怖い嫁

「ほな、どこ行っても針もむしろやったやろ? そやけど、自分の家はマシやったんちゃうか?」
お春ちゃんが聞くと、
「そうね。田舎だから、土地と部屋数だけは多いの。それに、嫁に来た時からずっと住んでた家だから一番良かったわ。」
「ほな、そこで居座ったらよかったのに、こんな狭いとこシンドイやろ?」
お春ちゃんの言葉に、吉川さんはグッと黙って、またジワーッと涙が溢れだしました。
「でもね、洗濯の仕方から、お茶碗の置き方までうるさく言われて、それに冷蔵庫や電子レンジも自由に使えなくなったの。」
「ええ!」
まあばあちゃんもお春ちゃんもビックリしました。
「それ、どういうこと?」
まあばあちゃんは、思わず聞きました。
「ペットボトルのお茶とか、私が入れると、いつも捨てられてるの。冷蔵庫を勝手に使わないでくれって言われて……」
吉川さんは、大きくため息をつきました。
「でも、三男の嫁が一番、嫌だったわ。掃除も全然しないし、洗濯はしないし、洗い物はたまって、家は真っ黒。食事はいつも買ってきたお弁当で……」
「働いてても、それは酷いな。」
「ううん。働いてはないんだけど、いつもカラオケとか外食をしてたわ。」
「なんや、自分は外で食べてきて、あんたには、出来合いの弁当かいな。」
「でも、三男の嫁は嫌いというより怖かったわ。無口で、こっちが挨拶しても無視するのに、私の部屋の前を通る時だけ、いつもバンバン大きな足音を立てて歩くの。時々、扉をバンって叩いたり……」
それだけ言うと、吉川さんは黙ってしまいました。


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次男の嫁

女の人は、しばらく吉川さんをジッと見据えていましたが、急に動いたかと思うと、吉川さんが持っていた通帳と印鑑をひったくりました。
「主人のいるときに取りに来てください。私だけの時に言われても困ります。」
それだけ言って、そそくさと帰っていきました。
3人ともビックリしてあんぐり口を開けたままでした。
「なんやあれ、挨拶のひとつもせんと、帰って行ったな。」
お春ちゃんが、あきれ顔で言いました。
「それにしても、あんた、ようあんなんと一緒に暮らしてたなぁ。他の嫁はどないなん?」
お春ちゃんが聞くと、
「今のは、次男の嫁。」
「そうかいな。えらいのと結婚したなぁ。」
「長男の嫁は、ネチネチと嫌味を言う人だったわ。」
「鬱陶しいヤッチャな。」
吉川さんは頷きました。
「ほんで、三男は?」
「三男の嫁は、ジッとした無口な人だったわ。それなのに目つきが鋭くて怖かったわ。」
「あ~。それはアカンわ。その手の女は恐ろしいで。」
お春ちゃんは、力を込めて言いました。
「3人の中では、今来たお嫁さんが一番おしゃべりなの。だから、“厄介者がいる間は部屋がないから子ども達が可哀想”って、いつも言われてたわ。」
「なんやなんや、揃いも揃ってろくな嫁をもらわんかったんやな。」
お春ちゃんは、そう言ってため息をつきました。


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返して……

「はあ? 通帳返せ? 何を言うてるねん! こっちは中身を返してほしいわ。」
お春ちゃんがあきれ返って言いました。
女の人は、門扉を開けて入ってきました。お春ちゃんは怒って、
「こら、なに勝手入ってんねん!」
と怒鳴りましたが、
女の人は無視して奥に駆け上がっていきました。
「すみません。通帳とカード、返してもらえますか?」
吉川さんはビックリして顔をあげました。目は泣きはらして真っ赤になっていました。
「返してくれって、これは私のものですよ。」
「主人のいない時に渡したら、私が怒られるんで、今すぐ返してください。」
「これは、私が年金をもらうための通帳ですよ。あなたたちそれを一言の相談もなく、みんな使ってしまって……」
「私は、知りません。でも、通帳とカードと印鑑。返してください。」
女の人は通帳を返してもらうまで、テコでも動かない様子でした。
「でも、あなた、私に出て言って欲しいんでしょ?」
「それは、そうですけど……」
「私は、出て行けと言われたから出ていくんですよ。これからは、私もお金がいるんです。この通帳は渡せません。」
吉川さんは、はっきりと言いました。


