年頃


「トモちゃん、『永遠の0』、いつでもいいから、私にも読ませてもらってもいい?」
お豊ちゃんが遠慮がちに言いました。
「あっ、私、もう読みましたから、今、持ってきます。」
「そんな、急がなくていいんよ。いつでもいいの。」
お豊ちゃんが、慌てたように言いました。
「そうよ、明日から、お父さんたち仕事だしトモちゃんも学校だから、おばあちゃんが持ってくるわよ。」
まあばあちゃんも言いました。
「でも、今日は終戦日だから、今日から読みたいかなと思って、お豊おばあちゃん、気になるでしょう?」
と、答えたトモちゃんは、もうサンダルを履いて表に出かけていました。
「トモちゃんは、シャキシャキしてて気持ちいいなぁ。感じエエわ。挨拶もよう出来るし。なあ、まあちゃん。」
まあばあちゃんは嬉しそうにうなずきました。
「戦時中は、あれくらいの年頃の子は、もう勉強そっちのけで、工場で弾作ってたんやもんなぁ。今はホンマにええ時代や。」
「ほんとうに……」
お春ちゃんの言葉にまあばあちゃんも頷きました。
「おまたせ~」
トモちゃんの声です。
「もう、戻ってきた。早いなぁ。風みたいやな。」
お春ちゃんが感心したように言いました。
「はい。お豊おばあちゃん。」
「有り難う、これがさっき話してた本やね。ありがとう。」
トモちゃんは、ニコッと笑うと、みんなに会釈して帰って行きました。
お豊ちゃんは、大切そうに本の表紙をなぞると、キュッと胸に抱きしめました。

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影膳


「そやけどな、軍人さんやら憲兵は怖かったわ。電車の中で、バーンと足広げて座って、1人で3人分くらい場所とるねん。3人来たら、あの長い座席、ぜーんぶ埋まってしまうねん。年寄りが乗ってきても知らん顔やもんね。」
お豊ちゃんが言うと、お春ちゃんが、
「ほんまやで。私のお父ちゃん、南方の方に行かされてんけど、畳屋してたんやんか。畳屋が鉄砲、持ったからって何が出来る? 畳の事なら詳しいけど他にとりえもないのに、人なんかよう殺されへんで。せやから、怖い軍人に酷い目にあわされてたんちゃうんかなぁと思って、お父ちゃん酷い目にあってないか心配やった……」
「お父ちゃん、帰ってきはったん?」
「ううん。これくらいの箱に石ころ一つ入ったのが帰ってきただけ。髪の毛一本ないんよ。石ころがお父ちゃんやて……。お父ちゃんの骨は、今も南方のどこかにあるんやと思う。」
「辛いなぁ……」
「ホンマやで。せやから、お母ちゃんは、いつか帰ってくると思って、ずっとご先祖さんにお父ちゃんが帰ってきますようにってお願いしてた。ずーっと影膳もしてたけど、お母ちゃん、先に死んでしもたわ。ほんで、私もこの歳や。お母ちゃん、あの世で会えてたらええやけどな……」
そこまで言うと、お春ちゃんは黙り込んでしまいました。

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『永遠の0』を読んで


―――『永遠の0』の内容に触れる個所が少しあります。

12時を知らせる音と共に、まあばあちゃん、お春ちゃん、お豊ちゃん、そして、トモちゃんが黙とうを捧げました。
みんな、正座して、神妙な面持ちで黙とうを捧げています。
黙とうを終えて、陛下のお言葉を聞いた後、お昼を頂きました。
「トモちゃんは、エライなぁ。今時の若い子はこんなんせぇへんのかと思ってたわ。」
お春ちゃんの“今時の子”論が始まりそうです。
「でも、8月15日の意味わかるか?」
「テレビでドラマを見たり、映画とかで、でも、一番よく分かったのは、『永遠の0』を読んでからと思う。私は、実際に体験してないけど、ぐんぐん話の中に引きこまれるの。まるで、その場にいるみたいに……。こんな事言うと、体験者の人を不愉快にさせるかもしれないけど、それくらい分かりやすいというか、スゴイの。主人公はゼロ戦に乗ってアメリカの戦艦にぶつけて死んでしまうんやけど……」
「特攻に行った人やね。特攻の人らは、片道の燃料しか入れてもらわんと、戦地に出されんのよ。」
お豊ちゃんが、痛ましそうに言いました。
「それ、ミズーリやな。水葬に付された人と違うん。」
お春ちゃんが静かな口調で言いました。
「お春おばあちゃん、知ってるの? そうなの、その人がモデルみたい。」
「私が、知ったんは、戦後だいぶ経ってからやけどな。」
「わたしらも、空襲で逃げ回ってたけど、兵隊さんはもっと大変やったと思うわ。あの人らは、うちらの防波堤になってくれはってん。」
「せやで、アホな戦争やったという人も大勢いるけど、どの方面から見ても正しい事なんかあらへん。空調の効いた部屋から、ちょっとばかり取材に行って知った風なこと言うて、英霊さんに恥ずかしゅうないんかと思うわ。」
お春ちゃんの話は、トモちゃんには分かりにくいらしく、返事に困っているようでしたが、お豊ちゃんとまあばあちゃんには理解できました。
「ニュースなんかでは、特攻隊の人の事をテロと同じように言う人をよくみかけるけど、全然違うんだなぁって事がよく分かった。怖い上官がいて自分の意見なんて言ったら、半殺しの目にあわされるし、なにより、みんな死ぬのは怖いけど、国や家族のために、敵を少しでも遠ざけるために片道切符の戦闘機に乗ったんだなって、思った。」
トモちゃんが、しみじみ言いました。そして、
「あっ! 私の説明だと軽く聞こえるかもしれないけど、本は全然違うんだよ。」
慌てたように付け加えました。
「そんな、慌てんでも分かってるでトモちゃん。戦後に生まれたトモちゃんらは本当の意味で戦争がどんなもんか分からんやろけど、戦争がアカンことなんていうのは当たり前や。でもな、この戦争で亡くなった人の事をあーだこーだ言うのは、私は好かんわ。」
お春ちゃんが、言いました。

