気にしないで

「いいのよ。本当の事だもの。年金も家も無くて、まあちゃんやまあちゃんのご家族の優しさにすがって生きてるんだもの。」
お豊ちゃんが淋しそうに笑って言いました。
「お豊ちゃん、そんな風に思わないで……」
まあばあちゃんが言うと、
「まあちゃん、ほんとにゴメンね。ありがとう……」
お豊ちゃんは、ポロッと涙を流して言いました。
それから、みんな言葉もなく、シーンとしていました。
お春ちゃんの言ったことが、胸にグサッと刺さって、動けなくなってしまったのです。
邦ちゃんも同じはずなのに、邦ちゃんは、ヨロヨロト立ち上がりました。そして、裏庭の方へ行き、戻ってくると、雑巾とバケツを持っていました。邦ちゃんは、掃除を始めました。
「邦ちゃん……」
どうして、邦ちゃんがそうするのか、まあばあちゃんにもお豊ちゃんにもすぐに分かりました。恐ろしい人たちがいた気配を、少しでも早く消してしまいたかったのでしょう。拭き清めたかったのです。
「邦ちゃん、私がするわ。邦ちゃんは、休んでて。ね?」
まあばあちゃんは、邦ちゃんの手首の怪我のことは口にせず、邦ちゃんから雑巾を取り上げました。
「何言ってるの。まあちゃん、私がするわ。」
今度は、お豊ちゃんが、まあばあちゃんから雑巾を取り上げようとしました。
「なにするの。私がするのに。」
と、まあばあちゃんは雑巾を離しません。
「なんかいいもんみたいやね。」
と言って、お豊ちゃんが吹き出しました。
「ホントね。」
まあばあちゃんもつられて笑いました。
邦ちゃんとオッチャンも笑いました。

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「お豊ちゃん、あの……」
まあばあちゃんがお豊ちゃんに声を掛けましたが、お豊ちゃんは、聞こえないのか、人形のように固くなって動きませんでした。すると、突然、ドンとぶつかられて、お豊ちゃんがよろめきました。お豊ちゃんは、なんとか手をつきましたが、玄関は段差があるので、危険でした。
「お豊ちゃん、大丈夫?」
まあばあちゃんが心配してお豊ちゃんに言いました。
ぶつかったのは、あの薄気味悪い女の人でした。ノソノソと、玄関を下りるところでした。まるで、まあばあちゃん達の事など見えないのか、ぶつかったのに謝りもしません。そして、傘立にある上品な花柄をあしらった傘を手に取った時、邦ちゃんが、
「それは、うちの傘ですよ!」
と、叫びました。
薄気味悪い女の人は、しばらくジーッとしていましたが、持っていた傘を投げ捨てると、変色したビニール傘を手に取り、外へと出て行きました。
それを見届けると、邦ちゃんは、膝から崩れ落ちました。
「お豊おばちゃん、母が酷い事言って、ごめんなさい。本当にごめんなさい。」
邦ちゃんは、お豊ちゃんに泣きながら謝りました。
(邦ちゃんも、酷い事を言われて、傷ついてるはずなのに……)
そう思うと、まあばあちゃんの胸は悲しくて締め付けられるようでした。