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名乗らない訪問者

「目上に向かって、なんちゅう口の利き方や!」
お春ちゃんが怒りましたが、
「ここ、吉川っていうおばあさんがいるはずやけど……」
お春ちゃんはピンときました。これが妙ちゃんの言っていた嫁だと……
「おたく、どちらさん? 人を呼び付けるんやったら先に名乗らんかいな。」
お春ちゃんは、嫌味っぽく言いましたが、
「私は、そのおばあさんの知り合いのものです。話があるので呼んでください。」
全くこたえた様子はありません。
「知り合い知り合いって言われても、名前を言うてもらえんと取り次げんわ。帰ってくれるか?」
お春ちゃんは、ムッとしてそう言いました。どういうわけで、この女の人は名乗らないのでしょう?
「すみませ~ん。すみませ~ん。通帳とカード返してください。」
女の人は、家の中に向かって、さらに声を張り上げて言いました。


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訪ねてきたのは……

「すみませ~ん。すみませ~ん。」
「誰か来たんと違うか? あんた、この辺に知り合いおったんか?」
お春ちゃんが吉川さんに聞くと、吉川さんは眉を顰めました。
「すみませ~ん。出てきてもらえますか~?」
また、声が聞こえてきました。その声を聞いて吉川さんは下を向きました。
「ほな、私が見てくるわ。その方がええやろ?」
吉川さんは、泣きそうな目でお春ちゃんを見ました。
「どっこいしょっと」
お春ちゃんが、膝をさすりながらヨッと立ち上がりました。
「すみませ~ん。すみませ~ん。」
「はいはい! 今行きますがな。ちょっと待ってくださいや。」
お春ちゃんが出ていくと、女の人が立っていました。
「なんでしゃっろ? 私が代わりに聞きますけど?」
女の人は、お春ちゃんを見て驚いた様子でしたが、
「あんた、誰? 知り合いはおらんはずやけど……」
と言いました。


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忘れようにも……

「そやけど、なんやな。歳いくと悲しいこと増えるなぁ。」
お春ちゃんが、悟ったような声で言いました。
「どうして?」
まあばあちゃんが聞くと、
「考えてみ? 妙ちゃんの事だけでもそうやろ? 3人のアホ息子を並べてゲンコツしたろか思っても、この歳やったら、ゲンコツ振り上げたらこっちがふらつくもんなぁ。泣き寝入りばっかりや。空しいこっちゃ。」
「そうね。叱りつけるのも体力がいるのよ。」
「そうやで。なぁ……」
とお春ちゃんが、吉川さんを見ると、魂の抜け殻みたいになっていました。
「まあ、元気だし言うてもすぐには無理やろうけどな。うちらと散歩でもして気晴らししよ。な?」
吉川さんは、無言でうなずきました。
「でも、妙ちゃんが家を出たことで、妙ちゃんが、どれだけ大切な存在なのかを息子さん達も気づくわ。ありがたみっていうのは、失って気づくものよ。」
吉川さんは、まあばあちゃんを見て小さく頷きました。
「あんた、そやけど、息子らが下から回ってきても、何をされたかは絶対に忘れたらアカンで。」
お春ちゃんが、そういうと、
「忘れようにも忘れられないわよ。」
それだけ言うと、下を向いてまた泣き出しました。


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思いっきり泣いたら……

「えらい、遅いなぁ。」
お春ちゃんが、吉川さんが向かった方向を見て言いました。
「ええ、もう一時間になるものね。」
まあばあちゃんも心配そうに言いました。
「様子見に行こうか?」
「そうね。」
「あ、来た来た! 帰ってきたで! ……なんかヨレてるな……」
吉川さんは、憔悴している様子でした。心なしか目もくぼんでいます。
吉川さんは、まあばあちゃんとお春ちゃんを泣きそうな目で見ましたが、無言のまま、家に入っていきました。
まあばあちゃんもお春ちゃんも声をかけられずにいると、
「どうぞ、入って……。」
と言って、家の中に入っていきました。
「どないやった?」
お春ちゃんが聞きました。
「……お春ちゃんの言うとおりだったわ。年金の通帳も2千円しか入ってないの。これじゃ、来月の年金も無くなるところだったわ。」
「ほらな。やっぱりやろ。あんたは、金づるくらいにしか思われてないねん。そやけど、酷いやっちゃなぁ。」
「情けない。情けないわ。主人の親の介護で、教師を辞めるまで……40年間働きながら一所懸命育ててきたつもりなのに。年寄りになって、こんな思いさせられるなんて想像もしなかった。」
吉川さんは、畳に突っ伏して大泣きしました。
「もうスッパリしたやろ。しっかり心で縁を切っときや。」
吉川さんは、ウンウンと頷きました。
「泣くだけ泣いた方がいいわ。これからは、私たちで協力していきましょう。」
まあばあちゃんが吉川さんの背中を優しく擦りました。
吉川さんは顔をあげると、まあばあちゃんにしがみついて、また泣き続けました。


