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お豊ちゃんにも用があるねん

お春ちゃんは、まあばあちゃんの態度から、邦ちゃんはいないと思ったらしく、
「お豊ちゃんは? おる? お豊ちゃんにも用があるねんけど……」
「杉野さん、わたしとお豊ちゃんは、杉野さんが、そちらの人と暮らすと決めた日に、お付き合いは一切しないとお互いに決めたはずです。お忘れですか?」
「まあちゃん、そんな固い事言わんと……、それに、“杉野さん”やなんて、なんで、そんな呼び方するのん? どないしたん? 長い付き合いやんか? いろいろ話も聞いてほしいねん。」
そう言って、お春ちゃんは、まあばあちゃんに手を伸ばしてきました。それに合わせるように昭雄さんが、車いすを前に動かしました。
まあばあちゃんは、両手を固く握ると、その分、後ろに下がりました。
「わたしも、お豊ちゃんも、杉野さんとお話することはありません。お帰り下さい。」
まあばあちゃんは、静かに、でも、毅然とした態度で言いました。


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お春ちゃんと……もう一人

邦ちゃんは、突然のお春ちゃんの来訪に、完全に怯えていました。オッチャンは、そんな邦ちゃんの肩をそっと抱きました。
まあばあちゃんは、心の中で気合いを入れると、ゆっくりと立ち上がりました。
「おばあちゃん」
トモちゃんが思わず声をかけると、
「大丈夫よ。会わなければ、帰らないでしょう。」

まあばあちゃんは、表の扉を開けると、自分の目を疑いました。
「……お春ちゃん。」
「あ、ビックリした? せやねん、ちょっとしか歩かれへんねん。家の中は何とかいけんねんけど、外となるとなかなか、まあちゃんは、まだ、自分の足で散歩してるんやなぁ。あんた、エライわ。」
お春ちゃんは、ガハハと笑いました。お春ちゃんは、車イスでした。
でも、まあばあちゃんが驚いたのは、その事ではありません。
「散歩してるの? お見かけしないけど……」
「あはは、バレた? 実は外に出るの、久しぶりやねん。」
「そう、じゃ、どうぞ、お散歩、楽しんできて下さい。」
まあばあちゃんは、そう言うと、家の中に入ろうとしました。
「ちょ、ちょっと、待ってぇな。邦子、ここに来てへんか? さっき邦子の家に寄ったんやけど、おらへんのや。ほんまに、親が訪ねてきてんのに……」
「邦ちゃんを探してるの?」
まあばあちゃんは、本当はそうだろうと察しはついていましたが、そう答えました。
「そやねん。家におらんのやったら、ここやろ?」
「その前に、伺いたいのですが、車いすを押してる人は誰ですか?」
「ああ、昭雄さんやで、知ってるやんか……」
お春ちゃんは、悪びれもせずに言いました。


お春ちゃんが……

「あんだ、だれや?」
聞き覚えのある声で、不可解そうに尋ねてきました。
インターフォンを押したのは、お春ちゃんだというのに、ずいぶんな言い方です。
トモちゃんの声が分からないのでしょうか? 
トモちゃんは、思わず、まあばあちゃんのほうを見ました。まあばあちゃんも嫌な予感がするのか、心配そうにトモちゃんを見ていました。
「まあちゃん、おるか?」
「どなたですか?」
トモちゃんは、名乗らないお春ちゃんに、丁寧に聞きました。すると、急に大きな声を出して、
「なんや! あんた誰や?」
その大きな声は、そのまま家の中まで聞こえてきました。その声で、みんなにも誰が来たのかハッキリと分かりました。邦ちゃんは、体をビクッとさせると石のように固まってしまいました。
「孫のトモ子です。どなたですか?」
「ああ、トモちゃんかいな。お春やがな。声で分からんか? まあちゃん、出してぇな!」
さらに大きな声を出して、お春ちゃんが言いました。邦ちゃんは、顔も唇も真っ青になって震えていました。



オッチャンも来たよ!

