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怒った吉川さん

「もし、そうでも、あんな人たちよりも私の方が仕事できるわ。」
吉川さんが言うので、お春ちゃんが、
「あんた、そんなに仕事したいんやったら、ハローワークで紹介してもろたらどうや? 私らと違って、長いこと教師やってたんやもん。絵はうまいし俳句はできるし、英語もペラペラなんやろ? ええとこ紹介してもらえると思うわ。」
「嫌よ! 私はお豊ちゃんのところで働きたいの! ハローワークなんか行ったって、嫌み言われて安くでコキ使われるだけよ。」
「あんたなぁ……」
「お豊ちゃんとこやったら、私の方がシッカリしてるし、心付けも貰えるし、帰りにおいしい物も持たせてくれる。ね、お願い! まあちゃん!」
吉川さんは、まあばあちゃんの手を握ってきました。
「吉川さん……」
「ね! お願い」
まあばあちゃんは吉川さんの手を外すと、
「吉川さん、あちらでは、吉川さんが毎日来るうえに遅くまで帰ってくれなくて大変だったのよ。」
「なんで? なんで私が行ったら困るのよ。」
「お客様が、家にいつまでもいたら寛げないでしょ?」
「なんでよ。あの二人だって、ほんとの親子じゃないって聞いたわよ。そこへ私一人くらい行ってなんの問題があるのよ!」
吉川さんは、怒り出しました。


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吉川さんがいないと大変?

「大変なこと?」
まあばあちゃんは驚いて聞きました。
「そうよ! 私、この2か月近く、あの家に通って分かったんだけど、お豊ちゃんたらね、家がとっても広いのに、一日に3部屋しか掃除しないよ! その上、マコちゃんに呼ばれたら何でも途中で放り出したまま! やりっぱなしの出しっぱなしなのよ。それだけじゃないの!」
吉川さんの勢いは止まりません。
「体の悪い年寄りが二人も来るの! 週に三回は来てたわ! 一人なんか夕ご飯毎日食べに来るのよ!」
なんという言いようでしょう。薄々感じてはいましたが、これが本当の吉川さんなのでそうか?
「そら、あんたもやろ?」
お春ちゃんが言うと、
「私は、仕事してるもの。お豊ちゃんたら、あの二人をいっつもマコちゃんところに案内するの。あれだけは私が断ってあげたわ。あんなのと関わったら大変よ!」
「あんたなぁ。あのお二人はマコちゃんの友達なんやで。大学の先輩やで。お豊ちゃんが呼んだんやあらへん。マコちゃんと約束してたんや。」
「そんなはずないわよ。」
吉川さんの様子を見て、まあばあちゃんは、今、お豊ちゃんの大変さが本当に分かったように思いました。


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お豊ちゃんが悪口を……

吉川さんの言葉に、お春ちゃんとまあばあちゃんは呆れかえってしまいました。
「お願い! このとおりよ!」
吉川さんは、両手をこすり合わせて、お豊ちゃんの家に行けるように頼んで欲しいといいます。
「そら、無理やで。なんぼなんかて……」
お春ちゃんがそう言うと、今度は、まあばあちゃんに向き直って
「お願い! あそこのご主人は、まあちゃんに頼まれたら断れないって言ってるの聞いたわ。ね、まあちゃん、一生のお願いだから……!」
吉川さんは必死です。
「私には、頼めません。」
まあばあちゃんは、静かに言いました。
「どうして? どうしてよ!」
「もし、吉川さんが望まれてるなら、この2か月でそういうお話があったはずです。」
「お豊ちゃんね! お豊ちゃんでしょ?」
拝み倒していた吉川さんが突然、怒ったように言いました。
「え?」
「お豊ちゃんから、何か言われてるんでしょう? 私の悪口を聞いてるんでしょう?」
「いいえ」
「私が行ったら、お豊ちゃん、自分の居場所がなくなると思ってるのよ。私の方が働くから。」
「あの……」
「聞いて! あの家は、お豊ちゃんのせいで無茶苦茶よ。私が行かないと大変なことになってしまうのよ。」


