邦ちゃんの幸せ


まあばあちゃんが、お散歩から帰ると、トモちゃんが学校へ行くところでした。
「あら、トモちゃん、気をつけてね。」
「うん。おばあちゃん、遅かったね。心配したよ。」
「ごめんね。チビチャンのお父さんとお話ししてたの。」
「オッチャンと?」
「ねぇ、トモちゃん、……」
まあばあちゃんは、オッチャンと話していた事をトモちゃんに聞いてほしいと思いましたが、それより先に、
「おばあちゃん、知ってる? オッチャンは邦子おばちゃんの事が好きなんだって! 私、お似合いだと思うなぁ。行ってきまーす。」
そう言うと、トモちゃんはマフラーをサッと巻いて、自転車に乗って、行ってしまいました。電車の時刻があるから、仕方ないのですが、もう少しお話ししたかったまあばあちゃんは、少し、寂しい気持ちになりました。
まあばあちゃんがしんみりしていると、ジロとミミちゃんが、ゴハンゴハンと足元でハタハタします。
「あっ、ごめんね。すぐに支度しますからね。」
ふんわりあったかなごはんを用意すると、ジロとミミちゃんはパクパク食べています。
まあばあちゃんは、その様子を見ながら、オッチャンに、ぜひとも邦ちゃんに告白してもらって、邦ちゃんを幸せにしてほしいと思いました。オッチャンなら、きっと邦ちゃんを幸せにしてくれると思うのです。あんなに優しいのにつらい事ばかりの邦ちゃん、今度こそ幸せになってほしいと願う、まあばあちゃんでした。

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頑張って


「え!!」
オッチャンはドキッとしたようでした。
「そうなのね? そうでしょ?」
まあばあちゃんの直球にオッチャンは、汗を拭くような仕草をしながら、
「ばあちゃんには、かなわんなぁ」
と言いました。そして、うんと頷きました。まあばあちゃんは、どんどん自分の思っていることを言ってしまいたいところですが、ここはじっと待ちました。
「わしな、邦ちゃんの事、好きやねん。年が離れてるからどうかなぁ言うとったら、トモちゃんに、オッチャンの考えは古いて言われてな。ばあちゃんは、どない思う?」
とボソボソと自信なさそうに言いました。
「自信持って、絶対うまくいくわ!」
と、まあばあちゃんは力強く言いました。と言うのも、まあばあちゃんは邦ちゃんに気持ちを聞いていたからです。
優しくて思いやりがって、押しつけがましくなくて、涙もろいオッチャン。
邦ちゃんは、そんなオッチャンに接しているうちにどんどん好きになっていったようです。
でも、邦ちゃんは、片足が不自由なことを気にしてオッチャンには言わないように頼まれていました。それと、これは、まあばあちゃんが感じたことですが、先の結婚で酷い目に遭い過ぎて自分に自信を無くしているように思いました。それだけに、オッチャンの気持ちを聞いたまあばあちゃんは、邦ちゃんに走って知らせに行きたい気持ちでした。
「でも、わし、こういうの苦手やねん。ばあちゃんに頼んだらアカンやろか……。」
意外と気の弱いオッチャンにまあばあちゃんは、きっぱり言いました。
「ダメダメ! こういうことは自分の口から言わないと!」
邦ちゃんだってオッチャンから聞きたいはずです。
「頑張って!」
オッチャンは、まあばあちゃんに励まされて、うんと頷きました。

