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オッチャンの胸の中に


「トモちゃん、今晩からまた寒くなるらしいわよ。」
まあばあちゃんが、不安そうに言いました。
きっとあの小さな犬のことを気にしているんでしょう。
「心配やね。あの子、今夜も寒さに耐えながら眠るんやね……」
トモちゃんはもどかしくてしかたありませんでした。
自分の無力さが悲しくてなりませんでした。
どうすれば小さな犬のお家の人に会えるのか―――
「トモちゃん?」
トモちゃんが押し黙ったので、まあばあちゃんは心配そうにトモちゃんを見ました。
「ねえ、おばあちゃん。私、明日からあのお家の側で頑張ってみる。1日中、家から出てこないなんて考えられないもの。」
「そんな……、一人じゃ心配だわ」
「大丈夫! ジロとミミちゃんを連れて行くわ」
「トモちゃん、行く時はおばあちゃんも一緒に連れて行って欲しいの。」
「明日は今日より、うんと寒くなるのよ。体に障るよ。私にまかせて! おばあちゃんが元気じゃないとチビちゃんが家に来たとき大変だもん!」
このままだと、まあばあちゃんは心配し過ぎて体を壊すと思いました。
なんとかして、あの小さな犬のお家の人に会わなければとトモちゃんは決心しました。
「ねっ、あの子が家に来た時おばあちゃんが風邪ひいてたらガッカリすると思うの!」
トモちゃんが、頑固に言うので、まあばあちゃんは仕方なく頷きました。

―――翌朝―――
「トモちゃん、お願い! やっぱり一緒に連れて行って……!」
まあばあちゃんは、もう一度トモちゃんにお願いしました。
「……おばあちゃん……」
「お願い! おばあちゃんも連れて行って、あの子の顔を見に行きたいの。」
もし、トモちゃんがダメと言っても、シルバーカーを押してついて行こうと決心していました。
トモちゃんは気が進まない様子でしたが、おばあちゃんの決意が伝わったのか、あきらめたような顔をして頷きました。

今日はグンと冷えて雪も降って来そうなドンヨリとした曇り空です。
まあばあちゃんは居ても立ってもいられません。
トモちゃんたちは、あの子の元へと急ぎます。
「ばあちゃーん! トモちゃーん!」
「オッチャン」
「おう、トモちゃん。今、トモちゃんの家に行って来たんやで。インターホン押しても、返事なかったから、こっちやと思うて、走って来たんや。」
おじさんは、ハアハア言いながら、自転車をカチャと立てて言いました。
「ええもん見したろか、トモちゃん。」
おじさんは、そう言って、ダウンのジャンバーのチャックを下げました。
「オッチャン! この子……」
「そや、チビちゃんや! あの子や。おばあちゃん、あの子あの子。」
小さな犬は、おっちゃんの胸の中でフワフワ眠っていましたが、ふっと目を覚まして、トモちゃんを見つめました。トモちゃんが手を差し出すと胸の中に飛び込んできました。

トモちゃんが、まあばあちゃんの膝の上に乗せると、まあばあちゃんの手をペロペロなめました。ジロとミミちゃんも嬉しいのかチビちゃんにクンクンしています。
チビちゃんも幸せそうにしっぽをハタハタさせて答えていました。

よかったね“チビちゃん”

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びっくりトモちゃん


「チビちゃん。お腹空いたでしょ。」
あれから、三日、小さな犬のお家の人に会えないでいます。
今日もトモちゃんはドッグフードを持ってきました。もちろん、まあばあちゃんも一緒です。
「ちょっとだけ、お肉が付いてきたね。」
トモちゃんは、小さな犬を優しく撫ぜながら言いました。。
「どないしたんや!」
突然の大きな声に、トモちゃんはビックリしてひっくり返りそうになってしまいました。
「もう~。オッチャン! ビックリするじゃない。」
いつも、おいしい野菜を届けてくれるオッチャンでした。
「こっちの方が、びっくりしたで。トモちゃんが溝にはまっとるさかい。それに、ばあちゃんは心配そうに見とるし。ホンマにどないしたんや。」
「シーッ! もう、オッチャン、声が大きいよ!」
オッチャンは、訳が分からないという顔をしています。
「あのね、ここに、小さな犬がいるの。」
どれどれというようにオッチャンは、ヨッコイショと溝をまたいで、柵を覗き込みました。
「なんか外国の犬やなあ、黒と茶色の。えっらい痩せとんで、トモちゃん。」
「もう、オッチャン! 声が大きいよ。ここのお家の人に聞えたらどうするの。」
「なんでやな。痩せとるもんに痩せとる言うてどこが悪いねん。飯ぐらい腹一杯食わしたらんと! こんな綺麗な家に自分らは住んでて、犬には飯もやらんのかいな。どういうこっちゃねん。ほんまに。」
涙もろいオッチャンの目は、少し潤んでいました。
もし、お家の人が中にいて聞えていたらどうしよう! トモちゃんはドキドキしました。
本当は、小さな犬のお家の人と穏やかにお話して、家の中に入れられない事情があるなら、自分たちに託してほしいと言ってみるつもりでした。
「もう、オッチャンのおかげで、ムチャクチャやわ……」
「なんでやな、この犬、ほっといたら死んでまうがな、ちっさいのに、ほんまに殺生なことしよる。この寒いのに毛布の1枚も入れたらんと!」
オッチャンは、怒っていました。怒りのあまり手がぶるぶる震えています。
「じゃあ、オッチャン。そろそろ帰るね。私たち。」
「ああ、早よう帰りや、だいぶ冷えてきたし。ばあちゃんも風邪ひいたらあかんで、ほな、さいなら。」
トモちゃんは、オッチャンを一人残して帰るのは心配だったけれど、まあばあちゃんの体のことも気になって、一旦家に帰ることにしました。


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“小さな犬”の幸せ


「おばあちゃん、あの子のところにいってみない。今頃だと奥さんが庭をお掃除したり、洗濯物を干したりしてはる時間やから、絶対会えるよ。車イス出してくるね!」
「あ! トモちゃん。おばあちゃん、歩いていくわ。」
「大丈夫?」
「大丈夫! 最近足の調子はいいの。」
トモちゃんの気遣いは嬉しかったのですが、もしも、あの子のお家の人に会えた時、
車椅子に乗っているよりも、しっかり自分の足で歩いている姿の方が良いと思ったのです。

