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それぞれの気持ち


「まあちゃんはどない思う?」
お豊ちゃんは、自分の亡くなったご主人と昭雄さんを重ねているのか、いつものおとなしいお豊ちゃんと違いエライ気迫です。
お春ちゃんは気圧されたらしく、すがるような目でまあばあちゃんを見てきました。
「わたしも、お豊ちゃんと同じ考えよ。昭雄さんは、アカンと思うの。お春ちゃんだってお豊ちゃんの家に行くときに、あの家の様子見てるんでしょ。あの荒れ果てた家の掃除を邦ちゃんにさせるつもりじゃないかしら。そして、手伝いもせずに、あの薄気味悪い女の人と一緒になって、邦ちゃんに、あーだこーだと命令するのよ。昭雄さんとよりを戻すのはやめたほうがイイと思うの」
「まあちゃんには、私の気持ちなんか分からんわ。優しい若夫婦とトモちゃんがいるもん。なんも分からんくせに偉そうに言わんといて……!」
お春ちゃんが泣き出してしまいました。
まあばあちゃんは、言い過ぎてしまったと後悔しました。
「……邦子、あんた、どない思ってるんや。このままでどないして生きていくんや……。」
「……お母さん……」
「なあ、邦子、どないしたらええんや……。」
「お母さん、でも、私、もう昭雄さんの顔も見たくないんです。もう、あんな生活は嫌です。昭雄さんとよりを戻すくらいなら、死んだ方がましやと思ってるんよ。ごめんね。許してね……。」

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お春ちゃん、断って


「あんた、きっちり断りや。」
お豊ちゃんが、念を押しました。
「あんたの口出しする事やないよ。よその家のこと、かまわんといて!」
お春ちゃんは、お豊ちゃんには強気です。
「お春ちゃん、あんた、そんなん言うけど、あの薄気味悪い女、まだあの家におるで! あれどないすんの?」
お豊ちゃんが聞きました。今日のお豊ちゃんは冴えています。まあばあちゃんも気になっていましたが、邦ちゃんの前であの薄気味悪い女の人のことを聞いてもいいのか迷いました。
「そら、追い出すやろ? 邦子とよりを戻したい言いに来たんがその証や。」
「順番が逆や。まず、あの女、追い出して。それから、邦ちゃんに手ぇついて謝って、話をするのは、それからやろ?」
「よりを戻す時はどっちかが折れんと、戻るもんも戻らへんやろ! ごちゃごちゃ言いな!」
「そんなん言うて、あの男、あの態度じゃ、邦ちゃんの事、またこき使う気やで。そんなに生活が心配やったら、あんたが内職でもしてた方がましや!」
お豊ちゃんは、一歩も引き下がりません。

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頼もしかったお豊ちゃん


「邦子、考えてみ? これから先、私らどないして食べていったらええんや? あんたの体ではもう働きに行くことは出来へん。私の年金もスズメの涙や。せやけど、昭雄さんとよりを戻したら、あの人の年金でゆっくりできるで。」
邦ちゃんは下を向いたまま、手で顔を隠してお春ちゃんを見ようとしませんでした。その肩は震えていました。
お春ちゃんは、こうと決めたら、誰が何と言ってもきかない頑固なところがあります。まあばあちゃんも長い付き合いでよく知っています。
邦ちゃんはもっとよく分かっているでしょう。それだけに、ここで何とかしないと、お春ちゃんが勝手にどんどん決めてしまったら、とんでもないことになります。
「あのね、お春ちゃん。私、昭雄さんは駄目な人だと思うの。」
「なんで。なんでそんなこと言うの。まあちゃん。」
「だってね。そうでしょう。さっきの町会費のことだってそう。常識のある人だったら、まず、お豊ちゃんに謝って、家に取りに帰るわよ。それを昭雄さんは、お春ちゃんに6000円ものお金を立て替えてほしいと言ったのよ。あんまりいい人とは思えないわ。」
「それは、私もびっくりしたけど……。」
お春ちゃんは、急にションボリしました。
「そうやよ。私だって、町会費、あんたから貰ってしもうたけど、あの男の人、返す気なんてないと思うわ。」
お豊ちゃんもさっきの勢いはどこへ行ったのか、元気なく言いました。いつもはおとなしいお豊ちゃん、見るに見かねて頑張ったのでしょうね。まあばあちゃんはお豊ちゃんを頼もしく思いました。