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ピンときた


「いやな……それがな……。えーっと……」
オッチャンは、困ったように黙ってしまいました。

オッチャンも話の成り行きで、邦ちゃんの病院の送り迎えをすることになったのですが、いつも感謝をしてくれて、申し訳なさそうにお礼を言ってくれる邦ちゃんに好感を持っていました。
こちらの気遣いを当たり前のような態度で返してくる人というのは、割合いるものです。
それに、これは、まあばあちゃんには言えませんが、邦ちゃんがヘルパーの仕事先で、カタワ者と罵られて土下座させれたことは、身につまされて胸が苦しくなりました。
まあばあちゃんが散歩に行けない間、トモちゃんがジロとミミちゃんのお散歩をしていました。まあばあちゃんがこけたことから、自然、邦ちゃんのケガの話になります。トモちゃんは優しい邦ちゃんが大好きらしく、邦ちゃんがどんなに優しくて思いやりがあって、いい人なのかたくさん話してくれました。
そうするうちに、オッチャンは邦ちゃんの事を考える時間が増えてきました。
オッチャンが奥さんを亡くしてからずいぶんになります。
畑に行くのも一人、帰ってきても「ただいま」を言う人もいません。そして、ご飯を食べるのも一人。
仏壇の中の奥さんは、オッチャンが話しかけても、黙ったままです。
「トモちゃん、邦ちゃんは、エエ人やなぁ。」
「オッチャン、最近、邦子おばちゃんの事ばかり話してるね。おばちゃんの事好きなの?」
「ええ! いやいやそんなん、ちゃうで」
オッチャンは驚いてシドロモドロです。
「でも、邦子おばちゃんのこと言う時、とっても嬉しそうやよ!」
「いやー。年だいぶと離れてるしなぁ。いやー。」
「そんなん、オッチャン古いわ。オッチャン、結構ハンサムやし。邦子おばちゃんもきっとOKだよ!」
トモちゃんにそう言われて、オッチャンは邦ちゃんにお付き合いを申し込む決心をしました。その前にまあばあちゃんに話しておこうと思って来たのです。ところが、まあばあちゃんを前にすると、言葉がなかなか出てきません。
オッチャンも自分でどうしたものかと思いました。

まあばあちゃんは、そんなオッチャンの様子にピンときたので、ずばり聞いてみました。
「邦ちゃんのこと?」

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話してみようよ


「いや、今度でええわ。引き止めてゴメンな。」
と言って、オッチャンは帰ろうとしました。すると、チビチャンが、オッチャンのジャンパーの胸元からひょいと顔を出して、よじ登ろうとします。
「ちょっと、ちょっと、イタタ。」
オッチャンの顔をペロペロしたいようです。前足をオッチャンのホッペタで踏ん張るので、ちょっと痛いのです。
「ほら、チビチャンも話してって言ってるのよ。」
まあばあちゃんも、トモちゃんに相談していると聞いてとっても気になります。
「なにか、心配事? どこか悪いの?」
まあばあちゃんは、邦ちゃんも怪我をしたし、自分もこけて救急車で運ばれたりしているので、オッチャンもどこか悪くしたのかと心配になってきました。
「いやいや、そんなんと違うねん。ワシは元気やで!」
とんでもないと言うように、手をヒラヒラさせて言いました。
「じゃあ、どうしたの? こんな寒い中を待ってたんだから、大切な相談なんでしょ?」
「それは、そうなんやけど……。」
なにやら、煮え切らないオッチャンに、ジロがピョンと飛びつきました。ミミちゃんもシルバーカーをひょいと出て、足元にじゃれ付いています。
オッチャンがしゃがむとジロがベロンと顔をなめました。ミミちゃんも背中やら腕やらにじゃれ付いてます。
みんな、オッチャンに早く話してよって言ってるようです。


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なあに?


