吉川さんが出てきた……

「いらっしゃーい!」
吉川さんが、明るく扉を開けました。
まるで今までと雰囲気が違います。上品でしとやかで、そして、辛辣な物言いい……の吉川さん。
「あんた、なんでこんなところにおるん。あんた、お豊ちゃんのこと嫌ってたやろ。」
お春ちゃんが驚いた様子で尋ねました。
「え? そんなことないわよ。どうして?」
「どうしてって……」
「わたしねぇ、この頃、お昼から手伝いに来てるのよ。るり子さんが昼まででしょ? だから、大変だと思って!」
まるで話がかみ合いません。
お春ちゃんも、なかなか自分のペースで話ができないようです。
「私ら、お豊ちゃんの顔見に来てん。」
「あ、そう? 中にいるわ。」
と言うだけです。
「まあちゃん、お春ちゃん、いらっしゃい。」
「お豊ちゃん……」
お豊ちゃんは、とても疲れた顔をしていました。やつれています。
「さ、こんなところにいたら暑さで倒れてしまうわ。どうぞどうぞ、中に入って!」
まあばあちゃんがお豊ちゃんに話しかけようとすると、吉川さんが割り込むように声をかけてきました。
「どうぞどうぞ、冷たいお茶を入れますから、はやく入って!」
お豊ちゃんは、何か言いかけましたが黙ってしまいました。
それだけ言うと、吉川さんは家の中に入ってしまいました。
完全に、吉川さんが仕切っています。


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インターフォンに出た人は……

お豊ちゃんは、亡くなったご主人の連れ子にひどい目に遭わされた時も、黙って耐えていました。
お豊ちゃんは、本当に困っている時こそ、胸の中にしまって自分で解決しようとします。今もきっとそうなんじゃないかと思うと、いてもたってもいられなくなったのです。
それで、この真夏の暑い盛りにシルバーカーを押して家を出てきました。
お春ちゃんも体が弱いのについてきてくれました。
ルリちゃんから聞いた話では、お豊ちゃんが、
「今日は、都合が悪いので、また今度遊びに来てくださいね」
と言っても、
「大丈夫、邪魔にならないようにしますから」
と言って、上がり込むというのです。
これは、重症です。
「なかなか着かへんんぁ……」
お春ちゃんが汗を拭きながら言いました。
「暑いからかしら……」
「それもあるけど、ジロとミミがおらへんせいか、遠いように感じるなぁ。」
お春ちゃんはまた汗を拭きました。
「あ、着いたわよ。」
「ふう……、そんな距離ないはずやけど、ボーッとしてくるわ。」
お春ちゃんが、インターフォンを押すと、
『はーい』
お豊ちゃんの声ではありません。吉川さんの声でした。
「あんた誰や? お豊ちゃん出してんか。」
お春ちゃんは驚いた声を出して、よそよそしく言いました。でも、本当は分かっているようで、まあばあちゃんに目配せしてきました。
『お春ちゃん? やだ、私よ。妙子よ。すぐ行くわね!』
しかし、吉川さんは全く動じず、明るく答えました。
「こら、大変やな……」
お春ちゃんは、頭をひねりました。
まあばあちゃんも、思っていたよりも大ごとになっているのではと思い、胸がキュッと痛くなりました。