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年金生活


「ほな、これ取っといて。6000円やなぁ。」
「私、お春ちゃんからもらおうと思てへんで。」
お豊ちゃんが面喰ったような顔をして、お春ちゃんの手を押し返しました。でも、
「ええねん。ええねん。」
と言って、6000円を握らせるように渡しました。
お豊ちゃんがまあばあちゃんを振り返りました。まあばちゃんもお春ちゃんのした事が信じられなくて、驚きを隠せませんでした。
「じゃあ、お母さん、また来ますわ。」
と言って、サンダルをひっかけると表に出てきました。冬なのにボロボロのビーチサンダルです。そして邦ちゃんに気付くと、
「邦子、どないしたんや。車イスなんかに乗って。」
今までの自分のしてきた仕打ちをすっかり忘れているのか、親しげな笑顔で言いました。トモちゃんは、驚いて邦ちゃんの車イスを後ろに引きました。すると、その分だけ昭雄さんも近づきました。邦ちゃんは下を向いたまま顔を上げませんでした。昭雄さんは“しょうがないなぁ”というような顔をすると、まあばあちゃん達にも会釈して、その場を離れていきました。
お春ちゃんが後を追うように出てきました。
「あっ、邦子、お帰り、なんで、家に入って来ぇへんの。 あんなぁ、昭雄さんが邦子とより戻したるって言うてるねん。」
「より?」
トモちゃんは、よりの意味が分からずキョトンとしています。
「「なんですって」」
お豊ちゃんとまあばあちゃんは心臓がひっくり返りそうになりました。
お春ちゃんは、よく聞いてくれましたと言うように説明します。
「より言うんわな。もう一回夫婦に戻る言う事や。仲直りや。昭雄さんが邦子とよりを戻してくれたら、邦子は働かんですむやろ? あの人年金あるから。これは有難い話や思てな?」
「仲直りって……。あの男の人、土下座しても許してもらえないぐらい悪い事してるんじゃ……」
トモちゃんは、聞こえるか聞こえないか分からないような声で言いました。

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立て替え


お豊ちゃんの言葉にお春ちゃんも奥で座っている昭雄さんを見ました。
「お春ちゃん、あんた、なんで邦ちゃんを酷い目に合わせたモンを家の中に入れてんの。よう、あんなに笑って話が出来るな。あんたは邦ちゃんの母親やねんで。あんたの大事な邦ちゃんがえらい目にあわされたんを忘れてしもたんか。もうろくしてる場合ちゃうで。」
「あんたになにが分かるねん。」
いつも、おっとりしたお豊ちゃんの思わぬ強い言葉に少しひるみましたが、お春ちゃんはお豊ちゃんに言いかえしました。
「お春ちゃん、あんた、恥いう字、知らんのか! 邦ちゃんは、あれがおるから家によう入らんねんやんか!」
「…………。」
「あんたが今、家に入れてるモンは、あっちこっちに迷惑かけてるねんで! 私かて生活苦しいのに、町会費立て替えたまんまや!」
「そんなん、ここで言わんといたってよ。」
お豊ちゃんにああまで言われているのに、尚も昭雄さんをかばうお春ちゃん。お豊ちゃんも引っ込みがつかなくなって、
「そんなにかばうんなら、お春ちゃん、あんたが町会費6,000円、払ってよ。」
「はぁ! なんで私が!」
お春ちゃんもカッとなって、お豊ちゃんを睨みつけました。
(これは大変なことになってしまったわ。)
まあばあちゃんは、とにかくこの場は二人を落ち着かせないといけないと、話しかけようとした時、昭雄さんがお春ちゃんに親しげな口調で言いました。
「お母さん、すみません。私も軽い気持ちで、伺ったので何も持って来なかったんです。町会費、建て替えてもらってもいいですか?」
お豊ちゃんとにらみ合っていたお春ちゃんは、信じられないことにポケットから財布を出して、6,000円をお豊ちゃんに渡そうとしました。
(ええ!!)
その場にいる全員が昭雄さんの言葉にはもちろん驚きましたが、お春ちゃんが言いなりになってお金を出したことにはもっと驚きました。
みんなシーンとしていました。

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町会費


「どうしたの? まあちゃんもみんなも」
お豊ちゃんは不思議そうに、皆を見ました。
「いえね。それがね……」
まあばあちゃんは口ごもってしまいました。
「なによ、まあちゃん、言うてよ。」
お豊ちゃんが、心配そうにまあばあちゃんの顔を覗き込みます。
「昭雄さんが訪ねてきてるの。」
「ええ! お春ちゃんは家に入れてるの?」
まあばあちゃんは頷きました。
「お春ちゃん、日頃、偉そうに言うてんのに、昭雄さんにはよう言わんのかしら。」
事情を知っているので、お豊ちゃんも驚きを隠せないようでした。
お豊ちゃんは呼び鈴を押しました。
「はーい。あっ、お豊ちゃん、どないしたん。今ちょっと、人が来てるねん。また今度でええ?」
お春ちゃんの肩越しに昭雄さんがいるのを確認すると、お豊ちゃんは、
「その人、わたしの家の隣に住んでる人でしょ。」
「な! なに人の家の中覗いてんの!」
「ノゾキは、そこの人が連れてきたあの薄気味悪い女や。いっつもうちの家、ジーッとカーテンに体隠して見てるわ。せやのに、呼んでも呼んでもでてこえへん!」
これには、お春ちゃんも黙りました。
「町会費、一年分の6,000円、何回、行ってもくれへんねんけど。そこにいるんやったら、今、払ってほしいんですけど。」
「ちょっと、何言うてんの。」
お春ちゃんが話を止めようと割って入ります。お豊ちゃんはかまわず話し続けました。
「わたし、今、町会の役をしてるんやけど、そこの人だけ町会費くれへんのよ。私、立て替えてんるで、早く払ってほしいのよ。」

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門前払い?