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まあばあちゃんの8月15日


毎年、お盆の15日は、家で過ごすまあばあちゃんですが、今年は、淋しがり屋のお春ちゃんのために、お豊ちゃんと3人でお昼ご飯を食べることにしました。
まあばあちゃんは、仏壇にお供えするために、ちらしずしを作りました。お供えしたあと、ちらしずしをお重に詰めます。
「あら、お母ちゃん、今日もお春おばちゃんのとこ、行くん?」
「ええ、今日は終戦記念日でしょ。年寄り同士、話が合うと思うの。」
お春ちゃんとのお昼ごはんをお休みすることは、よくあります。恭子ちゃん達がお休みの日、トモちゃんのお休みの日は、お春ちゃんとお豊ちゃんの二人でお昼を食べているようです。
今日は、家族がそろう日ですが、終戦日はまあばあちゃん達にとって特別な日です。
黙とうを捧げる大切な日です。
トモちゃん達もこの日を大切に思っていますが、戦争を体験してきた者にしか分からない複雑な感情は、戦後に生まれた恭子ちゃんやトモちゃんにはやはり理解出来ないと思うまあばあちゃんでした。
「今年は、お春ちゃん達と黙とうしようと思うの。」
「それがいいね。お春おばちゃんも戦争を生き抜いてきたんもんね。」
「ごめんね、行ってる来るわね。ありがとう。」
「行ってらっしゃい。」
「暑いから、ジロ達おいていくわね。」
「了解。ジロ、ミミちゃん、今日は私たちといようね。」
と言って、恭子ちゃんがジロとミミちゃんを抱っこしました。
「行ってきます。」
外に出ると、まあばあちゃんは、さんさんと降り注ぐ太陽にフラッとなりました。
今日は、とくべつ日差しが強いようです。
行き慣れたお春ちゃん家までが遠くに感じます。
ふわっと日差しが遮られました。日傘です。
「おばあちゃん、日傘忘れたらアカンやん。」
トモちゃんでした。
「お春おばちゃんのとこまで一緒に行くよ。」
「ありがとう、トモちゃん。」
「あれ、お春おばあちゃん達、表に出てるよ。ほら…」
そう言って、トモちゃんが、手を振りました。
お春ちゃんとお豊ちゃんも手を振っています。
「まあちゃん、早よ早よ! 黙とうの時間がきてしまうで」
お春ちゃんが、急かしました。

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お春ちゃんのぶんも……


「おばあちゃん、何作ってるの?」
「刺し子の巾着よ。」
「へぇ。おばあちゃん、うまいねェ。あれ、同じの二つ作るの?」
「そうよ。あっ、トモちゃん、冷蔵庫に羊かん冷やしてあるから、いただきましょう。お母さんたちの所にも運んでね。」
今日はお仕事が休みですが、家の仕事場で済ませられる事をしているようです。
「はーい。」
実は、二つ目の巾着は、お春ちゃんのを作り直しているのです。
―――「なぁ、わたし、こんなん持ち歩くの嫌やわ。まあちゃん、作り直してぇな。お願い!」
―――「……でも、せっかく作ったのに……」
―――「せやかて、みんなええのん持ってのに、私のひょこいがんだぁるんやもん。」
と、お春ちゃんに頼みこまれて、まあばあちゃんが作り直すことになりました。

「あれ、お母ちゃん、何やってるの?」
恭子ちゃんが、言いました。
「刺子よ。」
「へぇー、キレイやね。紺地に白って映えるねぇ! 母ちゃん、縫い目がキッチリしてるから、すごいええわ!」
恭子ちゃんが、まあばあちゃんの刺子を見て、感心しました。
「おっ、刺子ですか? お母さん、うまいなぁ。」
お父さんも仕事部屋から出てきました。
「ちょっと、見せてもらってもいいですか?」
「はい。」
「へぇ。うまいなぁ。すごいなぁ。ワシも、なんか作ってほしいな。」
「まあ!」
お父さんは、まあばあちゃんに滅多に頼みごとをしないので、嬉しくなりました。