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吉川さんのお願い

「あんた、息子の嫁にイジメられてた言うてたやんか。息子さんにも年金取られてすごい困ってたやんか。そやから、付き合いないと思っててんけど」
「そのとおりよ。」
「そらおかしいわ。就職を頼まれのんは、親しいに付き合ってるいうことやろ? お豊ちゃんのことやピアノの先生のことを話したから、息子さんはそういう話を持ってきたわけやろ?」
これには、吉川さんも返す言葉がないようでした。
「私が思うに、そんなに仲がええんやったら、一応、息子さんのところに帰ったらどうやろ?」
「それは、無理よ。もう私の部屋がないもの。お春ちゃんが家借りてくれたから。もう、とられてしまったの。」
この言いように、お春ちゃんはカチンときたようで、
「……なんや、私、悪いことしたんやな……」
「まさか、そうじゃないけど……」
「私のせいで、部屋、とられたんやろ?」
お春ちゃんは、プイっと横を向きました。
「お春ちゃんは、私の立場が分からないのよ。話してるからって、仲が良いわけじゃないの。息子が様子を見に来ることくらいあるわよ。その時に世間話くらいしても変じゃないわ。」
「そら、そやけど……」
「ねぇ! お願い、この通り、私をお豊ちゃんの家に置いてもらえるように話してくれない? お願い!」
吉川さんは、手を合わせて言いました。


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申し訳なくて……

「違う。違うわ。なんでそんなこと言うの。お春ちゃんに申し訳ないと思うからこそよ。」
一見、もっともらしい言い分ですが、なんだかおかしいです。
「そやけど、私らがここでなんぼ相談してたかてしゃあない。とにかく家出たらんと……、大家さんが気の毒や。引っ越し費用はちゃんと置いたぁるんやろな」
「もちろんよ。」
吉川さんは頷きました。
「本当はすぐにでも出ていきたいんだけど、行くところが本当にないの。ごめんね。結局、お春ちゃんに迷惑かけることになって……」
吉川さんは、申し訳なさそうに小さくなりました。
「吉川さん、私な。不思議なことを聞いたんやけど……」
「え? 不思議なこと?」
「そうや。あんた、息子の嫁の就職、マコちゃんに頼んだんやてな。」
吉川さんは、お春ちゃんがこれを聞いているのは意外だったらしく、黙って下を向いてしまいました。


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吉川さんとお昼ご飯

「はーい。いらっしゃい!」
すぐに吉川さんは出迎えてくれました。
「いつもありがとう。」
いつもの吉川さんです。
大家さんを困らせていることを知った今では、吉川さんの様子が空恐ろしく感じます。
お昼ご飯を食べ終えたころ、お春ちゃんが切り出しました。
「吉川さん。」
「なあに?」
「今日な、大家さんが家に来はってん。」
「大家さんが?」
吉川さんの顔色がさっと変わりました。
「この家のこと聞いたんや。建て替えるから引っ越しして欲しいて頼まれたらしいな。」
「そうなのよ。」
「そんな大事なこと、なんでうちらに相談してくれへんの? 吉川さんはどうするつもりなんや?」
お春ちゃんは、吉川さんを傷つけないように言葉を選んで言いました。
「すごく相談したかったんだけど、お春ちゃんには迷惑ばっかりかけてるから言いにくかったのよ。」
吉川さんはしょんぼりして言いました。そして、小さくため息をつくと、
「……私の行くところ、どこかないかしら?」
ぽつりと言いました。
「私も、大家さんに話聞いたばっかりで頭が回らんわ。そやけど、2か月もほったらかしって、あんた、ヒドイで」
お春ちゃんは、力を込めて言いました。


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吉川さんはいるかしら?

「なあ、まあちゃん、吉川さんは何を考えてるんやろ? 私、よう分からんわ。大家さんから10万円もろといて家出る気ないみたいやし。そうかと思たら、お豊ちゃんの家に入りびたったり……いったいどういう人なんやろうな。」
大家さんと別れた後、お春ちゃんは疲れたように言いました。
「お昼に聞きましょう。おいしいもの作って。ね?」
「そやな、それがええな。」
お春ちゃんは、釈然としない様子でしたが、自分を納得させるようにうなずきました。
今日は、吉川さんの好物のレンコンやキンピラ、高野豆腐にシッカリ味を浸み込ませて煮たものを持って行くことにしました。
「いるやろか? 吉川さん。」
「大丈夫よ。お昼は毎日一緒に食べてるんだから。」
まあばあちゃんもそうは言うものの、今日に限っていないのではと内心不安でした。
でも、そんなこと言ってられません。これ以上大家さんに迷惑かけられません。
まあばあちゃんは、気合いを入れてインターフォンを押しました。