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午後1時からのお出かけ

まあばあちゃんとお春ちゃんは、一日の中でもっとも暑い、午後1時過ぎに家を出ました。
お豊ちゃんの家に行くためです。
照り付ける太陽とアスファルトの照り返しで、日傘をさしていても気休めにしかなりません。
「暑いなぁ。まあちゃん、ジロとミミ、置いてきてよかったな。今頃、クーラーのきいた部屋の中で気持ちようしてるやろ。」
お春ちゃんは流れる汗をぬぐいながら言いました。
「はぁ、拭いても拭いても流れてくるなぁ。この時間やと影もないしな。」
「……そうね。」
そう言って、まあばあちゃんも汗をぬぐいました。でも、この時間を選んだのには訳があります。
ルリちゃんの話では、ルリちゃんが帰る2時前頃に吉川さんが毎日訪ねてくるからです。ルリちゃんも帰った後のことは、よく分からないので心配していました。
お豊ちゃんは、困ってる様子だと言っていました。
まあばあちゃんはとても心配でした。
お豊ちゃんと吉川さんが気心知れた仲ならよいのです。
お豊ちゃんは吉川さんを苦手に感じているようだし、吉川さんは、お豊ちゃんをどこか見下しているように思います。
そんな二人が一緒にいて、穏やかな気持ちでいられるわけがありません。
(どうしてお豊ちゃんは相談してくれないのかしら……)
まあばちゃんは寂しくなりました。


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まあばあちゃんの胸騒ぎ

「ねぇ、お春ちゃん、吉川さんに、お豊ちゃんとマコちゃんのこと聞かれなかった?」
「聞かれたで、根掘り葉掘り聞いてきたわ。なんで知り合ったんかとか、一緒に暮らすようになったんかとか……マコちゃんの好物なんかも聞いてたなぁ。」
「好物も?」
まあばあちゃんは驚きました。なぜ、吉川さんがマコちゃんの好物を知る必要があるのでしょう。なんとも嫌な感じです。
「お春ちゃんは、なんて答えたの?」
「そのまんま答えたで。どんな上等の職人さん作ったもんよりも、まあちゃんのおはぎが大好きやって教えたった。」
まあばあちゃんは何か重いものが覆いかぶさってくるような、暗い気持ちになりました。
「お春ちゃん、明日、お豊ちゃんところに行ってみない? なんだか胸騒ぎがしてたまらないの。」
「そやな。私も、朝の散歩のとき、お豊ちゃんと話したいと思っても、吉川さんがぴったり引っ付いてて、聞きたいことかれへんねん。」
「吉川さん、初めて出会った時、上品で物静かな人だと思ったんだけど、今はまるで別人のように思うことがあるの。」
「私もやねん。言うことは案外えげつないしな。私も口悪い方やけど、あの人のはズキッとくるもんな。」
まあばあちゃんも悲しそうに頷きました。


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吉川さんの質問

「勝手に家中の掃除やら洗濯をするらしいわ。ルリちゃん、えらい困ってたで。」
それを聞いてまあばあちゃんの心はさらに暗くなりました。
そして、ふと思い出しました。以前に吉川さんが
「ねえ、まあちゃん、マコちゃんとお豊ちゃんってホントの親子じゃないんでしょ? 何か聞いてる?」
突然聞かれて、まあばあちゃんはドギマギしました。
「どうして?」
「うん。お豊ちゃん、うまいことしたって羨ましがってる人がいたの。どうして、養子になったの? お豊ちゃんて家も何にもない人なんでしょ?」
この質問には驚きました。吉川さんは実の息子たちの扱いに耐えかねて家を出た上に、未だにお春ちゃんに家賃を払ってもらっているのです。
「それでね、まあちゃん……」
吉川さんに、まあちゃんと呼ばれて、少しゾッとするものを感じましたが、胸の奥の押し込んで、なるべくにこやかに笑うと、
「吉川さん、お友達同士なら楽しいお話だけしましょう。内々のことは触らずにね。」
「でも……、まあちゃんは気にならない? 羨ましくない? あんな大きな家に住んで……。私が前に住んでた家より大きもん。あ! もしかして詳しいの?」
さらに聞いてきます。
「吉川さんには自立して心配のいらない息子さんがいるんだから、吉川さんも十分幸せでしょ? 心配のないことが一番よ。ね?」
取り合わない、まあばあちゃんに、吉川さんは不満そうだったのを覚えています。