「おっちゃん、どうしたの?」
「おっ、トモちゃん、いやな、皆で食べるんやったら、スイカ、足らんのとちゃうかと思って持って来たんや。」
オッチャンは、真っ黒に日焼けした顔で嬉しそうに笑いながら言いました。
「お父ちゃん、石鹸のにおいがするよ。」
「そやで、畑に行ったから、来る前に風呂に入ってきたんや。」
「そうか~。お父ちゃん、ひろ子、スイカ持つ!」
「おお、ありがとさん、ほな、ひとつ頼むわ。気ィ付けるんやで。」
と言って、小さい方のスイカをひろ子ちゃんに持たせました。
「大丈夫、ひろ子は、力持ちだよ!」
ひろ子ちゃんは嬉しそうに、家の中に入っていきました。
「オッチャン、私も持つよ。」
「ありがとさん。」
「美味しそうなスイカやね。オッチャンは、何でも上手やね。」
オッチャンは、嬉しそうに笑いました。
オッチャンとトモちゃんが中に入ると、もう、オッチャンの分のスイカが、邦ちゃんの隣の席にありました。さっきまで、邦ちゃんの隣にいたお豊ちゃんは、まあばあちゃんの隣にいます。
オッチャンが、スイカをパクッとかじりました。
「うまいな~。夏はスイカに限るな~。」
と言って、笑いました。
「ひろ子もいっぱい食べたよ。みて、このおなか、スイカみたいでしょ!」
「ほんまや。ひろ子もスイカみたいにうまそうやで。」
と言いました。しばらくしてからひろ子ちゃんは、ウツラウツラしはじめました。
「邦ちゃん、横にしてあげら……」
まあばあちゃんが邦ちゃんに言うと、
「すみません……」
と言って、ひろ子ちゃんをそっと横に倒しました。
「お腹いっぱいになって眠くなったのね。」
まあばあちゃんが、微笑みながら言いました。
――――ピンポーン、ピンポーン―――
「だれかな?」
トモちゃんの問いかけに、
「さあ……」
とまあばあちゃんは、そう答えましたが、なにか嫌なものが胸の中に入ってきました。
今日は、約束した人はみんな揃っています。恭子ちゃんもお父さんもまだ帰って来る時間ではありません。
「はい。」
トモちゃんも、緊張した面持ちでインターフォンを取りました。
「…………」
トモちゃんは、黙ったまま、助けを求めるような目で、まあばあちゃんを見ました。


スイカをガブッと

「おいしいね!」
ひろ子ちゃんが、美味しそうに笑いながら言いました。
「ひろ子ちゃん、そんなに大きいスイカ、一人で食べられるの? おばあちゃん、切ってあげようか?」
「ううん! いいの! ひろ子、お家で、ガブッとこんな風に食べてるの!」
「そう。」
「お父ちゃんが、これが一番おいしい食べ方やでって!」
「へえ! じゃあ、わたしもガブリっといこうかな!」
と、トモちゃんが言いました。半月に切ったスイカは大人気でした。
―――ピンポーン、ピンポーン―――
と音が鳴るのと同時に、
「おーい、ひろ子おるか?」
と、オッチャンの声がしました。
「あ、お父ちゃんだ!」
「オッチャンだ!」
トモちゃんは、パパッとひろ子ちゃんと自分の手をお手拭でキレイにすると、二人で表に走っていきました。