まあばあちゃとトモちゃんは小さな犬の所へ急ぎます。
「トモちゃん、あの子のお家の人に会えるといいね。」
まあばあちゃんは、心配そうにともちゃんに言いました。

―――まあばあちゃんは、あの子のお家の人に会いたくて、1日のうちに何回もジロとミミちゃんを連れて、あの子の家の周りをくるくる回っていました。
だけど、一度もお家の人の姿を見たことがありません。
いるのかいないのかシーンとしたお宅でした。まあばあちゃんは、シルバーカーをゆっくり押して歩いています。
心は走って行きたいのですが、まばあちゃんはもう速く歩くことは出来ません。
「おばあちゃん、シャッターが開いてる! 良かったね。お家の人いるよ。」
この頃の新築のお家は、雨戸に変わってシャッターになっています。
「インターホン、押してくるね。おばあちゃん。」
「そんなことして、大丈夫かしら。」
まあばあちゃんは、不安そうです。
「でも、インターホン、押さないとあの子のこと御願いできないよ」
「そうね。」
トモちゃんはインターホンを押して、しばらく待ちました。
でも返事はありません。
もう1度、押すことにしました。……やっぱり、返事はありませんでした。

「おばあちゃん、お家の人、出て来はらへん。」
「お買い物かしら。」
「居留守…はないよね。うーん。」
まあばあちゃんとトモちゃんの不安は募るばかりです。朝のお散歩の時と違い、陽も高くなって来て暖かくなってきました。
ミミちゃんはジロにジャレついています。
小さな犬は柵から飛び出ようと思うのか必死で飛んでいます。
ワンワンキュ~ンキュ~ンと悲しい声でまあばあちゃんとトモちゃんに鳴きます。
「待っててね。つらいでしょう。もう少しだけ我慢してね。」
トモちゃんは、柵の隙間から手を入れて、やせ細った小さな犬を撫でました。
「はい、お腹空いてるでしょう。いっぱい食べるのよ。」
やっぱり、小さな犬はお腹が空いているのか、ドッグフードをトモちゃんの手からガツガツ食べました。
「ごめんね。チビちゃん。あったかい毛布、貰って上げられなくて。お昼にまた来てお願いしてあげるから待っててね。」
トモちゃんは、そう言って小さな犬から離れると、疲れた顔をしているまあばあちゃんをシルバーカーに乗せて、家に帰ることにしました。
「おばあちゃん、私、もう1度お昼に出直してくるね。」
「おばあちゃんも、一緒に連れて来てね。」
なかなか小さな犬のお家の人に会えなくて、ションボリしているまあばあちゃん。
小さな犬の幸せは、まだまだ、遠いところにあるのでしょうか……

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一筋の光



「ジロのおやつ、持ってるよね? あと、お水もないみたい」
トモちゃんはうろたえているまあばあちゃんに言うと、溝から出て、シルバーカーの中のジロのおやつを取って、また溝の中へ……
「さあ、お腹すいてるでしょう。いっぱい食べるのよ。」
小さな犬は、トモちゃんの手からひったくるように食べました。
そして、トモちゃんが手のひらでお椀の形を作って、お水を入れるとそれもガブガブ飲みました。
「今日は、これでおしまい。お昼に来て。飼い主さんに言ってあげるね。ご飯と毛布を下さいって。」
(トモちゃんは、強い。)
まあばあちゃんは、そう思いました。悪びれる様子も無く堂々としていて・・・・。
「おばあちゃんは駄目ね。……人様の犬に食べ物をあげてるところを見られて、見咎められたらとかなんて思ってビクビクして。……情けないわ。あの子、骨が出るくらいやせていたっていうのに。」
シルバーカーのハンドルを握る、まあばあちゃんの手袋の上にポタポタ涙のシミが出来ました。
「おばあちゃん?」
「トモちゃんはえらいわ。おばあちゃん、この寒いのに毛布を掛けてあげたいとか思っていたけど。……結局、何もしてないんだもの。本当に自分が情けないわ」
まあばあちゃんは、自分の至らなさがつくづく嫌になって泣きました。
「この溝が邪魔で、おばあちゃんには無理やよ。また、お昼に来よう。あの子のことお家の人に御願いしてみようよ。」
力強いトモちゃんの言葉に、まあばあちゃんは、何度もうなずきました。
「大丈夫よ。おばあちゃん。あの子もお腹がいっぱいになったから、寒さも少しマシだと思う。」
「そうね、そうね。」
まあばあちゃんは、涙を拭いながら頷きました。
「お昼に来るからね。待っててね。バイバイ。」
トモちゃんが、明るく手を振ると、その小さな犬は立ち上がって、連れてってというように、柵にしがみついてピョンピョンしました。
(トモちゃん、有難う。ほんとに有難う。)
まあばあちゃんは、小さな犬に明るく手を振るトモちゃんに、小さな犬が少しだけ幸せな気持ちになっているような気がして、一筋の光が見えたような気がしました。

