老兵は……

「あの家は返してほしいけど、あの人らにいつまでも構ってたら、お春おばちゃん、壊れてしまうわ。だから、もう、あの家に行ったらアカンよ。」
恭子ちゃんの言葉にお春ちゃんは、
「うん。恭子ちゃんがそう言うならそうする。ほんまにほんまに有り難う……。ウワーン」
お春ちゃんは、大きな声で泣き出しました。
「ほんまにほんまに、ここにいてものエエの?」
「ええよ。でも、二度とあの家に行ったらアカンよ。」
恭子ちゃんが強く言うと、お春ちゃんは、
「うんうん。行かへん。行かへん。おおきにおおきに!」
「お春おばちゃんは、もう十分頑張った。老兵は去るのみやよ。」
「分かった。」
お春ちゃんは、涙でクシャクシャになった顔で笑いました。


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お春ちゃんの涙

「あ、ご主人、恭子ちゃん、お邪魔してます。」
仕事から帰ってきた恭子ちゃんとお父さんを見て、お春ちゃんは、丁寧に頭を下げました。
「こんなところですが、ゆっくりして下さい。」
お父さんも丁寧に挨拶を返しました。
恭子ちゃんは、いつになく無表情で、感情が読み取れません。
お春ちゃんが、とても緊張しているのが見ていてよく分かります。
「あの、恭子ちゃん、ごめんやで。居候が増えて……」
お春ちゃんは、居心地悪そうに言いました。
「居候じゃないよ。お春おばちゃんは、邦ちゃんのお母さんやもん。」
その言葉を聞いてお春ちゃんは、下を向いてしまいました。
「お春おばちゃんは、邦ちゃんのために、あの家で、取り戻そうとしてたんやもん。あんな畜生相手に戦ったんやもん。戦士やわ。尊敬する。」
「ほんま? ホンマにそう思うか?」
尊敬の言葉を聞いて、はじかれたようにお春ちゃんは顔を上げましたが、すぐにションボリして。
「でも、アカンかった……。敗残兵や……」
「そんな事ない。お春おばちゃんは、一人で頑張ってエライわ。」
お春ちゃんは、恭子ちゃんの言葉にジーンとした顔をして、涙を浮かべていました。


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邦ちゃんのために……

「ほんまに、おおきにおおきに。」
お春ちゃんは、まあばあちゃんが、一緒に住もうと言ってくれたのが、とても嬉しかったようで、涙を浮かべて喜びました。
邦ちゃんがこれ以上苦しまないようにと決意したまあばあちゃんですが、その一方で今から、お春ちゃんと一緒に生活を送るというのに、どういう暮らしになるのか想像出来ませんでした。
お豊ちゃんの時は、こんな風になるだろうなと、はっきりしたイメージが湧いたのですが、それが浮かんできません。

それに、心配事は他にもありました。
あの女の母親が救急車で運ばれた夜、まあばあちゃんは、家族のみんなにお春ちゃんを家に呼びたいと相談しました。

お父さんは、黙っていました。
恭子ちゃんは、苦虫をつぶしたような顔をしました。
トモちゃんは、戸惑っていました。

お豊ちゃんと違って、お春ちゃんは、家族のみんなに迷惑をかけることは明白でした。
でも、邦ちゃんの心を思うと、お春ちゃんをあの家に置いておくことは出来ませんでした。

まあばあちゃんは、邦ちゃんのために家族のみんなに手をついてお願いしました。


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まあばあちゃん、ほんとうにいいの?