お散歩から帰ってくると、チビチャンとオッチャンがまっていました。
「あら。」
まあばあちゃんがニッコリ笑うと、オッチャンが照れくさそうな顔して、頭をきながラ近づいてきました。
「ばあちゃん、ちょっと相談したいことがあるねんけど……」
相談事と聞いて、まあばあちゃんは真剣な顔をしました。
まあばあちゃんの顔を見て、オッチャンは、
「いやいや、何のことは無いねんで。そんな真面目な顔せんといて。トモちゃんにも相談してんけど……」
「トモちゃんと?」
トモちゃんに相談って、何を相談するんでしょう?
まあばあちゃんは首をかしげました。オッチャンは頭をかきながら、
「ばあちゃん、散歩に行くの早ないか。しっかり治ったんか? まだ家、出るころ暗いんちゃうか?」
おっちゃんは、相談事を話さずに、まあばあちゃんの事を聞いてきました。
「恭子ちゃんにももう少し遅くに行った方がいいって言われてるんだけど、お友達に会いたいなっと思って、足を打ったのはもう治ったんよ。」
「そうか……。良かった。良かった。ばあちゃんが休んでる間、トモちゃんが散歩に行ってたやろ。まだ人通り少ないし危ない思って、散歩ついて行ってたんや……。」
「まあ! 有り難う……。」
まあばあちゃんはオッチャンの優しさに感動しました。恭子ちゃん達は正月が明けたらすぐにお仕事だったので、心配だったのです。
(トモちゃんたら話してくれれば良かったのに……)
ちょっぴり寂しくなったまあばあちゃんでした。
「ほな、行くわ。」
オッチャンは、帰ろうとします。
「えっ? お話があったんじゃないの?」
まあばあちゃんがそう言うと、オッチャンは困ったように顔をクシャクシャっとしました。
いったいどうしたのでしょう?


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お花ちゃん


まあばあちゃんとコナン君のお母さんとお母さんが、手を握ってるのを見て、お豊ちゃんも、
「わたしもまぜて~。」
手を繋いで来ました。3人でブンブンふりました。
「私たちお豊ちゃん、まあちゃんと呼び合ってます。この子はジロちゃん、ミミちゃん、ハッピーです。」
お豊ちゃんは、自分とまあばちゃん、ジロ達を手で示しながら紹介しました。
「わたしは、花と言います。」
「いいお名前ですね。」
とお豊ちゃんが言いました。
「若い時はいいですけど、この歳になるとなんだか気恥ずかしいですよ。」
と照れ笑いしました。
「お花ちゃんとお呼びしてもいいですか?」
とまあばあちゃんが言うと、嬉しそうに笑って、
「はい! わたしも、まあちゃん、お豊ちゃんとお呼びしても?」
「もちろんです。仲良くしましょうね。」
暫くして、ジロが“行こうよ”というようにまあばあちゃんを引っ張りました。
「はいはい。じゃあ、行きましょう。」
とまあばあちゃが返事しました。
「まあちゃん大丈夫?」
まあばあちゃんが元気よく歩き出したので、お豊ちゃんがビックリして声を掛けました。
「大丈夫よ。もう、すっかりいいの。」
と、ほらねっと言うように足をひょいひょいと上げて見せました。
「怪我されたんですか?」
お花ちゃんが心配そうに聞きました。
「そうよ。まあちゃんいうたらね。年末にこけてしもうて……。でも、まあちゃん、毎日しっかり歩いてたから、大事にならんですんだんやねぇ。」
「そうよ。ちょっと足がはれただけですんだんよ。でも、あんまり休んでいると、体がなまってしまうと思って出てきたんよ。それに、みんなに会いたいしね。」
「まあちゃん、嬉しいこと言うてくれるねぇ。」
お豊ちゃんが、ニコッと笑って言いました。