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まあばあちゃんの願いごと



今日からトモちゃんの学校の冬休みが始まりました。
「う~、寒む~。あっ! おばあちゃん、もう散歩に行くの? 私も一緒に行きたい!」
まあばあちゃんがごそごそとジロとミミちゃんに胴輪を付けて、散歩に行く準備をしていると、トモちゃんが声をかけてきました。
「あら、トモちゃん、今日からお休みなんでしょう? ゆっくりすればいいのに。」
「ううん、私も一緒にお散歩に連れてって、おばあちゃん。」
「寒いわよ、トモちゃん。」
「平気よ。ジロたん、ミミちゃん、私も一緒に連れてってね」
ジロもミミちゃんも、トモちゃんが一緒に散歩に行くと聞いて嬉そうにピョンピョンしています。でも、まあばあちゃんは、ちょっと困っていました。
トモちゃんにまだ小さな犬の事を話していないからでした。
トモちゃんに、あの可愛そうな小さな犬のことをどう説明するか悩んでいる間に今になってしまいました。
今日は違う道を行く?
でも、あの小さな犬に会いたいし、それに今日こそお家に人に会えるかもしれません。
本当に迷います。
「どうしたの? おばあちゃん、考え込んで。」
トモちゃんが心配そうにのぞきこみます。
「大丈夫? 足、痛いの? 神経痛でた?」 
優しいトモちゃんは、まあばあちゃんの体の心配をしています。
優しいけど大きくなってシッカリしてきたトモちゃん。
まあばあちゃんは、思い切ってトモちゃんに打ち明ける決心をしました!
「トモちゃん。おばあちゃんね、今とても悩んでいることがあるの。トモちゃんにお話を聞いてもらった方がいいのか、それも悩んでいるの。」
「おばあちゃん。私が悩んでるときは何でも聞いてくれるやん。おばあちゃんが悩んでるときは、私も一緒に悩みたい。だからどんなことでも教えてほしいな。」
まあばあちゃんは、あの小さな犬のことを、できるだけトモちゃんの心が傷つかないように言葉を選んで話しました。トモちゃんはこわばった顔をして小さな犬のことを聞いていましたが、
「おばあちゃん、その子のところへ早く行こう!」

―――外へ出ると、空はまだうす暗がりです。―――
凍えるような寒さの中、まあばあちゃんとトモちゃんは、ジロとミミちゃんを連れてあの小さな犬のところへと向かいました。
まあばあちゃんの頬に冷たい外気が刺さります。
お家の人に愛されることも無く、寒さに震えながら小さく丸くなっているあの子。
助けられない自分が情けなくなって泣けてきました。
ワンワンワン! ワンワンワン!
まあばあちゃんは、小さな犬の鳴く声にハッと我に返りました。
「おばあちゃん、この子ね。」
まあばあちゃんは、頷きました。
道路から小さな犬のいる場所までには、幅50センチぐらいの溝があります。またぐのには少し広すぎて、深さも50センチぐらいはあるようです。溝の底に水は無く乾いていました。
―――空が大分明るくなってきました。―――
トモちゃんは溝の中にピョンと飛び降りました。柵の下側の狭い隙間から前足や顔を出して、必死でトモちゃんを呼びます。
トモちゃんは柵の隙間に手を入れて小さな犬を撫でました。
「おばあちゃん、この子ガリガリ……。背中の骨が出てるよ。」
まあばあちゃんは、飛び上がるほどビックリしました。


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助けたい


今日も寒いです。堺の町にもとうとう本格的な冬将軍がやって来ました。
「おばあちゃん、あんまり寒い日はお散歩休もうね。」
トモちゃんが心配して言いました。
「大丈夫よ。トモちゃん。これくらいの寒さ。」
「でも、今日の寒さはいつもと違うよ、おばあちゃん。」
「歩いたほうが、足に良いみたいなの。だから大丈夫、心配しないでね。」
「もう少ししたら、私、冬休みになるんだけどなあ。そしたら、一緒に行こうね。おばあちゃん。」
「楽しみね。トモちゃんと一緒だと楽しいもの。」
まあばあちゃんは、あの寒さに震えて泣いている小さな犬の事をトモちゃんに言っていません。
きっと、トモちゃんも苦しむことが分かっているからでした。
まあばあちゃんも、苦しんでいました。朝のお散歩の時間をいろいろ変えても、そのお家の人になかなか出会うことが出来ませんでした。
日に日に寒さは増すばかり。何回かそのお家の周りを回っても会うことが出来ません。まあばあちゃんは焦る心で、今日もそのお家の周りを回ります。
(助けたい、)
本当に心から、そう願うまあばあちゃんでした。
ジロは、そんなまあばあちゃんの心が分かるのか心配そうに小さな犬を見ています。
ミミちゃんには、分からないようです。立ち止まるとまあばあちゃんにジャレ付いてきます。その様子を見ていると、余計に小さな犬のことが哀れに思えました。
(もし、あの子が、私のところに来てくれたなら、お腹いっぱいご飯を食べて、あったかいお布団で寝させてあげるのに……)
まあばあちゃんの思いは募ります。

小さな犬は、吹きさらしの場所に小さな小屋を置いてもらって暮らしています。

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震える小さな犬



昨日から凍えるような冷たい日が続きます。
天気予報では今日の最低気温は2℃と言っていました。
こんな冷たくて寒い日でも、ジロとミミちゃんはとても元気です。
早くお散歩に行こう!と、まあばあちゃんの周りをクルクルピョンピョンして飛び回ります。
空は朝から重たくてどんよりしているけれど、まあばあちゃんは、きょうも日課のお散歩に出掛けます。
「さっ、ジロもミミちゃんもお散歩に行きましょう。」
まあばあちゃんは、いつもの散歩コースをいつものようにゆっくりとシルバーカーを押して歩いていました。
最近はこの辺りも、古いお家を壊して、そのあとに新しく綺麗なお家が建ち並び始めました。その一軒のお家の庭に小さな犬小屋が置かれていて、茶色と黒の小さな犬がつながれています。ミミちゃんと同じくらいの大きさです。
この寒いのに座布団が1枚入っているだけでした。
その小いさな犬が外に出されたのは、二,三日前のことです。赤ちゃんが生まれたので、犬がいると赤ちゃんに悪いということらしいです。
こんなに寒いのに、急に外へ出されて小さな犬は震えています。まあばあちゃんは気になって、気になって仕方ありません。
まあばあちゃんが、ジロとミミちゃんを連れて側を通ると、
ワンワンワン! ワンワンワン!
と一生懸命吠えます。その声はまるで泣いているようです。
まあばあちゃんには、「寒いよ、寒いよ! 助けて!!」と言っているように聞えます。
一般的に犬は寒さに強いといわれていますが、そんなの嘘です。ジロのように中くらいの大きさの子でも今日のような寒い日は、ご飯とお散歩とトイレ以外はコタツから出てきません。もちろん、ミミちゃんも一緒です。
もし、その新しいお家の人と、出会うことができれば、まあばあちゃんは思い切って声を掛けたいと思っています。
「ワンちゃんも寒がりなんですよ。せめて玄関に入れてあげて下さい。」
ううん
「わんちゃんのことで、お困りでしたら、何かお手伝いさせてください。」
これも不躾かしら……。
初めて会う人に、いきなりこんなことを言っていいのかどうか、まあばあちゃんは悩みます。
でも、寒さに震えるあの小さな犬のことを思うと、居ても立ってもいられません。
朝の散歩で、会う人の中には、
「あそこの、わんちゃんのこと、ご存知ですか? 可愛そうで、私見てられなくて、散歩コースを変えましてん」
と、言う人もいます。でもまあばあちゃんはお散歩コースを変えることはありません。
あの子のお家の人に会えるかもしれないし、もしかしたら、

