まあおばあちゃん と 茂平のお母さん と トモちゃん


「おばあちゃん、大丈夫?どうして泣いてるの?」
まあばあちゃんはそこまで話すと、堪えきれなくなったようにポロポロ涙をこぼしました。
「ううん。苦労してきた茂平のお母さんが茂平と一緒に暮らせるようになって良かった。この話を思い出すたびに思うんよ。一所懸命、働いて働いて、辛い思いさせている息子に詫びながら生きていくお母さんにいつも教えられるの。貧しいって悲しいんよ。どんなに頑張っても楽になれないんだもんねェ。ホンマに大変な時代やった。」
「おばあちゃんも辛い思いして、生きてきたんやね。ごめんね。思い出させて…」
トモちゃんがまあおばあちゃんの手を取って言いました。
「そんな事ないよ。おばあちゃんなんか茂平のお母さんに比べたら…。どんなに幸せか…」
おばあちゃんはトモちゃんの手を握り返して言いました。



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言い伝え


おっかさんは茂平に背負われて、もみじ谷にやってきました。一生懸命頑張ってきたおっかさんですが、最近は寝付くことも多く畑を休むことも増えてきました。もう自分の足で谷へ行くことなんてとんでもありません。
茂平の背中はたくましく、とってもあったかです。
「あんなに小さかったお前に背負われるなんてなぁ」
「おら、もう三十だよ。おっかあ。もう子どもじゃねぇだよ」
「もう、あれから二十年も経つんだねぇ」
「なぁ、おっかあ、もみじ谷で死んだ者はどうして村の墓に入れちゃなんねぇんだ? ミネはおっかないヤツだったけど、やっぱり嫁さんだ。不憫でならねぇだよ。」
「もみじ谷の墓場には石のお墓がいくつかあったじゃろう?」
「あった。」
「もみじ谷で首吊りした者は、みな藤の蔓で首を締め上げられて死ぬ。おっかあの知っているだけで、三人おる。おまえ、新八おじさん覚えとるか?」
「…覚えとる」
「新八おじさんももみじ谷で死んだんじゃ。もみじ谷で死んだ者は村に入れてはならねぇと言い伝えがあるんじゃが、もう古びた言い伝えじゃということになって、村の墓に入れることになった。それから立て続けに二人も…」
「二人…」
「恐ろしいことに言い伝えのとおりになってしもうた。もみじ谷で死んだ者を村に入れると不幸を呼ぶんじゃ」
ミネを入れて茂平の知っている人が二人も死んでいるなんて、この世のものとは思えないほど美しいもみじ谷の紅葉は人の命を吸っていたからなのでしょうか…



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 おっかあ と ミネの母


お金を返しに行った茂平のおっかさんは、届けに行った二十文を投げつけられました。
「今頃、何しに来たんだい!! なんだい! これぽっちじゃ利息にもならないじゃないか!」
利息の約束なんてありませんでした。遅くなったのだから当たり前かもしれませんが…ミネの母親はそう言っておっかさんを殴ったり蹴ったりしました。その上冷たい水を頭からぶっかけました。
ミネさんもきつい人でしたが、ミネさんの母親は輪をかけてひどい人でした。
「二度と来るんじゃないよ!! それぽっちじゃ、大事な働き手を渡すわけにゃいかねぇ!」
おっかさんは返す言葉もなく、持ってきた二十文のお金を丁寧に拾って、ずぶ濡れのまま山を越えて帰って行きました。魂が抜けたようになったおっかさんは、いつのまにか、崖の先っぽに立っていました。村へ帰る一本道とは別にもみじ谷へ真っ逆さまの断崖へ続く道があります。人が一人通れるくらいの普段は草むらに隠れて分からない獣道があります。
もう茂平を取り戻す手立ても希望もなく、生きる目的を無くしたおっかさんは、ここから身を投げようと思ったのです。でも、おっかさんは踏みとどまりました。茂平を一人ぼっちにさせられないと思ったのです。