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刺子の続き


「お話、聞いてもらえて、なんだかスッキリしたわ。元気でてきたわ。ありがとう。さっ、刺子の続きしましょうか。もう一息で完成やもんね。頑張ろう!」
お花ちゃんが、ニッコリ笑って言いました。すると、お豊ちゃんが、
「ホンマやね。早よ、作ってしまおう!」
しばらくの間、みんな黙々と針を進めました。
夢中な顔をして作っています。
「できた!」
お豊ちゃん言いました。嬉しそうにかざして見ています。
「あら、まあちゃん、何作ってるの?」
「肩から下げられたら便利かなと思って、布が余ったからいただいたの。はい。お花ちゃん出来た。」
「有り難う、これで落とす心配ないわ。前はクスリを落としてしもて、往生してん。あっ、お豊ちゃん、これ下げてファッションモデルしてよ。」
「いやぁ、恥ずかしいわ。じゃあ、ちょっと、歩いてみるわね。」
お豊ちゃんが、モデルっぽく歩いてファッションショーのように、クイっと刺子の巾着がある方の腰を少し上げました。
「お豊ちゃん、いいわ。」
まあばあちゃんが嬉しそうに言いました。
「まあちゃんも、私のつけて歩いてよ。」
とお豊ちゃんがまあばあちゃんに自分の作った刺し子のバッグを渡しました。今度は、まあばあちゃんが歩きます。
「おっ、うまいうまい。みんな、ホンマのモデルさんみたいやわ。」
お春ちゃんが手をたたきました。
「次はお春ちゃんよ。見せてよ。」
お豊ちゃんが言うと、お春ちゃんは慌てて自分の作った刺子の巾着を隠しました。
「どないしたん。」
「私のはええよ。」
「せっかくできたのに、見せ合いっこしようよ。」
「せやかて、みんな上手に出来てるから、私の見て、きっと笑うわ。」
「そんなことないよ。私ら、巾着よりけったいなこと、いっぱい言うてんのに……」
「それもそやな……」
お春ちゃんが、観念したように巾着を見せました。
「…………」
「…………」
「…………」
お春ちゃんの巾着の出来栄えに、みな沈黙しました。
「あんた、今までどないしてたん? こんなんで、戦争中ようやってきたなぁ。つくろいもんどないしてたん?」
お春ちゃんの巾着はどこかゆがんでいて、刺子も縫い目がアッチコッチソッチコッチと飛んでいます。
「わたし、姑が優しかったから、みなしてもうててん。お義母さん、上手やったし、まあちゃんほどちゃうけど……」
お春ちゃんがションボリして言いました。
「いつも思うけど、あんたって、大変大変や言うてたかて、なんかうまいこと行くよねぇ。ほんまに羨ましいわ。」
お豊ちゃんが、不思議そうに言いました。

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長男さんも?


「でも、そんな嫁さんにつかまって、息子さんも難儀してんと違う?」
「え?」
お春ちゃんの言葉にお花ちゃんはキョトンとしました。
「そういう嫁さんは、婿さんもアゴで使って偉そうにしてると思うわ。家でも気ぃばかり使って、出世できへんのと違うか?」
「私、自分の事でいっぱいで気ィつかんかったわ。ほんまやね。そうかもしれへんね。」
そう言って、お花ちゃんはお茶を飲みました。そして、コップを揺らしながら言いました。
「でも、結婚を決めたんは自分の判断やもんね。息子は嫁と家庭を持って行こうと思って結婚したんやもん。さっき、お春ちゃんに、『60過ぎのジイサンつかまえて』て言われた時にハッとしたわ。もう所帯持って40年近くなるんやもんね。そやのに親のお金当てにするってオカシイもんね。それに、今のままじゃ、大事にしてくれてる娘に申し訳ないわ。長男かて、退職金もらう頃やし。自分で自分の家のローン払ったらいいねん。決めた! 私、新しく口座を作って年金移すわ! もし、ここに来たら追い返すわ。私、戦うわ! このままヤラレッぱなしで、あの世に行きたくないわ。」
「私、加勢するわ!思い残すことないようにしとかんと成仏でけへんで。」
お春ちゃんが、言いました。
「ほんまやね。」
お花ちゃんが力強く頷きました。
「私も、悪い方ばかりに考えずに、娘と話してみるわ。」
お豊ちゃんが言いました。

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行きたいけど……


「せやけど、あんた、娘さんにバレタんやったら、連れて帰ってもろたら良かったのに。」
「娘もすぐに私を引き取りたいって言うてくれたわ。でも長男夫婦は私の年金を取りこんでるから、ウンと言わないんよ。」
「ああ、せやったなぁ。」
「でも、ずーっと我慢してきたのに、娘に隠さんでもええと思ったら、もう我慢できへんようになって、よう家を抜け出したわ。でも、お金持たせてもらってないから、歩きやん。そしたら、嫁につかまってボケ老人呼ばわりされて……」
「あんたも、タクシーで着払いにしてもらったらいいのに。」
「そんなんようせんわ。娘に恥ずかしいわ。痩せても枯れても親やもん。」
「それもそやなぁ。」
まあばあちゃんは、お花ちゃんの話を聞きながら、自分の母親の事を思い出していました。
冷たい木枯らしの吹く夜更け、玄関をトントン叩く音に様子を見に行ってみると、お嫁さんと気が合わず家を追い出されて、巾着ひとつ持って玄関に立っていた母の姿がありました。寒い日に単衣の着物を着て体を震わせていました。