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吉川さんを訪ねたけれど……

「吉川さ~ん! 妙ちゃ~ん」
お春ちゃんがインターフォンを押して言いました。
「吉川さ~ん」
まあばあちゃんも呼びました。
お春ちゃんは、何度も呼びましたが、吉川さんは出てきません。
「留守やろか?」
お春ちゃんが心配そうに、まあばあちゃんと大家さんを振り返りました。
「お春ちゃん、改めて来ましょう。ね?」
「そやな。」
お春ちゃんは気合を入れすぎていたせいか、しょんぼりしてしまいました。
「大家さん、えろうすんまへんでしたな。私、そんなことになってるなんて全然気が付きませんでしたわ。吉川さんな~んも教えてくれはれへんねんもん。」
「そうやないかと思って、お春ちゃんを訪ねましたんや。そないに気を落とさんといてください。出て行ってもらう約束はしてるし、お金も受け取ってはるねんから、言うてる間に移ってくれますやろ。」
大家さんはお春ちゃんを励ますように言いました。


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お春ちゃんも言いたい

「ホンマになんも聞いてへんかったんやなぁ」
大家さんは、驚いたような呆れたような顔をしました。
「聞いてなかったやないわ。なんで、その10万円、吉川さんに渡すのん! 家賃は私がはろてるのに! ……知ってるやろ! あんたの嫁さんも家賃持って行ったとき言うてくれたら良かったのに!」
お春ちゃんの声は上ずっていました。
「それがな、うちの息子 が話をしに行ったんやけど、みんな気ぃよう聞き入れてくれはってな。集まってくれたらしいわ。」
「吉川さんもかいな。」
「4人ともや。」
「それで?」
「それで、話が気持ちように進んだんで、用意してた10万円をその場で渡したらしいわ。ところがや……」
「ほかの人は移ってくれたのに、吉川さんだけ居座ってるんやな。」
お春ちゃんが憮然として言いました。
「居座ってる言うか。話しに行ったら移るところが見つからへんからもうちょっと待って欲しい言うて、延び延びになってるねん。解体作業にも入られへん……これでも大分待ちましたんやで……」
大家さんは困り果てた様子でした。
「そら、2か月やもんな。……分かりました。ホンマに迷惑かけてすみませんな。」
「いや~、まあ……」
大家さんは気まずそうに言いました。
「ほな、今から3人で吉川さんの家に行くのはどうですか? こんな大事な話黙ってるやなんて。……わたしも一言いいたいから。」
お春ちゃんは腹立たしそうに言いました。


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吉川さんだけが……

「「吉川さん?」」
まあばあちゃんとお春ちゃんは同時に言いました。
「う~ん。ほんまに何にも聞いてませんか……?」
「何を言うてんのかさっぱり分からへんわ。しっかりしてや。」
「吉川さんに、出てほしい言うたんですわ。」
「えらい急に、なんでやな。家賃はきちんと払ってますやろ?」
お春ちゃんは、訳が分からないという様子です。
「急、違いますで、え~と、もう1か月いや……7月やったから、2か月になります。」
「ええ! 2か月も前ですかいな?」
「いや、それが、わしのところの長屋、戦後すぐに建てたままでっしゃろ? このままやと古なって危ないし……」
「老朽化ゆうヤツですな。」
「そうです。それに、あの長屋、吉川さんを含めて、もう4人になったんですわ。それで、思い切って今風のきれいな建物に建て替えようと思って……」
「でも、私が話を持って行ったときは、建て替えの話なんてなかったやん。」
「そうですけど……、今、借りてくれてる人に相談したら、みんなかまへん言うてくれましてん。」
「吉川さんもですか?」
「ええ、そうです。」
「そやから、こっちの都合で出て行ってもらうんやし引っ越し費用の足しにと、みなさんに10万円渡したんですわ。ほかのお人はみな移ってくれはったのに、吉川さんだけが……」
大家さんはほとほと困った様子で言いました。


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大家さんのお願い

まあばあちゃんとお春ちゃんが朝のお洗濯が終えた頃、大家さんが訪ねてきました。
吉川さんが住んでる部屋の大家さんです。
「お早うさんです。」
「どうされたんです?」
いつも明るい大家さんの暗い顔にまあばあちゃんは驚きました。
「ちょっと、お願いがありまして……」
「大家さんが、私にお願いですか?」
「どんなお願いでっか?」
お春ちゃんが遅れて出てきました。
「あ、お春ちゃん、いてはったんか良かったわ!」
大家さんがあんまり喜ぶのでお春ちゃんはビックリしました。
「な、なんやな……ビックリするやんか。」
「お春ちゃんに頼みがあるねん。」
「なんか怖いわ。」
いったい何なのでしょう。まあばあちゃんは心配になりました。
「ここで、立ち話もなんですから、どうぞお入りください。」
「いや、ここで結構です。……あの……なんにも聞いてませんか?」
「何をでっか?」
お春ちゃんは怪訝そうに聞きました。
「う~ん。」
大家さんは首をひねりました。それから、
「吉川さんのことなんですわ。」
と言いました。