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久しぶりのお散歩


まあばあちゃんはジロとミミちゃんを連れて、朝のお散歩に出かけました。
恭子ちゃんもついて行くと言っていましたが、起きれなかったようです。
「あら!」
暫く歩くと、お豊ちゃんとハッピーちゃんが歩いてます。
まあばあちゃんは嬉しくなりました。ひとりでに足が速くなります。
ハッピーちゃんが気配に気づいて、振り向きました。トントントンとステップを踏むようにその場にとどまりました。
その様子に気づいてお豊ちゃんが振り返ると、
「あら、まあちゃん! 良くなったの! 心配してたんよ~。」
と言って、駆け寄ってきました。ハッピーちゃんもお豊ちゃんの速さに上手に合わせて走ってきました。
ジロとハッピーちゃんはクルクルして喜んでいます。
「ハッピーちゃん、リードがあるから気をつけてね。」
お豊ちゃんが言いました。
「こんなに嬉しがるなんて、ハッピーちゃん、ジロちゃんに会いたかったのねぇ。わたしもお正月は一人で散歩して寂しかったわぁ。」
「明けましておめでとうございま~す!」
コナン君のお母さんが向こうから、やって来ました。車いすを押しています。コナン君がよいしょ、よいしょ、というように一生懸命引っ張っています。
「今年は初めてお会いするので! 新年のご挨拶で……」
とコナン君のお母さんが言いました。
「あっ、私らも新年の挨拶してないわ。」
とお豊ちゃんもまあばあちゃんが顔を見合わせました。
「明けましておめでとうございます。」
「明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。」
と改めて挨拶を交わしました。
「お母様ですか?」
とまあばあちゃんが、聞くと、車いすに乗った年配の女性が頭を下げました。優しそうな人です。
「年寄り同士仲良くしましょうね。」
まあばあちゃんとコナン君のお母さんのお母さんは、
なんとなく手を取り合って、ブンブン振っていました。ジロとミミちゃんとハッピーちゃんも、新しいお散歩仲間を歓迎するように、膝の上に頭を乗せたり、手のにおいをかいだりしていました。
新年から新しいお友達が出来て良かったね。まあばあちゃん。


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明日はお散歩再開?


今年のお正月は散々でした。
いつも5時半ごろ起きているのですが、足が治るまで7時頃まで寝るように言われました。お散歩は止められるし……。
恭子ちゃんはあんまり朝早く起きると、体は固いし血圧にもよくないと思っているのです。
恭子ちゃんの気持ちはよく分かるのですが、まあばあちゃんは、朝早くの散歩が大好きです。
それに、せっかく家に帰ってきているのだから、お春ちゃん達に元気な姿を見せたいと思いました。足の痛みもすっかりひいています。
トモちゃんが散歩に行ったとき、みんなにお話するねと言ってくれたのですが、
時間が違うためか、歩くのが早いのか、行ってみる道順が違うのか……、
まあばあちゃんがいつも会うお友達とは、誰とも会わなかったそうです。
お布団であったかくしているのもいいけど、みんなとお話しするのが大好きです。
きっと、今ならこんな話をします。
「あら、お正月もお散歩?」
「そうよ。この子達がいると、お正月も何もあったもんじゃないわねぇ。行くまで、すーっと行こう行こうって、ついて回って離れないんよ。」
「ほんとほんと」
そこまで、思ってまあばあちゃんは独りでにおかしくなってクスクス笑い出しました。
「おばあちゃん? どうしたの?」
「ううん。なんでもないんだけど、こうやって寝てばかりいると、日頃の他愛無い事が大切なんだなあと思って、可笑しくなってきたの。」
「変なおばあちゃん。」
トモちゃんは首をかしげていました。
お話しする内容も分かっているのに、どうしてお友達とお話ししたくなるのでしょうね。
カイロを貼って、マフラーをして、しっかりダウンのジャンパーを着るからお散歩行かせてねってと一度恭子ちゃんにお願いしてみようとまあばちゃんは思いました。
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退院


まあばあちゃんは、今か今かとトモちゃん達が迎えに来てくれるのを待っていました。
「お早う、お母さん。帰ろか。」
「トモちゃんと恭子ちゃんは?」
まあばあちゃんは、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、お父さんを見ました。
「トモちゃんは、ジロとミミちゃんの散歩。恭ちゃんはお正月の準備してるよ。早起きして頑張ってるで。」
「まあ、本当? 早く帰らないと……」
お父さんが上手に車いすに乗せてくれました。片足はまだはれていますが、幸い骨も折れておらず、痛みが引いたらいつも通りにして良いとの事でした。
病室を出てから、看護婦さんに挨拶に行きました。
「退院できて良かったですね。ゆっくりお正月を過ごして下さいね。良いお年をお迎えくださいね。」
「有り難うございます。」
まあばあちゃんは丁寧に頭を下げました。

