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風流に……

「おいしいお肉ですな。やわらかくて甘くて……」
先生のお父さんは不自由な手を動かしながら、おいしそうに口に入れました。
「お花見するのに、桜の花のお皿でいただけるなんて、風流ですな。」
先生のお父さんは一言一言、かみしめるように言いました。
そこへ、オッチャンが帰ってきました。
「あ、先生、来てくれてはったんですか。わし、帰りに迎えに行ったんですわ。お留守やったから、こっちかな思って……」
「ありがとうございます。」
「お父ちゃん! ひろ子、先生のお父さんの車いすを押してきたんよ。」
ひろ子ちゃんが嬉しそうに言いました。
「そうか。ひろ子はええ子やな!」
オッチャンはひろ子ちゃんの頭をやさしくなでながら言いました。


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良さそうなお皿

「わあ! 見事ですね!」
先生のお母さんは、邦ちゃんの家のお庭を見て大きな声で言いました。
薄紅色の八重桜の枝を風が揺らす度に、花びらがひらひらと舞い降ります。
「見事ですな。」
先生のお父さんもうっとりと見とれています。
その様子を見て、バーベキューの支度をしていた邦ちゃんが言いました。
「主人も桜の花が大好きで、もう少し早ければ、ソメヨシノが満開だったんですよ。来年はぜひ見に来てくださいね。」
「ありがとうございます。」
「邦子、それなんや? 良さそうなお皿やな。」
邦ちゃんが先生のお父さんに渡したスプーンを見て、お春ちゃんは珍しそうに言いました。
「本当に持ちやすい。こんなお皿があるんですね。手に力が入らなくて、軽く持てます。親指のところに穴が開いてるからですね。へぇー。」
「この絵は奥さんが?」
先生のお母さんが聞きました。
「いいえ。これは、主人がこの先の焼き物の先生のところでいただいたものなんです。喜んでくださって嬉しいです。」
邦ちゃんはにこにこ笑いながら、おいしそうに焼けたお肉をお皿に入れました。


桜吹雪だ!

「あら!」
ピアノの先生のお母さんは、まあばあちゃんのお散歩の友達でした。
「お招きくださって有難うございます。」
先生のお母さんが丁寧に頭を下げてくだいました。
「うちの娘から聞いて、もしかしたらと思ってたんですけど……。朝、挨拶して通るだけの私たちに気をかけてくださって……」
お父さんも嬉しそうに挨拶してくださいました。
「こっちこそ、孫にピアノを教えてもらって有難うございます。」
お春ちゃんは、いつもより緊張してペコペコしています。
家の塀から顔を出している桜の木がハラハラと薄紅色の花を散らしてまあばあちゃんたちの上に降り注ぎます。
みんなの髪や服に……
「桜吹雪やな。遠山の金さんやったら片肌脱いで啖呵を切るところやな。」
お春ちゃんは嬉しそうに、花びらに手をかざしています。
桜吹雪の中をひろ子ちゃんはスキップしながら、花びらを集めていました。


お弁当できたよ

「まあちゃん、ドーナツ揚げてたらこんな時間になってしもうたな……」
お春ちゃんがフーっとため息をつきながら言いました。
時計を見ると11時を回っています。
「大丈夫よ。ちょうどいい時間よ。お春ちゃん、そろそろ那ちゃんところへお料理運びましょう。」
そう言って、まあばあちゃんは、お重を風呂敷に包むと、シルバーカーの中に入れました。
「お春ちゃん、お豊ちゃんと吉川さんに連絡してくれた。」
「したで。先に行って邦子の手伝いするって言うてたわ。」
「そう、じゃあ、私たちも急ぎましょう。」
「うん。そないしょ。」
とは言っているものの、二人の歩みはゆっくりです。
「おばあちゃ~ん」
後ろからひろ子ちゃんの声がしました。
「あら、ひろ子ちゃん!」
嬉しそうに、小さな手を体中で振っています。
ピアノの先生とご両親がひろ子ちゃんと一緒にいました。
ひろ子ちゃんはこちらに走ってきました。


