雨の日の外出

外は、雨です。ここ何日か降り続いたためか、少し肌寒く感じます。
まあばあちゃんにとって、雨の日の外出は久しぶりです。
傘を持つ手がふらつきます。
「まあちゃん、やっぱり、家に戻ったら……」
お豊ちゃんが心配そうに言いました。
「お願い、今回だけは行かせて……」
「まあちゃんの頑固者。神経痛出ぇへんかったらええけど……」
お豊ちゃんが困ったように笑いました。
「ばあちゃん、ワシにつかまり、傘もワシが持つさかい。」
オッチャンと、まあばあちゃんと、お豊ちゃんの3人は、雨の中を急ぎました。

読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。
にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ


読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。 にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ
スポンサーサイト

雨の中へ

「ほな、わし、家に帰るわ。しっかりせんと、わしら親子3人、路頭に迷うがな。」
オッチャンが、苦笑いして言いました。
「私も行きます。お春ちゃんに言いたいことがあるの。お豊ちゃん、お留守番頼むわね。」
「それなら、私も行くわ。お春ちゃんには、ガツンと言いたいんよ。お春ちゃんは、どういうつもりで、昭雄さんを家に上げたのか聞きたい。お春ちゃんには、昭雄さんの所へ行ったらいいねん。」
「ほんとうね。でも、それは、現実にはならないわね。」
まあばあちゃんの言葉にお豊ちゃんは頷きました。オッチャンが、不思議そうに聞きました。
「なんでや?」
これには、お豊ちゃんが答えました。
「きっと、昭雄さんは、お春ちゃんを取りこんで、今、自分が住んでる家の土地を売りたいと考えてるんちゃうかな。それで、次に乗っ取る家を物色してるんよ。それが……」
「わしの家か……」
「そう思います。そして、乗っ取ったら、お春ちゃんも道端に捨てられると思います。」
まあばあちゃんが言いました。
「きっと、お春ちゃんいうたら、邦ちゃんやご主人が優しくしてるから、自分のことをおらんようになったら困る大事な人間だと誤解してると思うわ。いつも偉そうにしてるんちゃう? そんな、お春ちゃんが、昭雄さんの言いなりやったら、とんでもない事になるわ。」
オッチャンが、頷きました。
「早く行きましょう。お春ちゃんしかいない時に、昭雄さんが来たら、大変だわ。」
まあばあちゃんが、ヨッと掛け声をかけましたが、なかなか立ち上がれません。お豊ちゃんが、すぐに手を添えました。
「まあちゃん、私が行くから家におり。雨やし、神経痛でも出たら、大変やよ。」
「ううん。今日は行かせて……」
「わし、車とって来るわ。」
「いいわよ。すぐそこじゃないの。立ち上がるまでが大変なの。ね、もう大丈夫。」
と言って、靴を履き始めました。

読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。
にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ


読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。 にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ

守って

「邦ちゃんとひろ子ちゃんをしばらくこっちで預かってもいい? 今戻っても、良くないと思うの。」
「そら、助かるけど……、でも、ええんか? 恭子ちゃんらにも聞いてみんと……」
「大丈夫よ。恭子ちゃん達みんな2階で寝てるの。1階は年寄りの二人暮らしなの。お豊ちゃん、いいわよね。」
「え?」
お豊ちゃんは、自分の考えを聞かれると思ってなかったらしく、キョトンとしていました。
「だって、部屋の準備を二人でしないと! 忙しくなるわよ。」
「わたしは、もちろんOKよ。」
お豊ちゃんは慌てて、OKサインを両手で出しました。
「じゃあ、ひろ子ちゃんを連れてきてね。邦ちゃんも病院から戻ったら、すぐに連れてきてあげて。」
「ありがとう。ほんまに、おおきに……」
オッチャンの目は、涙で潤んでいました。
「あの、負けんといて下さいね。」
お豊ちゃんが、手を合わせて言いました。オッチャンは、シッカリと頷きました。
「わたし、昭雄さんの隣に住んでたことがあるんです。あの男も卑怯で無神経な男やけど、それにくっついてる薄気味悪い女はもっと恐ろしいと思うんです。それに、あの女の母親みたいな女はもっと癖が悪そうでした。」
オッチャンは、覚悟をしたように、力強く頷きました。
「差し出がましいようですけど、絶対に家を守ってくださいね。家が無いって本当に辛い事です。」
お豊ちゃんは、祈るように言いました。