家に戻ると、もうしめ縄が飾ってありました。お庭もキレイになっています。
「まあ、ちゃんとしてくれて……」
お父さんに車から降ろしてもらっていると、ジロとミミちゃんが迎えに来てくれました。ハタハタとして喜んでくれます。まるで何年も会ってなかったみたいです。すぐにトモちゃん来てくれました。後から恭子ちゃんも。
「お帰りなさい! おばあちゃん!」
「お母ちゃん、お帰り! ほとんどお母ちゃんしてくれたあったから、やる事なかったわ……。朝ご飯出来てるで。食べよう! 待っててん!」
恭子ちゃんが再びせわしなく家に戻って行きました。

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お泊り


まあばあちゃんは、しくしく泣き出しました。
歳のせいか最近は特に寂しがり屋になりました。一人になるのを何より嫌います。
「おばあちゃん、わたし、ここで泊れるように頼んみるから、泣かないで……」
トモちゃんの言葉を聞いて、まあばあちゃんは、
「何言ってるの。この年末にそんなことしてたら、罰が当たるわ。お正月を迎える準備をしないと……。まだまだやること一杯あるんだから。トモちゃんはお母さんの言う事聞いてしっかり頑張ってもらわないと!」
さっきまで、しくしく泣いてたのに、急に元気になりました。
「それに、おかあちゃんに帰ってもらわんと、家の事わたし何にも分からんしね。私、明日は帰れるように話してみるわ。」
「ありがとう。恭子ちゃん。」
「ほな、ワシが話してくるわ。」
「有り難う。上手に言うてね。」
お父さんが、軽く手を上げて部屋を出て行きました。
「ねぇ、おばあちゃん……、あれ、寝てる。」
「あら、ほんと……」
まあばあちゃんは、疲れたのか、皆の顔を見てホッとしたのかスースー眠っていました。
「ほんとうに良く寝てるわ。このままにして帰ろうか……」
お母さんが小さな声で言いました。
「そやね。で、明日朝一に迎えに来ようね!」
トモちゃんも小さな声で答えました。
「そうしよ!」
お父さんとお医者様の話はどうなったでしょうか?

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まあばあちゃんの涙

まあばあちゃんの涙
トモちゃんは、しばくしてお医者様によばれました。
お医者様は、血圧が高い事と、長い時間、体を冷やしてしまっていたのでもう少し様子を見たいという事で入院することになりました。
トモちゃんが、まあばあちゃんの病室に行くと、まあばあちゃんは窓際のベッドで点滴をされていました。まあばあちゃんの意識は戻っていて、トモちゃんに気付くとニコッと笑ってくれました。
「おばあちゃん、大丈夫? 気分はどう?」
トモちゃんはまあばあちゃんの手を握りました。
「大丈夫よ。ごめんね。ビックリしたでしょ。もう、動けるわよ。」
まあばあちゃんはともちゃんの手を握り返しました。そして、
「早く帰ってお掃除しないと……」
と言うので、少しの間入院することになったと伝えると、驚いた顔をしてこのまま一緒に帰りたい泣き出しました。
そこに、お父さんとお母さんが病室に入ってきました。
「お母ちゃん! だいじょうぶ?」
恭子ちゃんがまあばあちゃんに駆け寄りました。
「恭子ちゃん! これぐらいで入院だなんて! 今から、お家に帰れるようにお話ししてきて!」
まあばあちゃんはそう言い募りましたが、血圧は高いし、足は腫れ上がってるし、今日の今日に帰るというのは無理な話です。
恭子ちゃんも、今日は様子を見たほうがいいと、まあばあちゃんに言うと、まあばちゃんは、目にいっぱい涙をためて向こうを向いてしまいました。