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お豊ちゃんの難儀

「あ、そうや!」
「どうしたの?」
お春ちゃんが、大事なこと忘れていたように言いました。
「まあちゃん、この前、桃、買うて来たやろ?」
「美容院の帰りに買ってくれた桃? 美味しかったわね。」
「そやねん。あの桃、あんまりエエから、途中でお豊ちゃんにも分けたろ思って寄ったんや。そしたらな。誰が出てきたと思う?」
「え? ……う~ん。」
「吉川さん出てきてん。」
「吉川さん? ルリちゃんは?」
「ルリちゃんは後から来たわ。ルリちゃんも吉川さんのほうが先におってビックリしたような顔してたわ。」
「遊び来てるにしても、勝手に出るなんて……」
「ほんで、桃、ルリちゃんに渡そうとしてんのに、吉川さんが持って奥に行ってしもたわ。」
まあばあちゃんは、その話に何か嫌なものを感じました。
「お豊ちゃん、吉川さんのこと苦手と思ってたけど……」
「そやねん。吉川さんがおるときは早よ切り上げて帰ってしもたやろ? ほんでお豊ちゃんに『アンタら、仲良かったか?』って聞いたらな。7月半ば頃に突然訪ねてきて、そっから毎日来てるねんて! 毎日やで! マコちゃんのおらん日は夜遅うまで帰らへんらしいわ。」
「毎日って……。お豊ちゃんは何て言ってるの?」
「あんまり言わん子やからなぁ。……けど、そら難儀してるやろ。」
お春ちゃんは、そう言ってため息をつきました。


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みんな天国

「なあ、まあちゃん、あの二人は不思議やなあ。言葉も体も不自由やのにや。私らより若いのになあ。せやけど、いつもあんなに楽しそうにして、この世は天国って顔してるで」
「ほんと、私たちも見習わないとね。お春ちゃん。」
「私は天国やで、まあちゃんと一緒におるのが一番うれしいんや。邦子もええ婿さん見つけて幸せそうにやってるし。何の心配もないもんな。」
「私もよ。お春ちゃんといつも一緒でお話しして、おいしいもの食べて、私たちってホント幸せね!」
まあばあちゃんがお春ちゃんに言うと、お春ちゃんは
「ほんまや! お金はないけど、なんかムチャクチャ幸せやと思うわ!」
まあばあちゃんに抱きついて言いました。
ジロもミミちゃんも嬉しそうにまあばあちゃんとお春ちゃんの周りをピョンピョンしました。
「見てみ、ジロとミミも嬉しそうにしてるわ。うちらと一緒におって楽しいやろ!」
お春ちゃんがニカニカ笑って言いました。


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こだわらなくなった、お春ちゃん

「そや、まあちゃん知ってるか? 先生とこのお父さんと格好エエ人のお父さん仲ええな。いっつも引っ付いて楽しそうにしゃべってるわ。」
「お二人は、同じ大学を卒業したそうよ。お豊ちゃんに聞いたわ。」
「へぇ、そうかいな。同じ大学言うたかて、何十年も前の話やろ? 嬉しいやろか」
「そりゃ、この堺で同じ大学の人と会えたのは嬉しいことじゃないかしら。」
「そんなもんかねぇ。私、大学のことなんか興味ないから分からんわ。」
「お春ちゃん……」
あんなに昭雄さんの大学を自慢していたのに、なんでも頼まれたら聞いていたのに、下にも置かない扱いをしていたのに……
お春ちゃんは、散々な目に遭って、学校にこだわらなくなったのかもしれません。
「先生のお父さんが先輩やろ?」
お春ちゃんが聞きました。
「え? さあ、どうかしら。」
「絶対にそうやと思うわ。見てたら偉そうにしてはるもん。そやけど、あの人やったら間違いないわ、後輩を大事にすると思うわ。」
お春ちゃんは、自分の言葉に頷きながら言いました。