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お断り

「まあちゃん、明日から、昭雄さんのところにおるから、遊びに来てな。待ってるから。」
ヒラヒラと手を振るお春ちゃんに、まあばあちゃんは、
「お春ちゃん、昭雄さんのいるところには、行けないわ。」
お春ちゃんは、不思議そうな顔をして言いました。
「なんでよ。私の家やで、なんの気を使うことあらへん。お豊ちゃんと一緒においでよ。な?」
「あの……、お春ちゃん……」
「なんや?」
「私たちのお付き合い、今日これ限りにしましょう。」
「ええ!? なんで?」
「お春ちゃん、昭雄さんと暮らすんでしょ。お付き合いを止めるどころか……」
「まあちゃん、いっぺん昭雄さんと話してみ? まあちゃんが思ってるような人とちゃうで。」
「お春ちゃん、それ、本気で言ってるの?」
まあばあちゃんは、信じられない気持ちでいっぱいになりました。
「とにかく、遊びには行けないわ。」
「ほな、私から、行くわ。な?」
「え? …………えぇ………」
尚も言うお春ちゃんに、まあばあちゃんは、しぶしぶ返事しました。
「僕が、送りますよ。」
昭雄さんのその言葉にゾッとしたまあばあちゃんは、反射的に、
「お断りします! 来ないでください!」
ピシャリと言いました。
「ま、まあちゃん……」
お春ちゃんは、呆然とした表情でまあばあちゃんを見ました。昭雄さんも少しだけ
目を大きくしました。そして、お春ちゃんは、昭雄さんにすがりながら、
「……い、行こう。昭雄さん。」
と言って、玄関に行きました。お春ちゃんは、靴を履きながら、
「なあ、お豊ちゃん。」
「なに?」
「あんたも、まあちゃんの家で、いつまでも居候してんと、早よ、出て行きや。」
そう言うと、玄関を閉めました。
お豊ちゃんは、固まったまま、動けなくなっていました。

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感謝をしないお春ちゃん

「別に、私は、ここへ来とうて来たんちゃうで! なんで、あんたに、そんなエラそうにいわれなアカンの。」
お春ちゃんは、そう言って、オッチャンを睨みつけると、さらに続けました。
「そんなに私のすることが気に食わんのなら、出て行きますがな。」
「お春ちゃん!」
まあばあちゃんは、飛び上がって驚きました。お豊ちゃんもアングリしています。
「お春ちゃん、あんた何を言うてんの……」
「そやかて、お豊ちゃん、来てください、来てください言われたから、来たったのにやで。来てみれば、どこの馬の骨とも分からん子はおるし……」
「お春ちゃん!!」
ひろ子ちゃんの事を言われて、まあばあちゃんは、カッとなって大きな声を出しました。お春ちゃんも、言い過ぎたと思ったのか、そこで黙りました。
「お春ちゃん、あんた、なんで、そんなこと言うん? あんたの足が不自由やからって、手すりをあっちこっちに付けたり、こけても大丈夫なようにってフカフカの絨毯を敷いてくれたりして、こんな至れり尽くせりにしてもうてる人、あんたくらいやで! 何が不満やの?」
「別に、私、そんなんしてくれなんて、頼んでへん。勝手にしてることやもん。知らんわ。」
「あんたなぁ……」
「私が、ちょっと、お茶しよう思っただけで、ここまで言われて、なんやねん。」
「おかあさん、家に来てください。大事にします。」
昭雄さんは、そう言ってお春ちゃんの手をとりました。
「そうか? ありがとうな。今は、あんただけが頼りや。みんなにのけもんにされて。」
お春ちゃんが、どっこらしょっと立ちました。
「邦子、あんたも、私がおらんほうがええみたいやから、出て行くわ。せいせいするやろ。」
お春ちゃんは、捨て台詞のように言いました。