『もらってください』

と、張り紙がしてあるかも知れないからです。
まあばあちゃんは、今日もゆっくりとそのお家の横を通っていきます。

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オッチャンの涙


「ごめんください。」
トモちゃんが、オッチャンの家のインターホンを押して声をかけると、
「ほ~い。」
と、オッチャンの元気な声が聞えてきました。そしてガラガラと玄関の戸が開いて、オッチャンが嬉しそうな顔で出てきました。
「オッチャン。これ……」
トモちゃんがそう言って、ピンクと白のタッパーに入れた大学芋を渡しました。
「うまそうな、スイートポテトやな。」
(ええ! オッチャンも大学芋をスイートポテトっていうの?)
トモちゃんはびっくりしました。そして思い切って言ってみました。
「オッチャン、これ、大学芋です。」
「へえ~、芋にも大学が付くんや。えらい出世したもんやなあ。」
と、あきれ返った顔をして言いました。
「ううん、そうじゃないの、サツマイモを揚げて蜜に絡めたのを大学芋って言うの。」
「いやあ、これはスイートポテトやで、英語であま~い芋と言う意味やで、」
(ん? 確かに……)
オッチャンの言葉が言い得てるので、次の言葉が出ませんでした。
(いや、でも……大学いもはスイートポテトではナイんやけどな。う~ん……)
トモちゃんは頭をひねってみましたが。返す言葉が見つかりませんでした。それにオッチャンの言うほうが良いような気がしました。おいしく食べれる方がいいんですから! 
「ほんとね、オッチャン。スイートポテトと言うほうがおいしそうだもんね。」
「そやで、芋もあんまり賢こなると、勿体のうて食べられへんで、まして大学なんて言われたらよけいにな」
オッチャンは、大きく頷いて言いました。
「オッチャン、スイートポテト、好き?」
「大好きやで、ほんとに、有難うな。」
「良かった。」
「いっつも有難うな。あんばいしてもろて。」
そう言ったオッチャンの目は、すこし潤んでいました。
「じゃあ、オッチャン。帰ります。」
トモちゃんが、ペコッと頭を下げてお辞儀をして言いました。その様子をオッチャンとまあばあちゃんは、ニコッとして見ています。
トモちゃんが、もう1度頭を下げて車椅子を押し出すと、しばらくして家の中からチーンとお仏壇のお鈴を鳴らす音が聞えてきました。オッチャンが、亡くなった奥さんにスイートポテトをお供えしてお祈りしている姿が浮かんできて、まあばあちゃんとトモちゃんの心がポカポカ温かくなってきました。

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まあばあちゃんのスイートポテト


まあばあちゃんのスイートポテトというのは、大学芋のことです。
どういうわけか分かりませんが、
とにかく、トモちゃんの小さな頃から、まあばあちゃんは大学芋をスイートポテトと呼んでいました。
まあばあちゃんの家では大学芋がスイートポテトなのです。
トモちゃんもそう覚えていましたが、給食とかテレビとかお友達のお家でお呼ばれしたりしる内にスイートポテトと大学いもが違うことを今は分かっています。
トモちゃんが、家庭科の実習でスイートポテトを作った日、まあばあちゃんにも食べてほしいと思って持って帰りました。
「おばあちゃん、今日ね、スイートポテトを作ったの! どう?」
「まあ、学校のスイートポテトは違うわね。おいしいわ。裏ごししてあるのねぇ! へぇ !」
「あのね……」
トモちゃんは説明しようと思いましたが、あんまり喜んでくれるので言いそびれてしまいました。
そういえば、ずいぶん前、ケーキ屋さんでスイートポテトを見かけた時も
「あら、家で作るスイートポテトと違うわね」
返事してくれました。
どうも、ケーキ屋さんのスイートポテト、お家で作るスイートポテトと分けているようです。まあばあちゃんはスーパーの総菜売り場に興味がないらしく見にも行かないので、【大学芋】のラベルにも気付くことはありません。
そのため、今でもまあばあちゃんにとって大学芋がスイートポテトです。

ともかく、まあばあちゃんはスイートポテトを作りはじめました。
サツマイモの土を落として、皮をゴシゴシ洗います。
今までは、皮をむいて一口大の乱切りにし、水を切って、油で揚げて、砂糖で作った蜜を絡めて出来上がりだったのですが 、
今は、切った後、お皿に並べてラップをかけて、電子レンジで軽くチンしてサツマイモを柔らかくしてから、油で揚げています。
熱々のカリカリのお芋は、甘くてとてもおいしいです。トモちゃんはついつい一口二口と、つまみ食いをしています
ジロもミミちゃんもトモちゃんの足元でつまみ食いのお手伝いをしています。いけない子ですね。
さあ、出来立ての“まあばあちゃんのスイートポテト”がたくさん出来ました。
「おばあちゃん、オッチャンの所へ早く届けに行こう。」
「喜んでくれるといいんだけど……」
まあばあちゃんは作る前は張り切っていたのに、急に心配顔になりました。
「大丈夫! おばあちゃんのスイートポテトはおいしいんだから!!」
トモちゃんが嬉しそうな顔で言いました。
まあばあちゃんを車椅子に乗せて、ジロとミミちゃんと一緒に、出発進行です!