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先生の就職

「ほんで、どこに決まったん?」
「なんでも、本町にある中堅の商事会社で事務の仕事をするって聞いたわ。」
「そら、良かったわ。マコちゃん。まあちゃんの頼みやったら一生懸命聞いてくれるもんな。働きやすいところやったらええけどな。」
そういうと、お春ちゃんは頂いたクッキーをガブリっとかじりました。
「そうね。」
「ま、働いてみんとわからんわ。」
まあばあちゃんも頷きました。
「そやけど、あれやな。せっかく一生懸命、勉強してええとこの学校の先生やったのになぁ。先生のお母さんがピアノで何回も賞とったて言うてはったで。せやのに、ピアノとは何の関係もないところで働かなアカンねんなぁ。人間うまいこといかんもんや。うちの邦子かて、大変やったもんなぁ。」
お春ちゃんは、しみじみと言いました。


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おいしいクッキーはある?

「なあ、あのお菓子どこやったん? もう食べたん?」
お春ちゃんは心配そうに聞きました。
「あ、あのクッキーのこと?」
「クッキー? えらいシャレたもん持って来はってんな! まあちゃんらだけで食べたん……」
「だって、お春ちゃん、怒って口をきいてくれなかったから……」
「え? そうやったかいな?」
「そうよ。だから、この暑さだし邦ちゃんと半分ずつに分けて、冷蔵庫に入れておいたけど……」
まあばあちゃんはすまなそうに言いました。
「まだある?」
「どうかしら、トモちゃんの好きなお菓子らしくて……」
「ええ! もう無いんかいな!」
「ちょっと見てくるわね。」
そう言って、まあばあちゃんはキッチンのほうへ行きました。
しばらくして、まあばあちゃんが冷たく冷やしたクッキーを麦茶と一緒に持ってきました。 


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頼りになる、まあばあちゃん

「ほら、ピアノの先生、生徒さんも少ないし苦しいから働きに行こう思ってる言うてはったやろ?」
お春ちゃんが、ずいっと身を乗り出して聞きました。
「ええ……」
「あの時、先生、パートか何かに行こうと思ってるけど、お父さんのことで迷惑かけるン違うかいうて相談しに来てたやん。あの後、出かけたんはマコちゃん所に行ったんやろ?」
お春ちゃんは、まるで尋問するように聞いてきます。さらに、畳みかけるように
「まあちゃん、この暑いのに、きちんと着物着て出かけたやん。」
「そうなのよ。まだ25なのに、パートで働くよりも顔の広いマコちゃんにお願いした方がいいと思って……あの時はごめんね。お春ちゃんにお留守番頼んで……」
まあばあちゃんは申し訳なさそうに言いました。
「ええんや、ええんや。そんなこと。先生もきちんとスーツ着て、お菓子の箱持ってきて張ったもんな。きっとまあちゃんに力になって欲しいて訪ねて来たんやで。まあちゃんは、見かけによらず頼りになるもんな。先生の気持ちもわかるわ。」
お春ちゃんは納得したように言いました。


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お豊ちゃんに電話

「もしもし、お豊ちゃん?」
まあばあちゃんは、二人が帰った後、すぐにお豊ちゃんに電話を掛けました。
「今ね、お野菜いただいたんだけど」
『わぁ、ほんと!』
「それでね、先生のお父さんとお隣のお父さんが……」
『あ、来はったみたい。』
「え? まあ! はやいわね。ごめんね、行って行って。」
まあばあちゃんが慌てて言うと、
『ううん。ルリちゃんが行ってくれたみたいだから、大丈夫よ。』
「そう、私ね、迎えに出てあげてねって言おうと思って電話したのよ。間に合わなかったわね。ごめんね。切るわね。」
『は~い。またね~!』
まあばあちゃんが受話器を置くと、お春ちゃんが、
「なあ、まあちゃん、ピアノの先生、働きに行くところ決まったって言うてたやろ?」
「ええ」
「あれってマコちゃんに頼んだ分か?」
お春ちゃんは興味深そうに聞きました。