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普通の人

お春ちゃんは、また、だんまりです。
昭雄さんも、黙ったままです。
昭雄さんが連れてきたあの女の人は、胡坐をかいて、テーブルのお菓子をバリバリと食べていました。
「昭雄さん、言いましたかな。あの座り込んで、菓子ばっかり食ってる女の人を連れて、早よ、帰って下さい。」
オッチャンは静かに言いました。
「さっきの話、聞いてましたか? いつでも来たらええって言われてるんですよ。」
昭雄さんが、馬鹿にした口調でオッチャンに言いました。
「そうかもしれませんが、この家の主はワシや。ワシがいらんモンを置いとくわけにはいかんのです。もう、二度と、この家の敷居をまたがんように……。次は容赦しまへんで。」
そこには、いつもニコニコしている優しいオッチャンではなく、怖い目をしたオッチャンがいました。学歴ばかりを鼻にかけて、だらしのない昭雄さんは、怯んだ様子でした。
「お宅のすることは、間違ってまっせ。男というものは、自分の力で稼いで、嫁さんを守るもんや。これからの一生は、ワシはワシなりに一生懸命に働いて、邦ちゃんに楽してもらおうと思って頑張ってますんや。お義母さんを引き取ったのも、一人で不自由してはったら、邦ちゃんが心配するやろうと思っての事や。お宅も、お義母さんが、来てええ言うたらかって、ノコノコと、この家に来るのは、オカシイでっせ。遠慮するのが、普通の人ちゃいまっか。」
オッチャンは、昭雄さんにそう言った後、お春ちゃんに、
「お義母さんも、この人らを二度とこの家に、呼ばんようにお頼みします。ここは、ワシらの家ですんで。」
オッチャンは、少しだけ頭を下げて、言いました。
お春ちゃんは、ムゥとした顔のまま、返事をしませんでした。

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お義母さんと呼んでほしい

「邦子、お前、さっきから、勝手に家に上がり込んでるような言いようやけど、わしら、呼ばれて来たんやで。この雨の中を……」
昭雄さんは、小バカにしたような顔で言いました。
「お母さん、本当?」
邦ちゃんは、信じられないと言った顔で、お春ちゃんを見ました。お春ちゃんは、更に下を向きました。
「お母さん、いつも、オバハンと言われて悩んでたじゃないですか。お義母さんと言って欲しいって、泣いてたじゃないですか?」
お春ちゃんは、黙ったままです。
「それだけじゃないでしょ。アホやとか、ゲスイとか言われて、泣いてたじゃないですか……。それをどうして……」
「この前、昭雄さんが、家の前を通った時に、遊びに来たいって言うから、いつでも来て下さいやって言うただけやよ。私、呼びつけたわけやないよ。」
それを聞いた昭雄さんは、なだめるようにお春ちゃんに言いました。
「でも、お母さん、邦子は、拾い子ばっかり、かもてて、面白うないって言うてたじゃないですか。」
それから、邦ちゃんを見下すような仕草で、
「せやから、話し相手になってただけや。お前は、ごちゃごちゃ言い過ぎや。」
「話し相手? お金の無心でしょ。お母さん、もうお金、貸したら駄目ですよ。」
「でもな、昭雄さん、お金に困ってるって言うねん。邦子が家のやりくりしてたから。よう分からんって、それで、悪いなぁと思って、少し、融通しただけや。」
「お母さん、シッカリして。昭雄さんは全部、自分で使ってしまったの。その後の生活は、お母さんの年金に助けてもらって生活してたんよ。やりくりも何もないの。私たちは、この人たちに迷惑ばっかりかけられてんの。借りはひとつもないのよ。この人たちの心配することなんかないの!」

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デタラメ

「お前、なにをデタラメ言うてんねん。」
昭雄さんが邦ちゃんを睨みつけて言いました。
「デタラメかどうかは、これから分かる事です。」
邦ちゃんは、毅然として言いました。
「邦子、なんで、弁護士のこと、疑うねん。」
お春ちゃんは、自分を信じない邦ちゃんを責めるように言いました。
「疑ってなんかいません。未だにこの人たちを追いだせないような弁護士は駄目な人ですから、別の人に頼みましょう。その方がいいです。」
「せ、せやけどな……」
うろたえて次の言葉がでないお春ちゃんに昭雄さんが、言いました。
「お母さん、邦子が言うてることはデタラメです。僕らを追いだすなんて出来ません。」
「お宅は、黙っていてください。お母さん、シッカリしてください。お願い、目を覚まして……」
邦ちゃんがきっぱり言っても、昭雄さんには聞こえないのか、まるで、何でもないような様子です。
昭雄さんは、嫌味な視線で邦ちゃんを見ながら、お春ちゃんには、いたわるような声で、言いました。
「お母さん、邦子がこんなんでは、大変でしょう。話し相手にもならないのでは?」

