ハッキリしないお春ちゃん


「なによ。私かて邦子の事、考えてるわ!」
これは心外とばかりに、お春ちゃんは言い返しました。
「ほんだら、元ムコ、……もう家に入れたらアカンで。今度来たら、水かけて追い返したり!」
これは、なかなか言えることではありません。お豊ちゃんが、お春ちゃんの事を思っていればこそです。ところが、
お豊ちゃんの言葉に、お春ちゃんはショボンとなって黙ってしまいました。
「あんた、そのぼやけた目、ようひん剥いて見てみ! あんたの自慢の国立大出の元ムコは、家でゴロゴロして、嫁さんばっかり自分の親の介護やらパートやら働かしずくめで、あげくの果てに女連れ込んで、あんな男、最低や!」
「でも、ちゃんと大きな会社で定年まで勤め上げて、退職金ももうてるんやで。」
お春ちゃんは、また昭雄さんをかばいます。
「でも、それ邦ちゃんのためになってるんか。みな自分で使ってしもてるから、家の頭金もようためんとアンタの世話になって、あの女と一億稼ぐホラ話の資金もアンタが出して、あんた、あの家追い出されたんやで。しっかり今までの事思いだしてみ? あの男に迷惑以外で、なんぞしてもろたことあるんか?」
お春ちゃんは、また黙ってしまいました。
「国立どころか、大学出てない人でも、まじめに働いて、奥さん大事にしてる人いっぱいいてるわ。あの男、あんたの家売ったお金狙ってるんやで。あんたが、昭雄さん昭雄さん言うてる間に、そのお金、みーんな取られてしまうわ。無くなってから気ィ付いても後の祭りやで! 金のない年寄りほど惨めなものは無いで。しっかりしいや!」
お豊ちゃんは、そこまで一気にいうと、ゼイゼイと肩で息をしていました。
まあばあちゃんは、苦しそうに息をしているお豊ちゃんの背中を擦りながら、言いました。
「お春ちゃん、昭雄さんは怖い人よ。もう何のかかわりもない人なんだから、お付き合いはやめたほうがいいと思うの。」
まあばあちゃんがそう言った後、まだ息の収まらないお豊ちゃんが、
「あんた、元ムコが、またお金借りに来たら、先のお金返してもうてないって言うて返してもらいや。そんでもう貸したらアカンで!」
「……うん……。」
「もう、あの男、家に上げたらアカンよ。」
「……うん……。」
何とも頼りない返事です。お春ちゃんは大丈夫なんでしょうか?
二人の気がかりは増すばかりです。

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ハッピーちゃんのおかげ


この頃、元気のないお春ちゃんに変わって、最近のお豊ちゃんは、よくしゃべるし笑うようになりました。
「なんだか、お春ちゃんとお豊ちゃんが入れ替わったみたいに思う時があるわ。」
「私も思うわ。あんた、ホンマに元気やな。魂抜けたみたいやったのにな。」
「うん。なんか頭がハッキリしてるように思うわ。ハッピーのおかげやねん。」
「犬の?」
お春ちゃんが不思議そうな顔をしました。
「箸の上げ下ろしまで言う気の小さい主人から解放されて、一時は、ホッとしててんけど、しばらくしたら、死なれてどないして生活したらええのか、家だけはあるからと思ってみても、どこからか不安な心が押し寄せてくるんよ。頭の中それでいっぱいになって……、何にも考えられへんようになっててんけど……。」.
そう言って、お豊ちゃんはハッピーちゃんの頭を撫でました。
「ハッピーを幸せにしなくちゃって、いろいろ考えていると、私まで幸せになって来るの! 心が明るくなってくるんよ。私は今幸せよ!」
と幸せそうに笑うお豊ちゃんに、お春ちゃんが、
「なんか、アンタの犬みたいやもんな。あの人、ほとんど、犬の事ほったらかしと違うん?」
お春ちゃんの言葉に、お豊ちゃんは慌てた様子で、
「そんな事ないよ。いつもハッピーと私の事、気遣ってくれるんよ。有難いと思ってるの。ハッピーは賢いんよ。自分の命の恩人でお父さんやということが、よう分かってるんやね。樺山さんが来たら、そらもう喜んで喜んで、クルクルするの。そんな二人の様子を見てると心が暖かくなるんよ。」
「そんなもんなん」
お春ちゃんは、興味なさそうに言いました。お豊ちゃんは、お春ちゃんに向き直ると、
「お春ちゃん、まあちゃんが言うたことと反対になってしまうけど、あんた、邦ちゃんところに行ったりなや。」
「行かへんよ。向こうの人に気ィ使うもん。」
(向こうの人?)
まあばあちゃんは、お春ちゃんがオッチャンの事をそんな風に言うなんてと、悲しくなりました。オッチャンが気の毒になってきました。
お豊ちゃんも、少しびっくりしたようですが言葉を続けました。
「……ホンマやね。もう、そっとしときよ。あんたが、かまうと邦ちゃんが不幸になる気がする。私、邦ちゃんが心配なんよ。」