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麦茶をおかわり

「もう一杯いかがですか?」
まあばあちゃんがすすめると、二人は、
「「お願いします」」
嬉しそうにコップを差し出しました。
二人は、ホントに喉がカラカラだったようで、2杯目もおいしそうにゴクゴクと飲み干しました。
「豪快やな。畑、暑かったでっしゃろ?」
お春ちゃんが聞くと、
「は…い」
と返事して、不自由な手で麦わら帽子を取りました。
「あらま! 真っ黒やがな。海水浴からの帰りみたいやで! な、まあちゃん。」
「ほんと……」
お春ちゃんの言葉に二人はニッコリうなずき、頭を下げると、
「ごち…そう、さま…でし、た。これ、で、失礼…しま、す。」
と言って帰っていきました。
「なあ、まあちゃん、あの二人えらい真っ黒になって! 邦子の婿さんにエライこき使われてるみたいやな。」
頂いた枝豆やキュウリやトマトなどを分けながら、お春ちゃんが言いました。
「まあちゃん、見てみ、今年はえらい豊作やで! 夕方になったらお豊ちゃんところに持って行ったろ!」
まあばあちゃんはニッコリうなずきました。


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冷たい麦茶

3人の嬉しそうな笑い声が聞こえてきます。
お春ちゃんは、
「まあちゃん、そんな暑いところにおらんと、入ってもらいいな。」
「あ、ほんとだわ。」
まあばあちゃんは、慌てて中に入るように促しましたが、二人は畑からの帰りで泥だらけだからと、遠慮しました。
「じゃあ、冷たいお茶だけでも、表は暑いですから、少し入ってください。」
と前栽に案内しました。
「あ…の、野菜、どこに……置き、ましょ、うか?」
先生のお父さんがニコニコして言いました。
「あ、大丈夫です。私たちで運びますから。」
まあばあちゃんが言いましたが、お春ちゃんが
「あ、すんませんな。ちょっとだけ、ここまで」
と玄関に手招きしました。
たくさん野菜の入った袋をドサッと玄関の上り口に置きました。
まあばあちゃんは冷たく冷やした麦茶を、二人にすすめました。
二人はごくごくと飲み干しました。
それから、まあばあちゃんは、二人の水筒に麦茶を満タンに入れました。


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配達さんかな?

ピンポーン、ピンポーン
まあばあちゃんの家のインターフォンが鳴りました。
時計を見ると、10時です。
「配達やろか? よっこらしょ」
お春ちゃんが立ち上がろうとすると、
「あ、お春ちゃん、私が近いから行くわ。」
と洗濯物を干していたまあばあちゃんが表に出ました。
「あらぁ! おはようございます。まあ、二人とも真っ黒になって! どこに行ってこられたんですか?」
まあばあちゃんの嬉しそうな声が聞こえてきました。
「ん? 誰やろ?」
大きな麦わら帽子をかぶっているので、お春ちゃんには誰だか分かりません。
男の人が二人来ているようです。
お春ちゃんは、ドッコラショッっと玄関をおりました。
「まあ、こんなにたくさん頂いていいんですか?」
「はい。……今朝は……5時から……二人で、本田さんの……畑に……」
「じゃあ、これはお二人が?」
「……は・い……」
3人の楽しそうな笑い声が聞こえてきました。
訪問者は先生のお父さんと、あのカッコイイ人のお父さんでした。


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お散歩、いつ行こう?