みんな帰って行きました。

「それに……」
お豊ちゃんは言いよどみました。
「どうしたの?」
「昔に比べて、今は疲れやすいってよく言うの。だから、ちゃんとお断りしてほしい……」
「大丈夫よ。樺山さんは、けじめのシッカリした人よ。心配する事ないわよ。お豊ちゃんとハッピーちゃんを置いて、どこかに行くなんて事ないわよ。」
「うん。そうやね。そうやんね。」
お豊ちゃんは、頷きながら言いました。不安そうな表情はもう消えていました。
ハッピーちゃんは、お豊ちゃんが落ち着いたのを感じたのか、フンフンと手を持ち上げてきました。
「あ、おなか空いたのね。お家に帰ろうか?」
「あら、今日は、ハッピーちゃん、急いでるのね。」
まあばあちゃんが言うと、お豊ちゃんが
「今日、昨日の夕飯の豆腐ハンバーグなの。ハッピー、大好きなのよ。ちゃんとハッピー用に薄味にしてるんよ。」
「あら~。それで急いでるのね。」
ハッピーちゃんは、嬉しそうに前脚でステップを踏みました。
「じゃあ、お先にね。」
と言って、お豊ちゃんとハッピーちゃんが帰って行きました。
「お豊おばちゃん、幸せそうですね。あんなに満たされたような顔は初めてみました。」
「ええ、そうね。きっと、今までで一番、幸せなはずよ。」
邦ちゃんは、深く頷きました。すると、ひろ子ちゃんが邦ちゃんに抱きついて言いました。
「お母さん、帰ろう」
「どうして?」
「チビちゃんとヒメちゃんもお腹すいたって。」
ハッピーちゃんが帰ったので、チビちゃんも姫ちゃんもなんだかソワソワし始めました。
「あら、ほんと! まあおばちゃん、じゃあ、また後で……」
邦ちゃんとひろ子ちゃんが手を繋いで帰って行きます。その足元をチビちゃんとヒメちゃんが、まとわりつくように歩いていました。


樺山さんが東京へ

「邦ちゃん、ひろ子ちゃん、いいところに来たわ!」
まあばあちゃんが、二人に言うと、
「なあに? なあに?」
ひろ子ちゃんが嬉しそうに言いました。
「今日のお昼のおやつは、みんなでスイカを頂きましょう!」
「わあい! ひろ子、スイカ大好き!」
とスキップしました。
「おばあちゃん、今日、トモ子お姉ちゃんいる?」
「いるわよ。今日はクラブ、お休みですって。」
「わあい! トモ子お姉ちゃんに、勉強教えてもらうんだ~!」
そう言うと、ひろ子ちゃんは、クルクルと回って走り出しました。
「ひろ子は、トモちゃんの事が大好きみたいで……」
邦ちゃんが、ホッコリ笑って言いました。
「じゃあ、私はこれで失礼します。母さん、後はよろしく。」
樺山さんが時計を見ながら言いました。
「あ、はい。行ってらっしゃい。気をつけてね。マコちゃん。」
お豊ちゃんが、ニッコリ笑って言いました。
「早いのね。お友達と出かけるの?」
まあばあちゃんが聞くと、
「マコちゃん、今日は、東京へ行くの。」
「まあ! 東京へ?」
まあばあちゃんは、ビックリして言いました。
「お仕事の話があるんですって……」
「そう、でも、ゆっくりするって……」
「ええ、お断りするつもりらしいんやけど、一度来てほしいって言われたそうで……」
お豊ちゃんは、少し不安そうに言いました。
今は、東京は近いと言いますが、まあばあちゃん達にとっては、遠い遠いところです。
お豊ちゃんは、やっと生活に慣れたところなのに、樺山さんから東京の人からお呼びがかかって、心配なのでしょう。