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町会の当番


その時、ピンポーンとインターフォンが鳴りました。
玄関に一番近かったお豊ちゃんが、出て行きました。
しばらくして戻ってくると、回覧板を持っていました。それをお春ちゃんに渡しながら、
「次の町会の当番、あそこなんよ。」
と、暗い顔で言いました。
「昭雄さんところ?」
まあばあちゃんが聞きました。
「そう、ホンマに嫌になるで、“次、当番やから宜しくお願いします”って言うたら、あの女に知らん顔されたわ。」
「それは、困るわね。」
「それでな、昭雄さんに言うたら、“うちは出来ないので、抜いて下さい”って、そない言うのよ!」
「えー!」
まあばあちゃんは、驚きました。
「“順番に回っていくものなので、それは出来ません。”って言うたけど、どうなる事やら……」
「どうするの?」
と、心配して聞くまあばあちゃんに、お豊ちゃんは、
「町会長さんに相談しようと思うの。次の日曜日に班の人に集まってもらって、町会長さんにも来てもらおうと思ってるの。」
「それは、大変ね。」
お豊ちゃんは、しぶい顔をして、
「そうなんよ。これって困るね。昭雄さんところ抜かすようなことになったら、他の家かて“ほなウチも抜かして下さい”ってことになるやん。次の日曜日、どれだけの人が集まるか分からへんけど、大揉めに揉めそうで嫌やわぁ。」
お豊ちゃんは、はぁっと大きなため息をつきました。
「ごめんやで、ウチのせいで……」
と、お春ちゃんは申し訳なさそうに言いました。
「お春ちゃんが、悪い事ないよ。お春ちゃんは、もう、あの家と関係ないの! 悪いのは昭雄さんとあの女なんやで。ホンマに水でもかけてやりたいわ。」
お豊ちゃんは、バケツで水を撒くマネをしながら言いました。

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どうして貸すの?

「お春ちゃん、……まさか。……お金貸したの?」
お春ちゃんは、声が出なくて、ただ頷きました。
どれぐらいのお金を貸したのか、お春ちゃんの目は虚ろになっていました。
少しやせぎすのお春ちゃんの顔には、シワが深く刻まれています。そして、顔色を失っている今の姿は、哀れでした。
「お春ちゃん、お春ちゃんは、離婚する前、昭雄さんにキチンとお母さんて呼んでもらったことある。」
「……ううん。邦子の所に手土産持って行っても、挨拶どころか目も合わさんかった。」
まあばあちゃんは、心の中でやっぱりと思いました。

―――お前のオカンは嫌いや。今までいた中で一番嫌いや。そう思わんか。
昭雄さんが邦ちゃんにそう言うのを何度か聞いたと、お豊ちゃんが言っていたからです。そのたびに邦ちゃんは、
「でも、私にとってはたった一人の母なんです。私を悪く言うのはかまいません。母の事、そんなふうに言うのだけはやめて下さい。」
と半泣きになりながら、邦ちゃんは言っていたそうです。

お豊ちゃんが、口を開きました。
「あんた、家の頭金まで出したってるのに、知らん顔してる元ムコなんか、なんでかばうの? なんで、お金なんか貸すの? 急にお母さんお母さん言われて、舞い上がってるん?」
「そんなん違うわ!」
お春ちゃんが、カッとなって言いました。
「お春ちゃん、何度も言うようだけど、邦ちゃんは、もうお嫁に行ったの。お春ちゃんも、早く心に区切りをつけて、二人の所に行ったら? いつでも待ってるって言ってたわよ。」
お春ちゃんは、ムーッと口を結んだままです。
「お春ちゃん!」
まあばあちゃんは、もう一度強く呼びかけました。
でも、お春ちゃんは、黙ったままでした。

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工面


「あのね。いったいなんなの。昭雄さん昭雄さんて……! 大事なのは邦ちゃんでしょ。昭雄さんじゃないでしょ!」
「せやかて、昭雄さんは……、」
「お春ちゃん、その昭雄さんは、あの女の人、追い出してないんでしょ? それに、邦ちゃんは、もうお嫁に行ったんだから、昭雄さんなんか全然関係ない人でしょ。」
お春ちゃんは口ごもりました。
その時、ガラガラと玄関が開きました。
「こんにちは~。あら、まあちゃんも来てたの。私、お春ちゃんとお昼、食べたいな思って、持って来たんよ。まあちゃんも食べよ。」
お豊ちゃんも、お春ちゃんを心配して来てくれたのでしょう。
「さっ、ハッピーはここよ。」
お豊ちゃんはそう言って、玄関の上り口にプーさん柄の大型クッションを置きました。ハッピーちゃんはその上に丸くなって寝ました。
そして、テーブルにお弁当を並べ始めました。
(お豊ちゃん、優しいのね。)
まあばあちゃんは胸がジーンとなりました。
「お春ちゃん、あんた、あの町会費、絶対返ってけぇへんで。」
「なによ。いきなり。」
お豊ちゃんの言葉にお春ちゃんは、ムッとしたように言いました。
「今、家出てくるときに、聞いてしもてん。」
「なによ。」
「昭雄さんな、あの女に、金、工面して来いって、言われてたわ。ほんまに言うたんよ。して来いって……。偉そうに言うてたわ。」
「昭雄さんは、なんて?」
まあばあちゃんが聞くと、
「分かれへん。聞こえへんかったから。」
「お豊ちゃん、そんな怖い人が隣に住んでて怖くない?」
「そうやね。始めは薄気味悪かったけど、もう慣れたわ。それに……」
「なあに?」
「邦ちゃんに、より戻して欲しい言うて来たってことは、あの女、あんな偉そうに言うてても、籍入ってもうてないんやね。」
お豊ちゃんは、不思議そうに言いました。
まあばあちゃんも、とっくにあの薄気味悪い女の人と結婚していると思っていたので、意外でした。
「どうしたの?」
まあばあちゃんは、驚いてお春ちゃんに声を掛けました。
お春ちゃんが、真っ青になってカタカタ震えていたのです。