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お春ちゃんのウソ

まあばあちゃんは、お春ちゃんに言われたことがショックで、頭が、真っ白になってしまいました。確かに立ち聞きした事は認めるけど、お春ちゃんの容赦のない言い方に、愕然としました。
「お母さん、とにかく、その男の人と女の人に出て行ってもらって下さい。それと、今、居座ってる家からも出て行ってもらって下さい。それが出来ないなら、家賃をもらって下さい。私が苦しんだ分を何か形にして、償ってもらって下さい。お願いします。」
邦ちゃんの言葉に、また、お春ちゃんは黙ってしまいました。
それを聞いた昭雄さんは、馬鹿にしたような口調でいいました。
「邦子、お前なぁ……。居住権って知ってるか? 長年住んでた者を、追い出されへんねんで、ちょっと、役所行って聞いてきてみ?」
「わたしを名前で呼ぶのは、止めて下さい。他人に呼ばれるのは不愉快です。」
昭雄さんはムッとしたように軽く顔をしかめましたが、邦ちゃんは、かまわず、話を続けました。
「母から借りたお金を返してあげて下さい。前に借りたお金も返さずに、また、お金の無心に来るなんて、非常識です。それから、早くあの家を出て下さい。」
邦ちゃんは、ピシャリと言いました。
「お前、さっきの話、聞いてないんか? 居住権、きょ・じゅう・けん・っちゅうもんが発生しるから……」
邦ちゃんは、昭雄さんの言葉を遮って、お春ちゃんに言いました。
「お母さん、弁護士を雇ったと言ってましたね。次から、私が話をしますから、誰か教えて下さい。」
「え? 弁護士?」
昭雄さんは、目を丸くしてお春ちゃんを見ました。お春ちゃんは、下を向いてしまいました。
「お母さん、無料相談に行った後、何にもせずにいたんでしょう? 弁護士さんに依頼したというのは、ウソだったんでしょ。あの家は、お母さんの名義だから、お母さんが態度をハッキリさせれば、こんなに話はこじれなかったんです。相手が相手だから、弁護士さんに頼った方がいいと思いますけど……。」
邦ちゃんは、そこまで言うと、昭雄さんの方を向いて、
「お宅に居住権なんてものはありません。本当は知ってたんじゃないですか? 知っていながら、母を口で丸め込んでいたんでしょう。」

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盗み聞き

お春ちゃんは、邦ちゃんの言葉に黙ってしまいました。
長い沈黙が続きます。
「お春ちゃん、どうしてなの? 邦ちゃんの事、大事に思ってるでしょ。」
まあばあちゃんが、お春ちゃんに聞きました。
お春ちゃんは、押し黙ったままです。
「こんな雨の日に、昭雄さんが、邦ちゃんの家具を放り出したって、春ちゃん言ってたじゃない。その家具は、お春ちゃんが、嫁入りの時に揃えたものだったんでしょ? 家を出されてからも、実家が隣なもんだから、昭雄さんは、いろいろ用事を言いつけてきて、困ってるって、お春ちゃん、言ってたじゃない。それで、あの家を売って、借家を借りて、親子で住むことにしたんでしょ。それなのに、移り住んだ先の家のポストに、わざわざ、離婚届を放り込まれたんでしょ? わたし、お春ちゃんの口からきいたのよ。お春ちゃんも、泣いて怒ってたじゃない。」
お春ちゃんは、何にも言いません。
「なのに、どうして、邦ちゃんが昭雄さんに謝らないといけないの?  どうして邦ちゃんを責めるの?」
「まあちゃん……」
「なに?」
「あんた、盗み聞きしてたんか?」
お春ちゃんが、まあばあちゃんをギュッと睨んで言いました。
「え?」
盗み聞きという言葉に、まあばあちゃんは、怯みます。お春ちゃんは、更に言いました。
「そやろ? さっきの話、聞いてたんやろ? 」
「え、ご主人と家に入ろうとしたら、お春ちゃんの話し声が聞こえてきて……」
お春ちゃんの剣呑な雰囲気に、まあばあちゃんは、しどろもどろでした。