スイカが冷えてるよ

「あら!」
向こうから、樺山さんとお豊ちゃんとハッピーちゃんが笑いながらやって来ます。
まあばあちゃんは、手を振りました。
お豊ちゃんもまあばあちゃんに気がついて、元気よく手を振りました。
「おはようございます。マコちゃん、……おはよう、お豊ちゃん。」
「おはよう、まあちゃん、今朝は気持ちがいいわね。」
「ほんとう、朝晩は、過ごしやすくなって……」
「昨日ね、マコちゃんとハッピーがね……」
お豊ちゃんが、話し始めました。
お豊ちゃんは、あの日から、樺山さんの事を“マコちゃん”と呼ぶ姿をよく見るようになりました。
みんなも、“マコちゃん”と呼ぶようになりました。トモちゃんやひろ子ちゃんが呼ぶせいか、自然な感じでそうなっていきました。それで、お豊ちゃんも呼びやすくなったのかもしれません。
「でも、お昼は、また、34度まで上がるんですって。ウチに冷たく冷やしたスイカがあるから、一緒に食べましょう。」
と、まあばあちゃんが言うと、
「あら、ほんと? わたしも同じこと考えてて、うちにも冷たいスイカがあるの。じゃ、持って行くわね。」
お豊ちゃんが嬉しそうに言いました。
「まあ、たくさんになるわね。みんなも呼びましょう!」
「あら、あっちから来るの。邦ちゃんとひろ子ちゃんよ。」
そう言うと、お豊ちゃんは、そちらに向かって手を振りました。


秋の気配

お盆を過ぎると、朝晩に涼しい風が吹きはじめます。
真夏の散歩は、朝の4時から起きて、まだ、薄暗いうちから散歩していました。ジロとミミちゃんの首に保冷剤をつけて、散歩に出かけます。そして、日が昇る前に家に帰ってきました。それでも、ジロもミミちゃんもハアハアと暑そうな息をしていました。
最近は夜が明けるのも遅くなって、4時では、真っ暗なので、5時ごろから出かけます。でも、ジロもミミちゃんも暑そうでありません。冷たい風がどこからか、スーッと頬をなでて行きます。
「お散歩仲間の会話も、朝晩は涼しくなりましたね。」
とか、
「ホッとしますね。」
という風に変わってきました。
不思議なことに、よく会うお散歩仲間というのは、散歩の時間が変わっても、同じ顔ぶれなのです。
きっと、みんな涼しい時間を上手に選んで、お散歩しているのですね。
「もう、秋はすぐそこですね。」
と、まあばあちゃんはお返事して、空を見上げました。
秋を告げる、いわし雲が気持ちよさそうに浮かんでいました。


黙とうを捧げる

今日は、8月15日、終戦の日です。
「今日のお昼の12時は、必ず、お家にいるようにしてね。」
まあばあちゃんが、朝食の時に言いました。
家族の中で、まあばあちゃんだけが戦争体験者です。
お父さんやお母さんも、もちろん、トモちゃんも、戦後を知らない世代です。

まあばあちゃんは
食べ物がなくて、いつもひもじかった事。
空を真っ黒にするほどの、たくさんのB29が頭の上を通り過ぎて言った事。
大阪の大空襲で、
雨あられと、焼夷弾が降ってきたこと。
空が真っ赤になったこと。
焼野原には、死体がゴロゴロと転がっていたこと。
たくさんの人が家を失った事。

「守る力が弱いということは恐ろしい事よ。空も海も土地も、みんな好き放題にされてしまうの。私たちの年頃の人は、そんな状況の中から立ち上がってきたのよ。そして、今の平和は、戦火で焼かれた人たちや、この国を守るために犠牲となった人たちの上にあるの。その事を絶対に忘れてはならないの。」
そう、まあばあちゃんは強く言いました。

8月15日 正午
―――みんなで黙とうを捧げました。―――




やっと呼んだよ!

まあばあちゃんは、そんな、邦ちゃんとひろ子ちゃんの様子を微笑ましく見ていました。
邦ちゃんとひろ子ちゃんは本当の親子のようです。
ひろ子ちゃんは、さっき怒られたばかりなのに、もうまとわりついています。
邦ちゃんもそんなひろ子ちゃんを微笑みながら見ています。
みんな優しい眼差しで二人を見ていました。
「……あの、ではそろそろお暇します。主人ももうじき帰って来ると思うので……」
と、邦ちゃんがしばらくしてから言いました。
もう、外は暗くなりかけていました。
「あら、ほんと、もう薄暗がりね。」
お豊ちゃんが、驚いた様子で言いました。
「それじゃ、マコちゃん、私たちもお暇しましょう。」
と、お豊ちゃんが、とっても自然に言いました。
(あら!)
まあばあちゃんは、思わず声を上げそうになりましたが、お豊ちゃんがまた、意識して言えなくなってはいけないので、気付かないフリをしました。
「美味しいお菓子を有り難うね。」
まあばあちゃんが言うと、
「また、作って来るわね。最近、張り切ってるの!」
お豊ちゃんは、嬉しそうに笑いました。