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心が分からない


まあばあちゃんは、今日のお祝いにどうして来てくれなかったのかお春ちゃんに聞きました。すると、思いもよらない言葉が返ってきました。
「私、あの人、苦手やねん。」
「どうして、邦ちゃんの結婚に反対なの? お春ちゃん、涙流して喜んでたじゃないの。」
まあばあちゃんは、深いため息をついて言いました。
「反対な事あらへん。あの人の家は大きいし、なんも問題あらへん。」
「それなら、どうして邦ちゃんの事、お祝いしてあげないの?」
「なんかわからへんけど足があっちの方に向いて進まんのよ。」
と言って、お春ちゃんは口ごもってしまいました。
「あのね、お春ちゃん、もう一つ聞いていい? どうして、昭雄さんとお付き合いしてるの?」
お春ちゃんは答えませんでした。まあばあちゃんは続けました。
「あの人を家に上げたりするから、邦ちゃんは帰れなくなってしまったのよ。お豊ちゃんの言ってた通りなのよ。」
「でもな、まあちゃん、昭雄さんは私と邦子を心配してくれたんよ。」
と、お春ちゃんは妙なことを言いました。
「昭雄さんがお春ちゃん達の事を心配するわけないでしょ。お春ちゃんが買った花嫁道具を雨の日の放り出した人なのよ。」
「それがな、やっぱり邦子が一番ええ嫁さんやったと、心から反省して謝ってくれたんよ。それで、離婚届は出さんと返してほしいって言わはるの。」
「それで、お春ちゃんは、なんて答えたの。」
「邦子が一人で役所に持って行きましたって言うたんや。そしたら、昭雄さん、邦子はどう思ってるか分からんけど、お母さんの事は今でも大事な家族やと思ってます。って言うてたで。」
嬉しそうに言うお春ちゃんに、まあばあちゃんは、次の言葉が出ませんでした。

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お披露目会


「本日はわしのために、集まってもろてホンマに有り難うさんです。今日、二人で役所に行って婚姻届を出してきました。この歳になってこんなええ人に嫁さんに来てもらえるなんて、わしはホンマに幸せモンです。邦ちゃん、これから宜しくお願いします。ワシに悪いとこがあったら、遠慮のう言うてください。一生懸命直しますよって、よろしゅうお願いします。」
そう言ってオッチャンは邦ちゃんとみんなに深々とお辞儀しました。
「私も、こんな幸せなれると思ってなかったので、まだ、夢を見ているような気持ちです。ふつつかな私ですが、どうぞよろしくお願いします。」
邦ちゃんも幸せそうに笑って一言一言かみしめるように言いました。そして、三つ指ついて深く頭を下げました。
二人の言葉にお祝いに来たみんな拍手しました。
みんなでお話したり、ごちそうを食べたりして過ごしました。みんなとても嬉しそうでした。とりわけ、オッチャンと邦ちゃんを見ていると、まあばちゃんは本当にホッとした気持ちになりました。
お春ちゃんの姿はありません。
何時頃から始めるかは、知らせに行ったのですが、そのままオッチャンの家に行ってしまった邦ちゃんに拗ねているのか、
「……そう、うん。分かった、ありがとう。」
と、なんというか気のない返事でした。あんまりいろいろ言っても、来にくく思ったらいけないと思って、まあばあちゃんは、そのままお春ちゃんの家を後にしました。
本当は、まあばあちゃんは、お春ちゃんが遅れても来るのではないかと期待していたのですが、とうとう来ることはありませんでした。
お開きになった後、まあばあちゃんは、お春ちゃんのために取り分けて置いたお料理をお重に入れて、シルバーカーでお春ちゃんの家にもう一度、向かいました。お春ちゃんがいったいどういう気持ちでいるのか、知りたいと思いました。
何より大切な自分の娘を酷い目に合わせた昭雄さんを家に上げて、邦ちゃんにヨリを戻すように勧めたことは信じられませんでした。しかも、まだあの薄気味悪い女の人の家族が居座っていると言うのにヨリを戻せとは……

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ささやかな結婚式


お赤飯炊いて、鯛を焼いてと、ささやかですがオッチャンと邦ちゃんのためにたくさんお料理を作ったまあばあちゃん。
結婚式というには、質素ですが邦ちゃんとオッチャンはとっても幸せそうです。
集まったのは、まあばあちゃん一家とお豊ちゃん、ハッピーちゃんのお父さんに、コナン君のお母さんとお花ちゃん。なかなか賑やかな雰囲気になりました。ハッピーちゃんのお父さんは、大阪で料理人さんをしています。大きなケーキを持って来てくれました。
「わー。美味しそうなケーキ!」
トモちゃんが嬉しそうに大きな声で言いました。
お豊ちゃんは、小物を手作りするのが大好きです。白いウエディングベールを作ってきてくれました。それを白いワンピースを着た邦ちゃんに掛けました。オッチャンはスーツを着ていました。とても畏まった様子です。
「オッチャン、カチンコチンやよ。もっと、気楽にしたら。」
「わし、こういうの苦手なんや。トモちゃんに変わってほしいくらいや。」
と、オッチャンが言うので、まあばあちゃんが、
「晴れの日に何を言ってるんですか。もっと静粛な気持ちにならないとダメよ。」
まあばあちゃんは、オッチャンとトモちゃんに注意しました。
「はーい」
と、トモちゃん、
「ほーい」
と、オッチャン。邦ちゃんはオッチャンの隣でクスッと笑っていました。
「さあ! お祝いをはじめましょ。」
まあばあちゃんの言葉にみんなは居住まいを正しました。