お春ちゃんは、ワンワン泣きました。
まあばあちゃんは、ずっとお春ちゃんの手を握って、寄り添っていました。
――――そうして、少しずつ落ち着いてきました。
「―――なあ、まあちゃん、今頃、死んだあのばあさんを家に入れてるんやろか……」
「……そうかもしれないわね……、でも、あの人たちが出て行っても、お春ちゃん、あの家に住まないでしょ?」
「あ、そやな。よう住まんわ。売ってしまうわ。気色悪いもん。」
お春ちゃんは身震いして言いました。
「……だったら、もう戻らないで、ここで一緒に暮らしましょ。」
「え? 今なんて言うたん?」
お春ちゃんは、ビックリしたような顔で言いました。
「だから、ここで一緒に暮らしましょう。」
「ええのん。わあ! 嬉しいわぁ! ……あーでも……」
「どうしたの?」
「恭子ちゃんがなぁ……」
「じゃあ、帰るの?」
「ううん。お世話になるわ。よろしゅう頼みます。」
お春ちゃんは、ニカッと笑って言いました。


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家が心配……

「まあちゃん、私、帰るわ。」
「え? どうして?」
「私の家に死人を入れてへんか、心配や。気持ち悪いもん。ウチもお迎え近いのに、験くそ悪いわ。あんなモンにあの世へ連れて行かれたらかなわんもん。」
お春ちゃんは、シルバーカーを握りしめて言いました。
「お春ちゃん、私たちみたいな年寄りが止めに行っても、どうにもならないわよ。横で喚いてても、知らん顔して運び入れるわよ。」
「そやけど、黙ってられへんやんか!」
「言葉で言って分かるなら、最初からしないわよ。女の人を家に連れてきたりしないし。その女の母親を入れたりしない。邦ちゃんを追い出したりしないわよ。口先だけ、お春ちゃんを立てるふりして、お財布ぐらいにしか思ってないような人を、どうにかできる訳ないわ。」
「そやけど、そやけど……、ほんなら、どないしたらええんや……」


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付き合ってる人が悪い?

「お、お母さん、いったいどうしたんですか? 最近オカシイですよ。」
昭雄さんは驚いた様子でしたが、卑屈な笑いを浮かべて、お春ちゃんに言いました。
「これが地や!」
「お付き合いしてる人が悪いんですよ。帰りましょう。ね?」
「あんたに、とやかく言われとうない。去ね!」
「…………」
昭雄さんは、返す言葉もないのか、ジッとしています。
「なんや。あの女が怖ぁて、よう去なんのか!」
昭雄さんは情けない顔をして、スゴスゴと帰って行きました。
「お春ちゃん、頑張ったわね。わたし、ビックリしたわ。」
まあばあちゃんがお春ちゃんに言うと、
「ほんまや。なんでやろ? そや! あの人と出会ってから、昭雄がみすぼらしィ見えて、しゃあないねん。見てるのも嫌やわ。お母さんて呼ばれるとイライラするねん。」
嫌そうに顔をクシャっとすると、頭を振りました。


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お春ちゃん、真っ赤

「なんで?」
お春ちゃんが、眉を寄せて聞くと、
「は?」
昭雄さんが、面喰ったように言いました。
「わたしは、まだまだ帰らんよって。」
「……え……、いや、段取りが……」
「あのばあさんが死んだから言うて、なんで、私が帰らんとアカンねん。知ったこっちゃないわ。」
「そやけど、あのままにしとくのも難やし。頼みます。」
「あのままって何や。死人を入れたんちゃうやろな!」
「え、いえ、まだです。」
「まだ? 絶対に入れたらアカンで!」
「それは、分かります。そやから相談に来てるんです。病院に置いててもお金がかかりますから、それで……」
「あのなぁ、あの女の母親やねんから、あの女が考えたらええやろ! 私に言うてくるんはお門違いや!」
「そんな殺生な……」
「殺生? あんたらのしてる事の方がよっぽど殺生やろが! あんたら邦子に何したんや! 邦子と離婚してからどんだけ経ってると思てるねん。いつになったら出て行くんや!」
お春ちゃんは血管が切れるのではないかと思うくらい、真っ赤になって言いました。


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段取りって?

