まだ秘密……

お春ちゃんは、まだ秘密にしておきたいようですが、まあばあちゃんには分かってしまいました。
お春ちゃんは、あのハンサムな人とピアノの先生の仲を取り持ちたいのでしょう。何度も気合を入れているお春ちゃんがとても頼もしく見えました。
「お春ちゃん、体、大丈夫?」
まあばあちゃんが声をかけると、お春ちゃんは元気のいい声で、
「ん? 大丈夫や。第一段階は突破や。問題は明日の朝や。どういう風にするか…それが一番の難題やなぁ。」
お春ちゃんは、目を輝かせて言いました。
「あ、そや。お豊ちゃん、妙ちゃん、あんたらに頼みがあるんや。」
「なあに?」
吉川さんは心配そうに聞きました。
お豊ちゃんはピンときたようでした。
「明日の朝な、ここに来るの休んでくれへん?」
「いいわよ。公園のほうを散歩するわ。ね、ハッピー。」
お豊ちゃんは、ニコッとして頷きました。
吉川さんは、意味が分からないらしく、いぶかし気な顔をして、お春ちゃんとまあばあちゃんを見つめていました。


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第一段階終了!?

お春ちゃんの言葉に、男の人はさわやかに笑って頭を下げました。先生もにっこり笑って恥ずかしそうにうつむきました。
お春ちゃんは、まじまじと男の人を見ました。
傍で見ると、なかなかのハンサムさんです。涼しげな眼もとに引き締まった口元。鼻筋が通った顔立ちで、少し見とれるようなか人です。
「すみませんでしたな。えらい時間取らせてしもうて、せっかくカッコウ良うに走ってはんのに」
お春ちゃんが男の人の手を取って言いました。
「本当に痛いところはないんですね?」
「無いです無いです。ありがとうさんでした。ほんに助かりました。」
男の人はお花ちゃんに笑った後、先生にも頭を下げて颯爽と走って行ってしまいました。
「よぉーし! 第一段階は終了や。よぉーし!」
お春ちゃんは、何やら鼻息荒く気合を入れています。
「どうしたの? お春ちゃん。」
いつもと違うお春ちゃんに、お豊ちゃんが声をかけました。
「まだ、誰にも言われへんねん。言われへんから大変なんや。」
お春ちゃんはそう言ってまた気合を入れました。


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いつものように

今日もみんなで池をお散歩しています。
いつものさわやかな男の人がやって来ました。
そして、いつものように、お春ちゃんたちの横を頭を下げて通り過ぎようとしたとき、お春ちゃんが、
「ギャーッ」
と大きな声を上げて、柵につかまりながらゆっくりと倒れました。
先生が慌てて助け起こしに来ました。お豊ちゃんと吉川さんもビックリして助けに来ましたが、お春ちゃんは二人の手を振り払って、
「あんたらは来んといて!」
と、えらい剣幕で言いました。二人はびっくりして固まっていました。
先生には、「ありがと、ありがと」と言って膝をなでながらお礼を言っていますが、
「イタタ、イタタ」
と言ってなかなか立とうとしません。
「大丈夫ですか?」
あの男の人が心配そうに近づいてきました。男の人はお春ちゃんをやさしく抱きかかえながら助け起こしました。
「すんまへんな~。すんまへんな~」
「どこか痛いところはありませんか?」
と優しくお春ちゃんに聞いてくれました。
「はい。もう治りました。こけたときはビックリしてしもうて。いつもはこの子が助けてくれるんですわ。優しい子でこんな年寄りの世話も嫌がらずしてくれるんですわ。よろしゅうお願いします。」
お春ちゃんはにっこり笑っていいました。


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池に移る山並み

池に来るようになってから、先生のお父さんは日ごとに良くなっていく様子が、目に見えて分かりました。
清々しい朝の空気と、
一日の始まりとなる朝の光が、きっと体にいいのです。