読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。
にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ


読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。 にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ

お春ちゃんのせい

「ねぇ、昭雄さんが来たのはいつから?」
まあばあちゃんは、思い切って昭雄さんのことを質問することにしました。
「わしが気ィ付いたんは、4日前や。家に入るのを見たんや。」
「邦ちゃんはなんて?」
「邦ちゃんには、わしが気ィ付いたことは言うてへん。なんか対策を考えてからの方がええと思てな。」
まあばあちゃんは深く頷きました。
「せやけど、邦ちゃんは、どんどん元気がのうなってしもて……。どうしたもんかと思ってたんや。」
「邦ちゃん、悩んだでしょうね。」
「こんなことになるんやったら、わし、怒鳴り散らしてでも、あの男を追いだすべきやったんやな。自分の家やねんからな。」
まあばあちゃんもそう思いましたが、今それをオッチャンに言っても余計苦しめるだけです。
「結局、ワシが邦ちゃんを追いつめたんやな。」
「それは違うと思うわ。悪いのは、昭雄さんを家に上げた、お春ちゃんよ。自分は家も何も昭雄さんに盗られて、何にもないのに、ご厄介になってる家にまで、迷惑かけて……」
まあばあちゃんがキッパリとお春ちゃんを責めたことに、オッチャンは驚いたようでした。
お豊ちゃんもビックリした顔をしています。いつもいつも、お春ちゃんの事をかばってきたまあばあちゃんだったからです。
「そんな、厄介やなんて、大したことはしてへんねんけどな。」
「とにかく、お春ちゃんのしたことは許されることじゃないわ。こんなに邦ちゃんを追いつめて……」
まあばあちゃんは、膝の上に置いた手を握りしめました。

読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。
にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ


読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。 にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ

オッチャンのせい

「え?」
まあばあちゃんとお豊ちゃんは、耳を疑いました。邦ちゃんが苦しんでいる事は明らかでしたが、まさか、
「邦ちゃん、まさか……」
まあばあちゃんの声は震えていました。
「発見が早かったから、大事には至らんかった。でも、今は病院に置いてもろてるねん。」
「そう……」
まあばあちゃんとお豊ちゃんはホッと胸を撫で下ろしました。
「わしのせいや……」
「何を言ってるの?」
「邦ちゃんは、わしがお母さんを引き取ろうと言った時、お母さんの住まいに通うって言うたんやけど、わしに、遠慮して言うてるんやと思い込んでたんや。せやから、そんなんいちいち行って世話すんの、邦ちゃんが大変やろと思って、わしが押し切ったんや……」
オッチャンはそこまで言うと、黙ってしまいました。
「邦ちゃんのこと思っての事だったんだから……」
「そうや。せやけど、いらんお節介やった。邦ちゃん、わしを恨んでるやろなぁ……。合わす顔がないわ。」
オッチャンは肩を落としました。
「邦ちゃんが、そんなん思うはずないでしょ。」
「……せやけど、もともとはワシが引き起こしたことや。」
「邦ちゃんは、自分の母親が、昭雄さんを家に上げたことを申し訳なく思ったんだと思うわ。」
「あの優しい邦ちゃんが、母親を引き取るのに、二の足を踏んだ時、もっと考えるべきやった。邦ちゃんを辛い目にあわせてしもうて……」
オッチャンは額を押さえて言いました。

読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。
にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ


読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。 にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ