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おっかあ と 二十文


ようやく夜が白み始めた頃、その声がゆっくり遠ざかっていきました。
おっかさんはゆっくり恐る恐る鎌を取ると下草を刈りはじめました。疲れていましたが、恐ろしいのを忘れたいのと茂平のもとへ戻りたい一心で必死に下草を刈りました。
(早く終わらせて茂平の所へ帰らねば)
それだけを思って仕事に精を出していました。村の男衆が来たころにはおっかさんの今日の分は済んでいました。
「昨日は、本当にすまんかったな。わしら帰るのに夢中でお前さんの事をすっかり忘れてしまって。なにせ、この辺は夜は不気味だで…。ほんに申し訳ないことをした。勘弁してくれ。この通りだ。」
山の仕事を束ねている人が心から謝ってくれたので茂平のおっかさんは本当に嬉しかった。意地悪で山に残さたと思っていただけに本当に嬉しかった。
「一晩中、山にいて疲れたじゃろう。今日の分の仕事はしてもらったから早く帰ってゆっくりしてけろ」
「有り難うございます。」
そう言うなり、おっかさんは必死で茂平の元へ走りました。
お腹を空かして泣く茂平を抱きしめて出ない乳房を手繰り寄せ、絞るようにお乳を飲ませました。
「茂平、茂平」
おっかさんは自分の胸の中で眠るやわらかくて暖かな息子の名を呼んで我が子を抱きしめる喜びを噛み締めした。それからもおっかさんのつらい日々は続きましたが茂平が十歳の時、二十文のお金が返せず茂平はおミネのお父に売られていきました。
しばらくして小助が死に、おっかさんは一人になってしまいました。
その後、村の衆の畑の手伝いやら藁づくりの仕事をもらい、おっかあは何とか二十文のお金をつくろうと無我夢中で頑張りましたが、わずかばかりの手間賃ではなかなかお金がたまりませんでした。それでも、おっかさんはようよう二十文貯めて茂平を取り返そうと山を越えてミネの家に行きました。


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おっかあ と もみじ谷

「おっかあ、迎えに来たぞ。おらと一緒に暮らそう」
茂平はそう言うとおっかあの家を片付け始めました。
「だめだ。おら行けねぇ。お前が生まれ、おとうの死んだこの家で死ぬとおっかあは決めたんだ。だから茂平、お前がおっかあを気にすることはねぇんだぞ。お前はお前の事を考えて生きて行け。おっかあは…おっかあ…は、お前をミネさんのお父に売ったんだぞ。」
「それは違うぞ! おっかあ! あれは、おとうの薬代に借りんたんだろ。それにおっかあは金を返そうと死にもの狂いで頑張ってくれたこと…おら、ちゃんと分かってる。売ってなんていねぇ!」
「茂平…」

茂平が生まれ間もなく、おとうの小助は重い病にかかり、おっかあが小助に代わって村の寄合から決められた山の仕事に出ていました。
〝お上″という偉い人から、それぞれの村に近い山の枝払いや下草刈り、そして山道を作るように仕事を与えられていました。
おっかさんも男衆に交じって辛い山仕事に耐えてきました。体がバラバラになりそうな本当に辛い仕事です。

ある日、いつものように山の下草刈りをしていました。その日は切り立った崖が多くなかなか仕事がはかどりませんでした。気が付くともう薄暗がりでした。周りで一緒に仕事をしていたはずの男衆がいつの間にかいなくなっていました。おっかあは山の中に一人放って置かれたのです。すぐに山を下りようと片づけましたが、もう真っ暗闇になってしまいました。山の中ではあっという間に陽が落ちるのです。その上この日は新月で月明かりもありませんでした。

「吊ってけ~吊ってけ~~」
風がざわざわして暗闇の中から声が聞こえてきました。でもおっかさんは気丈でした。
「わたしには生まれたばかりの子がおりますだ。それは無理な話ですじゃ。」
ときっぱり断りました。けれど恐ろしい声はおっかさんの周りをぐるぐる回ります。何とか山を下りたいけれど、この暗闇では右も左もわかりません。赤ん坊の茂平の事が気がかりでしたが、この化け物を退ける術が分かりません。
おっかさんは恐ろしい声が聞こえないように耳を両手でしっかり塞ぎましたが、それでも聞こえてくるのです。
「吊ってけ~吊ってけ~~」
おっかさんに、いつまでもいつまでも言い続けました。