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二人の門出


「良かったわね。邦ちゃん、やっと心の安らげる人に巡り合えたわね。」
まあばあちゃんは、ホッとしたように言いました。
「はい。あの人の側にいつも居られるんだと思うと、とっても幸せな気持ちになります。まあおばちゃんのおかげです。母の事は気がかりですが……」
「でも、結婚そのものは喜んでくれていたんだから。」
「はい。でも……」
「どうしたの。」
「母に、食事だけは届けようと思っているんですが、もし、昭雄さんに会うかもしれないと思うと、怖くて……。」
邦ちゃんは、そこまで言うと、涙がジワッと滲んできました。
「大丈夫、昨日も言ったように、邦ちゃんはもう家に近づかないほうがいいと思うの。お春ちゃんの食事の事は気にしないで。ご主人に美味しいものいっぱい作ってあげて。ね! お春ちゃんの事は私に任せて。」
「でも……」
「邦ちゃんだって、昭雄さんがいつ上り込んでくるかもしれないあの家にはもう行けないでしょう。もう、顔も見たくないんでしょう?」
邦ちゃんは、目を真っ赤にしてうなづきました。
「邦ちゃんは、自分が幸せになる事だけ考えていればいいの。母親って言うのは自分の娘の幸せを心から願っているものよ。お春ちゃんだってそうよ。」
邦ちゃんは、小さく何度も頷きました。
そこへオッチャンが帰ってきました。
「ただいま。おっ、ばあちゃん、来てくれたんか。」
邦ちゃんは、さっと涙を拭うと慌てたように、
「わたし、ヤカンの火を止めたか見てくるわ。」
と言って家に入って行きました。邦ちゃんが、泣いているの見るとオッチャンが心配すると思ったからでしょう。
オッチャンは、邦ちゃんが家に入ったのを見届けると、
「邦ちゃんとも話してたんやけど、今から、役所に行こう思ってるねん。ばあちゃんも一緒に来てくれたら嬉しいんやけど。」
「邦ちゃんからも聞いたわ。でも、これは二人だけで行ってらっしゃい。今夜はお赤飯を炊いて、みんなでお祝いしましょう。二人の門出をお祝いしたいの。」
まあばあちゃんは、ニッコリ笑って言いました。

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邦ちゃんの笑顔


次の日の朝、2度目の散歩は、小学校の方に行っているまあばあちゃんですが、今日はオッチャンの家の方へ行きました。
邦ちゃんの事が気になったからです。
昨日は本当にいろいろありました。色んなことが一時に起きて、心臓があがったり下がったりしました。
まして、邦ちゃんにとっては、本当に辛く苦しい事だったに違いありません。
女の人と暮らすために自分を追い出した上に、別居後に住んでいる邦ちゃん宅のポストへ離婚届をむき出しのまま投げ入れた昭雄さん。その昭雄さんが尋ねてきて、お春ちゃんが家に入れていたのです。そして、よりを戻したらと言うのです。
一所懸命、昭雄さんとの復縁を進めるお春ちゃんを見ていると、あの時の、離婚届を見つめていた邦ちゃんの事が思い出されてきました。
「邦ちゃん、このまま言いなりなんて、ばかばかしいわ。慰謝料請求しよ! その前に怒鳴り込んでくるわ!」
恭子ちゃんが、昭雄さんの事に腹を立てて肩をブルブル震わせて言いました。
「いいの。恭子ちゃん、話し合いなんて、出来ないと思うし、もうお金なんて、ないの。」
それでも、今、昭雄さんが住んでいる家の頭金はお春ちゃんのご主人が支払ったと聞いていましたが……。
「もう早く離れたいの。」
と声を震わせていた邦ちゃん。
そして、その後、自転車事故で骨折してヘルパーの仕事を休んでいた時は、一番の味方であって欲しいお春ちゃんに、
「どないして食べていくんや。なんで、せっかく大学出のムコはん、つかまえたのに。あんたがしっかりしてへんから、あんな女に取られてしまうんや。離婚やなんて恥ずかしいて、町、歩かれへん。」
と責められて。
あの時の言葉が頭から離れなくなって、まあばあちゃんは昨夜眠れませんでした。
お春ちゃんと邦ちゃん親子は、これからもいろいろなことがあるでしょう。その時少しでも力になれればと思いました。
「あら」
邦ちゃんが家の前をキレイにはいています。
「まあおばちゃん、昨日は有り難うございました。今日、あの人が子ども達の見守り隊から帰ってきたら役所に行こうって。その時、まあおばちゃんにも一緒に来てほしいなって、あの人が……」
邦ちゃんは嬉しそうに頬を染めて、オッチャンのことをあの人あの人と呼ぶ様子に、胸が温かくなりました。
「ジロちゃんも、ミミちゃんも一緒に行ってね。チビちゃんも一緒だからね。」
邦ちゃんの声は弾んでいます。いつも笑顔を絶やさない邦ちゃんでしたが、こんなに明るい邦ちゃんは見たことがありませんでした。
きっと心から、幸せを感じているのでしょう。
まあばあちゃんは、嬉しくて涙が出てきました。