インターフォンが鳴った

「邦ちゃんがこんな目に遭うなんて間違ってる。なんとかしないと……」
まあばあちゃん、自分を勇気づけるように言いました。
「でも、腹を括っていかんと、人の皮をかぶった悪魔や。」
お豊ちゃんも、自分に言い聞かせるように言いました。まあばあちゃんも頷きました。
―――ピンポーン、ピンポーン―――
「お春ちゃんかしら。」
「まさか、こんな雨の日に来ぇへんわよ。」
「でも、お春ちゃんも、困ってるのかも……」
「ちょっと、行って来るわね。」
お豊ちゃんが、ヨッと立ち上がって、玄関の方へ行きました。膝の悪いまあばあちゃんは、しばらく遅れてお豊ちゃんの後を追いました。
「どうしたんですか!?」
お豊ちゃんの大きな声が聞こえてきました。まあばあちゃんも誰だか分かってビックリしました。
―――オッチャンでした。―――
傘も差さずに、ずぶぬれで立っていました。
「……ばあちゃん、わし、どないしたらええんやろ……」
オッチャンは、力なく言いました。
「とにかく入って! 風邪ひくわ!」
まあばあちゃんが急かすようにいました。
「とにかく上がって!」
「ええ、ええ、わし濡れとるさかいここでエエよ。」
オッチャンは、上り口から動こうとしません。お豊ちゃんが大きなタオル持ってきました。
「さ、せめて、これ使って……。すぐに温かいお茶を入れますね。」
会釈して、お豊ちゃんからタオルを受け取ると、
「もう、どないしたらええか分からんようになって、ばあちゃんの所に来たんや。」
と言いました。
「何があったの?」
ところが、相談があってきたはずなのに、オッチャンは黙ったままです。
「話したいことがあったから来たんでしょ?」
まあばあちゃんは、少し強めに言いました。オッチャンの疲れ果てた顔を見て、昭雄さんの事に違いないと思ったからです。
「…………」
オッチャンは、まだ、黙っていました。まあばあちゃんを訪ねてきたものの、話すのを戸惑っているようでした。まあばあちゃんは、思い切って言いました。
「昭雄さんの事じゃないの?」
オッチャンは驚いたように顔を上げました。そして、言いました。
「……邦ちゃんが、手首を切ったんや。」

読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。
にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ


読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。 にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ

邦ちゃんを守りたい


「昭雄さん、コロッといってくれへんかしら?」
「お豊ちゃん、そんな……」
まあばあちゃんは驚いて、お豊ちゃんを見ました。お豊ちゃんは寂しそうに笑って、
「驚いた? でもね、私、主人が私の事を、毎日毎日、アホアホ、マヌケ、うそつき、言うたびに、家に蓄えもないのに、パチンコで負けてばっかり来るたびに、そう思ってたんよ。」
「お豊ちゃん……」
「でも、ホンマに死なれたら、明日から食べるのも困るのにね。主人は自分の分しか年金に入ってないからね。」
「お豊ちゃん……」
「お春ちゃんが、主人の話を鵜呑みにして、私の事を悪く言うてた頃から、邦ちゃんは、私の事、いつも優しく気遣ってくれて……、優しい娘さんやな。私の娘やったらどんなにか幸せやったのにって、お春ちゃんをいつも羨ましく思ってたんよ。」
まあばあちゃんは頷きました。
「邦ちゃんも、昭雄さんに、酷い目に遭わされてたから、私のこと察してくれてたんやなって……」
お豊ちゃんの目から、涙がこぼれました。
「でも、わたし、昭雄さんとあの女の事を一緒にいるのを見るまでは、まるで気付かんかってん。気付いてたら、もうちょっと……」
まあばあちゃんは、静かに首を振りました。
「お豊ちゃん、あの人たちは、畜生と同じよ。招き入れてしまったら、おしまいだと思うわ。」
「まあちゃん……!」
「まして、家長である昭雄さんが、入れてしまったんだもの。私たちが、どうにかできるものじゃないわ。」
お豊ちゃんも、そう思っていたのか、小さく頷きました。
「でも、今回は、違うわ。お春ちゃんは、ご厄介になってる身の上だし、それを自覚するべきだわ。」
「そうやんね。いくら邦ちゃんのご主人が優しいからって、お春ちゃんはどうかしてるわ。」
「今度は、邦ちゃんを守ってみせるわ。」
まあばあちゃんは自分に言い聞かせるように言いました。