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おミネの墓


(まさか!!!)
茂平の脳裏に暗闇の化け物の事が浮かびました。
(うんにゃ、あの声はおらに吊れと行ってただ。
だども、身代わり立てろとも言ってなかったけ? まさか…ミネが…)
茂平が呆然としている間に噂を聞きつけた村の衆が集まってきました。
「茂平さんや、今からお前の嫁さんを引き取りに行こう…。ほら、皆もこの通り集まってきておる。」
「…よろしくお願ぇします。」
茂平は深々と頭を下げました。
茂平はミネが死んだことで不思議と涙は出ませんでした。
それより早く谷から出してやって成仏させてやろうという気持ちの方が勝っていました。
「早くミネを家に連れて帰りたいと思います。」
「茂平さん、もみじ谷で死んだ者を村に入れることは出来んのじゃよ」
「えっ? そんな…」
古くからの風習で、もみじ谷で死んだ者は村に入れてはならぬとのことでした。
そのため村の墓には入れず、山の中の墓場に埋葬します。
茂平のようにこの村からもみじ谷を通って行くものは少ないので、茂平の知らぬのも無理のない事でした。
しかし不思議なことにもみじ谷で誰かが死ぬと、不思議と見つける者がいるのです。
「茂平さんが小さい頃におった村では何人も亡くなっておるんじゃよ。そこでもそうしているはずじゃ」
そう茂平は十歳の時、病気のおとうの薬代の為に借りた金を返すとことが出来ず、ミネの家に働き手として連れてこられました。茂平は素直でよく働くので、気ばかり強く貰い手のないミネを持て余したミネの父親が茂平に婿入りをとすすめました。
「すまぬな。茂平さん、堪えておくれ」
茂平は言葉にすることが出来ず、小さく頷きました。


ミネの亡骸それは無残なものでした。藤の蔓がしっかりとミネの首に巻きつき大きな岩の間でブラブラ揺れていました。
「早く降ろさねぇと、カラスに食われるど!」
と誰かが言いました。
山の中の墓というのは、日の当たらない場所にありました。今まで死んで往った人の墓標なのか小さな石があちこちに置かれていました。

生きているときは怖いばかりのミネでしたが、いなくなるなんて考えたこともなかったので、ぽっかり穴が開いたような何とも言いようのない気持ちでした。
「自分の家の墓にも入れず、どんなに寂しかろ…」
茂平はミネが成仏できるよう心から祈りました。
「嫁さんの事は、もう忘れろ。それが、茂平さんのために一番ええだ。」
村の衆が口々に茂平を慰めてくれました。
茂平は嫁のミネが死んだ後も朝早く起きて田畑を耕し、夜は藁を打ち、ムシロや藁草履を作っていました。四十九日が過ぎた頃ちょうど稲刈りが終わり、田んぼの仕事も一段落して茂平はミネの眠るもみじ谷へと向かいました。
体の弱いおっかさんを引き取って一緒に暮らすため、ミネの許しを請いに行くのです。小さく織ったむしろを背中に背負って、今年の新米で作ったおにぎりを小さく握って行きました。米は年貢でほとんど手元に残らないのでこれが精一杯でした。
もみじ谷はその名の通り真っ赤に色づいて言葉では語りつくせないほどの美しさでした。茂平は今から寒くなるだろうと墓の一つ一つにムシロをかけて、小さなおにぎりを置いていきました。自分は白いお米のごはんなんか滅多に食べたことないのに。茂平はミネの墓に手を合わせるとおっかさんを迎えに行くため、静かにもみじ谷を後にしました。