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病室の外で……


「こちらでお待ちください。」
と言われて、トモちゃんは病室の外に出されました。
待っていると、別のスタッフの人が、
「こちらにご記入いただけますか?」
とクリップボードを手渡してきました。
(こんな時に?)
と、トモちゃんは思いましたが内容を見ると、持病やアレルギーの問診表でした。
トモちゃんは、一つ一つ慎重に記入していきます。
こんな時、お父さん達が一緒だといいのに、今は一人です。
お母さんに連絡しましたが、今日はお父さんと一緒に取引先に行っていて、帰って来るのに時間がかかります。
まあばあちゃんがこんなになって心細いです。
(おばあちゃん、大丈夫かな……。死んじゃったらどうしよう……。ジロとミミちゃんも心配してるだろうな……。)
そう思うと、ポロポロ涙が出てきました。
「ご記入済みましたか?」
さっきの人です。トモちゃんが泣いているのに気付いて、
「大丈夫ですよ。回復されますよ。」
「本当ですか?」
「しばらく、治療が必要ですが、心配されてるようなことは無いですよ。」
この世の終わりの様な顔をしているトモちゃんに、優しく言ってくれました。
トモちゃんはホッとして、またポロポロ泣いてしまいました。

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買い物から帰ると……


「ただ今!」
トモちゃんは、たくさん買い物をして帰ってきました。ヨッと力を入れて自転車のスタンドを降ろしました。
「っわわ! どうしたん?」
ジロとミミちゃんがバタバタしています。
「ウォン! ウォン!」
ジロがトモちゃんに向かってこんな風に吠えるのは初めてです。
そして、“早く” というようにバタバタと家の中に走って行きました。
「待って!」
慌ててジロについて行くと、
「おばあちゃん!!」
まあばあちゃんが冷たい板の間に倒れていました。
「おばあちゃん! おばあちゃん!!」
ゆすっても、返事がありません。
「きゅ、救急車!」
慌てて119に連絡します。
『こちら―――です。』
「助けて下さい! おばあちゃんが倒れたんです!」
『意識はありますか?』
「呼んでも、返事は無いです!」
『まず、部屋と体をあたためてくだい。すぐに救急隊員が向かいます。』
「お願いします。」
電話を切ると、慌ててストーブをつけて、窓を閉めて、おばあちゃんに貼るカイロをくっつけて布団を掛けました。
本当は布団の上に寝かせたいけど、意識を失ったまあばあちゃんは、思いのほか重く、
(こんなに小さいおばあちゃんを動かせないなんて)
トモちゃんはショックを受けました。
救急車の音が聞こえてきました。トモちゃんは表に飛び出て、手を振りました。
救急隊員さんは、まあばあちゃんを担架に乗せると、あっという間に救急車に乗せました。
トモちゃんも慌てて救急車に乗ります。
おばあちゃんにテレビで見るようなマスクをつけて、指にプラスチックの何かをつけて、数字を確認していました。
「お孫さんですね。おばあちゃんを呼び続けて下さい。」
呆然としていたトモちゃんに、隊員さんがパキパキ言いました。




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救急車


―――……ちゃん!! おばあちゃん!! ――――
トモちゃんの声が遠くで聞こえます。
「……トモちゃん?」
「おばあちゃん!!! 良かった、気が付いた。隊員さん、おばあちゃん目が覚めました!」
近くで、救急車のサイレンの音がします。
まあばちゃんは、たくさん機材のあるところで横になっていました。
まあばあちゃんは救急車に乗っていたのです。
「血圧200です。」
機器を操作しながら、手際よくまあばあちゃんの血圧も確認しています。
「お孫さんのこと分かりますか?」
「はい。申し訳ありません。ご迷惑かけて……」
「ビックリしたよ。帰ったらジロとミミが大慌てで、そしたら、おばあちゃんが倒れて、ビックリしたよ。」
トモちゃんが、キュウッと手を握りました。
「ごめんね。心配かけて……」
そこまで言うと、血圧が高くなっているせいか、まあばあちゃんはまたフワフワしてきたようでした。
「血圧240です。」
まあばあちゃんの血圧は上がっているようです。大丈夫でしょうか?
「病院に、付きましたよ!」
隊員さんが後ろのドアを開けてくれました。
トモちゃんは、急いで降りて邪魔にならないところで立ちました。
隊員さんは手早くストレッチャーを扱って、まあばあちゃんを病室へと運びます。
トモちゃんもまあばあちゃんについて行きます。