ここ2,3日の堺の町は、まあばあちゃんがお散歩する4時半ごろ、強い雨が音を立てて降っていたり、雷が鳴る日もあって、朝のお散歩はお休みしていました。日中はというと、カンカン照りです。とても散歩には行けません。
夕方になってまあばあちゃんは外に出ました。アスファルトにそっと手を置いてみます。一日中、太陽の熱にさらされたアスファルトは、焼けつくような熱さです。
お春ちゃんも、アスファルトに手を置きました。
「うわぁ! あっついな! まあちゃん、この上に鉄板置いたらお好み焼きが焼けるで!」
そう言うと、お春ちゃんは流れる汗をタオルでぬぐいました。
「ほんとね。ジロ、ミミ、散歩は無理やで。家の中で遊ぼか。な?」
お春ちゃんにそう言われても、ジロもミミちゃんも不満そうです。
「そうだわ。暗くなってから行ってみない? そしたらアスファルトも冷めてくるでしょ? もう少し後で散歩しましょ。」
まあばあちゃの言葉にジロは納得したのか、家の中に入りました。
「そないしょ。私らも歩かんとな。それがええわ。」
お春ちゃんが、嬉しそうにうなずきました。


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お話が弾むね

「でも、お食事とか大丈夫?」
心配そうにまあばちゃんが言いました。
「大丈夫、うちの隣のマンションだから。マコちゃんがよく食事に誘ってるわ。私が持って行ったり……」
「それやったら安心やな。アンタんとこやったら、ええモン食べられるしな。」
と、お春ちゃんが言いました。
「そんなことないよ。普通よ。ドンブリとかそうめんとか冷麺、そんな感じよ。この暑さでみんな食欲ないもん。」
「それが一番おいしいんやんか。一人で食べるより、みんなで食べるほうがええもんな。」
「そうなんよ。」
「そやけど、あの3人話が合うみたいやな。いつまでもしゃべってはるなぁ。うちらみたいやな。」
お春ちゃんが、面白そうに言いました。
「うん。ピアノの先生のお父さんは大学の先生やってはって、篠崎さんのお父さんは、本の編集をしてはったんですって。だから、マコちゃんとっても勉強になるって、お話が楽しいみたい。」
「ひぇ~、インテリばっかりやな。紳士やし。へぇ。」
お春ちゃんは、感心したように何度も繰り返しました。
「でも、言葉も不自由だし手足も満足に動かせないのに大丈夫なの? なにか手伝うことがあるなら私のほうがお役に立てると思うわ。これでも中学校で国語を長年教えてきたのよ。マコちゃんによろしく言っといてくれない?」
吉川さんが、お豊ちゃんにニコッと笑っていいました。
「え?」
お豊ちゃんが面食らっていると、さらに、
「ね! お願いしたわよ。」
吉川さんがダメ押しのように言いました。


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家に帰ろう

「篠崎さんのこと? 電動車いすを持ってはるんよ。」
「あら、お豊ちゃん。おはよう」
「おはよう。」
いつの間にか、お豊ちゃんがハッピーちゃんとカイちゃんを連れて立っていました。
「へぇ~、そうなんや~。電動車いすって高いん違うん? バッテリーが切れたら大変なんやろ?」
吉川さんが聞きました。
「え? さあ、よく知らないけど……」
あれこれ聞かれて、お豊ちゃんは困り顔で答えました。
「カイちゃんの故郷に出かけた時も、先生のお父さんと意気投合してたものね。」
とまあばあちゃんが言うと、
「そう! そうなんよ! よく電話してるみたい。施設も出ることにしたみたい。来週末には帰ってくるんじゃないかしら。」
「えらい思い切ったもんやな。そやけど、息子さん働いてはるやろ。いけるんか?」
「うん、先生のお父さんに歩けるようにならんと息子に悪いでって言われて、奮起して練習したみたい。」
「偉いわ! 二人とも立派ねえ!」
お豊ちゃんとお春ちゃんの話を聞いていて、まあばあちゃんは感心しました。
「それにしても、お豊ちゃん、あんた、えらい詳しいな。」
お春ちゃんが聞くと
「マコちゃんと息子さんもやりとりしてるみたい。ほら、吹き出しがいっぱい出てくるやつ……、え~っと、なんて言ったけ」
「あ、それ知ってるわ。トモちゃんも使ってるわ。ラインや!」
お春ちゃんが得意げに言いました。