約束したの

「あ!」
「忘れちゃったの?」
「違うの……。あのね。」
ひろ子ちゃんは、何か言いたそうですが、口ごもっていました。
「あの……」
と樺山さんが邦ちゃんに声を掛けると、邦ちゃんは、
「ごちそうになったのに、お礼も言わずにすみませんでした。」
「いえ、違うんですよ。私が悪いんです。私が、お母さんに内緒でね。と言ったものですから。今回は許してやってください。」
樺山さんがそう言うと、ひろ子ちゃんは急に元気になって言いました
「そうなの。ひろ子は約束守ったんだよ。」
「ひろちゃん!」
「ひろ子ちゃん、ごめんね。これは、おじさんが悪いんだよ。これからは、お母さんに隠し事をしてはいけないよ。」
「はい!」
と、ひろ子ちゃんは元気よく返事しました。
「すみません、樺山さん、少しきつく言いすぎたかもしれませんね。」
「あ、邦子おばちゃん、また、樺山さんって言った~。」
トモちゃんが笑いながら言いました。



ひろ子ちゃんも考えた

「ひろ子とお姉ちゃんが、一生懸命考えたの。マコちゃんはね。自分の名前なのに、マコちゃんって呼ばれたことがないんだって! だからね、初めは嫌だったんだよ!」
「あら。」
お豊ちゃんが、やっと声を出しました。
「ひろ子とお姉ちゃんが、マコちゃん、マコちゃんて大きな声で呼ぶから、シーッって言われたの。でも、今は平気だって!」
ひろ子ちゃんは、嬉しそうに言いました。
「それからね。スーパーの喫茶店できれいなお姉さんにお父さんですかってひろ子に聞いたのに、マコちゃんが、おじいちゃんですって言っちゃったの。そしたら、トモ子お姉ちゃんが、おなかを抱えて笑うの。どうして笑うのって聞いても、笑って答えてくれないの。ねぇ、お姉ちゃん、どうして笑ってたの?」
ひろ子ちゃんがトモちゃんに聞くと、トモちゃんはまた笑い出しました。
「ねぇ、ひろちゃん、何か忘れてない?」
邦ちゃんが、少しだけ怖い顔をして言いました。
「え?」
でも、ひろ子ちゃんは怖くないのか、キョトンとしています。
「お母さんに何か言う事ない?」
さらに、邦ちゃんが言うと、
「え? え? なあに? 宿題?」
ひろ子ちゃんは、一生懸命に考え始めました。
「違うでしょ。樺山さんにごちそうになったこと、お母さんに、言わなかったでしょ。」

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文房具売り場で決まったの

「お豊ちゃん、大丈夫?」
まあばあちゃんが、心配そうに背中を擦りました。
みんなも心配そうに見ています。
お豊ちゃんが落ち着いたのを見計らって、樺山さんが、邦ちゃんに返事しました。
「ええ、もちろんです。」
と、樺山さんは邦ちゃんに笑顔で答えました。そして、更に言いました。
「なんですか、名前で呼ばれると、こそばゆいような恥ずかしいような気持ちになるんですが、なんだか、心の中が和んで穏やかな気持ちになりますね。」
「そうですか。」
「ええ、トモちゃん達が私を“マコちゃん”と呼ぶようになったのは、ひろ子ちゃんが、樺山というのを上手く言えなくて……」
「それで、どうするってことになって、いろいろ考えて、マコちゃんになったの。」
トモちゃんが、樺山さんの言葉を続けました。すると、ひろ子ちゃんが、
「文房具売り場で決まったの!」
と、嬉しそうに言いました。