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吉川さんの頑張り

「そやけど、出ていくためのお金、大家さんにもらったんやろ? はよ出たらんと! 大家さん難儀してはったで。」
「そうなのよ。申し訳なくて……。どうしたらいいのか分からないの。いろいろ考えたんだけど、いい案がなくて困ってるの。」
吉川さんは涙を流して言いました。
「そやけど、あんた、家探さなアカンいうのに、お豊ちゃんの家で油売って余裕やんか!」
「違うのよ。遊んでたんじゃないの……。わたしも行き場がない人間だから、……お豊ちゃんはみたいにおいてもらえたらって思ったの。……遊んでなんかないわ。いろいろ頑張ったんだから……」
吉川さんはポツリポツリと言いました。
「それで、お豊ちゃんのところへ通ってたんかいな……」
吉川さんは頷きました。
「あそこは、子持ちの奥さんが午前中だけお手伝いさんやってるでしょ。それなら私の方が仕事できると思って。私の働きぶりを見てもらうために……」
ずいぶんと身勝手な言い分で、まあばあちゃんは驚きました。
「そんな~。吉川さん、あんた何考えてるんや。私のことは無視かいな。」
お春ちゃんは呆れたように言いました。
「無視だなんてとんでもない。自分で何とかしようと思って……」
「わたしなんか、あんたが住むとこない言うから家まで借りたげたのに……」


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まあばあちゃんは寂しい気持ちに……

今日も、吉川さんとお昼を食べています。
今朝も一緒に散歩をしました。お春ちゃんは、ずっとお家賃のことを言えずにいます。
まあばあちゃんには
「もう! いい加減にしてほしいわ。そうやろ? 今度は絶対に言うたるわ!」
と鼻息荒く言っているのに、本人を前にすると言い出せないようです。
「ねぇ、お豊ちゃんは、どうして朝の散歩に来ないの?」
と吉川さんが聞いてきました。
「知らんがな。あんた、もうかまいなや!」
とお春ちゃんが言うと、肩をすくめてごまかすように笑いました。
お豊ちゃんは、あの日から散歩に来ていません。吉川さんと疎遠になりたいので、朝の散歩は止めると言っていました。
まあばあちゃんもそれがいいと思いました。少しずつ離れるのが一番です。
「まあちゃん、吉川さん、またお豊ちゃんの所に行ったんやって!」
買い物から帰ってきたお春ちゃんが、開口一番言いました。
「ええ!」
「今な、そこで鈴木さんに会ってな。吉川さん、何回も呼び鈴押した後にな、長い間、縁石に座ってたらしいわ。」
「まあ……」
「鈴木さん、出直しはったらええのにって首傾げてたわ。」
出不精のお豊ちゃんのことなので、きっと居留守を使ったのでしょう。
「お豊ちゃん、気にしぃやから無視すんの、しんどかったやろな。」
お春ちゃんも居留守と思ったのかそんなことを言いました。
気のいいお散歩仲間になれると思っていたのにと、まあばあちゃんは寂しい気持ちになりました。


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お春ちゃんは言いづらい

夜になり、まあばあちゃんもお春ちゃんもお布団に入りました。
ジロもミミも、クークーと気持ちの良い寝息を立てて眠っています。
「……なあ、まあちゃん……」
お春ちゃんが、悲しそうな声で言いました。
「どうしたの?」
「吉川さんの家賃な……。もう大分になるやんか……。吉川さん、家賃のこと忘れてるみたいと思えへんか? 私も年金から払える程度の額やし……もうええかと思いながら、やっぱり気になってなぁ……」
「……お春ちゃん……」
お春ちゃんが悩むのは当然のことです。
「あの時は、息子らに年金から何から取り上げられて、可哀そうな人やなぁと思って、あの家、大家さんから借りたげたけど、あれからずいぶん経つのに家賃払ってもろたことあらへん。私はいつも気になってるのに、吉川さんから遅れてごめんねもあらへん。私、なんか馬鹿にされてるような気がすんねん。まあちゃん、どない思う?」
「どうって……お春ちゃんが好意でしてあげたことでしょ? 普通はお家賃をちゃーんと持ってくるのが当たり前なのに、吉川さんがおかしいわ。それなのに、お春ちゃんが遠慮してるんだもの。」
「そやねん、言おう言おう思ってもなかなか言いづろうて……」
お春ちゃんはそこまで言うと、黙ってしまいました。