邦ちゃんの家の呼び鈴は玄関の横についてます。
まあばあちゃんは、邦ちゃん達を通りで待ってもらう事にしました。
と言っても、玄関と表通りはすぐそこなのですが……。
邦ちゃんは一緒に行くと言いましたが、ここは、先にお春ちゃんと話をしたいと思いました。お春ちゃんの考えがまるで分からないからです。
まあばあちゃんは、呼び鈴を押しました。
「はーい!」
お春ちゃんが明るい声で返事しました。
「……あ、あら、まあちゃん。いらっしゃい。」
お春ちゃんは、まあばちゃんの顔を見て、困ったような顔をしました。
「お茶したいなと思って、上がらせてもらってもいい?」
まあばあちゃんの言葉に、お春ちゃんは大慌てで言いました。
「今、ちょっと、人が来てるねん。後からまあちゃんとこに行くから。」
お春ちゃんは、玄関を開けっ放しにしてきたので、家の奥まで丸見えです。まあばあちゃんの目に昭雄さんの姿が映りました。
「どなたがみえてるの? 私も知ってる人?」
まあばあちゃんは、あえてお春ちゃんに聞きました。
「とにかく後で行くから。な、まあちゃん、今はとにかく帰って!」
お春ちゃんは、少し苛立ったような口調になりました。そして、ピシャッと玄関をしめて家に入ってしまいました。
「あら、まあちゃん、あらぁ! みんなお揃いで……。どうしたの?」
お豊ちゃんがハッピーちゃんを散歩していました。

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不可解


こっちに来ると言っていたオッチャンを表に出て待つことにしました。
外に出ると、オッチャンが向こうから手を振ってきました。
「オッチャン、今からみんなで邦ちゃんの家に行くの。」
とトモちゃんが言うと、オッチャンは
「わしも行くわ。心配や」
と言ってくれました。チビチャンがオッチャンに抱っこしてと言うように、足元でよじ登ろうとします。オッチャンはヒョイっと抱きあげました。
「ほな、行こうか。」
その言葉を合図に、
まあばあちゃんはシルバーカーを押し始めました。ジロは胸を張って少し先をシャキッとして歩きます。ミミちゃんはいつものようにシルバーカーの中です。
トモちゃんが邦ちゃんの車イスを押します。
みな、口をキュッと引き締めています。

邦ちゃんの家の前に着きました。
―――アハハハ、アハハハ――――
なんと! お春ちゃんの笑い声が聞こえてきました。
まあばあちゃんは固まってしまいました。
(お春ちゃん、気でもふれたんじゃないの? 邦ちゃんは女の人を連れてきた昭雄さんに追い出されたんよ。追い出された日の事を忘れたの?)
邦ちゃんは、これ以上、女の人の世話は出来ないと言った日。荷物を外に放り出されて、出て行けと言われたのです。
……あのどしゃぶりの雨の日だったそうです。
まあばあちゃんにはお春ちゃんの心が理解できませんでした。
トモちゃんが邦ちゃんを見ると、邦ちゃんの体は小刻みに震えていました。
トモちゃんはそっと邦ちゃんの肩を抱きしめました。
「ありがとう、トモちゃん。しっかりしないといけないのに情けないわね。」
邦ちゃんが、トモちゃんの手に自分の手を重ねて言いました。涙声でした。
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恐れずに……


トモちゃんが扉を開けたとたん、ジロとミミちゃんとチビチャンが“おかえり”“おかえり”というようにトモちゃんにじゃれ付きました。
「ただいま、ただいま。ジロ、ミミちゃん、ごめんね、ちょっと急いでるの。」
トモちゃんが、落ち着くように頭のてっぺんをくすぐったりしますが、はしゃぐのが止まりません。仕方がないので
「おばあちゃーん、ただいま!」
トモちゃんが大きな声で言いました。
「はーい。あら? トモちゃん、どこにいるのー?」
出迎えた方にトモちゃんがいないので、まあばあちゃんは探しているようです。
「おばあちゃん、裏口にいるの?」
「え? そう、今、行くわねー。」
まあばあちゃんがゆっくり、慎重な足取りで裏口に回ってきました。
「あら? 邦ちゃん。」
てっきり邦ちゃんを送り届けた後に帰ってくると思っていたまあばあちゃんは不思議そうな顔をしました。そして、邦ちゃんの様子に心配そうな顔でトモちゃんを見ました。
「おばあちゃん、大変なの! あの男の人が邦子おばちゃんの家に来てるの。お春おばあちゃんとしゃべってた。」
「……え……」
まあばちゃんは、頭が真っ白になったような表情になりました。
「そんな、ばかなこと……」
あの男の人。その言い方で誰の事を言ってるのかまあばあちゃんにはピンときました。トモちゃんが、そんな呼び方をするのは、昭雄さんしかいないからです。
「ホンマよ。家から出てきたの見たんよ。それで、どうしていいか分からへんから、邦子おばちゃんを置いていけないし。オッチャンもおばあちゃんに相談しようって。」
「分かったわ。とにかくここは寒いから、家に入って、あったかいお茶でも飲んで待ってて。私、お春ちゃんに、話を聞いてくるわ。トモちゃん、上着とってきてくれる?」
「うん。」
トモちゃんは急いで家の中に入りました。
「邦ちゃん、ビックリしただろうけど、お茶でも飲んで、気持ちを落ち着けて。ね。」
まあばあちゃんは邦ちゃんの背中を擦りながら言いました。
「おばあちゃん、お待たせ。」
トモちゃんが、まあばあちゃんのダウンジャケッを抱えて、シルバーカーを押してきました。
「じゃ、待っててね。」
「まあおばちゃん、私も行きます。」
邦ちゃんが、はっきりとした口調で言いました。
「「ええ!」」
まあばあちゃんとトモちゃんは飛び上がってビックリしました。
「でも、大丈夫?」
まあばあちゃんが、心配そうに言いました。
「邦子おばちゃん、おばあちゃんに任せたほうがいいよ。おばちゃん、心が壊れちゃうよ。」
トモちゃんが、泣きそうな顔で言いました。
「わたしも、まさか家に来るなんて思ってなかったから、心臓が止まるかと思うほど驚いたけど、逃げないで、ちゃんと話をします。まあおばちゃんが一緒だし。とても、心強いです。」
邦ちゃんは、まあばあちゃんの目をしっかり見て言いました。
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台無し