「何しに来たんですか? 帰って下さい。」
まあばあちゃんが珍しく剣のある声で受け答えしています。相手は、
「何しにって、母を迎えに来たんです。返して下さい。」
そうです。昭雄さんです。昭雄さんが、何か焦った様子で訪ねてきたのです。
「あなたのお母さんじゃないでしょ。離婚したんですから。杉野さんは、足の調子が悪いので、出て来れません。帰って下さい。」
「ほな、ここで待たしてもらいます。」
「待っててもらっても困ります。」
「分からん。ばあさんやな! あんたに用ないねん。」
「まあちゃん、どないしたん?」
まあばあちゃんが、あんまり戻ってこないので、お春ちゃんが様子見に来ました。
「あ、お母さん。帰って来てもらえませんか? これからの段取りを決めたいので。」
「これからの段取り? なんのこっちゃ?」
「……葬式のです。あいつの母親が亡くなりまして……。」
昭雄さんが、へりくだった口調で言いました。
「あのばあさん、死んだんか……」
お春ちゃんは、感心無さそうに言いました。
「はぁ……、あのぉ……、それで……」
「なんやな。」
「帰りましょう……。お母さん……」
昭雄さんが、ご機嫌をとるように笑って言いました。


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心配な邦ちゃん

「実は、今、うちに来てるのよ。」
「え?」
「ごめんさいね。お春ちゃん、連絡してるとばかり……」
「そうですか……。無事なんですね。なにか恐ろしい事があったんじゃないかと気が気じゃなかったんです。」
邦ちゃんは、ホッとしたようにほろりと涙を流しました。
「今、お昼終って、眠ってるわ。」
「すみません。ご迷惑ばかりかけて……」
邦ちゃんは、申し訳なさそうに頭を下げました。
「母は、また、あの家に帰るんでしょうか……。」
邦ちゃんは暗い顔で言いました。
「私から、あの家に帰らないように言ってみるわ。」
「でも、あの母が聞くでしょうか……」
「何か考えてみるわ。でも、もしも、聞き入れてくれなくても、おなかがすいたらウチに来るから心配ないわ。」
とまあばあちゃんが、冗談ぽく言うと、邦ちゃんも少しだけ笑いました。
「お春ちゃんには会わずに帰ったほうがいいわ。また、憎まれ口を言うでしょうから……」
「はい。そうします。母のこと、いつも有り難うございます。」
邦ちゃんは、寂しそうに笑って頷くと、頭を下げて、帰り道の方に体を向けました。
「あ、……邦ちゃん。」
「はい。」
「お春ちゃんは、口は悪いけど、邦ちゃんのためにあの家を取り返そうと思ってるみたいよ。」
「……はい……」
邦ちゃんは、寂しげな顔をして小さな声で返事しました。
確かにこれまでの経緯を考えれば、とても素直に喜べないでしょうし、未だ昭雄さんはあの家に居座っているのです。とても、安心できないでしょう。
優しくて思いやりのある娘なのに、悲しいことばかりの邦ちゃん。
今、せっかく掴んだ幸せが逃げないように、まあばあちゃんは、何でも協力したいと思いました。


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お春ちゃん、電話しなかったの?

ピンポーン
「あら誰かしら。」
まあばあちゃんが表に出ると、邦ちゃんでした。
邦ちゃんは、泣きそうな顔をしています。
「邦ちゃん?」
「弁護士さんに電話したら、母は家にいるはずって、今日、様子を見に行ってくださるって……」
「お春ちゃんから、電話来なかった?」
「え?」
「……そう……」
まあばあちゃんは、残念そうな顔をしました。
お昼に来た時、お春ちゃんに、
「ちゃんと、邦ちゃんに電話した?」
と聞いたとき、
「そんなん、大丈夫や。心配せんとって。」
と言っていたのに、電話していなかったのです。
あんなに心配している、邦ちゃんに声を聞かせてあげて欲しかったのに……
(わたしも、ボンヤリしていたわ。私からも邦ちゃんに連絡を入れるべきだったわ。)
まあばあちゃんは邦ちゃんに申し訳ない気持ちになりました。