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おっとろしい嫁さん


「見るからに、年寄りの洗濯物って分かるやん?」
「そやな、うちらガバッと頭から着られるようなん好きやからなぁ。そんで?」
「娘は、洗濯物の事は聞かず、長男に日頃の私の様子を聞かせてほしいと言ったわ。」
「それで、それで?」
お春ちゃんは身を乗り出しました。
「私、気になって、立ち聞きしようと思って……。娘たちがリビングに入るのを見計らって廊下で聞き耳を立ててたん。もう、盗み聞きが悪いとかそういう頭も働かんようになってたんやね。ただ気になって気になって……」
「うん」
「娘は、食事はどうしているのかとか、いつもは私に聞くことを長男に聞いたわ。長男の声は聞こえなかったわ。」
「黙ったまんまかいな。」
「娘があんまり聞くから、『嫁に任してある』って。それだけ……。冷たい声やったわ。私、あの子のために、頑張ってきたんよ。それこそ長男やと思って娘より手をかけてたと思うわ。そやのに……なんであんな言われ方せなあかんの?」
お花ちゃんは涙をにじませて言いました。
「しばらくしたら、嫁が後ろから、『なんでここにいるんですか、部屋に戻って下さい』って言われて……」
「せやけど、おっとろしい嫁さんやな。仕事してはるの? 主婦してはるの?」
「教師してたんよ。息子とは職場で知り合ったんよ。」
「へぇー、先生かいな? 小学校の?」
「そうよ。」
「お花ちゃんとこは、先生一家なんやなぁ。うちらの頃の先生いうたら、聖職いうて立派な人多かったけどなぁ。まぁ、先生風ふかせて怒ってばっかりのんもおったけど……。せやけど、嫁さんがどんな教師やったか分かるわ。仕事も通り一遍マンネリで、子どもをえこひいきして、学校でも生徒に嫌われてんで!」
お春ちゃんが、憤慨して言いました。

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洗濯物


「私、娘の所に来て、ほんまに幸せやけど、迷惑かけてばっかりなんよ。この間みたいに、ウロウロして買い物ひとつ、まともにできなくなって、これでホンマに子どもに教えてたんかなと思うわ。」
「まぁな……。十年も、一人にされとったら、頭のネジも緩みそうやな。」
お春ちゃんが、心配そうに言いました。
「一人ぼっちでいるうちに頭がオカシクなってしもうたんやろか……」
お花ちゃんはションボリしました。
「真面目にとらんといてよ。テレビもなかったん?」
「小さいのひとつ置いてくれてたけど、なんか見る気がせぇへんのよ。そうするうちに頭がボーっとしてきて……」
「せやなぁ、そんな閉じ込められとったら、なんもやるきせぇへんわなぁ。」
「お豊ちゃんの娘さんの話聞いてたら、自分の長男の事が思い出されてきて、ゾーっとしたわぁ」
お花ちゃんは、恐ろしそうに自分の肩を抱きました。
「せやけど、娘さん、十年間も気ィ付けへんかったん?」
お春ちゃんが、別室にいるコナン君のお母さんを気にしてか小さな声で聞きました。
「私も、そんな目に遭わされてるの恥ずかしいから気付かれへんようにしたし、長男も私を部屋に押し込んでると思われたくないから、その時は、長男の家に迎えに来てもらって外で食事したり……、応接室?リビングっていうの? そこで話したり……娘も働いてるから、そんな頻繁に来られへんもん。取り繕えるもんよ。でも、それも、だんだん慣れてきたいうか隠すのも疲れてくるいうか……わたし、嫁がなかなか洗濯してくれへんから、お風呂の時に洗って庭に干してたんよ。干すいうても竿とちゃうよ。植木や石に置いとくんよ。」
「そんなところに置いといたら、洗濯もんにゴミいっぱい着くやろ……」
「でも、洗濯竿使ったら、嫁に怒られるから……部屋に干しとくのも臭くてたまらんのよ。お風呂で手洗いしてるから、脱水も出来ないし、私ら、手の力も弱ってるから、しっかり絞られへんもん。天気のいい日はせめて外で干したいと思ったんよ。」
「それもそやなー。でも、竿に干したら怒るって言うけど、植木に干す方が格好悪いと思うけどなぁ……」
お春ちゃんが首をかしげました。
「嫁の考えてることはよう分からん。」
「ホンマに分からんなぁ。」
「ある日、娘が来てくれるのんコロッと忘れてて。干しっぱなしにしてたん。その時、娘が気ィ付いて……」
「そんなん早よう娘さんに言うたほうが、ちょっとでも早うに助けてもらえたんちゃうん?」
お豊ちゃんが、辛そうな顔で聞きました。
「でもね、私が悪いことしたわけでもないのに、娘にばれた時は恥ずかしくて隠れたわ。」