卵焼きを焼こう

「まあちゃん、邦子もOKやて~!」
お春ちゃんが嬉しそうに言いました。
「そう! 良かった!」
お春ちゃんが、邦ちゃんと楽しそうに話しています。
「うん……うん……。分かった。……ほな、そうするわ。」
お春ちゃんが、言います。
「まあちゃん、邦子がおにぎりとちらし寿司作るて言うてるわ。」
「はーい!」
「ほな、うちらは。卵焼きと、おでんはおかしいかな……。まあ、材料探してなんか作っていくわ。……うん……うん……」
お春ちゃんは受話器を置きました。すると、急に思いついたらしく、パンと手をたたくと、
「まあちゃん、ドーナツ作ろか! こんなに急やとケーキも無理やろ。」
「それ、いいわ。そうしましょう!」
「ええ案やろ!」
「グッドアイデアよ!」
まあばちゃんはそう言って、出来上がった卵焼きをお皿に乗せました。
「お、海苔の卵焼きやな。」
「次はウィンナーを入れるわね。」
「三つ葉のも頼むわ。」
とお春ちゃんは、二カッと笑って言いました。


明日のお花見が・・・・・・

「なあ、まあっちゃん、明日の花見、アカンかもしれへんなぁ。」
お春ちゃんがまあばあちゃんに言いました。
「え?」
「朝の天気予報で、雨や言うてなかったか?」
「あらー……」
「ひろ子の先生に気のええこと言うてしもたなぁ。それに、ひろ子、嬉しそうに指切りしてたのになぁ……。雨降ったら、花見はできへんなぁ……」
「お春ちゃん、それなら、今日のお昼に予行演習しましょう。」
「予行演習? それはええわ! そやけど、みんな集まれるやろか? 恭子ちゃんらは仕事やろ?」
「ええ、邦ちゃん達の都合も聞いてみないとね。」
「そやな。かけてみるわ。」
お春ちゃんが、ヨッコラショと立ち上がりました。
「私は、お弁当の用意をするわね。」
まあばあちゃんも嬉しそうに、ヨッコラショと立ちました。


ひろ子ちゃんと車いす

「先生、マコちゃんのケーキは、おいしんだよ! 今度の日曜日に誘いに行くから、きっと来てね!」
ひろ子ちゃんは、先生に目をキラキラせて言いました。
「ありがとう。ひろ子ちゃん。」
「ひろ子ね、先生のお父さんの車いす押してあげる。いつもおばあちゃんの車いすを押してるから上手なんよ。」
そう言ってニッコリ笑いました。
「おばあちゃんて、どのおばあちゃんや? まあちゃん、押してもろたことあるか?」
「あるわよ。ひろ子ちゃんは力持ちだもん。おばあちゃんの車いす押してくれるもんね。」
まあばあちゃんに言われて、ひろ子ちゃんは嬉しそうにうなずきました。
「うん。トモ子お姉ちゃんと一緒に押すんだよ。」
「そうか。トモちゃんとな。」
お春ちゃんがなるほど、というように言いました。
「先生。ひろ子、ちゃーんと押せるから。見ててね。」
「ありがとう。じゃあ、日曜日のお迎え待ってますね。」
「うん。チビもヒメも一緒に行くから待っててね。はい。指切り!」
「はい。指切りね。」
先生とひろ子ちゃんは指切りげんまんをしました。


もちろんやで!

「先生、今度の日曜日に花見しますねん。ここにお父さんとお母さんを呼んで、一緒に来てください。」
お春ちゃんがポンと手をたたいて嬉しそうに言いました。
「でも……」
先生が突然のお誘いにためらっていると、
「ひろ子も、その時ピアノ弾いたらええがな。みんなが聞いてくれはるから頑張れるやろ。」
「うん。おばあちゃんも来てくれるの?」
「もちろんや! 来るに決まってるがな。」
「トモ子お姉ちゃんも来てくれるかな。」
「来るで!」
「マコちゃんも来る?」
「いらん言うても、ひろ子が待ってるから言うて、引っ張てくるから大丈夫や。」
「わー!  マコちゃん、ケーキ作ってくれるかな。」
「作ってくれるに決まってるがな!」
「ほんと?」
「ほんとや!」
お春ちゃんとひろ子ちゃんが楽しそうにお話しします。