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仲良し

「ふぅ、なんか眠なってきたわ。」
お春ちゃんは大きな欠伸をしました。
「お春ちゃん、これ枕にしたら?」
まあばあちゃんが、座布団を渡すと、
「おおきに」
と言って、座布団を二つ折りにして枕にすると、寝てしまいました。
「お春ちゃん、肩出してたら風邪ひくよ。」
そう言って、自分のコートをかけてあげました。
「皆さん、仲がいいんですね。幸せそう……」
吉川さんが寂しそうに言いました。
吉川さんは、朝食のお礼にとお菓子を持って来たところを、お春ちゃんとバッタリ会って、二度目のお茶をしていました。
「何言ってるの。吉川さん、私たちもう友達じゃないの。これから、ここにずっといるんでしょ? もっと仲良くしましょう。」
と、お豊ちゃんが言うと、吉川さんは嬉しそうに笑いました。


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お昼も……

「美味しい美味しい。その卵焼き、もう一つもろてええ?」
お春ちゃんは、そう言うと、卵焼きをパクッと食べました。
あの後、一度家に帰って、少し遅い時間にお昼をお食べに来ました。さすがのお春ちゃんも厚かましいと思ったのか、
「ゴメンやで。ゴメンや」でと繰り返していました。

「お春ちゃん、次、サラダにしたら? 栄養が偏るわよ。」
まあばあちゃんは、刻みキャベツにトマトとトウモロコシを蒸したものに自家製ドレッシングをかけてお春ちゃんにすすめました。
「ほな、そうするわ。」
お春ちゃんは、サラダを頬張ると、
「ぬくいサラダも美味しいな。ドレッシングがええんかな? どこのん?」
「これは、家で作ってるのよ。」
「へぇ! すごいな、そんなシャレたもん作ってるん?」
「そんな、大層なものじゃないのよ。細かく刻んだ玉ねぎにお酢と一味唐辛子、それにハチミツとお醤油を入れて、後はカシャカシャ混ぜるだけ。」
「まあちゃん、分量教えてよ。」
「分量なんて、量ってないわ。酸っぱいのが食べたいときはお酢を大目に、甘いのが食べたい時は、ハチミツを大目にしてるだけ。」
「なんか、美味しそうやね。マコちゃんにも作ってあげよう。」
「あんたも。食べ。」
お春ちゃんがすすめると、
「私、まだ、おなか一杯やねん。」
お豊ちゃんは、おなかを押さえて言いました。
「なにをそんなにようさん食べてきたん。」
「昨日のお鍋の残りをオジヤにして、卵焼きを付けたんよ。はぁ、苦しい……」
「鍋かぁ……、ええなぁ……。みんなで食べたら楽しいやろなぁ……」
お春ちゃんは羨ましそうに言いました。


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恭子ちゃんは鬼門?

「ま、こんなところで立ち話もなんだから、入りましょう。」
まあばあちゃんが言うと、
「ホンマや。あんたのおかげで体が冷えてしもたわ。」
お豊ちゃんに、お春ちゃんが不機嫌そうに言いました。
「今日は、お春ちゃん、早起きやね? いつもはお昼に合わせて起きてるって言うてたやん。」
「そやねん。昨日は、まあちゃんの電気毛布のおかげでぐっすり寝れてな。パッと目が覚めてん。ほんだら、おなか空いておなか空いて。ホンマはもっと早うに来たかってんけど……」
「どないしたん?」
「あんまり早うに行ったら、恭子ちゃんがおるやろ? わたし、あの娘、鬼門やねん。せやから、あの娘が仕事の行くの待っててん。」
「鬼門? え? なんで? あの子ええ子やで?」
お豊ちゃんが不思議そうに言いました。
「あの娘がしゃべると、私の胸にグサグサと刺さるねん。」
「また、大げさな……」
「ほんまやで。あんた、感じへんの?」
「え? なにを? ……せやけど、あんたの引っ越しかて、気ぃように引き受けてくれて。休みの日に……。ええ子やんか。」
「そうやどけど……」
「まあちゃんが頼んだからって、あんなん普通、疲れてるとか言うて断るで。」
「…………」
お春ちゃんはムスッとしています。お豊ちゃんは、一生懸命に恭子ちゃんの良いところを言います。
「私が行き場のない時も、嫌な顔せんと置いてくれた。いくら、まあちゃんがええよ言うてくれても、嫌な顔されたら。おりにくいでぇ。そやろ? 私の面倒なんか、ホンマやったら見る必要ないんやもん。あんなええ娘おらんで。」
「ああ、もう! どない言うたら分かるんやな。とにかくあの子はキツイねん。」
「分からんわぁ……」
お豊ちゃんは、首をひねって言いました。