トモちゃんは、邦ちゃんを乗せた車いすを押して、どんどん歩いて、いえ、走っていきます。
昭雄さんたちが邦ちゃん達を追ってくる様子はありませんでした。
(あの距離で気付かんちゅうことあるやろか?)
オッチャンは首をかしげました。
邦ちゃんは昭雄さんの顔も見たくないでしょうから、それで良かったのですが、釈然としません。
トモちゃんは次の角を曲がりました。オッチャンもそれを確認して車を動かしました。
思った通り、トモちゃんは通りを少し入ったところで、オッチャンを待っていました。
邦ちゃんは顔を手で隠して泣いていました。トモちゃんもそんな邦ちゃんにかける言葉が見つからないようで、ただ黙って背中を擦っていました。
オッチャンが、車をトモちゃんの達の所に寄せると、
「オッチャン、どうしよう?」
「ここにおっても寒いだけや。ばあちゃんに相談しに行こう。もういっぺん車に乗り。」
「ううん。表から行くと、お春おばあちゃんとこから、うちの家、見えるから車で行くより、反対側から家に入るよ。」
「そうか。ほな、わしは車、置いてからトモちゃんとこに行くわ。寒いから、上着持って行き。」
そう言うと、後部座席に置いてあった上着をトモちゃんに渡しました。トモちゃんはそっと邦ちゃんにオッチャンの上着を掛けました。
邦ちゃんはうつむいたまま、顔を上げませんでした。
(せっかく、楽しい一日だったのに……。お春おばあちゃんのせいで台無しやん。なんで、邦子おばちゃんに酷いことした人を家に入れるん? 水かけて追い出してやればいいのに……)
トモちゃんも悲しくなって涙が出てきました。
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訪問者


「車、どっちにつけよか? 邦ちゃんがええか? トモちゃんの方がええか?」
「先に邦子おばちゃんを送っていこう。そのほうが安心やから。」
「よっしゃ!」
オッチャンが、自動車を邦ちゃんの家の前に着けると、トモちゃんが先におりて、邦ちゃんの降りるのを待ちました。
邦ちゃんが邦ちゃんが車外に出た時、ふっとトモちゃんは邦ちゃんの家の方を見ました。すると血相を変えて、
「オッチャンに早くトランク開けて!」
と言ってドアを閉めました。オッチャンがポカンとしていると、トモちゃんがトランクの方に回って、トランクを叩く真似をしました。オッチャンが様子を飲み込めず、トランクを開けるスイッチを押しました。
トモちゃんは慌てた様子で車いすを出して、邦ちゃんに、早く座って乗ってと言ってるようでした。邦ちゃんも戸惑っていましたが、自分の家の方をみて顔をこわばらせました。オッチャンも邦ちゃんの家の方を見て驚きました。
(一回しか見たことないけど、あれ、邦ちゃんの前の……)
―――そう、昭雄さんです。邦ちゃんの離婚した前のご主人です。
邦ちゃんにさんざん酷い事をした上に、追い出して離婚をつきつけてきた男の人です。
それが、邦ちゃんの家の玄関先に立っていました。お春ちゃんも後から出てきました。
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心がほこほこ温かです。