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邦ちゃん、幸せになってね


「ばあちゃん、ありがとうな。わし、邦ちゃんと相談して、ええ日に役所に行ってくるわ。」
「ありがとう、本当に。邦ちゃんのこと宜しくお願いします。」
まあばあちゃんは、オッチャンに三つ指ついて言いました。
「宜しくお願いします。」
邦ちゃんもまあばあちゃんの隣に座って、頭を下げて言いました。
オッチャンは困ったように笑いながら、
「わしの方こそ、よろしくお願いします。」
オッチャンも正座に座りなおして、まあばあちゃんと邦ちゃんに頭を下げました。
「良かった。邦子おばちゃんがオッチャンのお嫁さんになってくれて~。」
「ごめんやで。トモちゃんにも心配かけたわ。」
と、オッチャンが言うと、
「ほんとに……。」
邦ちゃんも相槌をうちました。
「トモちゃん、遊びに来てね。」
「うん。たくさん来るね。」
「おうよ! 毎日でも来てや。待ってるで!」
「チビちゃん、良かったね。チビちゃん、これからはお母さんがいるから嬉しいね。オッチャンがお出かけの日はいつも首を長くして待ってたもんね。」
「チビは、そんなに待ってたんか?」
「待ってたよ。暗くなってくると、ちょっとした物音でも、飛び出して行ってオッチャンじゃなかったら、がっかりしたような顔で家に戻って来るの。ねっ、チビちゃん。」
トモちゃんはジロとミミちゃんの側でコロコロして遊んでいるチビちゃんを抱き上げると、邦ちゃんに渡しました。邦ちゃんは大事そうに受け取ると、キュッと抱きしめました。
チビちゃんは嬉しそうにオッポを振りました。
邦ちゃんの幸せそうな横顔に、まあばあちゃんは胸が暖かくなるのを感じました。

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お春ちゃん、分かって……


「はぁー。おなかいっぱい!」
そう言って、トモちゃんは満足そうに微笑みました。
「トモちゃん、まだあるで。」
「もう、入らないよ。オッチャン食べて!」
トモちゃんが、フーッと大きく息を吐いて言いました。
――――ピンポーン、ピンポーン―――
とインターフォンが鳴りました。恭子ちゃんでした。
「恭子ちゃん、お春ちゃん、どうだった?」
まあばあちゃんは、開口一番に聞きました。
「お春おばちゃんは……、アカンかったわ。」
「どういうこと?」
邦ちゃんが、いきなりこっちに来てショックを受けてしまったと言う事でしょうか?
それとも、昭雄さんの話を聞いてガックリきたのでしょうか?
それなら、まあばあちゃんは慰めに行こうと思いました。
「お春おばちゃんは、ダメやね。昭雄さんの肩ばっかり持つの。私の話を信用せぇへんの。あの女に優しくしてたでって言うても、私がウソついてるみたいに思ってたわ。」
「そう……」
まあばあちゃんは、考えたくありませんでしたが、どこかで“やっぱり”という気持ちもありました。
でも、オッチャンの気持ちを聞いて、お春ちゃんはあんなに喜んでいたのに、昭雄さんとあの薄気味悪い女の人の話を受け入れられないのは何故でしょうか?
「邦ちゃんがこっちに来たことは?」
「好きにしたらええわって……」
なんという言い方でしょう……。
声をかけずに来たことはいけないですが、昭雄さんを家に入れたお春ちゃんの非は大変に大きいものです。
お春ちゃんは分からないのでしょうか? 
「すこし、へそを曲げてしまったのかもしれないわね。しばらくの間、そっとしておきましょう。周りがいろいろ言っても、頑なになってしまうし、一人になれば、落ち着いて考えられるものよ。」
「そうかも、わたしも、しつこく言い過ぎたかもしれへんわ。」
恭子ちゃんは、ションボリした様子で言いました。
「邦ちゃんも、お春ちゃんの所に行っては駄目よ。昭雄さんを家に入れるなんてあってはならない事なんだから。お春ちゃんだって、まだまだ動けるんだから、自分の事は自分でしてもらいなさい。」
「でも、大丈夫でしょうか?」
邦ちゃんが、心配そうに言いました。
「この歳になったら、どこか悪いものよ。でも、お豊ちゃんだって、私だって、自分で出来ることはキチンとやってる。邦ちゃんも幸せなるために、自分がどれだけ役立っているか、お春ちゃんに分かってもらういい機会よ。」
「はい」
邦ちゃんは、まあばあちゃんの目を見て、しっかり頷きました。でも、いつもお春ちゃんの事を気遣ってきた優しい邦ちゃん。お春ちゃんの放って置くことが出来るでしょうか?
「お春ちゃんは病気がちで、今まで、家の事、すべて邦ちゃんがしてきたから、昭雄さんが邦ちゃんをどんな辛い目に遭わせてきたのか、お春ちゃんは芯から分かってなかったのね。だから、しばらくぶりに訪ねてきた昭雄さんにいい顔が出来るんだわ。」
まあばあちゃんの口調は、いつも通り穏やかなのに、厳しいものがありました。
みんなも難しい顔をして頷いていました。