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お豊ちゃんも心配で

「お春ちゃん、お春ちゃーん。」
お豊ちゃんが、息を切らせて、走ってました。
「あ、お豊ちゃんやんか。朝早よにどうしたん?」
「あんた、大丈夫やったんかいな。あービックリした。」
「何よ。」
「さっき散歩してたら、お春ちゃんが救急車に運ばれたって聞いて、まあちゃんやったら、何か知ってるかもしれんと思って走ってきてん。」
「なんで、私が、救急車に乗らなアカンの。縁起でもない。」
「そやけど、お春ちゃんの家の前に救急車が停まったって聞いたんよ。」
お豊ちゃんが、不思議そうな顔をして言いました。
「知らんで、救急車みたいなもん。」
お春ちゃんは不快そうに言いました。
「あの女の人の母親が運ばれたのよ。昭雄さんが付いて行ったそうよ。」
と、まあばあちゃんがいいました。
「え? あのばあさん。倒れたんかいな。ぜんぜん気が付かんかったわ。惜しいことしたわ。へぇ……、そうかいな。」
「それはそれで、心配やね。また、お春ちゃんにお金お金って言うんちゃう?」
「そんなん知らんわ。居候が一人減って、助かるわ。」
お春ちゃんは、突き放すように言いました。


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知らなかったの? お春ちゃん

まあばあちゃんが表に出ると、お春ちゃんが、
「まあちゃん、電気毛布おおきに。久しぶりによう寝れたわぁ。」
「あ、気付いてくれた。良かったわ。」
まあばあちゃんは、お春ちゃんの元気そうな顔を見て、ホッとしました。
「よう寝てて、今までトイレにも起きんとグッスリ寝ててん。目ェ覚めてたら、お腹空いてな。家になんもあらへんし。朝早うに悪い思てんけど、まあちゃんとこに行こう思って……」
「そうだったの。良かった良かった。暖かいコーヒーでパンでも食べましょう。」
「おおきに。お砂糖、大目に頼むわ。」
「お早うございます。」
吉川さんです。
「あ、お早うございます。」
「昨日は近くで、救急車が停まったみたいで、驚きましたね。」
と、吉川さんが言うと、
「え! 救急車? どこの家?」
お春ちゃんが、興味津々に聞いてきました。
「……そこまでは、ただ、近くに停まったようだとしか……」
「なんやぁ、知らんのかいな。」
お春ちゃんは、ガッカリしたように言いました。
「これから、私たち、お茶にするんですが、吉川さん、一緒にいかがですか?」
「いいんですか? お邪魔じゃ……」
「そんなん遠慮せんでもええがな。あんたも、おいでおいで。」
カカカッっとお春ちゃんが笑いました。


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朝早くから……

結局、邦ちゃんからの連絡を待つことにしたまあばあちゃんは、皆が出かけた後、洗い物をしていました。
ピンポーン、ピンポーン
「誰かしら、こんな朝早くに……」
まだ、8時前です。
まあばあちゃんは、恐る恐るインターフォンの取りました。
「はい。」
――まあちゃん、おはようさん。おなか空いてしゃーないねん。なんか食べさしてぇな。――
「お春ちゃん! 大丈夫だったの?」
――? 何の事や。私はいつも通りやで。――
「今、開けに行くわ。ちょっと待っててね。」
と言って、まあばあちゃんは、受話器を置きました。