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年金手帳

「あんた、落ち着くまでにすることせなアカンで。」
お春ちゃんが、気合の入った声で言いました。
「え?」
吉川さんは、小首をかしげました。
「今から、息子のところに行って年金の入ってる通帳とカードを返してもらいや。そやないと、来月の家賃も払われへんで。」
「あ、それね。昨日、息子のところに行ったんだけど、ちょっと待ってくれって言われて……」
「それで待ってんかいな。そんなことしてたら、来月の年金まで使い込まれるで!」
「あ……」
「そやろ? あんた、5千万円も取られた上に年金まで握られとったら、あんた、しっかりせんと! のたれ死んでしまうで!」
吉川さんは飛び上がってしまいまいた。
「まさか……」
「なにが、まさかや。今からでも通帳とカードだけでも取り返しといで! 年金手帳なんかは再発行してもろたらええがな。」
「うん。うん。でも、なんて言おう……」
「そんなんもん、今いるねん言うたらええがな。アンタのもんなんやで! ほれ、早う行っといで、ここで待ってるから。」
お春ちゃんが急かせます。
「うん。行ってくるわ。」
吉川さんは、その足で息子さんの家に向かいました。


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一人前になる

吉川さんがお祝い袋の中をそっと見ると、驚いた様子で言いました。
「5万円!? こんなにいただけないわ。」
すると、お春ちゃんが、
「なに言うとんのや。3千円しか財布に入ってないのに……。それと、さっき大家さんとこ行って、今月の家賃払っといたで。」
「え、年金もらう日まで待ってくださるって大家さんが……」
「アカンアカン、そんなこっちゃ。家、貸してもろたら、きちんと家賃を払わんと。これからは一人で世間の風に当たるんやで。かまへん言うてたからて甘えてたらアカン。そんなん一人前とは言われへんで。」
お春ちゃんの言葉に、吉川さんは何度も頷きました。
「ありがとう、お春ちゃん。親切に甘えすぎてたみたい。これからはちゃんと考えて行動するわね。」
「そやで。まあちゃんや私もおるんやから。大丈夫や。頑張ろう!」
お春ちゃんはポンと自分の胸を叩きました。


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優しい心遣い

吉川さんが、あんまりしんみりするので、お春ちゃんが慌てて、
「あ、あんた、これお祝い持ってきてん。私とまあちゃんとお豊ちゃんの……」
そう言って、お祝い袋を吉川さんに渡しました。
「ありがとう。」
吉川さんは丁寧にお祝い袋を受け取ると、
「あ、そうだわ。お豊ちゃんが、ケーキを持ってきてくれたの。引っ越し祝いにって、一緒に食べよう。」
「わ、そらええな。あっこの息子は一流の料理人やから。おいしいで!」
お春ちゃんが嬉しそうに言いました。
(お豊ちゃん、吉川さんにケーキを届けてくれたのね。)
まあばあちゃんは、お豊ちゃんの心遣いにホッとしました。
実は、お豊ちゃんは、昨夜、まあばあちゃんの家にケーキを届けてくれたのですが、9時半と遅かったうえに、トモちゃんとジロたちが大喜びしたもので、吉川さんに届けることが出来なかったのです。
それに、御祝と一緒に気の利いたお菓子もと思っていたのですが、用意できず残念に思っていました。
甘いお菓子というのは、心をホッと軽くしてくれます。
(ありがとう。お豊ちゃん。)
まあばあちゃんは、心の中でお礼を言いました。


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いつも一緒

「まあちゃん、お春ちゃん、ありがとう。久しぶりによく眠れたわ。」
吉川さんが引っ越した先に二人が訪ねていくと、大喜びで迎えてくれました。
「あんたが、早う引っ越したい言うから、まともに掃除も出来へんかったわ。」
とお春ちゃん。
「ううん。ぼちぼちするから大丈夫。それより昨日はありがとう。晩御飯まで届けてくれて。」
「なに言うてんのや。ほんまは最初の日だけでも泊まりたかってんけど、まあちゃんの体が心配でな。ごめんやで。」
「まあちゃん、調子どう?」
吉川さんが心配そうに聞くと、
「もう、大丈夫よ。お春ちゃんは心配のしすぎなの。」
そう言ってまあばあちゃんは手をブンブン振りました。
「昨日は、一緒にお風呂も入ったしな。」
「え? 一緒に入ってるの?」
「せや。背中を流し合いっこしてるんや。うちら、背中に手が回らんからな。」
お春ちゃんの言葉に、吉川さんはしんみりした顔をして、
「そう、ふたりいつも一緒なのね。」
と羨ましそうに言いました。