「ごめんね。私のせいで……。トモちゃん達、もう少し見たかったんちゃう?」
帰りの車の中で、邦ちゃんが、トモちゃん達にあやまりました。
「ううん。チョコレートは買ったし、美味しいものいっぱい食べれたし、大満足! ね! エリちゃん。」
「はい。すっごく楽しかったです。私こそ突然来て、ごめんなさい。」
エリちゃんが謝るので、邦ちゃんは驚いて、
「何言ってるの。私こそ、トモちゃんのお友達に会えて、とっても嬉しいわ。」
「エリちゃんは、私の自慢の友達だよ。綺麗で、ピアノがすごく上手なの」
「ちょ、ちょっと、トモちゃん」
エリちゃんが、恥ずかしそうにトモちゃんの腕をポンと叩きました。
「なんで、ほんとやよ。」
トモちゃんはケロッとしています。
「あっ! ここです。送っていただいて有り難うございました。」
「おっ。ここに停めたらええんか?」
「はい。あの。今日は本当にありがとうございました。」
そう言って、ツヤのある白地に金の文字を上品にあしらった紙袋をオッチャンに手渡しました。
「……え、えええ! ワシにくれるんか?」
「はい。」
「いやいや、こんな気ぃ使わしてごめんやで!」
ニッコリ笑って、オッチャンに頭を下げると、邦ちゃんに会釈して、トモちゃんに小さく手を振って、少し先にある自宅の小門の中へ消えていきました。
「わし、こんなん、もろうて良かったんやろか。なんか悪いことしたなぁ」
オッチャンは、もうエリちゃんはいないのに、さっきから同じことばかり繰り返しています。
「オッチャン、バレンタインは、ありがとうって気持ちを伝えるもんなんよ。エリちゃんは、オッチャンがおいしく食べてくれた方が嬉しいと思うよ。」
「そうか。ワシ、チョコレート大好きや。有難くいただくわ。」
オッチャンは、急に元気よく言いました。
「せやけど、エリちゃん大きな家の子やったんやなぁ。わし、ビックリしたわ。えらい上品な子やなぁと思ったけど、偉そうにしたところないし控えめやし。本物の金持ちって、ああやねんなぁ。」
「エリちゃんは、優しいし頭もいいんやよ。」
トモちゃんが嬉しそうに付け加えました。
「ということは、トモちゃんもスゴイいう事や。そんな立派な子が通てる学校にトモちゃんは立派に合格して通てるんやから。エライもんや。でも、ちょっと遠いなぁ。エリちゃんはすぐそこやけど、トモちゃんは毎日大変やろ。」
「ううん。ぜんぜん。学校楽しいもん」
「そうか。楽しいのが一番やな」

トモちゃんとオッチャンの会話を聞いていて、邦ちゃんは、心がほこほこ暖かくなるのを感じました。
怪我が治ったばかりの自分を心配して、車を出してくれたオッチャン、会ったことも無いのにトモちゃんの話を聞いて、わざわざ足を運んでくれたトモちゃんのお友達。それなのに、突然来たからとを詫びてくれる。なんて優しいんでしょう。
そして、本当に苦しかった時、邦ちゃんのために怒ったり泣いたりしてれた恭子ちゃんとまあばあちゃんの顔が浮かびました。
本当に心が温かくなりました。
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座って行こう


トモちゃんとエリちゃんは、邦ちゃんを椅子に座らせると、
「ちょっと、たくさん、歩きすぎたかなぁ。邦子おばちゃん、もう帰る?」
トモちゃんが、聞いてみると、
「うん。ごめんね。少し休んだら、帰ろうかな。」
邦ちゃんが、少し疲れた顔をして、足を擦りながら答えました。
トモちゃんは、車いすに邦ちゃんを乗せることを思いついたのですが、オッチャンが手を貸そうとしたとき、恥ずかしそうに断っていた邦ちゃんを見ていたので、トモちゃんは、悩みました。
(邦子おばちゃん、嫌かなぁ。恥ずかしいかなぁ。でも、こっから駐車場までけっこうあるし……)
トモちゃんは、邦ちゃんをもう一度見ました。人酔いしたのか、顔色も悪いようです。トモちゃんは決めました。
「邦子おばちゃん、今日車イス持って来てるねん。とってくるね。」
「え! いいわ。そんなん、悪いわ。」
邦ちゃんは慌てたように言いました。
「邦子おばちゃん、疲れちゃったときにって、おばあちゃんに持っていきって言われて、トランクに入れてるの。行ってくる。待っててね。オッチャン、邦子おばちゃんを頼むね」
「お、おう! あっ、トモちゃん、カギカギ」
オッチャンが、ポケットからキーを取り出してトモちゃんに渡しました。
「あ、そうだった。お預かりします。」
と、トモちゃんは照れたように笑うと、かけて行きました。
「私も行ってきます。」
エリちゃんも、トモちゃんを追いかけていきました。

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すこし、疲れたかな?


下の階におりて、喫茶店に入りました。
トモちゃんとエリちゃんはパンケーキのセット、オッチャンと邦ちゃんはケーキセットにしました。
「なんや、飯食うたのに、ホットケーキ食べるんかいな。」
オッチャンは不思議そう―な顔をしました
「オッチャン、でも、家ではこんな風には焼けないよ。」
トモちゃんが言うと、オッチャンは、感心したように、
「そやな、家で食うのとはちょっと違うなぁ」
と言いました。