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まあばあちゃんは心配

次の日の朝、
「おばあちゃん! 卵焼きが焦げてるよ!」
トモちゃんが慌てて火を止めました。
「ああ、びっくりした、ありがとうトモちゃん。」
「お春おばあちゃんが心配なんやね。」
まあばあちゃんは、小さく頷きました。
「わたしは、いつもどおり、お昼食べに来る気がする。」
「なになに。何の話してるん?」
恭子ちゃんが聞いてきました。
「お春おばあちゃんは、元気と思うって言うてたの。」
「あ、わたしもそう思うわ。トモちゃんと一緒!」
「どうして?」
「だって、お春おばちゃんは、悪運強そうやもん。」
「まあ……」
(恭子ちゃんたら、自信たっぷりに言うから何かと思えば……)
「それに、弁護士さんが会いに行ってんでしょ? ほんなら、滅多な事起きへんよ。」
「でも、はっきり聞いたわけじゃないのよ。お春ちゃんの話しぶりから、そうだと思うだけで……」
「邦ちゃんが、弁護士さんと連絡取ればハッキリするわよ。邦ちゃんに、電話してみれば? でも、邦ちゃんやったら、待ってれば、連絡してくれると思うけど。」
「それは、そうだけど……」
(邦ちゃんに弁護士さんに聞いてみたらって言うのも差し出がましいように思うし、邦ちゃんもすごく心配したから、もう聞いてくれたかしら……)
まあばあちゃんは、電話の前で、モンモンと悩んでいました。


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二つの人影

「母もなんですよ。私が先に見に来たんですけど、お春おばちゃんが見当たらん言うたら、飛んで来たんです。」
恭子ちゃんが説明しました。
「じゃあ……」
邦ちゃんが、泣きそうな顔になりました。
「私たちも分からないのよ。」
「インターフォンしてみる? 今やったらあの女おらんのちゃう?」
恭子ちゃんが邦ちゃんに言うと、
「アカンアカン。」
おっちゃんが慌てた様子で止めました。
「どうして?」
「あの女の母親について行ったんは、昭雄さんやで。」
「え? は? え?」
恭子ちゃんは、オッチャンの言ってる意味が呑み込めず、ポカンとしています。
「そやから、あの女は家におる。」
「……大したことないんや。」
「わし、詳しいないけど、意識ないみたいやった。引っ越しの時に見たきりやけど、あの時より倍ぐらい肥えてたから、あの母親、血管詰まったんちゃうかな。」
「脳梗塞かな?」
「かもしれん。あの家に、おばあさん二人おったん? とか言うてる人もおったわ。同じ班でも、母親が居ついてるの知らん人もおるみたいや。」
「家から出ないんやね。運動不足で血がよどんでたんかも……」
「あの女な、母親がグッタリしてるのに、取り乱すでもなく、呆然としてる言うのとも違うわ。なんちゅうか……ジトーっと救急さんの働いてるのを見てたわ。」
「あの女、いつもジーッとしてるもんね。」
恭子ちゃんが、眉をひそめて言いました。
「それにしても、なかなか救急車走って行かなかったね。」
「受け入れ先が、なかなか見つからんらしいわ。保険に入ってない人はそういうのあるらしいわ。」
「え?  入ってへんの?」
「や、あの人らの事は知らんで。集まってた人でそんなん言うてる人おったわ。それより、ワシが一番ビックリしたんは、あの女、まだ、救急車止まってるのに、家に入って鍵かけてしもてん。昭雄さんもビックリした顔してたわ。」
「へー!」
まあばあちゃんと恭子ちゃんとトモちゃんは、ビックリして声を上げました。