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独りで……


「なあ、あんた、10年も部屋に閉じ込められとったん?」
「閉じ込められてた言うことは無いけど……、年金を取り上げられてるから、お稽古もやめたし、出かけることも無くなったわ。でも、一番辛かったんわ。おトイレかしら……」
「トイレ?」
「長男の嫁が、私が使った後、バタンバタン音さして、掃除するんよ。最初は私も汚したんかなと思って、謝りにいったん。そしたら、返事もせんとプイッとして行ってしもて。」
「私も、返事もせん。前髪の長い強欲女を知ってるわ。」
お春ちゃんは、何度も頷いて言いました。
「次から、掃除してよく確かめて、出てきたんよ。でも、同じように大きな音立てて掃除するんよ。」
「嫌味な嫁やな! 他にすることないんかいな!」
お春ちゃんが憤慨しました。お花ちゃんは、話を続けました。
「朝一番に、お茶をポットに入れて、部屋に置いてくれるんやけど……」
「それを一日で飲むの? 渋ぅなるやろ? 茶ぐらい自分で入れられるで。」
「でも、台所行くたびに『何の用ですか?』って責めるように聞かれたら、行けなくなるもんやよ。」
「それもせやなぁ。そんなったら、あんた食事どないしてたん?」
「長男の嫁が、部屋に一人分の食事を盆に載せて、部屋に持って来るんやけど……、いっつも味噌汁もオカズも冷たいんよ。洗濯だってしたいけど自分でしにくいし、何日も同じ下着きてたんよ。」
「なんやそれ!」
お春ちゃんが、腹立たしそうに言いました。
「あんなにひどい目に遭わされたのに。年金置いてくるんやもんね。情けないわ。でも、結果的にはそれが良かったって、娘が言うんよ。」
「なんで!?」
お春ちゃんが目を見開いて言いました。
「娘が言うには、私の年金を当てにして、いっぱいいっぱいのローンを組んでるはずやから、もし、年金を引き上げたら、ローンを飛ばして追い出されて、きっとここへ乗り込んでくると思うって言うねん。」
お春ちゃんは、深くうなづきました。
「娘は、私を大事にしてくれたんやったら来てくれてもいいけど、そんな恐ろしい人ら、兄夫婦でも怖いって言うのよ。私も長男夫婦の顔を見るのは恐ろしいし……」
お花ちゃんは下を向きました。手にポタポタ涙が落ちました。

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リセット


「でも、あんた、年金なんか振込やねんから、口座かえたらええやんか。でないと、うちらこれから病気も多いのに娘さん大変やで。」
お春ちゃんが、珍しく正論を言いました。
「うん。お春ちゃんの言う通りなんやけど……。娘の所に来るときの条件が、年金でローンを払う事なんよ。」
「はぁ! せやかて、お花ちゃんの息子いうたら、もう年金もらう歳やろ。」
「家を建てたんは、10年ほど前やけどね。頭金も私の貯金から出したんよ。」
「はー!」
お春ちゃんは、ため息をつきました。
「私、長男夫婦に嫌われてるから、施設に入りますって言うたら、そんな金どこにあるねんて言われたわ。だから、娘が呼んでくれた時は、神様に見えたわ。娘ってええね。」
お豊ちゃんとお春ちゃんは、娘さんの事で悩んでいるのにウッカリ言ってしまったお花ちゃんは、ハッとしたように口に手を当てました。
邦ちゃんはいい娘さんですが、お春ちゃんにはなかなか伝わっていないので、またへそを曲げてしまうかもしれません。
でも、お春ちゃんの口から出たのは、意外な言葉でした。
「うちの邦子も、わたしが見栄っ張りなもんやから、前の旦那は大卒でハンサムなんやけど、結婚してみれば気の小さい男で、おまけに最後は女を家に連れこんできてな。私が離婚なんか格好悪いと思てたのを知ってたんやね。ずっと、最近まで我慢してたんや。今まで振り返ってみると、いろいろ無理させてたなって思うわ。」
「お春ちゃん。」
まあばあちゃんは、お春ちゃんの気持ちを知ってホッとしたように名前を口にしました。
「でもな、やっぱり嫌やねん。昭雄さんも連れてきた女も離婚したことも、みーんな無かった事になって元通りになれへんかなっていう考えが頭にひっついて離れへんねん。それでイライラして……なんもかんもに腹立ってくるねん!」
「わかるわ。」
お花ちゃんが、お春ちゃんの背中を擦りながら言いました。
「わたしも、長男のこと、もう一度育て直したいわ。私の育て方が悪かったから、こうなったんやもんね。」
「息子いうたかて、60過ぎのじぃさんつかまえて、育て方もないで。」
今度は、お春ちゃんがお花ちゃんの背中を撫でました。

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お花ちゃんの話


「お花ちゃんが?」
「そうよ。」
「お花ちゃん、昔、小学校の先生やってて、娘さんが、前に勤めてたとこの紹介で翻訳家やってはるんやろ。エリート家族やんか。あんたにうちらの苦しみは分からんよ。あんたにはまだ話してないけど、お豊ちゃんも私もたいがい辛い目におうてんねん」
「お春ちゃん。私の事いつも幸せそうやって言ってくれるやろ?」
「せやんか。優しい娘と一緒に暮らして、小学校の先生やってたんやったら年金もたんまりあるちゃうん? お金の心配もないし、こんなん言うたら、なんやけど、青息吐息のうちらとはレベルが違うわ。」
「それがウソなんよ。」
「小学校の先生やったんが?」
「それは本当やけど、お春ちゃんが羨ましがってるのを黙って聞いてるのが私のウソ。」
「意味が分からんわ。」
お春ちゃんは首をかしげました。お花ちゃんは話を続けました。
「『お母さん、一人で大変やろ』って長男の家族が、私の家に住むようになって……」
「ええ息子やんか。」
お春ちゃんの言葉にお花ちゃんは首を振りました。
「それからしばらくして、嫁が家を建て替えたいって言いだして。わたしは生まれ育った家で死にたいと思っていたから、断ってたんやけど……。嫁は頑固やし、やっぱり年寄りでは勝てんわ。」
「なんでぇな。新しい家の方が、気持ちええやんか。今の家はオシャレやし。なんで嫌なんか分からんわ。息子夫婦が来てくれたら、身の回りの事もしてもらえるし。」
「でもね。自分が守ってきた家なのに、北向きの一部屋与えられて、部屋から出てきたら、汚いもんでも見るような目で見られたら、耐えられへんよ。それは古い家の時からやよ。」
「え~! なんでやな。」
「孫かて、ひ孫かて、年寄りは汚いと思ってるみたいで。私を見たら走って逃げていくんよ。そんなんやのに、新築の家のローンは私の年金で払ってんの。」