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お豊ちゃんがむせた

「邦ちゃん、麦茶でも飲んで!」
「わあ、ありがとうございます。」
さっきから、お豊ちゃんは、一言も話していません。
ニコニコして、もぐもぐお菓子を食べています。
“お豊ちゃん”と呼んでみても、ニコニコして、何にも言いません。
でも、体はカチンコチンです。とても緊張しているようです。
まあばあちゃんは、年配の男の人を“マコちゃん”なんて親しげな呼ぶのは、家族だけが呼ぶものだと思っていましたが、トモちゃん達を見ていると、そんな固く考えなくても、それが自然に思えてきました。まあばあちゃんは思い切って聞いてみました。
「樺山さん、わたしもマコちゃんとお呼びしていいですか?」
「ええ、ええ、どうぞどうぞ。」
それを聞いて、お豊ちゃんはビックしりたのか、お菓子をのどに詰まらせてしまいました。
――ゴホゴホゴホ――
「大丈夫?」
みんなが心配そうにすると、お豊ちゃんは、大丈夫だと手ぶりで言いました。
「樺山さん、わたしも、マコちゃんとお呼びしていいですか?」
邦ちゃんも言いました。
お豊ちゃんは、飲んでいたお茶が、気管に入ってしまって、またむせてしまいました。

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邦ちゃん、お茶にしよう

「ありがとう。トモちゃん。」
邦ちゃんが、気持ちよさそうに冷たいタオルを顔にあてながら言いました。
「お母さーん!」
と、ひろ子ちゃんが、邦ちゃんに抱きつきました。
「こらこら、お母さん、あんまりきれいじゃないから。離れて離れて。」
そう言って、ひろ子ちゃんを離そうとしましたが、ペタッと引っ付いて離れません。
「あのね。マコちゃんが、明日、ケーキを作ってあげるって!」
ひろ子ちゃんが、嬉しそうに言いました。
「こら、ひろ子! ……あ、すみません。また、この子ったら……」
後から、まあばあちゃんと一緒にきた樺山さんに謝りました。
(また?)
まあばあちゃんは、またもや驚きました。ひろ子ちゃんは、樺山さんの事をいつも“マコちゃん”と呼んでいるのでしょうか?
「いやー。いいんですよ。なんだか若返ってみたいで。嬉しいです。」
「でも……」
邦ちゃんが、戸惑って口ごもりました。話が止まってしまったので、まあばあちゃんが、
「邦ちゃん、そんなところにいないで、お上がりなさいよ。」
と、邦ちゃんに言いました。
「でも……」
「うちは、犬小屋みたいなもんだから、邦ちゃんが、ちょっと畑仕事したぐらい、どってことないわ。ほら、上がって上がって!」
まあばあちゃんは、邦ちゃんを急かせました。

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邦ちゃんが野菜を持って来てくれた

「ひろ子ちゃん、ここにおいで。」
樺山さんに呼ばれると、ひろ子ちゃんは、当然のように、ちょこんと樺山さんの膝の上に乗りました。
ハッピーちゃんが、二人に寄り添うようにペタッと座りました。
とっても微笑ましい様子にまあばあちゃんは、ホッコリしました。
――――ピンポーン、ピンポーン――――
「あ、邦子おばちゃんじゃない?」
また、トモちゃんが、走って行きました。
「あら、トモちゃん、これ、野菜、どうぞ!」
と、邦ちゃんがトモちゃんに野菜を渡しました。
「じゃあ、また、伺いますね。」
「え? 帰っちゃうの?」
「今日は、畑に行く格好だし。土だらけなのよ。今日はここで、帰るわね。」
「そんな~。ひろ子ちゃんも来てるのに、お茶飲みましょ。おばあちゃんも、邦子おばちゃんが来ると思ってるよ。」
と言うと、トモちゃんは邦ちゃんの手をひいて、家に入ってきました。
「トモちゃん、トモちゃん、ちょっと、待って。土を払っておかないと……」
邦ちゃんが、慌てて服をパパッとはたきました。
そして、玄関に入ると、邦ちゃんは、
「ここで、お茶を頂いてもいい?」
「え、」
「ね、トモちゃん、持って来て」
邦ちゃんは、部屋に上がらないつもりのようでした。すると、ハッピーちゃんがタタッと走ってきました。
「あら、ハッピーちゃん! 樺山さんが来られてるの?」
と邦ちゃんが、ハッピーちゃんを見て言いました。
「そうよ。はい。先に、タオルをどうぞ……」
トモちゃんは、邦ちゃんに冷たいタオルを渡しました。