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チキンをみんなで頬張って


「さっ、お春ちゃんのことは、恭子ちゃんに任せて私たちは、行きましょう。」
と言う、まあばあちゃんに、オッチャンが、
「ホンマや。寒いし。ええニオイ嗅いでたら、腹減って来たわ。早よ。家に行こう。」
と言って、歩きだしました。
お豊ちゃんが、
「私は、ここで、失礼します。」
と言うので、
「どうぞ狭いとこですけど、来てください。」
オッチャンが引き止めると、お豊ちゃんは、これから、ハッピーちゃんを病院に連れて行くという事でした。
オッチャンの家もこの町内なのですぐに着きました。
オッチャンは、パパッと家に上がると、サッと電気を点けて、ファンヒーターのスイッチを入れました。暖かい空気がサーッと流れてきます。
「ほんまはエアコンのほうがカッコエエんやけど、わし、なんかこっちの方がエエねん。」
と照れ笑いしました。
「ばあちゃんも邦ちゃんも、オコタつけたから、早よ、温もってや。」
とオッチャンが言いましたが、邦ちゃんはトモちゃんと一緒に、お茶の用意をしていました。
ジロとミミちゃんとチビちゃんはトモちゃんに足を拭いてもらったので、オコタの側で寝ています。
「オッチャンは、邪魔だから、オコタに入ってて!」
とトモちゃん言われて、おとなしくまあばあちゃんとオコタで待つことにしたようです。
「はーい。暖かいお茶をどうぞ! はいお皿。食べよう!」
みんなでチキンを頬張ります。
「美味しい~」
トモちゃんが嬉しそうに言いました。
「トモちゃんは食うとるときが一番幸せそうやな。」
と、オッチャンが言ったので、みんな大笑いしました。

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ハッピーちゃんもソワソワ


まあばあちゃんは恭子ちゃんに、邦ちゃんをこのままオッチャンのところに送り届けるつもりだと話しました。すると、恭子ちゃんは、
「お春おばちゃん、ショックを受けるかもしれへんけど、それがいいと思うわ。じゃ、わたし、お春おばちゃんに今日見たことを話してくるわ。」
「ありがとう。恭子ちゃん。頼むわね。」
まあばあちゃんは恭子ちゃんの言葉にうなずいて言いました。お豊ちゃんも、
「なんか、ほっとしたわ。このまま行く言うても、お春ちゃんにどない言うたらええんか、分からんかったら。恭子ちゃんが来てくれて助かったわぁ~。ホンマに、ありがとう。」
そう言って、恭子ちゃんにニコッと笑いました。そして、
「ほな、わたしは帰ります。」
と会釈しました。
「あ、お豊おばちゃんにも、ケンタッキー買って来たんよ。」
「わぁ! 私にも! ありがとう。嬉しいわぁ。ほんとに有り難う。」
お豊ちゃんが涙を浮かべて喜んでいました。お豊ちゃんがもらったと聞いて、ハッピーちゃんが、急にソワソワしています。
「こらこら、ハッピー、落ち着いて。いい匂いがするからたまらないんやね。」
お豊ちゃんが、ハッピーちゃんに注意しました。
ふと見ると、ジロもミミちゃんもソワソワしています。
「もう! ジロもミミちゃんも。これは味付けが濃いから、ちょっとだけだよ!」
と言って、トモちゃんは頭を撫でました。
恭子ちゃんがその様子を見て、嬉しそうに微笑むと、
「じゃ、これ、お春おばちゃんところに持って行ってくるわね。」
そう言って、恭子ちゃんは、小走りに駆けて行きました。

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小間使い


「お帰りなさい。今日は早かったわね。」
と、まあばあちゃんが恭子ちゃんに言うと、
「そうなんよ。だから。帰りにケンタッキーに寄ってきてん。ついでにみんなの分も買ってきてん!」
「わーい。嬉しいな。ケンタッキー大好き~!」
トモちゃんが嬉しそうに言いました。
「トモ子の分は、家にあるわ。それにしても、みんな揃ってどないしたん?」
「それがね……。」
まあばあちゃんが、昭雄さんとお春ちゃんの事を話しました。
「なにそれ!」
「酷いでしょう? それでね……。」
「昭雄さん、あの陰気女とケンタッキーに来てたで。」
「「「ええ!」」」
みんな驚いて、同時に声を上げました。
昭雄さんの無神経さには、みな呆れていましたが、それでも、あの薄気味悪い女の人の事を嫌になって助けを求めに来たのかと思っていました。
「どんな様子だった?」
「どんなって、昭雄さん、小間使いみたいやったわよ。」
「小間使い?」
「そうやよ。買ったケンタッキーを自分が持って、あの女が車の横でジーッとしてるからドアを開けてやってたわ。座席に座るのを見届けてからドアを閉めてたんよ。そんなアホクサイことしてる昭雄さんが邦ちゃんとよりを戻すなんてありえへんわよ! そもそも昭雄さんは邦ちゃんに何したんよ。あの女の下働きさせた上に、雨の日に家具を放り出したくせに! そんなこと言うなんて頭腐ってるわ!」
恭子ちゃんは、肩をブルブル震わせて怒っていました。

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瀬戸の花嫁


「ねっ、邦ちゃんを一緒に連れて帰ってあげて、私からもお願いします。」
まさか、まあばあちゃんが、そんなことを言うとは思っていなかったのでしょう。オッチャンは驚いたようにまあばあちゃんを見ました。そして、邦ちゃんを見ました。自分で言いだした邦ちゃんも驚いたような顔をしています。邦ちゃんは視線に気づいてオッチャンを見ました。
「さぁ! 早く行きなさい。」
まあばあちゃんに促されて邦ちゃんは頷きました。そして、お春ちゃんの家を振り返りました。お春ちゃんのもとに自分の居場所はないと分かっていても、母親であるお春ちゃんの事が心配なのでしょう。
「♪瀬戸は~日暮れて~夕波小波~♫ あなた~の島へ~お嫁に行くの~♫」
とトモちゃんが優しい声で歌いだしました。
「えらいまた、懐かしい歌知ってるな。エエ歌やな。」
オッチャンが感心したように言いました。
「うん。お母さんがよく歌うの。おばあちゃんが好きな歌なんよ。わたしも、いつの間にか覚えて、口についてるの。ね! おばあちゃん。」
「そうよ。大好きな歌なの。歌って! トモちゃん!」
トモちゃんは再び歌いだしました。その歌声はみんなの心に染み入るようでした。
「♫幼い~弟~♫ 行く………」
トモちゃんが歌うのを止めました。
「どうしたの? トモちゃん。」
「おばあちゃん、あれ、お母さんじゃない?」
向こうから恭子ちゃんが、箱をいくつか抱えて走ってきました。