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見栄


「でも、生まれてから今まで、一度もウソをついたことのない人っているかしら?」
まあばあちゃんがポツリと言いました。
「私はあるわ。」
「まあちゃんが?」
お春ちゃんは驚いたようにまあばあちゃんを見ました。
「そうよ。わたし、恭子ちゃんのこと、ずっと、おなかを痛めて生んだ娘だと言い続けてきたわ。歳が離れすぎてるから“遅くにできた子で”とか言っちゃってね。」
まあばあちゃんがお春ちゃんを見ると、お春ちゃんは、どこかバツの悪そうな顔をしました。
「恭子ちゃんの事を自分が産んだ娘だと思い込みたかった。信じたかったのよ。ホント最近、恭子ちゃんこと聞かれて、本当のこと言うようになったの。……トモちゃんが生まれた頃からじゃないかしら、それまで、ずーっとウソついてたわ。でもね……」
こんどは、お豊ちゃんを見ました。
「このウソは、自分の心を守るウソよ。私が恭子ちゃんを実の娘だと思いたかったのは、恭子ちゃんが私をほんとに大事にしてくれて慕ってくれたから。実の娘だったらどんな風に私はこの子に尽くすんだろうと、養女だからって、おざなりになってることろは無いかって……いつも気がかりだったわ。」
「それやったら、お豊ちゃんのウソとは違うで。お豊ちゃんのは見栄っ張りのウソや。」
「でも、私やお豊ちゃんのウソで困る人、一人でもいる? お春ちゃん、困った?」
「困らんけど、騙されたら腹立つやんか。」
「でもね、ホントかウソか、よく分からないホラ話を会うたびにする人の方が、よっぽど大変よ。お豊ちゃんは、自分の心を守るために言ったウソよ。ご近所に、むやみに馬鹿にされないためのウソよ。そして、何よりも娘さんを悪く言われたくなかったのよ。そんな小さなウソ、みんなついてると思う。」
お春ちゃんは、黙ってしまいました。次に口を開いたのお花ちゃんでした。
「私もです。私もウソついてました。」

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「ごめんね。私、ウソばっかりついて。でも、本当のことよう言わんかってん。年金もない年寄りなんか誰が相手にする? せめて、娘には大事にされてるって、思われたかったんよ。」
ハッピーちゃんが立ち上がって、心配そうにお豊ちゃんの顔をペロペロとなめました。
「本当は、年金もなく、子どもからの助けもなく、わずかな貯金を取り崩して暮らす貧乏な年寄りが、本当の私なんよ。」
「お豊ちゃん……」
まあばあちゃんは、いたたまれなくなって、お豊ちゃんの名前を呼びました。
「でもね、私の娘は孝行娘やと思いこんでるうちに、心の中の娘が優しく気遣ってくれて、いつも声をかけてくれるの。そんな事を繰り返し思ってるうちに、本当の娘は全然違うのに、心の中の娘のほうが、現実に思えてくるんよ。きちんと娘から仕送りがあって、幸せに生きてる自分が現れてくるねん。でも……、」
お豊ちゃんが涙をぬぐいました。
「でもね。今まで電話の一本もよこさんかった娘が、大阪に遊びに来るから家に泊まりたいって言うて来た時、頭から水を掛けられたみたいに目が覚めたんよ。そうなったら、恐ろしいやら悲しいやら。頭の中グシャグシャや。」
「お豊ちゃん。」
まあばあちゃんは、お豊ちゃんの背中を優しく擦りました。
「ごめんなさい。嘘ついて、本当に、ごめんなさい。」
お豊ちゃんは、みんなに向き直って手をついて謝りました。
ハッピーちゃんだけでなく、ジロやミミちゃん、コナン君も、お豊ちゃんを慰めるように体を寄せました。ミィちゃんは、さっき飲んだミルクでお腹がいっぱいなのかお春ちゃんの膝の上でスヤスヤ眠っています。
そんなミィちゃんを見て、お豊ちゃんは、
「私、お春ちゃんがいつも羨ましかった。優しい娘さんに大事にされて……。あんたのわがままいっつも聞いて……」
「邦子の事かいな。あんな親ほって、家を出てしもた娘のどこが羨ましいのか分からんわ。あの子の事はもう言わんとって。腹立ってくるわ。」
「でもね……」
お豊ちゃんが、話を続けようとすると、
「もう、ええよ。あんたの言うことはウソばっかりや。刺し子もやってられへんわ。」
お春ちゃんは、刺し子の布を置いてしまいました。