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ひろ子ちゃんも?

「お家に入ろう。美味しいお菓子があるよ。」
「わーい!」
トモちゃんが、ひろ子ちゃんの手をひいて、家の中に入ってきました。
「おばあちゃん、ひろ子ちゃんが来たよ~。」
「あらあら、いらっしゃい。まあまあ、こんなに汗かいて。」
と言って、まあばあちゃんがひろ子ちゃんの汗を拭きました。
「一人で来たの?」
「うん! お母さんが後で、キュウリとナスビとトマトが出来たから、おばあちゃん所に持って行くって言ってたの。それで、ひろ子、言いに来たの。」
「まあ、ありがとう!」
まあばあちゃんが。ひろ子ちゃんの頭を撫でながら言いました。
「ひろ子ちゃん、これ、オデコにあてたら気持ちいいわよ。」
と言って、お豊ちゃんがひろこちゃんのおでこにアイスノンをあてました。
「冷たーい。気持ちいい~。ありがとう、マコちゃんのお母さんのお豊おばあちゃん!」
ひろ子ちゃんが嬉しそうにお礼を言いました。
「ひろ子ちゃん、マコちゃんのお母さんだけでいいの。お豊おばあちゃんは言わなくていいんよ。」
「はい!」
「ひろ子ちゃん、もう一回言ってみて!」
「マコちゃんのお母さんありがとう。」
「ひろ子ちゃんは、挨拶が出来てお利口だね。」
「あ、マコちゃん、こんにちは。」
ひろ子ちゃんまで、マコちゃんと呼びました。
「あら……」
まあばあちゃんは、ポカンとしてしまいました。

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ビックリした?

ピンポーン、ピンポーン
「あ、誰か来た。行って来る!」
お豊ちゃんが、インタフォンの受話器を取るよりも早く、トモちゃんが表に出て行きました。
(ああ、私って、何させてもダメね。樺山さんの名前を呼ぶのも先を越されるし……)お豊ちゃんは落ち込んでしまいました。
(あれ?)
トモちゃんが出て行くと、垣根から、ピンクのワンピースを来たひろ子ちゃんがしゃがんでいます。麦わら帽子がひょこひょこ動いているので、誰が出てくるのかキョロキョロしているのでしょう。
トモちゃんは、ドアを開けました。
「あれ、誰もいない。誰がインターフォン押したのかな? イタズラだったのかな?」
と、独り言を言いました。すると、
「ギャオー!! 怪獣だぞ!!」
「わーー!!  ビックリしたー!! ほんとに怪獣が出たのかと思ったー」
「ビックリした? こわかった? 怪獣みたいだった?」
と言って、ひろ子ちゃんは、トモちゃんに抱きついてきました。
「うん! すごーくビックリした!」
トモちゃんは優しくひろ子ちゃんの頭を撫でました。

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焦るお豊ちゃん

「でも、周りの人に驚かれませんか?」
まあばあちゃんは、自分が驚いたので、スーパーでも周りを驚かせたのではと、心配しました。
「私も、最初、恥ずかしかったんですが、意外と周りは無関心でした。そうですよね。みんな忙しいのに、いちいち聞いてませんよね。」
「そうよ。おばあちゃん、気にしすぎ!」
楽しそうに笑うトモちゃんを見て、お豊ちゃんは羨ましくなりました。お豊ちゃんは、さっき電話で樺山さんに“マコちゃんと呼びますね”と先に言ってしまったせいか、気ばかり焦って、声が出ません。のどに何かがつっかえてるみたいになって、話が出来ないのです。