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一緒に頑張る

それから、しばらくたった朝、いつものように池のほうに散歩に行くと、驚くことがありました。
あのカッコいい男の人のお父さんが先生のお父さんと一緒に柵につかまっていました。
先生のお父さんと一緒に柵につかまりながら一生懸命歩いていました。
途中、休んでは楽しそうにお話ししています。
先生のお父さんが何やら身振り手振りをしています。すると、もう一人のお父さんも同じように動きます。ストレッチの仕方を教えているようです。
「見てみ、先生のお父さん弟子が出来たから張り切ってはるわ。」
お春ちゃんが感心したように言いました。
「ほんとね。張り合いが出るわね。」
まあばあちゃんも嬉しそうに頷きました。
二人ともなんともぎこちない動きですが、とっても楽しそうです。
「あれ、でも、あの男の人の親御さん、一人で車いす押してこられへんやろ? どうやってここまで来たんやろ?」
吉川さんが不思議そうに言いました。


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健康を願って

恭子ちゃんは、しばらく考え込んでいましたが、
「もう! 分からへんわ。もっとヒントちょうだい!」
「あのね。お春おばあちゃんがキューピットの人。」
トモちゃんが言うと、恭子ちゃんは
「ああ! なるほど! へぇ! そうなん、私も行きたかったわ~。カッコよかった?」
「うん。すごくカッコよかったよ。」
「お父さんとどっちがカッコいい?」
「……う~んと、お父さん?」
「なんか、今、間があった……」
恭子ちゃんは不満そうです。
「そりゃ、お父さんはカッコいいけど、タイプが違うし……」
「ふ~ん。」
「あ、あのね。その人のお父さんも車いすなんよ。お父さんを大事そうに車に乗せてはった。」
「そう、先生のお父さんもだし……、みんな大変やね。うちはお母ちゃんもお春ちゃんも健康でありがたいわ。」
と言って、恭子ちゃんはまあばあちゃんとお春ちゃんを抱きしめました。
「ほんとうにね。こればっかりは自分ではどうにもならないものね。みんな健康を願ってるんだけどね。」
まあばあちゃんはしんみり言いました。


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ビックリすること

「そやけど、今日はビックリしたな。」
お春ちゃんが急に言いました。
「あ、ビックリしたわね。」
まあばあちゃんはそれだけで何の話か分かったようです。
「まあちゃん、知ってた?」
「知らなかったわ。」
「私も、いろいろ聞きたかってんけど、吉川さんがおったから聞きにくかってん。あの人、なんか話を暗いほうに持っていくから、気ぃ使うわ。」
まあばあちゃんもうなずきました。
「どうしたの? なになに?」
恭子ちゃんが、身を乗り出して聞きました。
「あ、そうか、恭子ちゃん、今日、来てへんかったからな。」
恭子ちゃんが聞くと、お春ちゃんは急に意味深に笑いました。
「なによ。」
「今日な、ビックリするようなことがあってん。」
「うん。聞いたよ。」
「なんやと思う?」
「分からへんわよ。行ってへんもん。ヒントは?」
「ヒントはな……、ビックリするような人が来てん!」
お春ちゃんは得意げに言いました。
「びっくり……、芸能人?」
「ちゃう! そんなん、ちがう。うちらが来て欲しいような人はみんな死んでるわ。それか石原軍団ぐらいや。」
「そう……、そうか……え~、誰やろ……」
恭子ちゃんは考え込んでしまいました。


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堺の町のまあばあちゃん

Author:堺の町のまあばあちゃん
堺の町に住む、ひとりのおばあちゃんのお話です。
住み慣れた町の人々との交流や孫のトモちゃんや犬のジロとの生活を通して力強く生きていく姿を物語に書きたいと思います。 
宜しくお願いします。
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