って上がり込んだんやろか? マコちゃん、出張から帰ってきたら吉川さんがおってビックリした言うてたやん。」
「ええ、お豊ちゃんも暗い顔してたって言ってたわ。」
「まあちゃんに、相談しよう思てはってんなぁ。分かるわ。あの吉川さんはなかなかの曲者やわ。」
まあばあちゃんも頷きました。
「でも、あの時、桃、持って行って良かったなぁ。あれ行かんかったらもっと遅うなって……」
「ほんと、お春ちゃん、お手柄よ。」
「そやけど、びっくりしたわ。まあちゃん、ホンマに気ぃつかんかったん?」
「ぜんぜん。お豊ちゃんとマコちゃんだけだと思ってたから……」
「う~ん。」
お春ちゃんは首をひねりました。
「そやけど、マコちゃんはまあちゃんがピアノの先生の就職頼みに行ったときに気ぃ付いたと思ってたやんか。」
「そうなのよ。私も思いがけなかったわ。」
「私の時は飛んで出てきて、桃、持って行ってしもたのに、なんでまあちゃんの時は出てけぇへんのや。」
「今度、お豊ちゃんに詳しく聞いてみるわ。」
まあばあちゃんが言うと、お春ちゃんが、
「私が、今聞くわ。」
と言って、電話を取りました。


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堺の町のまあばあちゃん

Author:堺の町のまあばあちゃん
堺の町に住む、ひとりのおばあちゃんのお話です。
住み慣れた町の人々との交流や孫のトモちゃんや犬のジロとの生活を通して力強く生きていく姿を物語に書きたいと思います。 
宜しくお願いします。
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