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人影もなく……

救急車が行ってしまったからか、人影もなく、シーンとしています。
もちろん、お春ちゃんの姿も見当たりません。
「お母ちゃん、帰ろう。風邪ひくわ。明日、来てみてもいいやん。」
「それは、止めておくわ。救急車に運ばれたのは、お春ちゃんでないことは間違いないんだもの。もしかしたら、明日、いつも通り来るかもしれないし……」
「こんな遅くに、誰やろ……」
向こうから、黒い人影が二つやって来ます。
「あら、お母ちゃん、手を振ってるわ。」
「あ、オッチャンだ。オッチャーン!」
トモちゃんが、大きな声で呼ぶと手を振りました。
「これ、夜遅いのに!」
「あ……、」
トモちゃん、エヘヘっと笑って静かにしました。
「こんばんは。」
邦ちゃんが頭を下げました。
オッチャンも会釈しました。
「邦ちゃん、大丈夫よ。倒れたのはお春ちゃんじゃないから。」
「知ってます。あの女の人の母親ですね。」
「せやけど、邦ちゃんのお母さんの姿がまったく見えんので、どうしたんかと思ってな。」
オッチャンが弱った顔をしました。


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まあばあちゃんも……

「でも、お春おばちゃんやったら、救急車なんか来たら、飛んで出てくると思うんやけどなぁ……」
恭子ちゃんが、お春ちゃんが出てくる様子を思い浮かべてるのか、目をつぶって首を振りました。
「私、私も行くわ。救急車はまだいるの?」
まあばあちゃんは、心配になって言いました。
「うん。まだサイレン鳴ってないし。いると思うわ。」
まあばあちゃんが、慌てて行こうとすると、お父さんが、
「寒いから、上着、着て下さい。」
「あ、ホンマやわ。」
恭子ちゃんが、慌てて、まあばあちゃんのコートを持ってきました。
「私も行く!」
トモちゃんも上着を羽織って慌てて靴を履きました。
そして、まあばあちゃんの玄関を下りる手助けをしました。
まあばあちゃんが、やっと靴を履いて表に出ると、
ピーポー、ピーポー
と、再びサイレンが鳴り響き、そして、遠くなっていきました。
「おばあちゃん、どうする?」
「行くだけ、行ってみるわ。」
「うん。」
「お母ちゃん、車イスに乗り、その方が早いわ。それから、ほら、貼るカイロも貼って!」
恭子ちゃんが車イスを押して走ってきました。
「ありがとう、恭子ちゃん。」
「お父さんは?」
トモちゃんが聞くと、恭子ちゃんは、
「家、空になるから、おってて言うてん。」
3人は、お春ちゃんの家の前に着きました。


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救急車の音

夜も更けて、シンシンと冷えてきました。
「お春ちゃん、電気毛布気付いてくれたかしら……」
まあばあちゃんは、そんな事を考えながら、針仕事を終えて眠ろうとしたところ、
ピーポーピーポー
と、まあばあちゃんの大嫌いな、救急車の音が聞こえてきました。冬になると、次は自分が乗るのではと心底恐ろしくなります。
(乗った人が助かりますように……)
とまあばあちゃんが祈っていると、近くで音が止まりました。
「え? どこのお宅?」
パタパタパタっと恭子ちゃんが二階から降りてきました。続いてトモちゃんも降りてきました。お父さんもいます。
「お母ちゃん、近所やわ。お春おばちゃんの家のあたりみたい。」
「ええ!」
「ちょっと見てくる。」
恭子ちゃんは、ダウンジャケットを羽織ると、足早に出て行きました。
「トモちゃん、お春ちゃんの家なの?」
「たぶん、二階からだとハッキリとは……。でも、ピカピカ光ってるのが、そのあたりかなって……」
トモちゃんと話していると、恭子ちゃんが帰ってきました。
「お母ちゃん、やっぱり、お春おばちゃんの家やわ。あの女の母親が倒れたらしいわ。」
「お春ちゃんじゃないのね。」
「それはそうなんやけど……」
「どうしたの?」
「お春おばちゃんの姿が見当たらんかってん。」
「どうして? どうしていないの?」
「それは、わからへんけど……、見に来てた人も、そんなんチラホラ言うてたから聞いてんけど、みんな、あの女が来てからは、気味悪くて付き合ってないから、ぜんぜん分からんって……」
まあばあちゃんは、心配そうに息を吐きました。