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朝の散歩で、お春ちゃんが言う事


お春ちゃんは気が向いた時だけ、朝の散歩に来るのですが、
「わ~。このにおいは卵焼きやな。むっ、こっちは揚げ物のにおいや、美味しそうやなぁ。邦子に作ってもらおう!」
と嬉しそうな大きな声で言います。お春ちゃんの声は高くて良く通るので、まだ暗いうちから歩いてるのにと、まあばあちゃんとお豊ちゃんは気が小さくなります。
「お春ちゃん、まだ、この時間だと、寝てはる人もいるから、もう少し小さな声で……ね?」
と、まばあちゃんがいうと、お春ちゃんは、
「アハハ! ほんまや! ウッカリしてたわ。こんな朝早よから。大きな声出しとったらアカンわ! アハハハ!」
と大きな声で笑ってから、自分の口を押えました。
そして、邦ちゃんが怪我をしてからは、
「うちには無駄飯食いがおるから大変や」とか、医療費がかかるからと「金食い虫がいつまでたっても親から金をせびりおる」としきりに言うようになりました。
まあばちゃんは、
「そんな事、まさか、邦ちゃんに言ってないでしょうね。」
と、邦ちゃんのことが心配になって聞くと、お春ちゃんは、
「なんで言うたらアカンの? 早よう、治って働いてもらわんと食べていかれへん。あの娘はホンマにとんまやで、自転車に当てられたくらいで骨折るやなんて!」
お春ちゃんの声はまた大きくなりました。
「お春ちゃん、そんな大きな声で!」
「せやかて、まあちゃん、聞いてよ! ホンマに邦子は情けない。せっかく大学出のムコサンつかまえても、家から放り出されてたら、何にもならへん。こっちは頭金やらナンヤラカンヤラて、金ばっかり使わされて。おまけに離婚やて! カッコ悪うてしゃーないわ。」
「お春ちゃん!!」
母親のお春ちゃんに、邦ちゃんは、毎日毎日こんなことを言われているのでしょう。邦ちゃんの気持ちを思うと、まあばあちゃんは胸が締め付けられるようでした。
ほんとだったら、一番、慰めてほしい人のはずなのに……

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邦ちゃん、行っておいで


「邦ちゃん、いつでも、わしの所に来てくれたらええからな。わし、いつでも待ってますんで。」
オッチャンが邦ちゃんに深く頭を下げて、まあばあちゃん達に軽く会釈して、
「ほな……」
と言って、帰りかけると、チビちゃんがピョンと邦ちゃんの膝から飛び降り、オッチャンの所へとかけていきました。
邦ちゃんは小さく「あ、あの……」とつぶやくように言うと、チビちゃんにつられるように、その後を追おうとしました。
「オッチャン、待って! 邦子おばちゃんも一緒に行きたいって!」
トモちゃんが、邦ちゃんの気持ちに気付いて、オッチャンを呼び止めました。
そして、邦ちゃんの車イスをオッチャンの方へと押しました。
オッチャンが驚いたように振り返りました。チビちゃんが抱っこ抱っこと言うように、足元にじゃれついています。オッチャンは、チビちゃんを抱き上げると、こちらに戻ってきました。
「わたし、もう、母の家には帰れません。このまま連れて行ってもらえないでしょうか?」
オッチャンは驚いたような顔をしましたが、他のみんなは、邦ちゃんの気持ちが分かるらしく難しそうな表情でした。
「わしは、ええけど、邦ちゃんのお母ちゃんが許さんやろ。わしもばあちゃんと相談して、ちゃんと挨拶して、邦ちゃんをもらいに行くから、今日はお母さん所に帰った方がええと思うんや。」
オッチャンの言うとことは、もっともです。
いつの間にか、邦ちゃんの側に来ていたまあばあちゃんが、邦ちゃんの肩にそっと手を置きました。すると、邦ちゃんは、
「まあおばちゃん、わたし、このまま本田さんの所に行きたい。だって、私の居場所なんて、どこにもないんですから……」
まあばあちゃんは、肩を震わせて泣く邦ちゃんの背中を優しく擦りながら言いました。
「邦ちゃん、このまま、連れて行ってもらいなさい。お春ちゃんには、私からきちんとお話ししとくから。」
まさか同意してくれるとは思っていなかったのでしょう。邦ちゃんは驚いたようにまあばあちゃんを見ました。まあばあちゃんは力強く頷くと、
「幸せにおなりなさい。この人は、本当に優しくてあったかい人よ。」
その言葉に邦ちゃんは、
「ありがとう! ありがとう! まあおばちゃん、ありがとう……!」
邦ちゃんはまあばあちゃんの胸にすがって泣きました。