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ガッカリしたこと

「それにね、ガッカリしたことは他にもあるのよ。本当にガッカリしたわ。ここまで情けないとは思わなかった。」
「どないしたん?」
お春ちゃんが、身を乗り出して聞きました。
「恥ずかしい話なんだけど……」
「なんやな、気になるやんか……」
吉川さんは、言いかけたものの迷っているようでしたが、
「私、前に5千万の貯金があるって言ってたでしょ。」
「うん。」
「みーんな、息子らに使われて、もうほとんどないの。ゼロって言ってもいいぐらい……。」「え!」
まあばあちゃんもお春ちゃんも飛び上がりました。
「何に使ったのか……なんの相談もなかったわ。何もかもとられて、貧乏なおばあさんになっちゃった。」
自嘲気味に笑いました。お春ちゃんは、慌てて慰めました
「そやけど、年金が18万円もあるんやから、やっていけるで。今日からあの家に住んだらエエやんか。そんな落ち込みな。次の年金が入るまで私が面倒みるがな。な? 」
お春ちゃんは、ポンと自分の胸を叩いて言いました。


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思うように……

「ほんで、あんた、どないするん? 引っ越すのやめるん?」
「ううん。もう、あっちこっちの家を渡り歩くのはイヤ。お嫁さんや孫に気を使って小さくなってるのもイヤ。お嫁さんの言いなりになってる情けない息子を見るのもイヤ。」
それを聞いたお春ちゃんは、
「そんなら、早うあの家に引っ越したらエエやん。まあちゃんと一緒に掃除でもしとこかって言うてたんや。」
「ほんとう? ありがとう。」
と言って、吉川さんは涙ぐみました。
「なんやなんや。よう泣くなぁ。」
「子どもなんて生むもんじゃないわね。3人が3人ともあんなに心の冷たい子に育ってしまうなんて……。私の育て方が悪かったのかしら……。一生懸命育てたつもりなのに……。どこで間違えたのかしら……」
「家庭を持つと、自分だけの考えではどうにもならないこともあるわよ。吉川さんはもう十分に息子さん達に尽くしたんだから、これからは思うようにしたらいいのよ。」
まあばあちゃんがそう言うと、吉川さんはウンウンと頷きながら、ハンカチで目を押えました。


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すっきりしない

それから、数日たって吉川さんがやってきました。
暗い顔をしていました。
「あんた、心配したやんか!」
お春ちゃんが開口一番に言いました。
「ごめんね。相談に乗ってもらったまま、放っておいて……、田舎に帰っての。」
「あれから?」
「ええ、それがね。思いたったが吉日と思って、帰ってすぐに今お世話になってる次男に、家を出て一人暮らしするって話したのよ。」
「ほんで!」
お春ちゃんが先を急かせます。
「そしたら、次男が飛び上がるほど驚いて、手のひらを返したように出て行かんといてくれって言うのよ。だから、あなたが良くてもお嫁さんが困ってるからって言ったの。そしたら急に夫婦仲が悪くなってしまって……。もうどうしたらいいのか……」
「なんや、どないなってるんやな。」
「本当、出ていくと言ったら清々されると思ってたのに。」
「う~ん。急に下出にでられると気持ち悪いな……」
お春ちゃんは、スッキリしない表情で言いました。


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あれから来ない

あれから一週間経ちましたが、吉川さんは現れませんでした。
「なあ、まあちゃん、四国の人どないしたんやろか?」
お春ちゃんが心配そうに聞きました。
まあばあちゃんも心配でした。
「あんなえらい鼻息で帰って行ったのに、ぜんぜん音沙汰ないっておかしいと思わんか? 病気にでもなったんやろか……」
そう言って、お春ちゃんが冷たい麦茶を口に含ませました。
今日は、とっても暑く33度もあります。照りつけるような日差しです。
「そやけど、ひとは見かけによらんもんやな。優雅な生活してると思てたのにな。絵も上手やし俳句なんかパパッと書くし、私なんか『朝顔やつるべとられてもらい水』くらいしか知らんのにな。」
「ねえ、お春ちゃん、大家さんはなんて言ってたの?」
「いつでも来てや言うてくれはったわ。アンタの知り合いやったら安心やて……」
「そう、良かった。吉川さんが引っ越すってはっきり分かったら掃除くらいしておくんだけど……」
まあばあちゃんは、心配そうに言いました。