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だんだんイヤに……

「それで、どうなったの?」
まあばあちゃんは、緊張気味に聞きました。
「それは、即座に断ったらしいわ。」
「そう……」
まあばあちゃんは、ほっと胸をなでおろしました。
「なんか吉川さんて、付き合えば付き合うほど嫌になる人やなぁ。初めは控えめで上品な物言いやし、絵はうまいし手芸もプロ並みやん。私、尊敬してたんや。今は嫌で嫌でしょうがないわ。」
お春ちゃんは、そう言うなり、しょぼんとしてキッチンの椅子に腰を下ろしました。まあばあちゃんが暖かいお茶を出すと、
「おいしいなぁ。」
と言いながらすすりました。
ガラガラっと玄関の扉があくと、
「ただいま~!」
と元気のよい声が聞こえてきました。
「あ、トモちゃん! お帰り!」
お春ちゃんが、急に明るい顔になりました。
「おばあちゃん、ただいま。わぁ、いい匂い!」
「早く着替えてらっしゃい。」
「はーい!」
トモちゃんの明るい顔を見ていると、まあばあちゃんの心も明るくなってきました。


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吉川さんの頼み事

「……そやねん。ほんでな。まあちゃんが、ピアノの先生のことで行った日な。吉川さんおった? ……えー! ホンマかいな。……うん……なんでやな。……あんた、はよ言わなアカンやん。……へぇ……、なんやな……」
しばらくして、お春ちゃんは受話器を置きました。そして、
「まあちゃん、あの日、吉川さんいたんやて!」
「でも、それならどうして、姿を見せなかったのかしら……」
「変やろ? それ私も聞いたわ。吉川さん言うたらな。キッチンの隅に隠れて『まあちゃんに、私が来てること絶対に言わんといて』って言われてんて。」
「え?」
まあばあちゃんはますます気分が悪くなってきました。
「お豊ちゃんに、拝むように頼み込んだらしいわ。」
まあばあちゃんはため息しか出ませんでした。
「それだけちゃうで! まあちゃんが帰った後、堺に住んでる嫁の働き口を紹介してほしいてマコちゃんに言うたらしいわ。」
「え、こっちのお嫁さんて言ったら……」
「そうや。吉川さんの家に上がり込んで通帳をひったくって行ったあの嫁さんや。」
まあばあちゃんは次の言葉が出ませんでした。


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まあばあちゃんは気づかなかった

「なあ、まあちゃん、吉川さん、またお豊ちゃんのところに行くやろか。」
お春ちゃんが、夕ご飯の支度をしているまあばあちゃんに聞きました。
「どうかしら……、吉川さんのことは分からないけど、マコちゃんの態度でお豊ちゃんのことは大丈夫だと思ったわ。お春ちゃんはどう?」
「私もそない思うわ。さすがはマコちゃんやと思ったわ。」
まあばあちゃんも頷きました。
「なぁ、吉川さんは、マコちゃんの留守を狙って上がり込んだんやろか? マコちゃん、出張から帰ってきたら吉川さんがおってビックリした言うてたやん。」
「ええ、お豊ちゃんも暗い顔してたって言ってたわ。」
「まあちゃんに、相談しよう思てはってんなぁ。分かるわ。あの吉川さんはなかなかの曲者やわ。」
まあばあちゃんも頷きました。
「でも、あの時、桃、持って行って良かったなぁ。あれ行かんかったらもっと遅うなって……」
「ほんと、お春ちゃん、お手柄よ。」
「そやけど、びっくりしたわ。まあちゃん、ホンマに気ぃつかんかったん?」
「ぜんぜん。お豊ちゃんとマコちゃんだけだと思ってたから……」
「う~ん。」
お春ちゃんは首をひねりました。
「そやけど、マコちゃんはまあちゃんがピアノの先生の就職頼みに行ったときに気ぃ付いたと思ってたやんか。」
「そうなのよ。私も思いがけなかったわ。」
「私の時は飛んで出てきて、桃、持って行ってしもたのに、なんでまあちゃんの時は出てけぇへんのや。」
「今度、お豊ちゃんに詳しく聞いてみるわ。」
まあばあちゃんが言うと、お春ちゃんが、
「私が、今聞くわ。」
と言って、電話を取りました。


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いちいち嫌味な吉川さん

「あれ! シャッターが自分で上がっていくわ。」
興奮したお春ちゃんが嬉しそうに言いました。
「電動のシャッターなんて、別に珍しくないでしょ? まあちゃんの家もそうでしょ?」
吉川さんが笑いながら言いました。
「あんた、言うことがいちいち嫌味やな。」
お春ちゃんのㇺッとした顔を見て、吉川さんは黙りました。
「そやけど、マコちゃんとこの車庫はきれいやなぁ。こんな駐車場からエエ車に乗って出るのは、エエとこの奥さんみたいで、気持ちええわ!」
お春ちゃんが、うっとりして言うと、マコちゃんが笑いながら
「お春ちゃん、そんなに気に入られたのでしたら、毎日遊びに来てください。そしたら、私がいつもお送りさせていただきます。」
「ホンマだっか? ほな、奥様気分になりたいときは、遊びに来やしてもらいます。」
「はい。お待ちしています。」
マコちゃんは、お春ちゃんにリズムカルに返事しました。