今日も、先生のお父さんは、柵につかまりながら歩く練習をしています。
まだ、太陽は金剛山に隠れて見えません。
「この池の周りを一周いうのは相当あるなぁ。結構しんどいわ。」
お春ちゃんが汗をふきながら言いました。
なんだかんだ言いながら、2週目に入りました。
「あ、お日さん出てきたわ。」
お春ちゃんが嬉しそうに言いました。
2週目に入るころに、やっと太陽は顔を出します。
先生のお父さんが太陽に手を合わせました。
お春ちゃんもお豊ちゃんも先生のお母さんも先生も。
まあばあちゃんがいつもお日様に手を合わせるので、みんなもいつの間にか、手を合わせるようになりました。
先生のお父さんは、また歩き始めます。何度も休憩しては、太陽と池に映る山並みに見とれています。
このころになると、ランナーの人が走ってきます。
中年くらいの人
若い女の人
次々に現れて、池の周りを走り始めます。
「私らは、あないにはなれんなぁ。」
お春ちゃんは、ランナーの人に見とれて言いました。


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日の出

「歩くことが体にいいと分かっていても、なかなか続けるのは大変なことですね。」
先生のお父さんがしみじみ言いました。
「そうですね。一緒に頑張りましょう。」
とまあばあちゃんが励ましました。
「ねえ! まあちゃん、お春ちゃんが言ってたあの池はどう? 金剛山から朝日もみれるし!」
お豊ちゃんが言いました。
「あ、いいわね!」
「池に太陽が映って、本当にきれいだもの。」
「ほんまや。初日の出以来、行ってへんしな。」
というわけで、池に行くことになりました。

「お、もう明るいな。……まだ4時半過ぎたところかいな。へぇ、もうこんな明るいんかぁ。」
お春ちゃんが、池に着いたとたん嬉しそうに言いました。
「公園のところだと、なかなか明るくならないのに、不思議ね。」
まあばあちゃんも嬉しそうです。
「こんないいところが近くにあったんですねぇ。」
先生のお父さんも広々とした池を見て言いました。
「そうでっしゃろ。」
お春ちゃんが返事しました。
「はい。それに、池の周りの柵がいいですね。」
公園の柵と違って、池の周りの安全柵は途切れることなく設置されています。
歩く練習にとっても良さそうです。
「鳥がたくさんいますね。」
「そうですねん。カモやらシラサギやら……」
池の中には群れになってカモが寝ています。白鷺はゆったりと歩いています。ほんとにのどかな風景です。
「あ、まあちゃん見てみ!あっこからお日さんが顔出すで!」
お春ちゃんの指さす方向を見ると、金剛山から、真っ赤な太陽が頭を出しています。
「きれいやな~」
お春ちゃんが大きな声で言いました。池の周りには家もないので、みんなで歩いて話をしていても気を使うことがありません。
「ここへ来て良かったなあ。見てみ。ジロもハッピーもミミちゃん喜んでるわ。」
「明日から、ここに来ましょう。」
先生のお父さんが嬉しそうに言いました。


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こう来ない!

本当にあの時は大変でした。
「もう、私のことなんか放っといてよ! 外になんか出たら、娘が婿さんに追い出されたんやて言うて人に笑われる!」
「それじゃ、お春ちゃんは一生、家から出ないつもり?」
「まあちゃんは、『散歩、散歩』って散歩ばっかり! それしか言うことないんか?」
「だって、そんな寝てばっかりいたら、寝たきりになるよ! それこそ笑いもんよ! 誰も同情なんかしてくれないわよ。」
「そんなん分かってるわ! もう帰って!」
毎日毎日、まあばあちゃんはお春ちゃんの家を訪ねては、外に連れ出そうとしましたが、お春ちゃんとの会話はいつまでたっても平行線です。