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トモちゃんは、先生


「これ! トモちゃん、マコちゃんなんて、偉そうに言っちゃいけません!」
我に返ったまあばあちゃんは、トモちゃんに注意しました。そして、樺山さんに謝りました。
「すみません。困った子で……」
すると、樺山さんは、
「いやぁ、いいんですよ。実は、トモちゃんは、私のスーパーの買い物の先生でして……」
「先生?」
まあばあちゃんは、目を丸くしました。
「ええ、今は、母さんと一緒行ってるので大丈夫なんですが、一人で買い物してた時、ちょっとした買い物もまごついていたんです。その時トモちゃんとばったり会いましてね。あれこれ、教えてもらってたんですよ。」
「まあ、そうでしたか……。でも、それでも、やっぱり……」
まあばあちゃんは、トモちゃんが、目上の樺山さんをマコちゃんと呼ぶことに抵抗があるようでした。
「トモちゃんは、エライですね。家のお手伝いをキチンとして、勉強やクラブも一生懸命で、自慢のお孫さんですね。」
樺山さんがニッコリ笑って言いました。

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え? トモちゃんが? 


(お豊ちゃん、どうして呼ばないのかしら……?)
すぐにも、呼ぶだろうと思っていたまあばあちゃんは、少しガッカリしました。
「中へどうぞ……」
まあばあちゃんは、樺山さんを促しました。
足元で、ハッピーちゃんとジロちゃんとミミちゃんがハタハタと遊んでいました。
樺山さんが家に入って、席に着いてからも、お豊ちゃんは、なんだかんだと忙しなく動いて、あんまり話をしようとしません。
(お豊ちゃん、緊張して、なかなか呼べないのね……)
「ただいまー!」
と、トモちゃんの声がしました。
「お帰りなさい。」
「トモちゃん、お帰りなさい。」
「お帰り~」
まあばあちゃん達が、トモちゃんに言いました。
「もーー! マコちゃん、手を振ってるのに、ぜんぜん気付かずに行ってしまった~! ね! ハッピーちゃん。」
(え? トモちゃんが? 樺山さんをマコちゃん?)
まあばあちゃんは、目が点になりました。お豊ちゃんも目を丸くしています。
「え? ゴメンゴメン。全然、知らんかったよ。ハッピー、知ってたんなら教えてくれたら良かったのに……」
ハッピーちゃんが、嬉しそうに樺山さんの膝に手を置きました。

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おや?


20分たった頃、ピンポーンと、インターフォンが鳴りました。
「あ、樺山さんね。ちょっと待っててね。」
まあばあちゃんがインターフォンの受話器を取ると、
「樺山です。迎えに来ました。」
「あの、せっかくですから、お茶でも上がって行ってください。トモちゃんも、もう帰ってきますし……」
そう言うと、まあばあちゃんは、シャッターを上げました。
樺山さんは、車庫に車を入れると、ハッピーちゃんを車から出しました。
嬉しそうに、ジロ達とじゃれ合うハッピーちゃん。
出迎えに出たまあばあちゃんに、樺山さんが
「厚かましくお邪魔します。じゃあ、トモちゃんの顔を見てから帰ります。」
と言いました。お豊ちゃんも嬉しそうに頷きました。
まあばあちゃんは、さっそく呼んでみるのかと思いましたが、お豊ちゃんは、嬉しそうに頷くだけで、何も言いませんでした。それどころか、
「お茶を入れてくるわね」
と言って、先に家の中に入ってしまいました。

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堺の町のまあばあちゃん

Author:堺の町のまあばあちゃん
堺の町に住む、ひとりのおばあちゃんのお話です。
住み慣れた町の人々との交流や孫のトモちゃんや犬のジロとの生活を通して力強く生きていく姿を物語に書きたいと思います。 
宜しくお願いします。
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