読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。
にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ


読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。 にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ

邦ちゃんの事を考えて……

「私、もう一回、お春ちゃんの所に行ってくる。さっきはビックリして、帰ってきてしもたけど、このままじゃ、邦ちゃんがあんまり可哀想や!」
お豊ちゃんが、立ち上がりました。
「お豊ちゃん、落ち着いて。二人でよく考えてから、行動しましょう……。昭雄さんも再婚先までお金の無心に来るくらい、追い詰められてるのよ。逆上されて、小突かれて倒されでもしたら、寝たきりになるわよ。」
お豊ちゃんは、まあばあちゃんの言葉にハッとしたように黙りました。
「ほんまやね。再婚先にまでお金の無心に来る男やもん。何するか分からんね。」
「昭雄さんが、もう絶対に、訪ねて行かない方法を考えないと……。」
とは言うものの、まあばあちゃんは、どうしていいのか分かりませんでした。
「お春ちゃん、ボケたんやろか? 邦ちゃんは、あの男に、追い出されたんやよ? その上、お春ちゃんが頭金出したあの家に、あの女と、ずっと住んでるんやよ。それを、なんで、家に上げるんやろう……。」
「正気とは思えないわね。」
「お春ちゃんて、もしかしたら、邦ちゃんよりも昭雄さんの方が気ぃ合うんちゃう?」
「まさか。」
まあばあちゃんが、苦笑いしました。
「ううん。ほんまにそう思うんよ。今までだって、邦ちゃんのことを大事に思ってたら、こんなこと出来るやろかと思っててん。」
まあばあちゃんは黙ってしまいました。
二人が深刻な顔で話をしてるのを、心配そうにジロとミミちゃんが見ていました。

読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。
にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ


読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。 にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ

お豊ちゃんの涙

「こんな恩知らずなことをするやなんて、信じられへんわ。」
まあばあちゃんも、そうだと思いました。
「あんな、邦ちゃんみたいなあんなええ娘さんがいるのに、何の不足があるの。なんであんなことするの?」
お豊ちゃんは、続けます。
「私、もう、お春ちゃんの顔を見るのも嫌やわ。」
まあばあちゃんも言いたい事があるのですが、胸の奥から気持ちの悪いものが込み上げてきて、何か言うと吐きそうでした。
「ねえ、まあちゃん、どうしたらいいと思う? どうしたら、邦ちゃんを助けてられると思う?」
「……まさか、こんな事するなんて、想像もつかなかったわ。」
まあばあちゃんは、やっとそれだけ言いました。
「そうやねん、ようやく目が覚めて、ホッとしてたのに……。お春ちゃんのこと買い被ってたわ。」
まあばあちゃんは頷きました。
「お春ちゃん、昭雄さんのことを色眼鏡で見てたって、自分で言うたのに、なんで……」
「本当に……どうして……」
まあばあちゃんの目にじんわり涙が浮かびました。邦ちゃんの気持ちを思うと、胸が張り裂けそうでした。
「まあちゃん、知ってた? 邦ちゃん、昭雄さんと結婚してるとき、あの女と一緒に乗る車の洗車をさせられててんよ。私、偶然、あの女と昭雄さんが車で帰って来たのを見てん。ほんで、ほんのちょっと後から、邦ちゃんが、ようさんの荷物を持って歩いて帰ってきたんよ。私、ビックリしたわ。だって、あんなん、邦ちゃんを追い越して帰ってきたん丸分かりやんか。」
まあばあちゃんも、その事を知っていました。その場面にいたことがあったのです。
「それから、わたし、気になって。せめてもの嫌味に、いつもご苦労さんですねって、挨拶に出てん。あの男、プイッとして家に入ってしもたわ。女の方はこっちをジーッと見てたわ。ほんで、しばらくしたら、邦ちゃんが帰って来るねん。邦ちゃんの迎えに行ったのは一回も見たことないんよ。それを隣に住んでる母親のお春ちゃんが、知らんはずないやんか! 知らんかったらアホや! どうしょうもないアホやで!!」
お豊ちゃんは、目を真っ赤にして涙を流しながら怒っていました。