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まあばあちゃんはキューピット


お春ちゃんが、上着を取りに家に入った後、まあばあちゃんはオッチャンにニッコリ笑いました。オッチャンもそれに気付いてニカッと笑いました。
その笑顔は、やっと言えたよと言ってるようでした。
「ばあちゃんのおかげで、邦ちゃんと知り合いになれたんやなぁ。ばあちゃんは、わしの母ちゃんみたいに思てたけど、今日はなんやらみたいに思うわ。えーと、なんやったかな。……」
そこでトモちゃんが、
「キューピットでしょ!」
「せや! それそれ! トモちゃんは何でもよう知っとるな。」
オッチャンが嬉しそうにガハハと笑いました。
「オッチャン、告白できて良かったね。」
「ほんまや。みんなのおかげや。せやけど、心臓がバクバク言うたわ。もし、断られたらもう、わし、この町におられへんもん。」
「なんで?」
トモちゃんが不思議そうに言いました。
「考えてみ。そりゃー、恥ずかしいで。そのこと考えたら、言うに言えんで。」
オッチャンが邦ちゃんを見ると、
「邦ちゃん、ありがとうな。わし、ほんまに嬉しいわ。」
「私のほうこそ、こんな体なのに……、ほんとにいいんですか?」
「それを言うならわしの方や。こんな一回りも上の爺さんやのにホンマにええんか?」
「なに言いはるんですか。もったいない。」
そう言うと、邦ちゃんは、また涙ぐみました。
邦ちゃんとオッチャンを見て、みんなもほっこり暖かい気持ちになりました。

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嬉し涙


まあばあちゃんも邦ちゃんとオッチャンを見ていて、涙が出てきました。
(本当に良かった)
オッチャンも邦ちゃんもお互い言えないでいたのは、この時の為だったのかもしれないと、まあばあちゃんは涙を拭いなら思いました。お豊ちゃんの方を見ると、お豊ちゃんも泣いていました。まあばあちゃんの視線に気づいてニッコリ笑いました。
トモちゃんも嬉しそうに笑っていました。
「あの、ほんまに、あんたはん、うちの邦子を貰ってくれはるんですか?」
そう言うと、お春ちゃんが、ぶるっと肩を震わせました。
(あら、お春ちゃん!)
まあばあちゃんは驚きました。お豊ちゃんもハッとしたような顔をしました。
昭雄さんの事に気を取られて気づきませんでしたが、お春ちゃんは、この寒いのにコートを着ずに出てきたようです。
お春ちゃんがオッチャンの手をヒシっと握って言いました。
「有り難うさんです。ホンマに有り難うさんです。」
お春ちゃんは、オッチャンの手をしっかり握ってブンブン振り回しました。
「は、はい。宜しくお願いします。」
オッチャンは、すこし戸惑ったような表情で言いました。さっきまであんなに昭雄さんにこだわっていたお春ちゃんが、すぐにオッチャンの事を受け入れてくれたので、心の中で驚いたのでしょう。
(オッチャン、大丈夫かなぁ)
そんなオッチャンを見ていて、トモちゃんは、ほんの少しだけ、オッチャンの事が心配になりました。
オッチャンは、お春ちゃんの事が苦手なのではと思っていたからです。
思った事をズバズバ言うお春ちゃんに、オッチャンは、ワタワタしているようにトモちゃんは思っていました。
「お春ちゃん、あんた、そんな恰好で風邪ひくで、早よ、上着、着といで。」
「なんや、寒いな思ったら、私、上着、着てないんやな。」
お春ちゃんは照れ臭そうに家に入って行きました。

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「ごめんね。ごめんね。お母さん。」
「……邦子……」
邦ちゃんから、ハッキリそう言われて、お春ちゃんは呆然としていました。
「もうあそこへ行くのは嫌や。」
邦ちゃんは、そう言うと、下を向いて肩を震わせていました。
まあばあちゃんもお豊ちゃんも掛ける言葉が見つからなくて黙っていました。
あの家で、色んなことに耐えてきたのは、他でもない邦ちゃんです。みんながあれこれ言っても、邦ちゃん自身の痛みは邦ちゃんにしか分かりません。
お春ちゃんも、口をつぐみました。
「なあ、邦ちゃん、寒いないか?」
オッチャンはそう言いながら、自分に巻いていたマフラーを外すと、邦ちゃんの方に掛けました。
「チビも抱いとき……」
そして、チビちゃんを膝の上に乗せました。チビちゃんは、膝の上に乗ると、邦ちゃんの胸に手をかけて顔をペロペロなめました。
邦ちゃんは、チビちゃんをキューッと抱きしめました。
「なぁ、邦ちゃん、もし邦ちゃんが嫌やなかったら、わしのとこに来ぇへんか?」
邦ちゃんは、驚いたような顔をして、オッチャンを見上げました。オッチャンは続けて言いました。
「わし、中卒やし。頭も良うないけど、わし、邦ちゃんとしゃべったりしてると、心がホカホカするいうか。安らぐねん。邦ちゃんが、いつも側にいてくれたら嬉しいなと思っててん。良かったら、うちに来てください。」
そう言って、オッチャンは、邦ちゃんに頭を下げました。
邦ちゃんの目から、涙があふれ出てきました。そして、何度も何度も頷いてから、やっと、「有り難うございます。よろしくお願いします。……わたしも、いつも心配してくれて優しい本田さんに、惹かれていました。すごく嬉しいです。」
邦ちゃんの目からまた涙がながれました。
「ほんとに嬉しい……」
でも、この涙は幸せの涙です。

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Author:堺の町のまあばあちゃん
堺の町に住む、ひとりのおばあちゃんのお話です。
住み慣れた町の人々との交流や孫のトモちゃんや犬のジロとの生活を通して力強く生きていく姿を物語に書きたいと思います。 
宜しくお願いします。
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