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年末に……


「行ってきまーす!」
と、トモちゃんの元気な声が聞こえてきます。
「行ってらっしゃい! 年末は人が多いから気をつけてね!」
と、まあばあちゃん。
トモちゃんを送り出すと、急いで掃除の続きをします。
トモちゃんには、お節料理やお正月の準備の買い出しを頼みました。小さな頃はまあばあちゃんと一緒に行っていましたが、大きくなったトモちゃんは、自転車に乗って一人で行ってくれるようになりました。まあばあちゃんは大助かりです。
「さぁ、頑張らなくちゃ!」
まあばあちゃんは張り切って、拭き掃除をはじめました。あっちこっち丁寧に拭きます。
「あ!!」
まあばあちゃんは何かにつんのめって、雑巾を持ったままバターンと大きな音を立てて倒れてしまいました。
何が起こったのか分かりませんでした。
体中が痛いです。
ジロとミミちゃんが飛んできました。まあばあちゃんの周りをウロウロします。ミミちゃんはキャンキャン鳴いてます。
まあばあちゃんは冷たい板の上に倒れてしまいました。
もう少し横ならホームこたつの下に敷いてるラグなのに……。
(ああ、敷物に躓いたんだわ……)
まあばあちゃんは困った時のために、携帯電話を持っていますが、今は充電するために充電器にさしています。
ジロとミミちゃんが、心配そうにまあばあちゃんの顔をぺロぺロ舐めました。
それから、ジロが玄関とまあばあちゃんの間を行ったり来たりしてまいた。
きっと、トモちゃんを呼びに行きたいのでしょう。
門が開いていたら、走ってトモちゃんを呼びに行ってくれたかもしれませんが……、門はしっかりと閉まっています。
まあばあちゃんは、痛いし寒いのにウトウトしてきました。
ジロが寄り添ってくれたのか、フワッと心地よく暖かい重みを背中に感じました。

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心根


泣きすぎて目が真っ赤になってる女の子の手を邦ちゃんが優しく握りました。
女の子はハッとしたように邦ちゃんの顔を見上げました。
そして、邦ちゃんは、優しく女の子の背中を擦りました。
(邦子おばちゃんは、自分の足のせいにしてるけど、この子は自転車のスピード出し過ぎやったよ。そりゃ、事情があるのかもしれないけど……)
トモちゃんは、邦ちゃんがぶつかられたその瞬間を見ています。そう思うのも無理のない事です。トモちゃんは、知らん顔して行ってしまった、この女の子の後ろ姿が頭から離れませんでした。邦ちゃんに怒ってほしいわけではありませんが、なんとなくやり切れない気持ちでした。
でも、邦ちゃんは許すことを選びました。
トモちゃんは、まあばあちゃんの言葉を思い出しました。
―――邦ちゃんは、つらい事や悲しい目にあっても……、あの子は投げ出したり、誰かに押し付けようとはせず、愚痴も言わずに、やり抜いてきたの。邦ちゃんの優しさが邦ちゃん自信を助けたんだと思うのよ。でないと、心が壊れておかしくなっても不思議はないと思うの。心根の優しさが、あの子を救ったのよ―――
女の子は邦ちゃんの手を両手でギューっと握り返して、ワンワン泣きました。それは、まるで“許してくれて有り難う”と言っているようでした。
(きっと、邦子おばちゃんは、誰かが辛い思いするのが嫌なんだろな。)
トモちゃんは、邦ちゃんの女の子を見つめる優しい眼差しを見て思いました。
ふと見ると、オッチャンもお春ちゃんもまあばあちゃんも二人を微笑ましく見ています。
トモちゃんも、もういろいろ考えるのはやめようと思いました。
まあばあちゃんが、シルバーカーからステンレスボトルを出してきました。
(おばあちゃん、何持って来たんだろ?)
そう思って、まあばあちゃんを見ると、トモちゃんの視線に気づいたまあばあちゃんがニッコリ笑いました。
「暖かい甘酒を持って来たの。これを飲んで温まりましょう。」
「お! ばあちゃんの甘酒はうまいからな! ワシ、大好きや!」
と、オッチャン。
「やぁ まあちゃん、嬉しいわぁ!」
と、お春ちゃん。
まあばあちゃんが、甘酒を作ってきたことで、パッとその場の空気がフンワリしました。

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救われた?