ちゃーんと聞いてるで

「先生、まだお若いのにお父さんの看病大変でっしゃろ。」
お春ちゃんが心配して聞きました。
「ええ、でも、私の父ですから母も体が弱いので、そんなに無理はさせられません。だから、私も手助けできたらと思うんです。」
「えらいな~。」
とお春ちゃんは感心して言いました。
「えらいわ~」
お春ちゃんは、また言いました。
「兄弟は? いてはるん?」
「私、一人です。」
「そら、大変やな。」
「そんなことはありません。」
「そやけど、兄弟がおったら相談できるやろ?」
「そうかもしれませんが、私を大切に育ててくれた恩返しと思っていますので……」
「そうか。えらいわ~。今の若いもんに聞かせてやりたいわ。」
お春ちゃんは何度も感心して言いました。
「おばあちゃん! ひろ子のピアノ聞いてる?」
「聞いてるで! こっちの耳では先生の話、こっちの耳ではひろ子のピアノをちゃーんと聞いてるんやで!」
「ほんと? すごい!」
ひろ子ちゃんは感心して言いました。
「そやで! すごいやろ~」
お春ちゃんは、えっへんと自慢そうに言いました。


お春ちゃんの質問

「ピアノのお仕事なんて楽しいでしょうね。かわいいお相手ばかりで……」
まあばあちゃんが言うと、
「はい。まだ、始めたばかりで生徒さんは5人来てくださってるんですが、なかなか生活するとなると大変です。」
まあばあちゃんの言葉にピアノの先生は寂しく笑っていいました。
「前は違うところで教えてはったんですか?」
とお春ちゃんが聞きました。
「高校で教師をしていました。」
「音楽ですか?」
「はい。」
「へぇ……、公立ですか?」
お春ちゃんが矢継ぎ早に聞きます。
「私学で教えてました。」
「へぇ……ほな……」
「お春ちゃん、質問ばっかり失礼よ。」
「そやかど、せっかく学校の先生になれたのに、なんで辞めはったんか気になるやんか。」
「父が、脳梗塞になりまして、食事もお風呂も介助が必要に……」
「……それは、大変ですね。」
脳梗塞といえば、まあばあちゃんもお春ちゃんも他人事ではありません。病気はほんとに怖いものです。
「はい。母の歳では父の介護は無理のようですので……」
「そやけど、生活大変ですやろ……」
お春ちゃんが神妙な顔で言いました。
「はい。でも、父と母の年金がありますので、贅沢さえしなければ、なんとかやっていけそうです。」
そう言って、ピアノの先生は寂しそうに笑いました。


お庭の桜

「桜、きれいですねぇ。」
ピアノの先生が、うっとりした様子で言いました。
「ええ、毎年、きれいに咲いてくれます。お天気によっても雰囲気が変わって毎日楽しめますよ。」
「そうですか。」
「今日は、ちょっと肌寒いですけど、お天気のいい日は庭に出るのもいいですよ。」
「ああ、それで、お庭にテーブルと椅子があるんですね。」
先生がなるほどっというように言いました。
「はい。」
邦ちゃんは嬉しそうに頷きました。
「おばあちゃん、ひろ子のピアノ聞いてくれる?」
ひろ子ちゃんが、まあばあちゃんの耳元に顔を寄せると小さな声で言いました。
「まあ、ひろ子ちゃん弾いてくれるの?」
「うん。」
ひろ子ちゃんは返事をすると、鍵盤だけのピアノを持ってきました。そして、スイッチを入れると、
「先生、『さくらさくら』を弾きます!」
「はい。」
ひろ子ちゃんが言うと、先生は嬉しそうにうなずきました。