ある日、まあばあちゃんは意を決しました。
「うるさいな。もう帰ってよ!」
「わかった。帰るわ。もう来ないから。」
「へ?」
「もう二度と来ないわ。お春ちゃんなんか知らない。勝手にすればいい。そうやって一生自分のこと憐れんで生きればいいのよ。」
「ま、まあちゃん?」
お春ちゃんは慌てました。まあばあちゃんは、こうと決めるとなかなか大変に頑固なのです。
「じゃ、さよなら。」
お春ちゃんは大慌てで、
「待って、待って! 行く行く! 散歩に行こう!」

と、言うわけでお春ちゃんは、散歩に再び行くようになりました。


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本当の友達

今日も朝から先生のお父さんは柵につかまって歩いています。
「だいぶん、軽やかになってきましたね。」
まあばあちゃんが声をかけると、先生のお父さんがにっこり笑っていいました。
「みなさんのおかげです。歩けるって事はいいですね。」
「せやで、人間、自分の足で歩けんようになったらそら寂しいもんやで。」
お春ちゃんが言うと、
「本当にそうですね。」
と先生のお父さんがうなずきました。
「わたしも、いっとき寝たり起きたりの時があってんけど、あん時は何をする気も起きへんかったわ。」
「そんな時があったんですか? シッカリしてはるから、そんな時があったなんて感じがしませんね。」
先生のお父さんが、意外そうに言いました。
「そんなことないで。そけやどな。グズグズしてたら、まあちゃんに布団を引っぺがされて、外に引きずり出されてん。」
「ええ!」
先生のお父さんは、驚いたようにまあばあちゃんをマジマジと見つめました。
「お春ちゃん!」
あの時は、邦ちゃんが昭雄さんに追い出されて、お春ちゃんが悔しいさから寝込んでしまったからです。
「ホンマやんか。ウソ言うてないで~」
お春ちゃんは、まあばあちゃんがキュッとにらんでもどこ吹く風です。
「でも、心から心配してくれる友達は、本当に有難いですね。」
先生のお父さんが、しんみりとした口調で言いました。


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爽やかな朝

「あの子ら見てたら、日本もなかなかやと思うなぁ」
お春ちゃんは、男の子達の後姿を見て、ポツリと言いました。
「ほんとね。」
「なあ、まあちゃん。この頃、若い人のさんざんな事件多いやんか、女の子がえらい目に遭わされたりするやん。大人になるまでに自分の人生かて滅茶苦茶になるって分からへんのかなぁ。」
お春ちゃんは、テレビのニュースを見てはよくため息をついています。
「死ぬんやったら、畳の上で往生して死にたいわ。玄関開けるなりグサリと包丁で刺されたら浮かばれんがな。痛いし怖いし……」
この前、老夫婦が若い女の人に襲われた事件を見て、怖がっていました。
世の中には楽しいこともいっぱいあるのに、どうしても悲しい事件や恐ろしい事件が心の中に深く入り込みます。
お春ちゃんは自分が事件にあったように、嘆いてばかりいます。
だから、いたずらな男の子にあったけれど、かえって心の中が晴れ晴れしたようです。
小さな男の子と少し話をしただけなのに、登校していく子どもたちの姿が、生き生きと感じられる爽やかな朝になりました。