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嬉しいお芋


「おばあちゃん。嬉しいね。お芋さんこんなにたくさん頂いて。」
トモちゃんが嬉しそうに、頂いたサツマイモをお家の中に運んでいます。
「そうなの、いつも頂いてばかりで・・・申し訳ないやら、有難いやらで、おばあちゃん、どうしたらいいのか分からなくなってしまうの。」
まあばあちゃんは、顔をクシャクシャにして笑っています。
オッチャンのサツマイモは、湿った土が付いています。まさに今まで畑の中にあったという感じです。
「おいしそうなサツマイモやね、おばあちゃん。」
「ほんとね。」
サツマイモのオッチャンは、2年前に奥さんを亡くして今は一人ぼっちです。
いつの頃からか、まあばあちゃんと散歩のときに出会うようになって、挨拶をするようになりました。「寒いね。暑いね。」と気候の挨拶から始まって、今は畑で作った季節ごとのお野菜を頂ける親しさになっています。
近所で貸し農園を借りてたくさんの野菜を作っているそうです。でも、一人じゃ食べきれないので、いつもまあばあちゃんに採れたての野菜を持って来てくださるそうです。
おねぎに、ゴーヤに、なすびに、きゅうり。
オッチャンは何でも上手に作ります。そして新鮮な野菜をまあばあちゃんに届けてくれます。
「トモちゃん。今日は、このサツマイモでスイートポテトを作りましょう。おいしく出来たら、オッチャンに持っていきましょう。」
「おばあちゃんは、オッチャンのお家知ってるの。」
オッチャンの家はトモちゃんの家の3筋向こうにあって、そんなに遠くじゃありません。
「ええ、もちろんよ。奥さんもいい人だったのよ。」
「へえ、そうだったの。」
「町会の当番のときにお知り合いになったんだけど、本当に優しい人だったわ。」
まあばあちゃんは、オッチャンの奥さんのことを思い浮かべながら、しみじみ言いました。
「奥さんが、生きておられたらどれだけ良かったかと、あのご主人を見ているといつも思うわ。」
「そうなんだ。 ……オッチャン、そんな感じしなかったな。いつも明るいから」
と、トモちゃんが言いました。
トモちゃんは、オッチャンの笑顔を思い出して(偉いな。)と思いました。悲しみや淋しさを隠して、ガハハハと明るく笑っているオッチャンを立派だと思いました。

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お揃いのマフラー


「あっ、オッチャンのマフラー!」
トモちゃんが、オッチャンの首に巻かれた黒と白の毛糸で編んだマフラーに気づいて、素っ頓狂な声を上げて言いました。
「これか、これええやろ! 嬢ちゃんのばあちゃんにもろたんや。」
「とっても、似合ってるよ!」
「こんなん、どこにも売ってないからな。重宝しとるよ。」
オッチャンは、しわしわの顔で嬉しそうに笑って言いました。
まあばあちゃんの作るマフラーは首だけを巻くことの出来る短くて小さいものです。
「オッチャン、見て。私も同じマフラーよ。おばあちゃんが編んでくれたんよ。可愛いでしょ。」
「ほんまや、よう似おとるわ。いつもばあちゃんと一緒に歩いとる和犬も同じマフラーしとるなあ。そうか! わし、似おてるか?」
まあばあちゃんは、冬になるといつもコタツで、なにか編んでいます。マフラー、手袋、靴下・・・・。この頃はジロやミミちゃんのお洋服にも挑戦しているみたいです。今までは、1色の毛糸で編むことが多かったのですが、今はボーダーが多いです。まあばあちゃんはいつも縞模様と呼んでいます。
「ほな、オッチャンは行くで。今日は小学生の見守りをせなあかんから。」
オッチャンはそう言うと、自転車を元気よくこいで遠ざかって行きました。
まあばあちゃんの住む町では、小学生の子が登校するとき、大人の人が町の角に立って見守るのです。オッチャンは、その見守りに参加しているのです。
「え?! ちょっ! オッチャン。待って、待って!」
トモちゃんが、慌てて、走りながらオッチャンを呼び止めました。オッチャンは、(どうしたのかな)っと振り返りました。
「オッチャン。今日は日曜日やよ。学校はお休み!」
トモちゃんは、全速力で走ったのでふうふう言いながら、伝えました。
「あっは。そうか、今日は日曜日か、見守りは明日の月曜日やったわ。オッチャン。うっかりしとったわ。もう、ボケてきたんか分からんな。有難うやで。」
オッチャンは嬉しそうな顔をして、ガハハハと笑うと、まあばあちゃんの編んだマフラーをつまんでウインクをすると、自転車に足をかけました。そのウインクはへたくそで、両目をつぶっていました。トモちゃんも、まあばあちゃんの編んでくれたオッチャンとおそろいのマフラーの先をつまんで、ニコッとして手を振りました。オッチャンは、トモちゃんに手を振り返しながらニコニコしながら遠ざかって行きました。

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オッチャン


日曜日の朝、散歩を終えたまあばあちゃんは、今日も表の道路の落ち葉を集めていました。
ころころ転がりながら落ち葉はまあばあちゃんの目の前を走って行きます。
少し前の落ち葉は赤や黄色の色鮮やかな楽しいものでしたが、今、まあばあちゃんの掃き寄せている落ち葉は、枯葉色の淋しいものばかりです。
銀杏の黄色ももみじの赤も色あせています。
「おばあちゃん。ここにいたん。私も手伝うから。」
と、元気なトモちゃんが、まあばあちゃんの側に走り寄ってきました。
「はい! ここにどうぞ!」
そして、落ち葉 を入れやすいようにビニール袋の口を広げて言いました。
「おばあちゃん、後は私がするから。」
「いいの、いいの。トモちゃんはお家に入っていなさい。」
ふたりで、そんなやりとりをしていると、後ろから大きな声をかけられました。
「ばあちゃん。いも食うか。」
声をかけてきたのは、自転車の前と後ろの篭にサツマイモを一杯乗せたオッチャンでした。
散歩してる時に、よく出会うオッチャンです。
「嬢ちゃん。家から袋を取っといで。」
と、今度はトモちゃんに声をかけてきました。
「今日は、朝から芋掘りで、疲れたわ。」
そう、言いながらオッチャンは、どんどんトモちゃんの持ってきたビニール袋の中にサツマイモを入れています。
「オッチャン。有難う。嬉しいな。こんなに、たくさん!」
「*のうなったら、また持って来たるよ。」    ≪*のうなったら=無くなったら≫
「ほんとう!」
「おう! 芋かて食ってもらってナンボよ。」
トモちゃんと、オッチャンの楽しい会話が続きます。
側で見ているまあばあちゃんも、とっても嬉しそうです。寒い朝なのに、心は温かです。