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邦ちゃんのウソ

「……ねぇ、お母さん、私たち、どれだけ、その人たちに苦しめられたと思うの?」
邦ちゃんが、落ち着いた口調で尋ねました。さっきは本当に、倒れてしまうんじゃないかと思うぐらい気が高ぶっていたので、まあばあちゃんはホッとしました。
お春ちゃんが、まあばあちゃんに気が付きました。お春ちゃんは、味方が来た来たっと感じで、少し勝ったような顔をしました。
まあばあちゃんは、どうしようもない違和感を覚えました。
(娘相手にどうして……)
まあばあちゃんは、ゆっくりと歩きました。そして、邦ちゃんに寄り添いました。お豊ちゃんも邦ちゃんを守るように側に立ちました。
お春ちゃんは、信じられないというように、目を丸くして、まあばあちゃんとお豊ちゃんを代わる代わる見ました。
「邦子、ほんなら、お前は私にウソついてたんか?」
「ウソ?」
「そうや。私、ちゃんと、昭雄さんとうまくやれてるか、辛い事はないか聞いたで! 大丈夫やってばっかりで、何も言わんかったやないか!」
邦ちゃんは、小さく息を吸ってから、言いました。
「平気なわけありません。まして、女の人を連れて来られて、平気な妻がいますか。そんな人、この世のどこにもいないと思います。それに、助けを求めたからって、お母さんに何が出来ますか? 離婚させてくれましたか? お母さん、離婚だけはするなって、口ぐせのように言ってたじゃありませんか?」
「お前が、シッカリしてへんから、女なんか連れ込まれるんや。私は、そんなこといっぺんも無かった。」
「お父さんは、誠実な人でした。家族思いの優しい人でした。比べるのは間違いです。お父さんに失礼です。」
昭雄さんを見ると、怯えてばかりいた邦ちゃんではなく、凛とした邦ちゃんが立っていました。

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お母さん、しっかりして!

オッチャンが邦ちゃんをかばうように立ちました。
邦ちゃんの声を聞いてキッチンから戻ってきた昭雄さんに、邦ちゃんは、言いました。
「どうして、お宅もここにいるんですか。恥ずかしくないんですか。あの女の人を連れて、早く帰って下さい!」
邦ちゃんが、こんなに怒っているのを見るのが初めてなのか、お春ちゃんは、口を開けてポカンとしていました。
「く、邦子、そないに言わんでもええやんか。25年も連れ添ってきた、旦那さんやで。一流の大学出て、一流の会社の人が、高卒のお前と結婚してくれたんやで。なんで、訪ねてきてくれて、有難いと思わんのや。」
「お母さん、私とこの人とは、離婚したの。他人なんよ。いいえ、他人以上よ。私たちはこの人たちに追い出されたんですよ。どうして、家に上げたりするの? どうして、一緒に笑ったりできるの。どうして、昭雄さんやあんな女の人を家に上げるの? 私は、この女の人を家に入れないでと言ったら、昭雄さんに、おまえが出て行けと言われて、出て行ったんですよ。いったい何を考えてるのよ!」
「お前……、何ちゅう口の利き方や!」
お春ちゃんは、ムカッとしたようでした。お春ちゃんは、隣に立っている昭雄さんの手につかまって、ヨッコラショッと立ち上がりました。
「お母さん、いくら一流大学出てても、いい会社に勤めてても、家に一円も入れない人は、ロクデナシよ。車をとっかえひっかえして、賭け事ばっかりして! 私が追いだされたあの家のローンは、私が、昼も夜もパートに行って、返したのよ。介護もしてた。お母さんも知ってるでしょ。お金が苦しい時は、助けてくれたじゃない。覚えてるでしょ。」
「お前……」
「お母さんは、女の人の影が無いだけ上等やって言ってたけど、家に連れて来た。そして、私を追いだしたんよ。わたしは、それまで、その女の人の食事をつくらされたり、昭雄さんに言われて、お小遣い渡してたのよ。」
「せやけど、あれは、仕事の給料やろ?  な、昭雄さん。」
「ええ、そうです。」
「その人は、毎日、天井を眺めてただけじゃないの。 お母さん忘れたの?」
邦ちゃんは、お春ちゃんにそう言った後、昭雄さんに向かって言いました。
「昭雄さん、仕事が出来たんですか? あの女の人に渡したお金は、母の年金もたくさん入ってるんですよ。」
昭雄さんは、フイッと横を向いてしまいました。
「お母さん、どうしちゃったのよ。そんな人の何がいいの? どこが立派なん?」
邦ちゃんは、泣きながら叫んでいました。