喫茶店を出ると、トモちゃんが
「はー、お腹いっぱい! 美味しかった! オッチャン有り難う! ごちそうさまでした!」
エリちゃんも、嬉しそうに、
「ごちそうさまでした。」
ニッコリ笑って言いました。
邦子おばちゃんは、先にオッチャンにお礼を言い過ぎたからか、トモちゃんと一緒に言うかどうか迷っているようした。
「邦子おばちゃん、お洋服見て行く? 小物もあるよ!」
邦子おばちゃんは、パッと嬉しそうな顔をしましたが、
「ううん。大丈夫よ。」
と言いました。すると、オッチャンが、
「わしの事やったら気にせんでええで、わしもこんなとこなかなか来ることないから、一緒に見てええか。」
「じゃ、行こう!」
トモちゃんが元気よく言いました。
「可愛い服が、いっぱいあるわねぇ。」
と、邦ちゃんが、まぶしいものを見るような目で言いました。
「トモちゃん、あれなんか似合うんちゃう?」
「この階のは、私たちには大人っぽすぎるよ。」
「そう? 難しいわねぇ。」
なんだか邦ちゃんの声に力がありません。
「邦子おばちゃん、疲れた?」
「うん。すこし……」
「どっか座ろう。」
とトモちゃんが、言いました。
「あそこ、イスが空いてるわ。ちょっと先に行ってるね。」
とエリちゃんが、小走りで席を取りに行ってくれました。
オッチャンが、肩を貸そうとすると、邦ちゃんは、
「大丈夫です。もう少しだし、自分で歩きます。椅子に座れば、良くなりますから。」
邦ちゃんが、すまなそうに言いました。
思いがけず断られたオッチャンは、少しショックを受けたようでしたが、トモちゃんには邦ちゃんの心が分かりました。邦ちゃんは、オシャレな人や物が溢れているこの場所で、抱えられたりするのが、恥ずかしかったのでしょう。
(オッチャン、優しくてあったかいんだけど、デリカシーは無いんよね。)
トモちゃんは後でこっそりオッチャンに教えてあげようと思いました。
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チョコレート、決まりました。


「邦子おばちゃん、決まった?」
「どれも、キレイで、悩むわ~。目がチカチカしてきた。トモちゃんは、決まった?」
「わたしね。これにする!」
「あれ~。私もそれいいなーって思ってたんよ。」
「エリちゃんも?」
「じゃ、同じのにしよう。」
「うん。」
二人の会話を聞いて、邦ちゃんが、
「じゃ、わたしも、同じのにするわ。」
「「え!」」
とトモちゃんとエリちゃんが、キョトンとしました。
「どうしたの?」
「だって、オッチャン、3人に同じチョコを貰う事になっちゃうもん。」
とトモちゃんが、言いました。
邦ちゃんも気が付いたようで、笑い出しました。

「オッチャン、お待たせ~。」
トモちゃんが、会場の端っこでみんなを待っているオッチャンに声を掛けました。
「おっ、ええのあったか?」
「うん。ありがとう。」
「そりゃ、良かったわ。疲れてへんか? ちょっと座らへんか? 甘いもんでも食べよ。」
邦ちゃんは、オッチャンの提案にちょっと戸惑っている様子です。
「邦子おばちゃんどうしたの?」
「さっきごちそうになったばっかりなのに……」
そうです。お昼のおうどんはオッチャンにみんなでごちそうになったのです。
「そんなん気にせんとって、ワシ、みんなで、ワイワイできて嬉しいねん。トモちゃん、わし、ケーキ食いたいけど、どこにあるやろ。」
オッチャンは、チョコレート買うので、待たされていたというのに、嬉しそうに弾んでいます。
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バレンタインチョコを買いに行こう


「外で食べるの久しぶりだから、すごく嬉しいわぁ。大阪まで連れてきてもらって、良かった。」
「でしょ?」
「わしも、行く言うたら自転車で足りるトコばっかりやから、エエ気分転換になったわ。トモちゃん、次はどこ行くんや?」
「お菓子売り場よ。」
「せや、お見舞いのお返し言うとったな。」
(結局、チョコを買うところをオッチャンに見られちゃうのかぁ。プレゼントしてビックリさせたかったんだけどなぁ。でも、オッチャンの好きなものを聞きながら選ぶのもいいかも! でも、オッチャンは甘いものなんでも好きだから聞かなくても大丈夫なんよね。)
と、悩むトモちゃんでした。
エレベーターに乗ると、9階のボタンを押しました。
「あれ、トモちゃん、食い物はもっと下の階やで。」
「うん。いいの。今日は催しものがあるの。」
「へぇ、そりゃええな!」
オッチャンが目を輝かせました。
エレベーターを降りてしばらく歩くと、凄い熱気です。
みんな大好きな人に贈るチョコを選ぶのに真剣です。
「すごい人ねぇ。食堂街も人が一杯だったけど、ここはもっとやね。」
邦ちゃんが、ビックリしたように言いました。
「トモちゃん、みてみて、これ可愛い!」
「わぁ! いいねぇ。邦子おばちゃんは?」
「そうね。なんかどれも、キラキラしてて目がチカチカするわ。」
「あっちも見てみよう。」
トモちゃんとエリちゃんと邦ちゃんの3人は嬉しそうにあっちのケースこっちのケースと楽しそうに見ています。
バレンタインの催しのため、女性ばかりです。オッチャンは身の置き所がないらしくマゴマゴしています。その様子が微笑ましくて、トモちゃんがクスッと笑ってしまいました。邦ちゃんは、心配そうにしています。チョコ選びどころではないようです。