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分かってくれた。

「うわ~ん。かんに~ん。」
さっきの子どもたちの声が聞こえてきました。大きなカバンを持った中学生の男の子に、さっきの一人が襟首を捕まえられて引きずられています。もう一人の子はオロオロとついてきています。
そうして、まあばあちゃん達のところまで来ると、グイッとまばあちゃん達の前に突き出しました。
「あやまれ!」
「ごめんなさい。ごめんなさい。もう言いません。かんにんしてくださ~い。」
小学生の男の子は、涙と鼻水でクチャぐちゃになった顔で謝りました。
「ちゃんと謝れ!」
中学生の男の子は、小学生の男の子の頭をグイっと前に倒しました。
「うわ~ん。兄ちゃん、かんにん~。おばあちゃん。ごめんなさ~い。」
「すみません。弟がひどい口の利き方をして、申し訳ありませんでした。」
キリッとした言葉遣いで中学生の子は深く頭を下げました。
「ええんや。私も小さい子相手に大人げなかったわ。せやけど、なんぼ小さい子でも言うたらアカンことは、アカンのやで。」
お春ちゃんが言うと、小学生の男の子たちは
「ごめんなさい。」
とまた謝りました。
「分かってくれたら、ええんや。かしこい子やな。二人とも。ええお兄ちゃんがいて幸せやな。お兄ちゃんの言うことよう聞きや。」
小学校の男の子たちは、「うん」とうなずきました。
「ほな、学校へ行き。遅刻したら今度は先生に怒られるがな。」
男の子たちとお兄ちゃんは、丁寧に頭を下げて、走っていきました。
少し行くと、立ち止まって振り返り、大きく手を振りました。
お春ちゃんとまあばあちゃん、先生たちも大きく手を振りました。


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長生きって……

あれから数日が立ちました。
いつものように先生のお父さんは、歩く練習をしています。
みんなで
「1~2~3~」
と数えながら頑張っていました。
すると、後ろから
「ヨンの5の~ろく~」
と小学生くらい男の子の声が聞こえてきました。そして、
「10~11~ひゃく~」
と言いながら、走って通り過ぎて行きました。
明らかに馬鹿にした口調でした。お春ちゃんは怒って、
「そこのボウズ待たんか!」
と言いましたが、
「なんや、バアサン!」
「なんちゅう口の利き方や!」
「バアサンにバアサン言うてるだけやで。」
小学生とは思えない返事が返ってきました。
「何年生や! 名前言うてみ!」
お春ちゃんが声を荒げて言いました。
「ここまで追っかけてきたら教えたるわ。死にぞこないのクソババア!」
なんという口の利き方でしょう。お春ちゃんは追いかけることもできず、怒りのあまりプルプル体を震わせていました。目には涙を浮かべています。
お春ちゃんだけでありません。
先生も先生のお父さんもお母さんも、そして、まあばあちゃんもションボリしてしまいました。
「長生きするのはそんなにいけないことかしら……」
まあばあちゃんは、気落ちした声で言いました。


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良かったなぁ

「良かったなぁ。まあちゃん。先生のお父さん、そのうちしっかり歩かはるようになるわ。」
お春ちゃんが嬉しそうに言いました。
「ほんとね。」
「なんか、立ち上がるのも大変やったみたいやのに、言葉までハッキリしてきてたなぁ。」
「ええ。」
「ぜったい良うならはるわ。なあ、まあちゃん。」
お春ちゃんの言葉に、まあばあちゃんもニッコリうなずきました。
次の日も次の日も、先生のお父さんは公園にやってきて、柵を頼りにつかまり歩きをします。
今では、公園を一周回ることが出来るようになりました。柵が途切れたところは、娘さんに手伝ってもらいながら頑張ります。
額には汗が浮かんでいます。
「大分、歩けるようになりましたね。」
まあばあちゃんが声をかけると、
「はい。本当に嬉しいです。」
先生のお父さんは、満足そうに頷きました。
まあばあちゃんも嬉しそうです。先生も先生のお母さんも幸せそうに笑っています。


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歩けるって有難いね。

「皆さんのおかげで、こんなに歩けるようになりました。今では、トイレもひとりで行けるんですよ。本当にありがとうございます。」
先生のお父さんがお礼を言いました。
「お父さんの頑張りですよ。」
まあばあちゃんは嬉しそうに言いました。先生も先生のお母さんもニコニコしています。
「歩けるって有難いことですね。」
「今日は、1,2,3って数を数えながら歩きませんか? あと半分頑張りましょう。」
まあばあちゃんが1~2~3と掛け声をかけます。みんなも声を合わせて歩きます。お父さんも柵につかまりながら1~2~3と声を出します。
歩数計を見ると232歩でした。最初は1歩でも大変で10歩でフラフラだったのに大きな進歩です。
「なあ、まあちゃん、先生のお父さんのお陰で私らもシルバーカーなしで歩けるようなったなぁ。この年で自分だけで歩けるようになるとは思わへんかったわ。有難いこっちゃ。」
お春ちゃんが嬉しそうに言うと、まあばあちゃんもにっこり笑って頷きました。