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ほんとは……


お花ちゃんの家で刺し子の練習をしている時、まあばあちゃんはトモちゃんが、USJに行く話をしました。
「へぇ。ええなぁ。なんかテレビでえらい宣伝してるなぁと思ててんけど、へぇ! わたしも連れて行ってほしいわ。」
とお春ちゃんが面白そうに言いました。
「無理無理、すっごい広い遊園地なんだから、いくらもしないうち疲れてしまうわよ。」
「ほんまやなぁ! あははは! トモちゃんの話を待った方がええわ。」
お豊ちゃんが暗い顔して、固まっています。刺し子を縫う手も止まっています。
「お豊ちゃん、あんた、どないしたん。暗い顔して……」
「そうなん、トモちゃんがUSJに……、そう……」
「なんやな。しっかりしぃや。」
「……うちの娘もUSJに行きたいらしくて、家族で大阪に来るんよ。その時、うちに泊まりたいって……」
「あんた、娘夫婦が来るって言うのに暗い顔やな~。それに大阪に来るんやったら、お豊ちゃんの家に泊まるのは当たり前やろ?」
「でも、娘言うたかて、邦ちゃんより年上やで? 孫かて40前や。そんなん家族そろってくる?」
「それも、そやなぁ。」
お春ちゃんも困惑顔です。
「それに、もう何年も会ってないし……。私、会うの怖いわ……。」
「あんた、ボケたんか、旦那の葬式の時に会ったやろ。小遣いくれる優しい娘やって言うてたやんか。」
お春ちゃんが、そう言うと、お豊ちゃんはボロボロ涙をこぼしました。
ハッピーちゃんが、お豊ちゃんの側にピタッと寄り添いました。お豊ちゃんが優しくハッピーちゃんの頭を撫でました。
「あれは、ウソやねん。父親の葬式にも来ない薄情な娘やし……。お金なんかくれたことない。み~んなウソやねん。ごめんね、ウソばっかりで……」
お豊ちゃんはそう言うと、声を張り上げて泣きました。

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USJに行く?


「涼しくなったら、一緒に行こうね。ハリポタをまた観てから行こう! 映画、思い出してから行く方が面白いよ!」
「ありがとう。」
まあばあちゃんは、自分を大事に思ってくれるトモちゃんに胸が熱くなりましたが、きっと秋も一緒に行けないだろうと思いました。毎日の散歩を欠かさず続けているまあばあちゃんですが、遊園地となれば話は別です。
一日歩くことになるだろうし、……優しいトモちゃんは、車いすを考えてくれているでしょうが、やっぱり不安なのでした。それに、若いトモちゃんには、楽しいところに行ったときは思い切り楽しんでほしいと、まあばあちゃんは思いました。
「エリちゃん、寂しがるだろなぁ。エリちゃん、おばあちゃんとお話しするの好きって言ってから。」
「まあ……」
トモちゃんのお友達に好かれて、まあばあちゃんはとても嬉しくなりました。
そして、ふと思いつきました。
「ねぇ、トモちゃん、お願いがあるんだけど……」
「なあに?」
「ひろ子ちゃんをユー……えっと……」
「USJ?」
「そう、それに連れて行ってあげられないかしら。」
「いいと思うよ。エリちゃんに聞いてみるね。」
トモちゃんが、スマホに指を滑らしました。
「いいって!」
「よかった。きっとひろ子ちゃん喜ぶわ。」
まあばあちゃんは、快く返事してくれたトモちゃんとエリちゃんに感謝しました。

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ゆー・えす・じぇい


「ただいまぁ!」
トモちゃんが学校から帰ってきました。今日はクラブがあったのです。
「まあ、トモちゃん、汗びっしょり!」
トモちゃんが、頭から汗をかいて帰ってきたので、まあばあちゃんは驚いて言いました。
「暑いから、駅から家に着くまでで、こうなっちゃうよ。」
「すぐに洗濯しなくちゃ、早く、着替えていらっしゃい。」
「はーい!」
まあばあちゃんが、お茶の間に冷たい麦茶を持って行くと、トモちゃんは、もう着替えをすませて座っていました。
「ねえ、おばあちゃん、USJ行こうよ!」
「ユー、エ……イ?」
「USJ! 遊園地みたいな! よくテレビで宣伝してるでしょ! ハリポタが出来たの!」
「はり……?」
「もう~! おばあちゃんも魔法使いの映画、面白いって言ってたやんか~。」
「そうだったかしら?」
昔の事はよく覚えているのに、最近に起きたことはどうも忘れがちです。それでもトモちゃんの学校の行事は覚えているのですから不思議なものです。
「今度の日曜日に、エリちゃんとUSJに行く約束したの。エリちゃん、おばあちゃんも一緒にって言ってくれたの!」
「ほんとに? ありがとう。」
まあばあちゃんは、トモちゃんとエリちゃんの優しさに胸がジーンとなりましたが、
「でも、この暑いのに遊園地なんて、おばあちゃんはとても体力に自信がないわ。もう、歳だもの。エリちゃんと二人でいってらっしゃい。」
「う~ん。」
トモちゃんは、淋しく思いましたが、確かに炎天下にまあばあちゃんを連れ出すのは無理だと思いました。
「おばあちゃん、たくさんお弁当を作るわね。」
「あ~、それがね。USJは食べ物の持ち込み禁止なんだって。」
トモちゃんが、困ったような顔をしました。
「まあ!」
まあばあちゃんは、それを聞いてガッカリしました。トモちゃんにお弁当を作るのがまあばあちゃんの生きがいの一つだからです。
「USJのレストランとか、屋台?みたいなとこで、お菓子を買うの。……決まりなん。」
「へぇ~。決まりがあるの。難しいのねぇ。」
「そのかわり、そこでしか食べられない、キャラクターのお菓子がいっぱいあるの。」
「ふ~ん。だんだん変わっていくのねぇ。」
まあばあちゃんは、トモちゃんの話を聞いていると、大阪にあるらしい遊園地の話なのに、外国の話を聞いているような気持ちになりました。