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マコちゃんが車で送ってくれた

「まだ、外は暑いですから、送らせてください。」
マコちゃんがそう言いました。
「あの、でも近くですから……」
と、まあばあちゃんは言いましたが、
「でも、まあちゃん、今日は暑いで、甘えとこう。」
お春ちゃんは歩きたくないようです。
「どうぞ、こっちです。吉川さんもどうぞ。」
と言ってマコちゃんが車庫に案内してくれました。
中に入ると、
「あれま。車が3台もある!」
お春ちゃんがビックリして言いました。
「あは、車好きなもので……」
マコちゃんが照れくさそうに言いました。
「それにしても大きな車庫やなぁ。車庫の中にうちの家が入ってしまうなぁ」
お春ちゃんが感心している間に、マコちゃんがシルバーカーをトランクに入れてくれました。
「これ、ごっつうエエ車違うん? 私が乗ったら汚れそうやわ。」
お春ちゃんは、興奮してあっちこっち触っています。
マコちゃんは、後部座席にまあばあちゃんとお春ちゃんと吉川さんを乗せると、お豊ちゃんに声をかけて、助手席の扉を開けました。
「では、行きましょうか。」
「近くなのに、……歩いて帰りますのに……」
まあばあちゃんが小さくなって言いました。
「何言うてんのまあちゃん、こんなエエ車なかなか乗せてもらわれへんで。私、嬉しいわ。」
とお春ちゃん。
明るい光が差し込んできたと思ったら、シャッターが静かに上がっていきました。


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吉川さん、一緒に帰ろう

「あら、大変、もうこんな時間だわ。」
まあばあちゃんが時計を見ると、もう4時を回っていました。
「お話が楽しくて、長居しすぎました。ごめんなさいね。私たち、もうお暇しますね。」
「ほんまや。長居しすぎたわ! 帰りますわ。晩御飯の準備せんとあかんしな。」
お春ちゃんもどっこいしょと立ち上がりました。
「あんたも帰ろ。あんまり長居したらアカンで。」
お春ちゃんが吉川さんに言いました。
「わたし? わたしは。夕食のお手伝いをしようと思うの。」
まだまだ、ここにいるつもりの吉川さんは動く気配がありません。
吉川さんは、シレッとしたものです。
「吉川さん、母と私だけなので簡単なものしか作りません。心配なさらず、お帰り下さい。私たちは、親子二人で気楽にやっていくつもりです。次に来るときは、まあちゃんやお春ちゃんと一緒に来てください。」
マコちゃんの言葉に吉川さんは、何か言いかけましたが、口を閉じました。


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リビングに入ってきたハッピーちゃんとカイちゃん

まあばあちゃんたちの側に来ると、カイちゃんはまあばあちゃんの膝の上に飛び乗って顔をなめまくります。ハッピーちゃんは膝に顔をのせて頭を撫でてもらうのを待っています。
いつになく切羽詰まったものを感じます。まあばあちゃんやお春ちゃん、そして何より、マコちゃんに伝えたいのでしょう。
“吉川さんは嫌”…… だと、
でも、マコちゃんの様子を見ていると、いろんなことを分かっているような気がしました。
いい方向に行くような気がします。
「先日はピアノの先生の就職のお世話をいただいて、本当にありがとうございます。」
まあばあちゃんはカイちゃんとハッピーちゃんを抱きながら丁寧に言いました。
「いえいえ、向こうもいい人を紹介してもらったと感謝しています。今時に珍しく、優しくていい娘さんだと……、私もいい顔ができましたよ。」
マコちゃんは、そう言いながらカイちゃんを受け取ると、ハッピーちゃんを膝に抱き上げました。
「二人とも今日は良かったな。ライバルのジロとミミちゃんがいないから、いっぱい甘えとくんだよ。な。」
そう言って、マコちゃんは、ハッピーちゃんとカイちゃんをキューッと抱きしめました。
「お母さん、カイを頼みます。麦茶とお菓子の補充をしてきます。」
マコちゃんが立ち上がると、吉川さんも素早く立ち上がってキッチンの方へ行こうとしています。
「吉川さんも、母のお友達でしょ?」
「え? ええ、そうです。」
「では、一緒にゆっくりなさって下さい。それに、お客様で来て下さってるんですから、お手伝いさんの真似事は困ります。」
「わたしは、ただ、お豊ちゃんの助けになればと思って……」
「私も母も心苦しいので、これからはもう、止めてください。」
とてもやさしい口調ですが、逆らえないものがありました。
吉川さんは少しの間、所在なさげに立っていましたが、ソファに座りました。