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お昼過ぎに

「じゃあ、お父さん、一旦、家に帰って休憩しましょ。」
先生が言いました。
「あの、また、昼から歩かれるんですね。」
と先生のお父さんがまあばあちゃんに言いました。
「はい。昼過ぎから、また歩きます。お誘いしますね。」
まあばあちゃんが言うと、お春ちゃんが、
「今日は、もう休んだほうがええんと違うか?」
とビックリしたように言いました。
「いえ、やる気が出たときにやりたいと思いまして。ご迷惑でなければ、ぜひ!」
先生のお父さんは驚くほどしっかりした口調で言いました。
「では、1時過ぎに伺いますね。」
まあばあちゃんがにっこり笑っていいました。
先生も先生のお母さんも、うれしそうに笑いました。


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歩けた!

先生のお父さんは、十歩も歩かないうちに柵につかまってジッとしたまま動かなくなりました。
「お父さん、車いすに座って、今日はこのくらいでいいでしょう。」
先生は心配そうです。
「すまんな。すぐにへこたれてしもうて……。すまんけど、あの電柱のところまで連れて行ってくれるか……」
先生のお父さんの言葉がいつもよりはっきり聞こえました。
先生のお父さんは、先生に手助けしてもらいながら、目標の電信柱まで歩きました。そして、自分の力で車いすになんとか座りました。
「頑張りましたね。」
まあばあちゃんの言葉に、先生のお父さんは、
「ありがとうございます。皆さんのおかげで何とか一人で歩くことができました。」
先生のお父さんは満足そうな笑顔で皆にお礼を言いました。


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先生のお父さん、歩く。

「ね、先生のお父さん、公園の外回りの道をゆっくり歩いてみませんか? 私たちもお供させていただきます。」
まあばあちゃんが、言いました。
「そうですね! やってみます。」
先生のお父さんは気合を入れて返事しました。
「お父さん、大丈夫?」
「うん。思い立ったが吉日やからな。やる気の出たときに始めるよ。」
先生のお父さんはフンと鼻息荒く言いました。
「まあちゃん、それはきついで。ほれ……」
お春ちゃんが、先生のお父さんの様子をボソッとまあばあちゃんに言いました。
先生のお父さんは、なんとか車いすから降りて、公園の柵につかまり立ちしているところでした。とても危なっかしい感じです。先生と先生のお母さんが心配そうに寄り添っています。
でも、これには訳がありました。
昨日のお花見の時、先生のお父さんにこっそり頼まれたのです。
「うちの家内も娘も、私を気遣ってくれて至れり尽くせりの介護をしてくれて、本当に感謝しているのですが、私は、少しでも自分の力で歩きたいのです。明日、一緒に散歩させてもらうときに、きっかけを作っていただきたいのです。厚かましいお願いですが……」
確かに、まあばあちゃんも荷の重いお願いだと感じました。
お春ちゃんには相談しようかと思いましたが、先生のお父さんの決心した顔を思い出しやめました。
先生のお父さんは柵を一歩二歩と、ゆっくりと歩いています。
「お父さん無理しないでね。」
先生が心配そうに声をかけています。
先生のお父さんは額に汗をかきながら、ゆっくりと足を進めました。