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ミミちゃんの散髪


「ねっ、おばあちゃん。今日はミミちゃんの散髪をしよう!」
トモちゃんが台所で、食事の後片付けをしているまあばあちゃんに声をかけました。
「散髪?」
割烹着で手を拭きながらトモちゃんの所にきました。
「ミミちゃん、だいぶ毛が伸びてきたから」
トモちゃんはそう言いながら、縁側に新聞紙をひいています。
「ミミちゃん、いらっしゃい。」
トモちゃんに呼ばれたミミちゃんは、嬉しそうに走って来て、ぴょ―んとトモちゃんの膝の上に飛び乗りました。
「ミミちゃんはおりこうさんね。さっ、これから散髪をするわよ。」
トモちゃんは膝に乗っているミミちゃんを新聞紙の上に乗せました。そして、丁寧にブラッシングすると、はさみと櫛を持ってミミちゃんの毛を切り始めました。
「おばあちゃん、ミミちゃんどんな顔してる?」
「気持ちよさそうな顔してるわよ、ねっ、ミミちゃん!」
トモちゃんは器用にミミちゃんのお鼻を支えたり、お腹に手を入れたりして上手にミミちゃんの向きを変えています。
「トモちゃん、美容師さんみたいよ」
「ほんと? もう3回目だもんね!」
「変わったブラシねぇ」
「ちょっとネットで買ってみたの」
「ネット? ああ! コンピューターね! 初めてミミちゃんを散髪するときも言ってたわね。」
まあばあちゃんは、なんでも〝コンピューター″に一くくりです。
ミミちゃんが家に来てしばらくすると、だんだん毛が伸びてきました。そこでトモちゃんはチョット自分でやってみようと思い立って始めたようです。
ミミちゃんはトリミングに慣れているのか、とっても上手に姿勢を取ってくれました。後はトモちゃんが上手くなるだけでした。
トモちゃんはミミちゃんに「いい子ねぇ。とってもやりやすいよぉ。」としきりに褒めるので、ウットリしています。本当に気持ちよさそうな顔をしています。
ミミちゃん。すっきりして小熊みたいになりました。
ちょっと気になるところはあるけど、可愛くなりました。
「ねぇ、トモちゃん。プードルってボンボリさん付けてなかったかしら?」
「そだね。今はティディベアカットって言って、小熊ちゃんみたいなのがいいらしいよ。それに、あれは難しすぎるよ。」
次に、足の指の毛はバリカンでするようです
「ほら、終わったわよ。ミミちゃん。」
トモちゃんが、散髪をしている間中お利口にしていたミミちゃんの頭を撫ぜて褒めました。
ジロは大変だなあ、という顔でウツラウツラしながら見ています。
「ほんとに、可愛くなって。」
まあばあちゃんは目をまん丸にしていました。
「どう、おばあちゃん。」
切り始めてから1時間。ミミちゃんはすっかりプードルらしくなりました。そのあと、トモちゃんが浴室できれいにシャンプーをして濡れた毛を乾かすともこもこふわふわの美しいミミちゃんの出来上がりです。
「綺麗になったわね。ミミちゃん。」
まあばあちゃんは、散髪の終わったミミちゃんを感心して見ました。
ミミちゃんも気持ち良くなったのか、こたつの中に体を半分入れてウツラウツラしているジロの側でコロッと横になったかと思うと眠ってしまいました。



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もう1通の手紙



ミミちゃんのお母さんの手紙と一緒に同封されていたもう1通の手紙は、息子さんからのものでした。
内容は病気の母にずっと手紙を送り続けたまあばあちゃんへの感謝の気持ちとミミちゃんのお礼でした。
簡潔な文面でしたが、息子さんの心がよく表れていて、息子さんがミミちゃんの事を気にかけていたことも分かりました。

外は冷たい木枯らしが吹いているけれど、まあばあちゃんの心はとても静かでした。
まあばあちゃんが送った手紙や写真は、ミミちゃんのお母さんの願いで全て棺の中に収めたと書いてありました。
まあばあちゃんは、ふっとミミちゃんのお母さんが、ミミちゃんの側で笑っているような錯覚にとらわれました。
「これからは、いつでもミミちゃんに会いに来てくださいね」
まあばあちゃんは、そっとミミちゃんのお母さんに語りかけるのでした。
しばらくして、まあばあちゃんはミミちゃんのお母さんの息子さんに手紙を書きました。

―――お母様から頂いたお手紙はこれからもずっと大切にしてまいります。
あの日、百日紅の美しい花の傍でお母様と楽しくお茶をいただいた時は、こんなに早く悲しい別れが来るなんて思いもしませんでしたが……。
ミミちゃんは、私たちの家族として大切に致します。そして、この年寄りを気遣って、お母様の最後の手紙をお送りくださり有難うございました。―――