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あべのハルカスで昼ごはん


「エリちゃん、待ったでしょ! ごめんね。」
「ううん。大変だったでしょ?」
「うん。近鉄パーキング? に停めれた~。」
「良かった。どこ行くの?」
エリちゃんがトモちゃんに尋ねると、オッチャンが、
「みんな腹減ってへんか? わし、腹ペコや~」
その言葉を聞いて、邦ちゃんがニッコリ笑いました。
「じゃあ、ごはん食べに行こう!」
トモちゃんが元気よく言いました。
「どこに行くんや?」
「そこのエレベーターで上の階に行くんよ。」
「そうか。百貨店て来ぇへんから、よう分からんなぁ。…」
店内に入ってから、オッチャンはどうもマゴマゴしています。邦ちゃんの方が、しっかりしているくらいです。
「オッチャン、迷子にならないでね!」
トモちゃんがあんまりエラそうにオッチャンに言うので、エリちゃんがキョトンとしていました。
「頼りにしてるで! トモちゃん。」
エレベーターに入ると、階の案内を見て、邦ちゃんが
「へぇ。3階に分けて、レストラン街があるんやね……」
「邦子おばちゃんは何が好き? 苦手な物ある?」
「ん~。苦手な食べのもは無いかなぁ。おうどんが好きかな~。」
「うどんなんて、ここじゃなくても食べられるよ。ハワイのゴハンなんかどう? 人気があるんよ」
「ハワイ? う~ん」
邦ちゃんはあんまり乗り気ではありません。
「わし、うどんあるんやったら。うどんがええわ。」
(ええー。オッチャンもー? 邦子おばちゃんはなかなか来れないと思うから、珍しい感じがいいと思ったのに~)
と言うわけで、お昼はうどんになりました。

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あべのハルカスへ行こう4


日曜日の朝、オッチャンは、チビチャンをまあばあちゃんに預けに来ました。
「あんまりええ服もってないんや。これでええやろか……」
オッチャンがチビチャンをまあばあちゃんに預けながら言いました。
「大丈夫、とっても素敵よ。」
オッチャンは照れ臭そうに顔をクシャッとさせました。
「ほな、トモちゃん、行こうか。」
「邦子おばちゃん、待ってるよ。早く行こう!」
迎えに行くと、邦ちゃんが家の前で立って待ってくれていました。

邦ちゃんは車で出かけるのは本当に久しぶりらしく、すごく楽しそうでした。
オッチャンと邦ちゃんの会話も弾んでいます。
そんな二人を見ていると、トモちゃんも幸せな気持ちになりました。
車はあべのハルカスの駐車場に入って行きます。トモちゃんがスマホを取り出して、画面に指を滑らせています。
「あっ! エリちゃん、もう着いてるんだ。」
「トモちゃん、どうしたの?」
「うん。エリちゃんも来るの。」
「エリちゃん? ってトモちゃんの友達か?」
オッチャンが聞きました。
「そう、邦子おばちゃんとハルカスに行くって言ったら、心配して一緒に行くって……」
「私のケガの事、話したの?」
邦ちゃんが、ジワっと涙を浮かべました。
「うん。いけなかった?」
トモちゃんが、ビックリして尋ねると、
「ううん。違うの。会ったこともないのに、心配して来てくれるなんて……有難いわ。うれしいわ。暖かい人がたくさんいるんやね。」
そう言って、邦ちゃんは微笑みました。
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あべのハルカスへ行こう③


「わし、そんなんいらんで、気にすることないがな。」
オッチャンがなあんだというように言いました。
「トモちゃんの気持ちも分かるけど、やっぱり二人で行くのは心配よ。」
「う~ん。」
トモちゃんはまだしぶっています。
「医者様が治ったと言っても、やっぱり、大事にした方がいいと思うの。」
「トモちゃんは、ワシをビックリさせたかったんやな。」
オッチャンは嬉しそうに言いました。
「そうなん。行くのもオッチャンには秘密にしておこうと思ってたのに~。」
「トモちゃんはええ子やな。でも、ばあちゃんが心配するのは当たり前やで。一緒に行こう。な?」
「そうやね。もしなんかあったら、私だけじゃ大変やもんね。オッチャン、明日宜しくお願いします。」
「おいよ。大阪でなんかうまいもん食って、ばあちゃんに饅頭でも買うて帰ろう!」
オッチャンがワハハと笑いました。
バレンタインのお買いもののほうはどうなるのでしょうか。
いい案が浮かばないまま、オッチャンも行くことになりました。