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きっと良くなる

「年の差なんかどうでもええがな。私らみ~んな未亡人やのに、あんただけご主人がいるんや。塩梅せんと罰が当たるで!」
お春ちゃんが言うと、
「おっしゃる通りです。体の弱い私をいつも大切にしてくれた主人なのに、私は何の恩返しも出来てません。本当に情けないことです。」
「情けないことなんかないで。前みたいに一緒に歩こう。そしたら、ご主人の病気もきっと良くなるで!」
お春ちゃんは励ますつもりで言ったのに、先生も先生のお母さんも泣き出してしまいました。お父さんも涙をぬぐっています。
きっと、先生の家はみんなが思っている以上に、大変なのかもしれません。
「ほら見て、桜の花は散ったけど、若葉がこんなにきれいになって!」
まあばあちゃんが、青々とした若葉を見上げながら言いました。


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年の差

今日は日曜日。
雨だと思っていたのに、空はカラッと晴れています。上々の天気です。
まばあちゃんとお春ちゃんは、ジロとミミちゃんを連れて公園にやってきました。
ワンちゃんのお散歩の人、小さな子どもと遊んでいるお父さんやお母さん達。
公園は朝から大にぎわいです。
ひろ子ちゃんの先生もお父さんの車いすを押してやってきました。お母さんがふうふう言いながらついてきました。
「あんた、ふうふう言うてるやんか。」
お春ちゃんが言うと、
「そう……なんでよ。……娘の足が速くて……」
先生のお母さんは、汗までかいています。
「あんた、それくらいでフウフウ言うてたらアカンで。うちら80やで、あんた50ちょっとやろ。私らよりだいぶん若いんやから、もっとしっかりせんと孝行娘に悪いで!」
お春ちゃんが強く言うと、先生のお母さんは、申し訳なさそうに小さな声で言いました。
「本当にその通りなんですが、若い時から体が弱くて……」
「……えー? 奥さん、50歳ですか? ほんじゃ、ご主人とは、いくつ離れてるんですか?」
吉川さんが意外そうな様子で尋ねました。
吉川さんの聞き方に、先生のお母さんは苦笑いしながら言いました。
「主人が68歳でわたしが52歳だから、16歳離れていることになりますね。年の離れた夫婦でしょ?」
「わたし、ご主人とそんなに離れてないと思っていましたわ。」
吉川さんがビックリしたように言うと、
「ええ、私の見た目が老けているので、歳の話が出るとよく驚かれます。」
先生のお母さんは、寂しそうに笑いました。


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散歩に行こう!

桜の花びらが、ひらひら舞う中、おばあちゃん達のお花見が始まりました。
「父のこんなに笑うのは久しぶりに見ます。お招きいただいて本当にありがとうございます。」
ひろ子ちゃんの先生が嬉しそうに言いました。
先生のお母さんも、一緒にニコニコしました。
「私も明日から、お散歩に行きますね。主人が脳こうそくで倒れてから、全然歩かなくなってしまって……」
先生のお母さんが寂しそう笑って言いました。
「アカンで~。歩かんと! 一緒に行こう。」
お春ちゃんが言いました。まあばあちゃんも、
「そうですよ。歩くのが一番ですよ。また公園でお話ししましょう。これからは気持ちのいい季節ですから。」
「朝、歩いたら気持ちエエで! うちらは、歩くのが一番の健康法やで!」
お春ちゃんもさらに続けます。
「私たちも一緒に歩いてるんですよ。」
お豊ちゃんと吉川さんも励ますように言いました。
「よろしくお願いします。お父さん、明日から車いすで散歩デビューしましょう。」
先生のお母さんが先生のお父さんに、にっこり笑っていいました。
先生のお父さんも嬉しそうに頷きました。


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堺の町のまあばあちゃん

Author:堺の町のまあばあちゃん
堺の町に住む、ひとりのおばあちゃんのお話です。
住み慣れた町の人々との交流や孫のトモちゃんや犬のジロとの生活を通して力強く生きていく姿を物語に書きたいと思います。 
宜しくお願いします。
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