ピアノの先生

「邦子~。桜見せてもらいに来たで~。」
お春ちゃんがインターフォンを押しながら叫んでいます。
扉が開いてひろ子ちゃんが出てきました。チビちゃんと姫ちゃんもわれ先に飛び出してきました。
「おばあちゃん、おはようございます。 あ、先生も一緒だ! お母ちゃーん。」
ひろ子ちゃんが家に向かって、大きな声で呼びました。
「あら、ひろ子ちゃんの先生だったんですか。存じませんで、失礼しました。」
まあばあちゃんが謝ると
この先をまっすぐ行った角の家でピアノを教えているんです。もし良かったら遊びに来てくださいね。」
ピアノの先生はニコニコとして言いました。
「こんな年寄りが行ったら迷惑でっしゃろ。」
「いえいえ、お二人のことはひろ子ちゃんがよく聞いているので初めて会った気がしなくて、それでつい声をかけてしまったんです。ビックリされたでしょう?」
邦ちゃんが、慌てた様子で出てきました。
「この子ったら門も開けないですみません。」
と言いながら門扉をあけました。
「開けたら、姫とチビが道に出てしまうがな。なあ、ひろちゃん。」
ひろ子ちゃんはチビを抱っこして、少し迷ってからウンと頷きました。
まあばあちゃんは、チビちゃんと姫ちゃんが道に飛び出さないことを知っていたので。ひろ子ちゃんが返事に困っていることはすぐに分かりました。
ひろ子ちゃんはきっとそのことを言うと、お春ちゃんがバツの悪い思いをすると思ったのでしょう。
気遣いのできるひろ子ちゃんを頼もしく思うと同時に、お春ちゃんとひろ子ちゃんが打ち解けるのは時間がかかりそうに感じました。


桜の花はまだ……?

「なあ、まあちゃん、今年の桜はいつもより遅いんと違うか?」
お春ちゃんが公園の桜を見て言いました。
「ほんとね。暖かい日が来たと思ったら、寒さが戻ったりして、桜も困ってるのかもしれないわね。」
「三寒四温や。毎年のことやから桜も慣れてると思うんやけどなぁ。」
まあばあちゃんとお春ちゃんは、まだ固い桜のつぼみを心配そうに見上げました。
「あ、まあちゃん! ここここ見てみピンクの花が見えてるわ。ほら!」
「あら、ほんと。」
「太陽が当たるところは早いんやなぁ。これなら、2,3日の間に咲くなぁ。」
お春ちゃんは、桜のつぼみを大事そうに眺めました。
「本田さんのところの桜は満開ですよ。」
「え?」
突然話しかけられて、まあばあちゃんとお春ちゃんは驚いてしまいました。
振り向くと、上品で優しそうな女の人が立っていました。
本田さんとは、邦ちゃんの家のことです。邦ちゃんの家の桜の木はサクランボが成ります。
「教えてくださって、ありがとうございます。今から見てきます。」
まあばあちゃんが答えると、
「ぜひ、そうなさってください。見頃ですよ。」
「あの、ご一緒にいかがですか?」
女の人はにっこり笑って頷きました。


恭子ちゃんは特別

「私はおばあちゃんが二人もいて幸せね!」
トモちゃんが嬉しそうに言いました。すると、
「何言うとんのや。私が一番幸せ者やで! まあちゃんとは一緒におれるし、トモちゃんもお父さんも優しいし……」 
お春ちゃんはそこまで言うと、一呼吸入れました。
「ねぇ、お春ちゃん……」
恭子ちゃんが不満そうに声をかけました。
「なんや?」
「なんで、私の名前が出ぇへんの? ちょっと小言を言うとこれやから……」
「違うがな。今から言おうと思てたんやで。恭子ちゃんは特別有り難いと思ってるから、どない言おうか考えてたんやで。」
「ほんとに~?」
「ほんまやで! いつもそうや。恭子ちゃんがシッカリしてるから、私、ここでゆっくりできるやと思う。そやないと、もっと変なんにつかまって大変なことになってると思うわ。そやから、いつも感謝してるんやで。恭子ちゃんからいろんなこと聞くと頭がシャキとしてよう入ってくるねん。」
恭子ちゃんはキョトンとして聞いています。
「でも、言おうと思う前に恭子ちゃんがプリプリ怒り出すから、頭が真っ白になってしもて、み~んな忘れてしまうんや。」
「ほんとに、わたしのことそんな風に思っててくれたんや。」
恭子ちゃんは嬉しそうに言いました。
「そやで。」
「わー! お春ちゃん、大好きよ!」
そう言って、恭子ちゃんはお春ちゃんに抱きつきました。
「わ!」
お春ちゃんはビックリしたようですが、きゅっと恭子ちゃんの腕に手を添えました。
目には涙が浮かんでいました。


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堺の町のまあばあちゃん

Author:堺の町のまあばあちゃん
堺の町に住む、ひとりのおばあちゃんのお話です。
住み慣れた町の人々との交流や孫のトモちゃんや犬のジロとの生活を通して力強く生きていく姿を物語に書きたいと思います。 
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