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あべのハルカスへ行こう②


土曜日になりました。
まあばあちゃんはトモちゃんと朝のお散歩をしています。
「トモちゃん、昨日は遅くまで勉強してたんじゃないの? もう少し寝てたほうが良くなかった?」
「大丈夫よ。それより、おばあちゃん、足は大丈夫なん? あんまり早く散歩再開したから心配やよ。」
「トモちゃんは、心配性ね。もうちっとも痛くないから大丈夫よ。」
「あっ! オッチャンが来たよ。オッチャーン!」
トモちゃんが大きく手を振ってオッチャンを呼びました。チビチャンも元気よく歩いています。
「おはようさん! いつも早いなぁ。今日はトモちゃんも一緒かいな。」
「そうやよ。おばあちゃん、治ったばっかりなのに散歩いつも通り行くから、心配なん。」
「ばあちゃんは、頑張り屋さんやからな~」
オッチャンとトモちゃんの話している様子を見て、まあばあちゃんは、いい事を思いつきました。
「あの、お願いがあるんやけど……」
「なんや、ばあちゃんがお願いなんて、珍しいな。」
「次の日曜日に邦ちゃんとトモちゃんがあべの……えーと……」
「あべのハルカス」
トモちゃんが助け舟を出しました。
「そう! あべのハルカスに行くの。邦ちゃんは治ったばかりだし、二人で行くの心配で。もし良かったらついて行ってやってほしいの……」
「日曜日やったら空いてるで! わし、あべのハルカス行ってみたかってん。トモちゃん、連れてってや。」
「えー!」
トモちゃんは困った顔をしました。
「なんでや。オッチャンと行くの嫌か?」
オッチャンはトモちゃんの反応にショックを受けたようです。
「だって、お見舞いのお返しを買いに行くんやよ。オッチャンにも考えてるのに、中身が分かるやん。」
と、オッチャンにはそう言いましたが、本当は邦ちゃんと相談してバレンタインチョコを買う事にしていたのです。
まあばあちゃんにも驚かそうと思って言ってませんでした。
(邦子おばちゃんになんて言おう)
トモちゃんは頭を抱えました。

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あべのハルカスへ行こう①


「あのね、おばあちゃん、次の日曜日にあべのハルカスへ邦子おばちゃんと行く約束してん。」
「邦ちゃんと?」
「うん。お見舞いに来てくれはった人に、お返しするんだって。」
「また、遠くへ行くのねぇ。」
「そんな事ないよ。それに、いろんなお店があって楽しいよ。」
トモちゃんにとっては、遠い距離ではないのですね。それに大阪の方が可愛い服もたくさん見つけられるから、楽しいのでしょうね。
「おばあちゃんも行かへん?」
トモちゃんは、おばあちゃんも行くものと思っているように聞いていました。
「ごめんね。おばあちゃんは、大阪は人がいっぱいいて苦手やから遠慮するわ。邦ちゃんと行ってきて。」
トモちゃんは、まあばあちゃんの返事に少しがっかりしたようです。でも、まあばあちゃんには、大阪までの距離がとても遠くに感じました。
まあばあちゃんも、何かと話題のあべのハルカスに行ってみたい気持ちはあるのですが、この歳になると、帰るまでに体力が無くなってしまうようで心配なのです。堺の高島屋がせっかくです。こんな近くに百貨店があるのは有難い事ですね。
「……うん。わかった。美味しいお土産買ってくるね。」
「邦ちゃん、大丈夫かしら。治ったって言っても。心配だわ。邦ちゃんのことお願いね。」
「大丈夫よ。」
とトモちゃんは、元気よく言いました。いつも邦ちゃんの様子を見に行ってくれているトモちゃん。トモちゃんから見ても邦ちゃんはずいぶん良くなっているのでしょうね。
年末に自分が倒れてしまったまあばあちゃん。どうも心配で心もとない気がするのでした。

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邦ちゃん、治ったよ


「ともちゃん、そろそろ帰ってくる頃ね。」
まあばあちゃんは、トモちゃんが帰ってくるのを心待ちにしていました。
「ただいま!」
「お帰りなさい!」
まあばあちゃんが出迎えにいくと、もうジロとミミちゃんがトモちゃんの所に行っていました。
「邦子おばちゃん、リハビリも今日で終わりだって。」
「まあ、良かった~。」
まあばあちゃんは、ホッとしました。
「うん、でも、邦子おばちゃん、元気ないの……」
「まあ……」
まあばあちゃんは、ピンときましたが、トモちゃんの話の続きを待ちました。
「それでね。オッチャンに会えなくなるから?って聞いてみたら、邦子おばちゃん、真っ赤になって、違う違うって言うんやけど、オッチャンの事好きなんやなぁって、分かりやすすぎて……。私がオッチャンにおばちゃんの気持ち伝えてあげるって言うたんやけど……。絶対言わんとってって必死で言うの。どうしたらいいと思う? おばあちゃん。」
「そうねぇ。」
まあばあちゃんも返事に困ってしまいました。
二人とも、お互いを思いあってるのに、言いだせずにいるうちに、お話が良い方向へ流れない事もあります。邦ちゃんはあの通り内気だし、オッチャンは照れ屋だし、きちんと気持ちを伝えることが出来るでしょうか。
まあばあちゃんは、オッチャンから邦ちゃんに気持ちを伝えして欲しいとことづかった時、引き受ければ良かったかしらと、後悔しました。

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堺の町のまあばあちゃん

Author:堺の町のまあばあちゃん
堺の町に住む、ひとりのおばあちゃんのお話です。
住み慣れた町の人々との交流や孫のトモちゃんや犬のジロとの生活を通して力強く生きていく姿を物語に書きたいと思います。 
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