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あの女の人

もう、ほっておけないと思ったまあばあちゃんは、オッチャンが、お春ちゃんの為に取り付けた手すりを持って、上り口に上がりました。
そして、お春ちゃんの声が聞こえる、居間の襖に手をかけました。その時、
「出て行ってください。警察を呼びます。」
邦ちゃんの声でした。
「邦ちゃん、帰ってたの?」
まあばあちゃんが、オッチャンを見ると、驚いた顔をしていました。
「何しに来たんですか? 早く、出て行ってください! 早く!」
邦ちゃんは、更に、強い口調で言いました。
オッチャンは、はじかれたように、慌てて、邦ちゃんの所へ走って行きました。
部屋の中には、お春ちゃんと、邦ちゃん、そして―――
あの、薄気味悪い女の人がいました。
「あんたなぁ、勝手に入ったんちゃうで、お母さんが、上がって、お茶でも飲みって言うたからおるんやで……」
邦ちゃんの剣幕に、怯むでもなく、腹を立てるでもなく、ドサッと大きな石のように座り込んで、動く気配がありません。うつむき加減で、前髪は長く、表情はよく分かりませんでした。
(昭雄さんだけでも、あり得ない事なのに、あの女の人まで……、それに、お母さんって、何なの?)
まあばあちゃんは、頭の中が、真っ白になってしまいました。

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お春ちゃんの本音

「もう、黙ってられへんわ。」
お豊ちゃんが、まあばあちゃんとオッチャンを見て、行こうと促しましたが、オッチャンは、石のように動く気配がしません。
また、お春ちゃんの声が聞こえてきました。
「ほんまに、邦子は、何を考えてるんやろう。せっかく一流大学出た人と結婚できたのに、何を思って、あんな中卒の不細工と再婚なんて……、その上、どこの馬の骨か分からん子どもを育てて……、ほんま、自分の娘ながら嫌になるわ。」
「邦子も、なにか思うところがあったんでしょう。」
昭雄さんが慰めるような口調で返事します。
「なにを思うことがあるんや? ちょっと考えたらわかりそうなことや。離婚届のことでもそうや。早よ、謝って堪忍してもらい言うてんのに、私の言う事なんか聞かへんのや。」
お春ちゃんが、残念そうに言いました。
「あれには、僕も驚きました。よりを戻すつもりで、ポストに入れました。慌てて尋ねてくると思ったんです。それやのに、役所に提出するとは思いませんでした。」
「あの子は、ホンマにアホや。わたしも、ほとほと疲れたわ。」
お春ちゃんの馬鹿にしたような呆れたような声が聞こえてきました。
まあばあちゃんがオッチャンの方を見ると、表情を失っていました。