読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。
にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ


読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。 にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ

悪い予感

まあばあちゃんは、お豊ちゃんの帰りを待っています。
お豊ちゃんが出かけてからも、ずっと雨が降っています。
―――ガラガラ―――
玄関の開ける音がして、
「ただいま……」
お豊ちゃんの声は沈んでいました。
「おかえり、どんな様子?」
「もう、お春ちゃんは、あかんわ。」
お豊ちゃんは吐き捨てるように言いました。
「え?」
「もう、あんな人、あきれてものも言えんわ。邦ちゃんが可哀想でしゃーないわ。」
「まさか……」
と、まあばあちゃんは言いましたが、邦ちゃんの様子から予感はありました。
「そのまさかよ。昭雄さんよ。」
「そんな……」
「今日、年金の日でしょ。それで、私、絶対行ってみようって思ったんよ。」
「邦ちゃん、どうしてたの?」
「姿は見えなかったけど、でも、家の中にはいると思うわ。たぶんだけど……」
まあばあちゃんは、頭を抱えてました。
「コナン君のお母さんの見間違いじゃなかったのよ。」
お花見をする前に、コナン君のお母さんが教えてくれたことがありました。
玄関先で、お春ちゃんと話している男の人がいると、邦ちゃんの前の旦那さんではないかというのです。コナン君のお母さんは、昭雄さんの事を一、二度見たきりなので、自信は無いのだけど、邦ちゃんが驚いた様子で家に入ってしまった事から、そう思ったようなのでした。
でも、その後訪ねて行ったときは、お春ちゃんにも邦ちゃんにも変わった様子もなかったし、お春ちゃんも昭雄さんのしたことを冷静にとらえるようになっていたし、それに、お春ちゃんは、はっきり言えば、オッチャンの家でお世話になっている身の上です。このご時世で引き取ってくれるなんて、とても有難い事です。だから、お春ちゃんが自分で追い返すだろうと思っていたのです。それに、なんといっても再婚先の家で昭雄さんも大胆なことはしないだろうと……
まあばあちゃんは、自分の考えの甘さを痛感しました。

読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。
にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ


読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。 にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ

お春ちゃんへの電話

お花見をした翌日から、ずっと雨が降り続いています。もう三日も経ちます。一時やんでも、今にも降り出しそうな重い雨雲が立ち込めています。
まあばあちゃんとお豊ちゃんは、外に出ることが出来ないので、お春ちゃんの所へ行くことが出来ません。そこで、今日、電話をかけてみることにしました。
電話には、邦ちゃんが出ました。
『母は、今も眠っていて、起してみても眠たがって起きないんです。』
邦ちゃんがすまなそうに言いました。
次の日は、
『ごめんなさい。まあおばちゃん、歯が痛いと言って、電話に出たがらないんです。』
次の日も、その次の日も、なんだかんだと理由をつけて、電話に出ませんでした。
「まあちゃん、私、今日はお春ちゃんの所に行ってくるわ。」
「でも、雨が降ってるわよ。」
「傘をさしていけば、大丈夫やよ。」
「でも、もうしばらくしたら、晴れるわよ。その時、一緒に行きましょう。」
「わたし、邦ちゃんが、心配でたまらんの。」
「お豊ちゃん……」
「だって、もうなんやかんやで一週間も電話に出んのよ。風邪ひいて声が出ぇへんでも、電話ぐらい出るもんやよ。あのお春ちゃんやよ。」
「…………」
まあばあちゃんも胸騒ぎがしているので、何にも言えませんでした。
「それに、邦ちゃんの声もだんだん暗くなってるし……。私、行って来る。」
そう言って、お豊ちゃんは、雨の中を出て行きました。