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女学校の思い出


「こんなんしてたら、女学校時代を思い出すなぁ。」
お花ちゃんと別れた後、お春ちゃんが懐かしむように言いました。
「ほんまや! やっぱり、学生時分が一番輝いてたように思うわ。」
お豊ちゃんが言いました。
「せやかて、うちらのころは、女学校出るまでには嫁入り先決まらんと、恰好悪かったから今の子らと違うて忙しかったわ。」
「でも、今の子らは勉強が忙しいからなぁ。トモちゃん見てても大変そうやわ。なぁ、まあちゃん。」
まあばあちゃんは、あいまいに笑いました。
「そない言うたら、邦子の時かて、受験勉強は大変やったで。邦子が高校受験の時は、学校で勉強する子のために、親も炊き出しして、手間かかったわ。」
「へぇ、ほんまぁ、うちの子は勉強できへんかったから、そういうのよう知らんわ。」
「邦子は、エエ高校入ってん。大学はよう行かさんかってんけどなぁ。」
お春ちゃんが、残念そうに言いました。
そんな二人の話を聞きながら、まあばあちゃんは、自分のことを思い返していました。
まあばあちゃんの古里は山深く、学校へ行くのに歩いて1時間もかかります。村の神社の境内で子ども達が集まって、歌を歌ったりしながら学校までの長い道のりを行きます。今は山でも舗装された道が、隅々まであるようですが、昔の事ですから、途中、細い道が何ヶ所かあり、年長の子が小さい子の面倒を見て通ったものです。
村の子ども達の中には、山を下りて女学校に行った子もいましたが、まあばあちゃんの家は貧しく、小学校もやっと卒業したような有様でした。

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手を振りあって


「こんなにお菓子もらって、ええの?」
お花ちゃんが、まあばあちゃん達3人にお土産を持たせてくれるので、お豊ちゃんが気遣って言いました。
「うん。分けてねって、ようさん作ってくれてん。せやから、お土産にした方が喜んでくれはると思うわ。」
(……邦ちゃん)
まあばあちゃんは、邦ちゃんの優しさにホロッとなりました。
「おおきに! シュークリームも美味しかったけど、おはぎも美味しかったわ。まあちゃんのおはぎによう似てるわ。」
と、お春ちゃんが嬉しそうに言いました。まあばあちゃんはドキッとしましたが、黙っていました。
「明日も来てね。続きをしよね!」
お花ちゃんが言いました。
「でも、毎日じゃ、迷惑と違う?」
お豊ちゃんが、心配そうに言いました。
「みんなでした方が楽しいやんか。」
お花ちゃんが重ねて言います。
「うん。早よう、お揃いで持ちたいもんな。」
と、お春ちゃん。
「ホンマやで、お春ちゃん、しっかり作ってよ。」
と、お豊ちゃん。
「ほな、今日はありがとう! また、明日。」
そう言って、玄関を出ました。
表の道を少し歩き始めたところで、
「明日も来てね。待ってるからね!」
表に出てきたお花ちゃんが、まあばあちゃん達3人に大きく手を振りました。
「ありがとう! 明日も教えてねぇ!」
と、お豊ちゃんが言って手を振りました。お春ちゃんもまあばあちゃんも手を振りました。
「またね~」
「明日ね~。」
と、いつもまでも手を振っていました。

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出来栄え


「お豊ちゃん、あんたどこまで縫うたん? ……ようさん進んでるなぁ!」
とお春ちゃんが驚きました。
「わたし、早よ、完成させたいから、一所懸命、縫うてるもん! あんたも早よせなお揃いで持たれへんで。」
「せやねんけど……。お豊ちゃんもなかなかうまいなぁ。わたし、縫い目そろってへんわ。ほら。」
「あんた、どこのお姫様やったん。縫い物した事ないの? うちらの時代は下手なりになんや縫いモンしてたで。」
お春ちゃん刺し子は印通りに縫えてないので、あっちに向いたりこっちに向いたりしています。
「昔は、そこそこはやってんよ。でも、目がショボなって見えへんねん。」
お春ちゃんが、口をへの字に曲げて言いました。
「そんなん、ここにいる、みんなそうやで。」
と言うお豊ちゃんには返事せず、お春ちゃんは、
「まあちゃん、どこまで出来たん?」
まあばあちゃんを呼びかけましたが、集中して気付きません。
「まあちゃん、まあちゃんて!」
「あっ! はい! なに?」
「もう、さっきから呼んでるのに……」
「あら、ごめんね。つい夢中になって。」
「見せてぇな。」
とお春ちゃんが言ったので、まあばあちゃんが渡すと、
「わぁ! やっぱり違うなぁ。早いし上手いわ。ええなぁ!」
お春ちゃんは、まあばあちゃんの刺し子に見惚れています。
その横で、みんなに刺し子を教えながら、ミィちゃんの刺繍を続けていたお花ちゃんが、
「さぁ。目を入れたら完成よ!」
と言って、座布団をみんなに見せました。

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堺の町のまあばあちゃん

Author:堺の町のまあばあちゃん
堺の町に住む、ひとりのおばあちゃんのお話です。
住み慣れた町の人々との交流や孫のトモちゃんや犬のジロとの生活を通して力強く生きていく姿を物語に書きたいと思います。 
宜しくお願いします。
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