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冬の歌

まあばあちゃんが、おまんじゅうをタッパーに詰めて渡すと、
「おおきに。」
と言って、お春ちゃんは受け取りました。
♫~ゆ~きやこんこん、あられや~こんこん~ ♫
と、遠くから歌が聞こえてきました。
「あ、石油屋の歌やな。」
お春ちゃんが、羨ましそうに言いました。
「お春ちゃん、ストーブ出した?」
まあばあちゃんが、聞くと、
「そんなもん、昭雄がみな二階に上げてしもてあらへん。こたつは壊れてるし……」
「そんな……これから寒なるのにどうするの?」
お豊ちゃんが、ビックリして聞くと、
「あんた、嬉しそうやな。私が困ってて……」
お豊ちゃんは、え?っと言う顔をしましたが、黙っていました。
これから冬になるというのに、何の備えもできてないお春ちゃん、きっと心は不安でいっぱいなのでしょう。
「ほな、帰るわ。」
「あ、お春ちゃん、待って。おまんじゅう持ちやすいように、紙袋を持って来るわ。」
そう言って、まあばあちゃんは、奥に行って紙袋を取り出すと、その中に電気毛布と貼るカイロを入れました。
皆の元に戻ると、もうお春ちゃんは、シルバーカーの所まで行っていました。
まあばあちゃんは、紙袋をシルバーカーに入れると、
「重いから、持ち上げる時、気を付けてね。」
「え? うん。」
お春ちゃんは、なんのこっちゃと言う顔をしましたが、返事しました。 


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お春ちゃんが掃除?

「あ、わたし、帰るわ。」
お春ちゃんは、そう言うなり、ヨッコラショっとテーブルに手をついて、立ち上がりました。
「え? もう帰るの? 早いやんか、どうしたん?」
不思議そうにお豊ちゃんが聞くと、
「今日、あの人が家に来るねん。掃除しとかんと。」
「お春ちゃんが、掃除?」
お豊ちゃんが、ビックリして聞き返しました。
「なによ。けったいな顔して。私かて掃除くらいするわ。」
お豊ちゃんが、あんまりビックリしたので、お春ちゃんは不機嫌そうに言いました。
「そう言う意味やなくて、あの女の人がすればええのにと思ったんよ。」
「あんなん、掃除なんかするかいな。」
「そやけど、今はお春ちゃんがいるんやから、好き勝手出来へんやろ? 気ィ使って掃除くらいしてるんかと思ったんよ。」
「ほんまはよう知らんねん。私は、一階に住んでるし、昭雄とあの女は、二階を占領してる。二階の事は全く分からん。」
お春ちゃんは、難しそうな顔をして言いました。
「一階は、お春ちゃんが一人で使ってるの? エライやんか半分取り返したんや。」
お豊ちゃんが、そう言うと、お春ちゃんは、満足そうに頷きました。
「ホンマは、そんなんではアカンけどな。……あ、ほな帰るわ。すまんけど、まあちゃん、饅頭かなんか分けてくれへんか。あの人に、お茶と出すねん。」
「あ、ちょっと待ってね。」
まあばあちゃんもヨッコラショッと立ち上がりました。


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Author:堺の町のまあばあちゃん
堺の町に住む、ひとりのおばあちゃんのお話です。
住み慣れた町の人々との交流や孫のトモちゃんや犬のジロとの生活を通して力強く生きていく姿を物語に書きたいと思います。 
宜しくお願いします。
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