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麦茶をどうぞ

「お母さん、どこへ行ってたんですか? まあちゃんとお春ちゃんの声がしたのに、急にいなくなって……」
マコちゃんが、麦茶とお菓子をリビングに持ってきてくれました。
「あ、私が……」
吉川さんが慌ててマコちゃんのお盆を取り上げようとしました。
「お気遣いなく、麦茶を出すくらい私にもできます。それに、まあちゃんとお春ちゃんは、母の大切な友達です。私にとっても大事な人です。」
マコちゃんの言葉に、吉川さんはお盆にさわることもできず、出した手を下ろしました。
「吉川さんもどうぞ、座って下さい。……ハッピー、カイ。どうしてそんなところにいる? おいで。お前たちも大好きなまあちゃんとお春ちゃんだよ。」
マコちゃんは、部屋の入り口で、入りたそうに立っているハッピーちゃんとカイちゃんに言いました。
マコちゃんの言葉に、ハッピーちゃんとカイちゃんは嬉しそうにお部屋に飛び込んできました。が、あんまり慌てて、吉川さんの側を通りそうになりました。二人ともピョンと飛びのくと遠回りして、まあばあちゃんとお春ちゃんのところへ行きました。
その様子を見て、まあばあちゃんの心はとても痛みました。


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吉川さんの苦手

「ええ、あのカッコのエエ人のお父さんもか?」
お春ちゃんはビックリして言いました。
「……うん……」
「え、でも、あの人、お豊ちゃんところでご飯食べてるんと違うんか?」
「吉川さん、始めの頃は、5時ごろに帰ってくれたんよ。私は、それから夕食の支度をして、6時ごろ迎えに行ってたんよ。それがだんだん6時になり、7時なり、今は8時よ。」
「ほな、晩御飯どないしてん?」
「今は、私が運んでるの。」
「ほな、一人で食べてるんかいな!」
「……うん、そうなんよ。私が一緒に食べればいいんだけど、でも、マコちゃんと吉川さんが二人で食事するのも変かなぁって……。」
「そら、おかしいわ。」
「あ、でもね、吉川さん、息子さんのこと苦手みたい。」
「え? なんで~? 感じのエエ人やんか……」
お春ちゃんが不思議そうに言いました。
「息子さんが休みの時は、一緒に来はるんやけど、初めて行き会ったときは、ドギマギしてたわ。居心地悪そうにしてると思う。」
「へぇ~。」
お春ちゃんは首をかしげました。


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吉川さんが10人になったら

「お豊ちゃん、あんたみたいに頼りなかったら、また第2、第3の吉川さんが来て、あんたの家、吉川さんだらけになるで。ほんまに! その人らに5万円ずつ渡してたら、10人来たら50万円やで! そう考えたら追い出せるやろ!」
お春ちゃんも厳しく言いました。
「頑張ってみるわ。」
お豊ちゃんも固く決心したようです。
「マコちゃん、顔には出さなくても、とても困ってると思うわ。お仕事忙しいのに、吉川さんのおかげで家も落ち着かなくて……。早く吉川さんの来る前の家に戻さなくっちゃ!」
「ホンマやわ。まあちゃんの言う通りやわ。私がしっかりしてないからみんなに迷惑かけてるんやわ。」
「どうしたの?」
「この前、ピアノの先生のお父さん達が来てくれはった時も、『今忙しいから今度にして下さい』って言うの」
「何を勝手なこと言うてんのや。あの人らマコちゃんの友達やろ! それで?」
「私、マコちゃんのお仕事手伝っていただいてるんですって言ったら。『私が手伝うから必要ありません。お帰り下さい』って言うのよ。面と向かってよ。」
この話を聞いて、まあばあちゃんは、次の言葉が出ませんでした。


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お豊ちゃんは奥様!