自分の書いた手紙を見直しながら、まあばあちゃんは本当にいい人に出会えた喜びを噛締めていました。


ミミちゃんのお母さんとの出会いです。
まあばあちゃんと百日紅とミミちゃん

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トモちゃんが帰ってきた


「わわわ! どうしたの? ジロ! ミミちゃん!」
いつもはトモちゃんが帰ってくると、ジロとミミちゃんがタタッと嬉しそうに走って出迎えてくれます。おばあちゃんが台所から「トモちゃん、お帰り」と大きな声で言ってくれるのに。
様子が変です。
今日は2匹とも、とっても焦ってワタワタしてトモちゃんに何かを知らせようとしています。
トモちゃんは慌てて、おばあちゃんを探すと、飛び上がって驚きました。
真っ暗です。
部屋の灯りを慌てて点けると、コタツの中で倒れたように横になってるまあばあちゃんがいました。
「おばあちゃん!! 大丈夫?!!!」
「……ああ、トモちゃん」
おばあちゃんが力なく返事しました。
「おばあちゃん、大丈夫?」
「お帰り。いつの間にか、寝てしまったのね。ごめんねぇ。」
トモちゃんはまあばあちゃんが返事をしてくれたのでホッとしました。
「……ミミちゃんのお母さん……亡くなったの」
ポツリと言うとまた目が潤んできました。
「……うん……」
泣き疲れて魂が抜けたようになっている、まあばあちゃんをゆっくり抱き起こしました。
「おばあちゃん、熱いお茶を入れるから、一緒に飲もう」
トモちゃんにそう言われて、まあばあちゃんは、ハッとしました。
「ごめんね、トモちゃん。おばあちゃんがお茶の支度をするからトモちゃんは、早く、着替えてらっしゃい。」
いつものまあばあちゃんは、トモちゃんが学校から帰ってくる時間を見計らってお茶とおやつの用意をして待ってくれています。
今日のまあばあちゃんは気持ちが沈んで、体が思うように動かないみたいです。
「今日ね、ミミちゃんのお母さんが亡くなられたという手紙を頂いたの……」
まあばあちゃんは、お茶の入ったコップを持ったまましょんぼりして言いました。
「おばあちゃん、びっくりしたでしょう。」
「えぇ ……」
「でもね、おばあちゃん。ミミちゃんのお母さんは体は無くなっても、魂になってミミちゃんを見守って下さってると思う。」
ハッとして、まあばちゃんはトモちゃんを見ました。ミミちゃんのお母さんなら、きっとそうしてるとまあばあちゃんもそう思ったのです。
「それに、ミミちゃんのお母さん、もう、痛い思いをせずにすむのよ。」
トモちゃんは続けて言いました。
「……そうね。本当に、そうだわ」
「悲しんでばかりいたら、ミミちゃんのお母さんも困ってしまうと思うよ。ほら、ミミちゃんも心配してる」
ミミちゃんは、いつもと違うまあばあちゃんの様子にどうしてよいか分からないようで、少し離れたところから心配そうに見つめていました。
「ごめんね。心配かけて、ミミちゃん、こっちおいで」
ミミちゃんは少し小首を傾げてから、元気よくまあばあちゃんに走り寄りました。
「私、ミミちゃんのお母さんは、ミミちゃんの幸せを一番、願ってる思うよ。」
「トモちゃんの方がしっかりしてるね。おばあちゃんがこんなだと、ミミちゃんも不安になるわね。そんな事、ミミちゃんのお母さんも望んでないもんね。」
「そうだよ! おばあちゃん!」
幼い頃から、元気で優しくて可愛い、まあばあちゃんの宝物のトモちゃん。
トモちゃんと話してるうちに、だんだんと心落ち着いてきました。

すぐに悲しみは癒えなくても、落ち込んでばかりいてはみんなが心配するよ。まあばあちゃん。 元気出して……!


ミミちゃんのお母さんとの出会いです。
まあばあちゃんと百日紅とミミちゃん

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最後の手紙



ミミちゃんのお母さんが亡くなったことが記されていた手紙を受け取って程なく、まあばあちゃんの手元に、弱々しい文字で綴られた手紙が届きました。

ミミちゃんのお母さんからの最後の手紙です。

いつもいつも励ましの手紙をくれたまあばあちゃんへの感謝の手紙でした。
ミミちゃんの日常を書いて教えてくれたこと。
手紙に添えられていた、落ち葉や、押し花のこと。
つらい入院生活もまあおばあちゃんのお手紙がどれほど励みなったか―――
その1つ1つに、丁寧なお礼の言葉が添えられていました。
元気になって、まあばあちゃんと一緒に朝の散歩に行きたいとも……

―――しかし、死期を近くに感じていることも書かれていました―――

まあばあちゃんは、涙で曇る目をぬぐいながら、コクンコクンと頷いて、何度も何度も読み返しました。

ミミちゃんのお母さんと交わしたお手紙の他愛無いけど、暖かいやり取りが思い出されます。
ミミちゃんのお母さんは、まあばあちゃんのことをジロちゃんの〝お母さん″と書いていました。まあばあちゃんはこの年になって〝お母さん"と呼ばれるのは気恥ずかしくて、『おばあさん』と呼んで下さいと、ミミちゃんのお母さんに、お返事したことがありました。
お返事には、
『私もですよ。でも、ミミちゃんのお母さんと書かれた文字を見るのはとても嬉しいです。いくら年をとっても、「おばあさん」より「お母さん」と呼ばれるほうが嬉しいですね。クスッ!』
と、書かれていました。
今、その一つ一つのたわいないやり取りが思い出されて、まあばあちゃんの胸は切なさで締め付けられます。

あの見事な百日紅のある美しい庭の主は、もうこの世にいないのだと思うと、また涙が溢れてきました。

ミミちゃんのお母さんとの出会いです。
まあばあちゃんと百日紅とミミちゃん

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悲しい知らせ


まあばあちゃんが、庭で花の手入れをしていると、コトンと小さな音がして、ポストに手紙が届きました。その音を聞いた時、胸騒ぎを感じたまあばあちゃんは、土いじりの手を洗うのもそこそこに、慌ててポストの手紙を取りに行きました。

ミミちゃんのお母さんが入院している病院からでした。

まあばあちゃんは震える手で、手紙にはさみを入れると、白い便箋を取り出しました。
内容は、ミミちゃんのお母さんが亡くなったことでした。看護師さんがミミちゃんのお母さんにお願いされて、手紙を下さったとの事でした。
「まだ、お若かったのに……」
まあばあちゃんは、声を殺して泣きました。
胸の震えが止まりません。

まあばあちゃんは、ミミちゃんのお母さんによく手紙を書きました。
いたずらなミミちゃんのこと、おりこうさんのミミちゃんのこと。
早くお元気になられるように祈っていること。
季節の押し花や落ち葉を手紙に添えて送りました。