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お茶

「邦子は、こんなええ人と別れて、ホンマにアホやな……。昭雄さん、また、邦子と一緒になってくれたら嬉しいのに……」
「でも、邦子がなんて言うか……」
「そんなん、私が、言うて聞かせますがな……」
まあばあちゃんたちは、お春ちゃんの言う事が信じられませんでした。
「恥知らず……。く、邦ちゃんは、こんな会話を聞かされて……」
お豊ちゃんは唇を震わせて言いました。そして、また、お春ちゃんの声が聞こえてきます。
「ああ、よう笑ったら、喉乾いてきたわ。邦子~、邦子~、ちょっと、来てんか~。」
もちろん、返事はありません。邦ちゃんは、今、病院にいるのです。
「もう、どこに行ったんやろ。気の利かん子や。しゃーない、ちょっと、お茶入れてくるわ。」
お春ちゃんの不機嫌そうな声が聞こえてきました。
「ぼく、入れてきます。」
「いやぁ、そんな悪いわぁ。」
お春ちゃんが、嬉しそうな声で返事しています。
「まあちゃん、昭雄さんを台所まで、自由に行き来させてるん?」
お豊ちゃんが、顔をひきつらせて、まあばあちゃんの顔を見ました。
「大卒の人に、お茶なんか入れてもろたら、バチが当たりますわ。」
お春ちゃんの笑い声が、また響きました。

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お春ちゃんの笑い声

「えらい雨やな。みんなごめんやで。こんな日に来てもろて、すぐ、カギ開けるで。あれ……」
「どうしたの?」
「カギ、開いてる……」
オッチャンは驚いた様子で言いました。
「え? 慌ててたから、忘れたんじゃないの?」
まあばあちゃんが言いました。邦ちゃんの事を心配して、ウッカリしたのではと思ったのです。
「いや、邦ちゃんのお母さんを一人で家に置いとくからと思って、しっかり確認したんや。」
オッチャンは、玄関の中へ恐る恐る入りました。すると中から、
「あははは、あははは!」
とお春ちゃんの嬉しそうな声が聞こえてきました。
「お春ちゃんは、邦ちゃんの事、知ってるの?」
「いや、寝てたから、言わんと出てきた。ショックでひっくり返ったらアカンと思って……」
「そう……」
オッチャンらしい優しい気遣いです。
「あはは、おっかしいなぁ。あはは……」
また、お春ちゃんの笑い声が聞こえてきました。
「私、誰と話してるんか、見てくる。」
お豊ちゃんが、上り口に足をかけようとしたとき、
「昭雄さんは、ホンマに話が面白いなぁ……。あはは!」
「……お春ちゃん……」
まあばあちゃんの声は震えていまいた。
「え? でも、どうなってんの? 一日に何回も来てんの?」
お豊ちゃんが、不可解そうに言いました。おっちゃんも不思議そうにお豊ちゃんを見ました。
「あ、私、邦ちゃんの事が心配で、今日、伺ったんです。その時は、お春ちゃんが中に入れてくれたんですけど……、その時、昭雄さんがいたんです。」
「あははは、一流大学出て、一流の会社勤めてはった人は違うわ。あはは……」
3人は、シーンとなってしまいました。
「まあちゃん、お春ちゃん一人に時に、昭雄さん来たら怖いって言ってたけど……」
お豊ちゃんは力なく言いました。
次に昭雄さんに会うまでに、出来るだけ早く、お春ちゃんにくぎを刺しておきたいと思って出た言葉だったのに……、お春ちゃんが分かってくれれば、邦ちゃんやオッチャンの心の負担が少しは軽く出来ると思ったのに……
「まさか、今の今とは……」
まあばあちゃんは、頭を振りました。まあばあちゃんは、吐き気がしてきました。

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Author:堺の町のまあばあちゃん
堺の町に住む、ひとりのおばあちゃんのお話です。
住み慣れた町の人々との交流や孫のトモちゃんや犬のジロとの生活を通して力強く生きていく姿を物語に書きたいと思います。 
宜しくお願いします。
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