女の子は、心配そうな顔をして、なかなか動こうとしませんでした。
トモちゃんは、
(そんなに心配なら、どうして、邦子おばちゃんが、もっと大変な時にお手伝いしようと思わなかったのかな!)
と、女の子の様子に少しイラッとしました。
トモちゃんがそう思うのも無理のない事でした。邦ちゃんはあちこち強く打って、本当に大変だったのですから……。
(邦子おばちゃんが病院に行ってるところ見てるなら、声を掛けてきたってよかったのに)
邦ちゃんは、固まったように動かない女の子に、優しく言いました。
「あなたは、何にも気にしなくていいの。普通だったら、こんなケガなんかしなかったと思うのよ。こんなこと言うと、よけいに気にするかもしれないけど、おばちゃん、もともと、足が悪くてね。それで、ね。だから、あなたが悪いってわけじゃないの。」
(邦子おばちゃん、優しすぎるよ……)
邦ちゃんの様子を見ていて、トモちゃんは、切ない気持ちになりました。
この女の子が邦ちゃんにぶつかったあの日も、相手を責めるような事は一言も言いませんでした。
それどころか。トモちゃんの学制服が汚れないかとか、オッチャンに迷惑かけて悪いとか、そんな事ばかり気にしていた邦ちゃん……

あの事故の日、家に帰ってから、まあばあちゃんは、ションボリしていました。
「邦ちゃん、どうして辛い目にばかり合うのかしら……。邦ちゃんは、お父さんの介護で結婚が遅れてしまって、そのあと、大学出の人と結婚して……。今度は、舅さんと姑さんの介護に追われて、それが終わったと思ったら……。離婚されて……」
こんなん可哀想すぎると涙声になって、目頭を押さえました。

邦ちゃんは、優しい人です。
でも、報われないことばかりです。

まあばあちゃんは、邦ちゃんの自転車にぶつかった女の子は、もう現れないのではないかと思っていたので、謝りに来てくれたことは、まあばあちゃんにとっては、本当に嬉しい事でした。邦ちゃんの心が少しは救われるように思いました。

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申し出


「あの、私にお手伝いさせてください。掃除でも料理でも、車いすも押せます。」
女の子が薬袋をヒラヒラさせているお春ちゃんに言いました。
「今時、珍しいエエ子やな。掃除も料理もできるんかいな。」
と、オッチャン。
「そんなに上手じゃないですけど、一所懸命お手伝いしまから、お手伝いさせてください。
と、女の子が訴えるように言いました。
「そんなに、気負わなくても大丈夫よ。あなたは、今は一番大事な時なんだから、その時間で頑張ってお勉強して。」
「でも……」
女の子は言い募ります。
「それに、もう、ほんとに元気なの。近々、働きに出ようと思ってるぐらいなの。」
邦ちゃんが、力こぶを作るような仕草をしました。
「邦ちゃん、そらまだ無理やで。」
「邦子、治りかけが一番大事やねんで。」
とみんなが口々に邦ちゃんを止めました。
「おっ、えろう、暗うなってきたで。もう、アンタも帰らんと、親御さんが心配すんで。」
オッチャンが、急に慌てた様子で、女の子に言いました。
まだ、5時だと言うのにもう、真っ暗です。
女の子は、オッチャンが急かしても、迷っている様子で、動こうとしませんでした。

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Author:堺の町のまあばあちゃん
堺の町に住む、ひとりのおばあちゃんのお話です。
住み慣れた町の人々との交流や孫のトモちゃんや犬のジロとの生活を通して力強く生きていく姿を物語に書きたいと思います。 
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