「あんた、それマコちゃんに言うたんか?」
お春ちゃんが身を乗り出して言いました。
「言いたいけど、マコちゃんの前では別人やし、私の言うこと伝わるとは思えない……。」
お豊ちゃんの答えにお春ちゃんも頭を振りました。
「それに、毎日、『マコちゃんに何かすることあったら言ってくださいね』って言うものだから、マコちゃん、『お小遣いにしてください』って5万円、吉川さんに渡してたわ。」
「まあ、なんてこと……」
まあばあちゃんはビックリして、頭が真っ白になってしまいましたが、言葉を続けました。
「お豊ちゃん、これはお豊ちゃんがシッカリしないといけないことなのよ。」
「分かってる。分かってるんだけど、吉川さんの方が私より早く動くから後手後手に回ってしまって……」
「そういうことじゃないでしょ。何を情けないこと言ってるの。早くするとか後手に回るとか、そんなの関係ないでしょ。『もう用は足りていますから、今日から来ないでください』ってなぜ言えないの! ここの奥様は、あなたでしょ!」
お豊ちゃんは、ハッとしたような顔をしました。
「どうも、奥様って感じより、お世話になってるって思ってるところがあって……」
ウッカリしていたようでした。
「お豊ちゃん、あなたは家を守る立場にあるのよ。そんな他人さんにいいようにされてどうするの!」
まあばあちゃんの声は、とても厳しいものでした。


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吉川さんの本性って?

「吉川さんは、ここに来て何をしてるの?」
まあばあちゃんが聞きました。
「マコちゃんにお茶を出したり……」
「何を言うてんのや。それはあんたの役目やろ!」
お春ちゃんがあきれたように言いました。
「それがね、私がそろそろマコちゃんにお茶を出そうと用意するでしょ。そしたら、それを持って行っちゃうのよ。お茶を持って行ったあとは、ずっと話し相手になってるし、夕食も傍にぴったりついて、かいがいしくお世話するの。なんでも私よりテキパキしてるし……」
「そら、うちらより若いからな!」
お春ちゃんが、忌々しそうに言いました。
「でも、それじゃ、お豊ちゃんは何してるの?」
「夕食の用意とか後かたずけとか……」
「お洗濯とか掃除を勝手にすると聞いたけど……」
「と言うより、ルリちゃんに指図ばかりするの……」
「あんた、それ黙ってんかいな!」
お春ちゃんが怒りました。
「それが、言おうと思ったんだけど……」
お豊ちゃんは、そこで言葉が出なくなりました。
「お豊ちゃん、教えて、この際だもの……ね?」
まあばあちゃんが諭すように言いました。
「ハッピーやカイを汚い汚いってホウキで追うから、それを止めるのに、なんていうか……」
お豊ちゃんは頭を抱えました。
「なんて酷い……」
まあばあちゃんは怒りで体が震えてきました。
「なんや、あのおばはんは、多重人格とかいうヤツなんか?」
お春ちゃんは、恐ろしそうに言いました。


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吉川さんのおはぎ

門の中に入ると、ハッピーちゃんとカイちゃんが走ってきてくれました。
“いらっしゃい! 待ってたよ”
と言うように、体中で喜んでくれています。今までにない歓迎ぶりです。なにか助けを求めているようにも感じます。
吉川さんは、家に入ってしまったようだし、ハッピーちゃんとカイちゃんのおかげで、長話ができそうです。
「お豊ちゃん、吉川さんのこと気苦労なんじゃない?」
まあばあちゃんは単刀直入に聞きました。
「まあちゃん、私のこと心配して来てくれたのね。この暑い中を……」
そう言うと、お豊ちゃんは、胸の奥から辛いものを吐き出すように、泣き出しました。
「今日は、マコちゃん、おうちにいるの?」
まあばあちゃんが聞くと、
「ええ、自分の部屋で仕事をしているわ。」
「吉川さん、マコちゃんに色目使ってるんちゃうか? 私に好物なんか聞いてきたで。おかしいやろ?」
それを聞いて、お豊ちゃんは、
「まあちゃんのおはぎのことを?」
「言うたで! ホンマのことやしな。持って行きようもないやろ?」
お春ちゃんは得意げに言いました。
「この前にね、『まあちゃんのおはぎがお好きだって聞きました。おはぎなら私のほうが得意です』って持参してきたわ。」
「なんやて? あのおばはん、うちに来た時、まあちゃんの作ったおはぎを美味しい美味しい言うて、ばっくばく食べとったで!」
お春ちゃんはキーっとなって言いました。
「ほんで、マコちゃん、どないしたんや?」
「『すみません、今はおなかいっぱいですので』と言って手を付けなかったわ。」
「さすがは、マコちゃんやな。そつないわ。」
お春ちゃんが感心したように頷きました。


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堺の町のまあばあちゃん

Author:堺の町のまあばあちゃん
堺の町に住む、ひとりのおばあちゃんのお話です。
住み慣れた町の人々との交流や孫のトモちゃんや犬のジロとの生活を通して力強く生きていく姿を物語に書きたいと思います。 
宜しくお願いします。
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