読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。
にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ


読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。 にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ

桜の花びら

「わあ!満開やなあ!」
お春ちゃんが、嬉しそうに言いました。
「来て良かったでしょ?」
まあばあちゃんが言うと、
「ホンマや! たまには外に出んとアカンわ。桜、見逃すところやったわ。キレイやなあ。」
春らしい気持ちのいい風が吹いてきました。
「ええ風やな。あっ、桜の花びら落ちてきたで。」
お春ちゃんが、ヒラヒラしている花びらをつかもうと、手を伸ばしました。
「まあちゃん、見てみ、手のひらに花びら落ちてきたで。」
「ほんとう。かわいいね。」
「お豊ちゃんの頭にも花びら落ちてきたで。」
お春ちゃんがお豊ちゃんに言いました。
「あら、まあちゃんの髪にも桜の花びらがあるよ。」
お豊ちゃんが言いました。
「まあちゃんは、綺麗な白髪やから、映えるわ。」
お春ちゃんが楽しそうに言いました。
3人のおばあちゃんは子供のように笑いながら、楽しそうに桜を見ていました。

読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。
にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ


読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。 にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ

お春ちゃんを外へ

「桜?」
「そうよ。今、桜が満開よ。お春ちゃん、行こうよ。」
お豊ちゃんが、言いました。
「お弁当も作ってきたの。」
まあばあちゃんが言いました。
「そら、ええな。見に行こう、見に行こう!」
お春ちゃんは、嬉しそうに言いました。
「ひろ子ちゃんも行くか?」
お春ちゃんが、ひろ子ちゃんに声を掛けました。
「ひろ子、宿題があるの。ごめんね、おばあちゃん。」
ひろ子ちゃんが、申し訳なさそうに言いました。
「そやそや。漢字の練習やったな。ほな、行って来るわ。邦子は?」
「え? 私は……」
誘われると思っていなかったのか、戸惑っている様子の邦ちゃんに、お豊ちゃんが、助け舟を出しました。
「お春ちゃん、年寄り三人で楽しく話しようよ。うちらだけじゃ、不満やの。」
「そうやないけど……」
「ほな、行こう行こう! お春ちゃんを借りて行くね。行ってきます。」
お春ちゃんを表に連れ出すと、お豊ちゃんが、
「あんた、病み上がりやねんからここに乗り!」
お豊ちゃんが、車イスをポンポンと叩きました。
「それ、まあちゃんのやろ? ええよ。自分で歩くよ。」
お春ちゃんが、ムゥとして言いました。
「そう言わんと、病み上がりやねんから。乗りよ。」
「そうよ。お春ちゃん。今度は、お春ちゃんが車イス、押してくれたらいいじゃない。」
「それもそうやな。ほな頼むわ。」
お春ちゃんがヨッコラショッと車イスに座りました。
「出発進行!」
3人は公園に向かいました。

読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。
にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ


読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。 にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ

お春ちゃんを誘って

「まあちゃん、お春ちゃんを誘って、桜を見に行かない?」
お豊ちゃんがまあばあちゃんに言いました。
「そうね。ちょうど見ごろだし、きっと、気晴らしになるわね。」
まあばあちゃんの返事にお豊ちゃんは、
「それに、みんな、気づまりなんじゃないかと思うの……」
まあばあちゃんも小さく頷きました。
始めはうまくいくのでは思っていた、まあばあちゃんでしたが、なかなかそうはいきませんでした。
お春ちゃんときたら、オッチャンが話しかけても、知らん顔したり、ひろ子ちゃんに行方不明のお母さんの事を聞いたりします。
まあばあちゃん達は、そんな様子を見かねて、なんとかお春ちゃんを散歩に連れ出そうとするのですが、なかなか行こうとしません。
桜ならお春ちゃんも見に行きたくなるのではと、お豊ちゃんは思ったようでした。
まあばあちゃんも、たまにはオッチャン達にゆっくりしてもらいたいと思っていたので、お豊ちゃんのアイデアはとてもいいと思いました。

読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。
にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ


読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。 にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ

邦ちゃんの暗い顔

邦ちゃんが暗い顔で、洗濯物を取りこんでいると、オッチャンが仕事から帰ってきました。
「邦ちゃん、どないしたんや。なんや心配事でもあるんか? 話したら楽になるで。」
オッチャンが、子どもをあやすように、小柄な邦ちゃんの目を覗き込みました。
オッチャンの目を見ていると、なんだか悲しくなって涙が溢れてきました。
「どないしたんや。邦ちゃん。」
「これから先、母の事で、皆に迷惑かけると思うと、どうしていいか分からなくなって……」
「なんでや、なんにも迷惑かかってないで。どないしたんや。」
「あなたにも、ひろ子にも、チクチク嫌味を言ってるの知ってます。本当にごめんなさい。」
「お母さんもいろいろ大変な事が続いて辛いんや。そんなん気にしてないで……。ワシやひろ子の事は気にせんとき。」
オッチャンと話しているうちに、気持ちが落ち着いてきたのか、邦ちゃんの涙が止まってきました。
―――ゴー、ゴー ンガー―――
とお春ちゃんのイビキが二人のいる庭先まで聞こえてきました。

読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。
にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ


読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。 にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ

邦ちゃんのためいき

洗濯を干している邦ちゃんに、お春ちゃんが、
「なあ、なんも思わんのか?」
と聞いてきました。
「え?」
と邦ちゃんは聞き返しましたが、本当は何の話を始めるのか分かっていました。
「もう、カンの悪い子やな。ほれ、あの話や。」
お春ちゃんが、イライラしたように言いました。
「あの話?」
こう言っている間に、他の話題に気がいくこともあるのですが、今回は駄目でした。
「大学イモの話や。」
「大学イモ? まあおばちゃんの美味しいから楽しみやね。」
「そんな事言うて! 旦那の事、気が利かんと思わんか? 嫁さんを目の前に置いて、まあちゃんに大学イモ頼むなんて! あーまた、イライラしてきたわ。これやから田舎者は~。」
「でも、私の大学イモはあんまり美味しくないのよ。べチャットして……私が、まあおばちゃんの大学イモ食べたいって、あの人に言うててんよ。だからやと思わ。」
これを言うのも、何回目でしょうか……。邦ちゃんは、ちょっと疲れてきました。
以前はお春ちゃんとの会話で疲れるなんて事なかったのに、優しいオッチャンとひろ子ちゃんと暮らすようになって、気ばかり使っていた生活から解放されて、お春ちゃんとの会話を重く感じるようになりました。
「それやったら、黙っとたらええこっちゃ。それをペラペラと……」
邦ちゃんは、お春ちゃんに気付かれないように、小さくため息をつきました。

読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。
にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ


読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。 にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ

邦ちゃんの気持ち

邦ちゃんは、いつも愚痴ばかり言っているお春ちゃんを家に迎えて、本当に良かったのか、分かりませんでした。
今からあんなことを言っているのでは、すぐにオッチャンにも何か嫌味なことを言いそうだし、ひろ子ちゃんにも悪い影響を与えるのではと心配でした。

お春ちゃんを引き取ろうと最初に言ったのはオッチャンでした。お春ちゃんは、一人暮らしを望んでいると邦ちゃんが言っても、
「それは、わしらに気ィ使って言うたはるねん。ほんまは娘と暮らしたい思てはるで。」
そう言って、オッチャンは、お春ちゃんが生活しやすいように、家をリフォームし始めました。バリアフリーの頼まれごとが多かったらしく、とても手際よく改装しました。
「わしなぁ、邦ちゃんが嫁に来てくれてホンマに嬉しいねん。せやから、邦ちゃんのお母ちゃんにも何かできたら嬉しいわ。」
オッチャンがニコニコ顔で言いました。
邦ちゃんは、優しいオッチャンに自分の本当の気持ちが言えませんでした。
本当は、邦ちゃんは、母親であるお春ちゃんと一緒に住みたくなかったのです。

読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。
にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ


読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。 にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ

お春ちゃんのほめ方

「なんや、旦那の声が聞こえてきたと思たけど、また、まあちゃんらと出て行ったみたいやな。」
お春ちゃんが、お茶をすすりながら言いました。
「まあおばちゃんを送って行ったんだと思います。足が痛そうやったから。」
邦ちゃんが答えました。
「せやけど、あれやな……、誰にでも取り柄ってあるもんやなぁ。」
「え?」
邦ちゃんは、意味が分からず聞き返しました。
「この家の改造、これ、みんな旦那がやったんやろ?」
「そうよ。主人が、お母さんの便利いいようにって……」
「うまいわぁ。プロやな。昔は大工いうたら、学いらんかったしな。」
「…………」
感謝してるとは思えない言い回しに、邦ちゃんは返事する言葉が見つかりませんでした。
「旦那は中卒やろ?」
「そうよ。」
「ここら辺の人と違うな。田舎の人? 方言が残ってるよう……」
「お茶を入れ替えてくるわね。」
邦ちゃんは、お春ちゃんの言葉を遮って、席を立ちました。
(さっき、あの人と挨拶した時は、いい雰囲気でやっていけそうかもって思ったのに……)
邦ちゃんは、お春ちゃんと少し話しただけで疲れてしまいました。

読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。
にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ


読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。 にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ

仲良くやっていけそう

洗い物を終えたまあばあちゃんと邦ちゃんが、居間に戻ってきました。
「お豊ちゃん、私たちはそろそろお暇しましょうか? 私たちがいたらお春ちゃん休めないでしょ?」
「そうやね。帰ろう。」
「なんでぇな。もうちょい、おってぇな。せっかく帰ってきたのに。」
お春ちゃんが、不満そうに言いました。
「だめだめ、寝てなくちゃ。」
「せやな、そうするわ。」
「邦ちゃん、ごめんね。つい楽しくて長居しちゃったわ。」
「まあおばちゃん、私、送ります。」
「何言ってるの、お春ちゃんの側にいてあげて。」
と言って、お豊ちゃんと二人で、表に出ました。
「なんや、ばあちゃん、帰るところか?」
オッチャンが帰ってきていました。
「ええ。」
「ほな、車に乗って行き。」
「いいわよ。すぐそこなんだから。」
「せやけど、ばあちゃん、足悪いんやろ? 乗って行き乗って行き。今日は、病院まで行ってもろて有り難うな。」
いつも優しい気遣いをしてくれるオッチャン。
まあばあちゃんは、お春ちゃんがオッチャンを嫌うので、一緒に暮らしていけるか心配していましたが、オッチャンがお春ちゃんのためにリフォームしたり、手すりをあっちこっちに付けたことを本当に心から喜んでいました。……。
今日の様子を見ていると、うまくやっていけそうな気がしました。

読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。
にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ


読んでいただいて有り難うございます。
もし良かったら、ポチしてくださると嬉しいです。 にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ
sidetitleプロフィールsidetitle

Author:堺の町のまあばあちゃん
堺の町に住む、ひとりのおばあちゃんのお話です。
住み慣れた町の人々との交流や孫のトモちゃんや犬のジロとの生活を通して力強く生きていく姿を物語に書きたいと思います。 
宜しくお願いします。
良かったらポチお願いします。
にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ

sidetitleフリーエリアsidetitle
sidetitlePRsidetitle


sidetitle最新記事sidetitle
sidetitle最新コメントsidetitle
sidetitle検索フォームsidetitle
sidetitleカウンターsidetitle
sidetitle天気予報sidetitle

-天気予報コム- -FC2-
sidetitleカテゴリsidetitle
sidetitle月別アーカイブsidetitle
sidetitle最新トラックバックsidetitle
sidetitlePRsidetitle


アフィリエイト・SEO対策



sidetitleRSSリンクの表示sidetitle
sidetitleブロとも申請フォームsidetitle

この人とブロともになる

sidetitleリンクsidetitle
sidetitleQRコードsidetitle
QR