ミミちゃんのお母さんも送った押し花に一緒に活けると映える花を教えて下さったり、元気になったらまた訪れたい場所など、色んなことをお返事に書いてくれました。

気分の良い日が続いてると、前の返事には書いてあったのに……
呆然として座り込んでしまったまあばあちゃん―――
ジロとミミちゃんはまあばあちゃんの悲しみを癒そうとするように、いつまでも寄り添っていました。

公園の子犬のこと……
ミミちゃんのお母さんのこと……
本当に、悲しいことが続くものです。

まあばあちゃんは、やさしいミミちゃんのお母さんのご冥福を祈りました。

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師走の風に……



今日もまあばあちゃんは、朝早くから、ジロとミミちゃんを連れて、シルバーカーでお散歩です。家の近くの公園は、落ち葉の絨毯で埋め尽くされています。まあばあちゃんが、押すシルバーカーにも木の葉が、降り注ぐように落ちてきます。今日から、師走というのに公園の木々は、最後の秋を楽しんでいるようです。まあばあちゃんは立ち止まって、降り注ぐ木の葉を見つめていました。まるで別世界です。いつもの公園とは思えない幻想的な美しさです。
「きれいねぇ。こんなの、初めて…」
昔から、朝のお散歩を欠かさず続けてきたまあばあちゃんですが、こんな美しい公園の景色を見るのは、初めてだったのです。
まあばあちゃんが、落ち葉に見とれていると、向こうの方から、ダンボール箱を持った男の人が歩いてきました。まあばあちゃんには、その人が泣いている様に見えて声をかけました。
「どうされました?」
「ああ。」
と、その男の人は、まあばあちゃんに返事をしてから、ズルッと鼻を啜りました。目が真っ赤でした。
「それは……」
「あんまり、見んほうがええよ。」
その様子にドキッとしてダンボール箱の中を見ると、
生まれたばかりの子犬が3匹いました。けれど、全く動かないし鳴き声もしません。

―――もう冷たくなって死んでいました。―――

まあばあちゃんは言葉を失いました。
「殺生な事するでなあ、どこのどいつか知らんけど。この子らは、わしがええように、しとくから、ばあちゃんは、心配せんときや。」
そう言うと、段ボール箱を大切そうに抱えて、遠ざかって行きました。

まあばあちゃんの頭の中は真っ白になってしまいました。

ほんとだったら、今頃、お母さんのお乳をいっぱい飲んで、ふわふわの毛の中に包まって、眠っているはずなのに、お母さん犬から引き離され冷たい師走の風の中にさらされて死んでいった可愛い子犬たち……
まあばあちゃんは、涙が止まりませんでした。
そんなまあばあちゃんの手を、ジロがペロペロと舐めました。ミミちゃんも心配して飛びつきます。
「ごめんね、ふたりとも、心配してくれたのね。」
まあばあちゃんは、ジロとミミちゃんの頭をそっと撫ぜて、シルバーカーを押し出しました。涙で曇る目を拭き拭きしながら……

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エリちゃん、ありがとう


―――コットンコットン、ガタンゴトン―――
ゆっくり動き出した電車に揺られて、まあばあちゃんは目を覚ましました。
エリちゃんがホームで、まあばあちゃん達に笑顔で手を振ってくれています。
まあばあちゃんは、慌ててエリちゃんに手を振りました。
心の中で、何度も何度も(ありがとう)と言いながら。
「トモちゃん、ごめんね。おばあちゃん、エリちゃんに失礼なことをしてしまったわ。」
「どうして?」
「眠ってしまうなんて、本当に申し訳ないわ……」
そう言って、まあばあちゃんはションボリしてしまいました。
「大丈夫やよ。エリちゃん、おばあちゃんの寝顔可愛いねって、言ってたよ」
「ごめんね、ごめんね。トモちゃん。ごめんね……」
まあばあちゃんは、恥ずかしくて、ほっぺを赤くして、うつむいてしまいました。
トモちゃんは、まあばあちゃんがあんまりションボリするので、一所懸命なぐさめていました。
―――『右側の扉が開きます。ご注意ください』―――
少しして、まあばあちゃんたちの駅に止まりました。
「あっ! 着いたよ! 降りなくちゃ!」
帰り道、トモちゃんはおばあちゃんに尋ねました。
「ねっ、おばあちゃん。御陵さんに行った感想は、どうデスか?」
トモちゃんが、まあばあちゃんに聞きました。
「神々し過ぎて、何も覚えてないの。ごめんね、トモちゃん。おばあちゃんたら、情けないわ。せっかく、遠い所まで連れて行ってもらったのに・・・。」
「私もよ。おばあちゃん。そりゃ、仁徳天皇陵は、世界一なんだもの。それくらいの迫力があって当たり前やよ。」
「でも、おばあちゃん、温かい天皇様のお心だけは、感じたわ。(よう、ここまで来たな。)と、おしゃって下さったような気がしたわ。トモちゃん、エリちゃん、本当にありがとう。」
「エリちゃんが、おばあちゃんと一緒に、また行きたいって言ってたよ。」
「まあ、ほんとうに!」
「うん」
まあばあちゃんは、嬉しくて信じられませんでした。
「今度は、おばあちゃんの作ってくれたお弁当、一緒に食べたいって言ってたよ。」
「まあ!」
「今日は、エリちゃんに、おばあちゃんのお弁当、お土産に持って帰ってもらったよ。喜んでくれたよ。」
まあばあちゃんは、感謝していました。自分の作ったしがない弁当を喜んでくれたエリちゃんに。ホームで手を振るエリちゃんが大事そうにお弁当を持ってくれていた姿を思い出して、再び感謝していました。
(エリちゃん、ほんとにありがとう。)って……!

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堺の町のまあばあちゃん

Author:堺の町のまあばあちゃん
堺の町に住む、ひとりのおばあちゃんのお話です。
住み慣れた町の人々との交流や孫のトモちゃんや犬のジロとの生活を通して力強く生きていく姿を物語に書きたいと思います。 
宜しくお願いします。
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