まあばあちゃん、どこ行くの?

まあばあちゃんは、くるっと振り向いて帰りかけました。
「まあちゃん、まあちゃん、まあちゃん、どこ行くねん。」
お春ちゃんが、慌ててまあちゃんの手を握りました。
「離してちょうだい。誰がお春ちゃんを大切にしてるかも分からずに、苦しめてばかりで。昭雄さんばっかり大事にして。最後の最後にこれよ。もう、知らないわ。」
お春ちゃん、アワアワして言葉が出ません。
「ウワーン。ウワーン!」
お春ちゃんは、へたりこむと、あたりかまわず泣き始めました。
「こんなひどい目に遭ってるわたしを放っておくなんて、信じられへん~!」
「お春ちゃん。」
「まあちゃんに見捨てられたらどないしたらええんや。ウワーン」
もう、泣いて泣いて大変でした。
「お春ちゃん、もうお暇しましょ。ここはお春ちゃんの家じゃないのよ。」
まあばあちゃんが、お春ちゃんをたたせようと手を添えました。
「なんでや。ここは私が邦子のために、着るものも食べるものも節約して買った家やで。」
「そんなに邦ちゃんが大事なら、どうして、昭雄さんの好き勝手にさせてたの。今更、どうしょうもないわ。」
「ウワーン。ウワーン」
お春ちゃんは、さらに泣き喚きました。


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もう、知らない……

「なあ、まあちゃん、……」
「なに……」
「わたし、昭雄さんに何もかんも盗られてしもたってことか? ほんまにこの家、私のものでないんか? いつの間に……そないなったんや。」
お春ちゃんは、首をかしげて言いました。
「いつの間に?  いつの間にってことないでしょ。」
「なんでや。」
「邦ちゃんが追い出されてからも、ずっと面倒見て、引っ越し先の家にも上がらせて、邦ちゃんの家にまであの女の人を上げてたじゃないの!! その事務所に何しに行ったか知らないけど、実印でもなんでも持ち出せるわよ。自業自得よ。可哀そうなのは邦ちゃんよ。」
まあばあちゃんは、もう怒りを隠せませんでした。
「まあちゃん、わたしがこんなにひどい目に遭ってるのにそんなんよう言うわ。」
お春ちゃんは怒りだしました。
「お春ちゃんはひどすぎるわ。大事な娘の邦ちゃんをあんなに苦しめた人たちに、家もお金もみんな上げてしまうなんて!!」
「まあちゃん!」
「邦ちゃんのご主人にも、冷たい態度で、偉そうにして! お春ちゃんが偉そうにできるの!」
「まあちゃん、なんでそんなん言うねん! こういうときは慰めるのが友達やろ。」
お春ちゃんは、顔を真っ赤にして怒りましたが、まあばあちゃんはあんなに感情がたかぶっていたのに、ふっと落ち着くと、
「……わたし、もう帰ります。お春ちゃんなんて付き合いきれない。最低よ。」
「え?」
お春ちゃんは、何を言われたのか分からないようでした。
「もう、私帰ります。」
「え? え? ええ?」


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お春ちゃん、どうして……

「そこで、署名や捺印をされましたか?」
お春ちゃんに弁護士さんがたずねました。
「どうやったか……、なんや昭雄さん、困ったことがあって、親の証明がいるとかなんとか……」
お春ちゃんは一生懸命思い出そうとしています。
「お春ちゃん、邦ちゃんは、離婚したんだから、もうお春ちゃんは親じゃないでしょ。」
まあばあちゃんが言うとお春ちゃんは、すまなそうに頭をかきました。
「ごめんな……」
「で、そこで何したの?」
まあばあちゃんは、もう必死です。
「よう分からんねんけど、なんや説明はしてもろたんやけど、よう分からんかってん。」
「なのに、ハンコ押してきたの?」
「…………」
「あの時も眼鏡持ってなかったら、よう分らんかってん。」
「どうして……分からないのに、ハンコ押すの?」
お春ちゃんが情けなくて泣けてきました。


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カラの権利書ってなあに?

奥に行くと、マコちゃんの友達の弁護士さんとオッチャンが怖い顔のスーツの男の人と話していました。
「……そうですか……。そういうことでしたら、仕方ありませんね。」
オッチャンのハキハキした声が聞こえてきました。
「な、なんやて……仕方ないって、何がや……」
お春ちゃんの声にみんながこっちを向きました。
「……お母さん。これは空の権利書だそうです。」
「か、から? カラってなんや。カラって……」
「登記情報では、昭雄さんのものになってるそうですわ。」
「なんやて?」
「今日は、役所が休みですから、確認に行けませんけど……」
「何言うてんのや……」
「こちらに写しがあります」
黒いスーツの人が、お春ちゃんに紙を渡しました。
「まあちゃん、私、メガネ忘れて、見えへんのやけど、なんて書いてるのや?」
「私も忘れてきたの……」
二人はショボショボした目で渡された紙を見ました。
「お母さん、昭雄さんと一緒に、権利書や、実印をもってどこかへ出かけたことありますか?」
弁護士さんが、ゆっくりとした口調で聞きました。
「え? どうやったかな?」
「この日付を見ると、去年の春頃ですね。」
「えーー…と……」
お春ちゃんは、なかなか思い出せないようでしたが、まあばあちゃんが、ハッと思い出しました。
「お春ちゃん、去年のお花見の時、事務所みたいなところ連れていかれて、緊張した緊張したって言ってたじゃない。」
「あ! せやせや!」
お春ちゃんは、ポンと手をたたきました。


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いざ、家に入ります!

権利書を弁護士さんがペラペラっとめくりました。
「どうですか?」
弁護士さんは、権利書を見ても難しい顔のままでした。
「少し、お借りしますね。」
と言って、家の中に入っていきました。
「まあちゃん、私の家、いったい、どないなってるんやろ……」
お春ちゃんは、蚊の鳴くような声で言いました。
まあばあちゃんは返す言葉が見つかりませんでした。
「それに、あんなに人がおったら、昭雄さんの遺体はどないなってるんやろう。」
「…………」
「こんだけ味方がおったら怖いことあらへん。家に行こか……」
「そうね。行きましょう。」
お春ちゃんはそう言うと、グイグイとシルバーカーを押して行きました。
まあばあちゃんも後に続きました。
家の前まで行くと、黒いスーツの人がお春ちゃんのことを知っているのか、
「どうぞどうぞ、外は寒いので中に入ってください。」
と、優しい口調で中に入れてくれました。
ぞんざいに扱われてるとばかり思っていた、お春ちゃんとまあばちゃんは拍子抜けしました。
お春ちゃんは、昭雄さんの遺体のことが気になるのかキョロキョロしていますが、なかなか聞けないようでした。
「あの、昭雄さんのご遺体は?」
まあばあちゃんが聞くと、黒いスーツの男の人が、
「ご家族の方が、市営の葬儀場に……」
それを聞いて、お春ちゃんとまあばあちゃんはホッとしました。


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Author:堺の町のまあばあちゃん
堺の町に住む、ひとりのおばあちゃんのお話です。
住み慣れた町の人々との交流や孫のトモちゃんや犬のジロとの生活を通して力強く生きていく姿を物語に書きたいと思います。 
宜しくお願いします。
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