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お家賃は……

「あんた、いくら持ってるんや?」
お春ちゃんが、吉川さんに聞きました。
「えーっとね……」
吉川さんは巾着の中の小さな財布を確かめました。
「3,200円やわ。」
「違うがな。わたしが借りてた家は、月に2万円やってん。同じくらいで貸してくれるとは思うけど、毎月払ってかなアカンもんやろ? それで聞いたんや。」
「月に18万円、年金があるのと、貯金が5千万くらいあるわ。」
「なんや。あんた金持ちやんか! それやったら、あんなボロ屋借りんでも、ええとこなんぼでもあるがな。お医者さんがいつもいてる施設とか、ご飯も作ってくれてお風呂も入れてくれる天国みたいなところも行けるで。なんで、息子らにたらい回しにされなあかんねん。お金持ってる親は、みんな偉そうにしてるで。」
お春ちゃんにそう言われて、吉川さんはまた泣き出しました。


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一番、喜ぶ人

「ねぇ。お春ちゃんがお世話になった大家さんはどう? お話聞いてくれへんかな?」
お豊ちゃんが、思いついたように言いました。
「そやな。うちらが二人で住んでたところでもええやん。古いけど安かったから助かったわ。」
「ほんとう? もし、いいならそこに住みたいわ。今からでもお願いしたいくらいよ。」
吉川さんは決心したように言いました。
「でも、わたしの年金とか貯金は息子たちが管理してるから、今から家に帰って返してもらいに行きます。」
吉川さんは、悔しそうな顔をしました。
「私らついていこうか?」
お春ちゃんが、心配して言いました。
「ううん。私一人で行ってくるわ。今の時間だと、お嫁さんしかいないけど、私がいなくなったら一番喜ぶと思うの。だから、一番に知らせようと思って。」
「なんや。一回ぎゃふんと言わしてから出ていくんかと思ったわ。」
お春ちゃんが腹立たしいのかそう言いました。
「だから、嫌味たっぷりにこの家を出ていきますから~って言うのよ。」
「そうか。なんか物足りんわ。」
お春ちゃんはポツンと言いました。


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見栄を張って

「……ねぇ、たらい回しってなんのこと?」
お豊ちゃんが、驚いた様子で言いました。
「たらい回していうのはな。息子の家を転々とさせられてて辛いちゅう話や。」
「え? 妙ちゃん……」
お豊ちゃんは目を丸くしました。
「ゴメンね。お豊ちゃん、愛媛の息子が心配だとか、神戸の息子の様子を見てくるって言ってたのは嘘なの。本当は厄介者だから、あっちこっちに行かされていたのよ。」
「ホンマにひどい話やで。親はドカッと自分の家におって、子どもらがご機嫌伺いに来るんやったら分かるけど。親をたらい回しにするとは何事や!」
お春ちゃんがカッカッして言いました。
「そうやったの。ごめんね。わたし、ちっとも気ぃ付かんで……」
お豊ちゃんは自分に重ねているのか涙ぐんで言いました。
「ううん。わたしも見栄をはってたもん。」
「まだ、続きがあるねんで!」
お春ちゃんが憤慨したように言いました。
「え?」
「孫が大きいなったから部屋が足らん言うて、今度はこっち来るな言うてるらしいわ。」
「ええ!」
お豊ちゃんはビックリして、そのまま黙ってしまいした。
「どない思う? 私は家を出たほうがええと思うけどな。」
それを聞いたお豊ちゃんは、かみしめるように、
「私もそう思うわ。我慢なんかしてたって、なーぁんもエエことなんかあらへんもん。我慢するのはアホやと思う。」
「でも、家を借りると言っても、この歳でしょう……」
吉川さんは不安げに言いました。


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堺の町のまあばあちゃん

Author:堺の町のまあばあちゃん
堺の町に住む、ひとりのおばあちゃんのお話です。
住み慣れた町の人々との交流や孫のトモちゃんや犬のジロとの生活を通して力強く生きていく姿を物語に書きたいと思います。 
宜しくお願いします。
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