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ミネがいない



家に着くと雨戸が閉まったままです。まだ寝ているのでしょうか?
「ミネやーい。今帰ったど」
茂平は家に向かって声をかけてみました。シーンとして物音ひとつしません。いつもならバタバタ走ってきて茂平に当たり散らすはずです。茂平は恐る恐る家に入ってみました。
「ミネやーい」
もう一度声をかけてみました。やっぱり返事はありません。
「どこへ行ったんだろ?」
茂平は見当がつきません。村のあちこち探してみても誰も知らないと言います。仕方がないので家に戻ってきました。
そこで茂平はあっと気が付きました。
納屋へ行ってみると、扉が開けっ放しになっていました。
中へ入ると小豆や米、他の入れ物も開けっ放しになっていました。小豆はまき散らされていました。
「ああ、おらの家に行っただな。」
茂平はため息つきました。
「ん? おかしいな。どこでいきちがったんだ?」
この家からおっかさんの家まで一本道。必ずどこかで出会うはずなのに「おかしいあ」と茂平は首をひねるばかりです。
しかしそうもしておれません。茂平は再び山へミネを探しに行かねばなりません。今度はどんな声も聞こえないように耳栓をしてそれにおっかの言うように小豆が魔除けになるのならと、ミネがまき散らした小豆を拾って風呂敷に入れました。まだ昼前です。山は明るく、お日様もさんさんと木の間から降り注いでいます。今度吊ってけと言われたら勘弁してけろと断ろう。
「よし!行くぞ」気合いを入れたところへ村の若者がやってきて、
「おめぇんとこの嫁っこがもみじ谷で首吊って死んでんぞ!!」
「ええ!!」
茂平は驚いて固まってしまいました。



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もみじ谷



夜も白み始めたころ、茂平はまだグーグー寝ていました。
「茂平や、もう明るくなってきた。早く起きて家へお帰り」
飛び起きた茂平の頭に昨夜の事がよみがえります。
今から元来た道を戻らねばなりません。ここへ来るまでは一本道なのです。あの化け物のいた道をどうしても通ることになります。
今から約束通り首を吊りに行かねばなりません。
茂平の体はガタガタ震えています。これから起こることを考えると怖くて怖くてたまりません。
「おっかあ、永の別れだ。達者でいてくれよ」
涙声で言うとおっかさんの小さな体を抱きしめてから山の方へ向かいました。
おっかさんは茂平の背中に手を合わせて祈りました。
夜の明けた山を茂平は必死に上りました。きつい坂を上りきると今度はもみじ谷へ向かう急な下り坂です。そうあの化け物と出会った所です。
「たとえ化け物でも約束は約束だ。」
茂平は自分に言い聞かせ、坂を下りて行きました。

とうとう、約束の場所についてしまいました。怖くて膝が震えます。
「首吊りに来たぞぉぉぉ」
茂平は必死に声を張り上げて言いました。
「出てきてくれぇぇぇ」

化け物は現れませんでした。茂平の谷間に響くこだまと鳥のさえずりが聞こえるばかりです。
なんだか全然怖くなくなってきました。しばらくそこにいましたが、あの化け物は現れませんでした。
茂平は思い切ってミネのいる我が家に帰ることにしました。
でも今度は嫁のミネが怒っていると思うと胃のあたりが気持ち悪くなってきました。怒鳴り散らすかと思えばネチネチした嫌味を言うのですが、その時間の長い事と言ったら! けれど、それに耐えねばなりません。茂平の心は真っ暗です。


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嫁のミネの怒髪天


「どうしてだ? おっかあ」
茂平は必死にすがるおっかさんの手を握って言いました。
「だめだ! 茂平、お前は吊るのを嫌だと言わなんだ。だから助かったんだよ。
お前も聞いたことがあるだろう?首を吊らにゃならんような理由なんぞないのに、吊っちまったっていう話。みんな不思議がっていたんじゃ。
きっとお前と同じ化けモンにあったんじゃ!今までの者は首を吊るのは嫌だと言ったんじゃ!」
茂平はおっかさんの話を聞いてゾッとしました。だけど帰り道に首を吊ると化けモンに約束してしまいました。茂平の来るのを今か今かと待ち構えているでしょう。
「茂平や、どうか、おっかあの言う事を聞いてこの小豆を食べておくれ。小豆には魔物を追い払う力があると聞いたことがある。おっかあも食べるから、どうかお前も食べておくれ。おっかあを安心させておくれ」
茂平はそれでも気が進みませんでしたが、おっかあの炊いてくれた小豆ごはんを一口頬張ると、あまりの美味さに化けモンとの約束も忘れて勢いよく食べ始めました。お腹がいっぱいになると緊張と疲れから茂平はグーグー眠ってしまいました。

その頃、茂平のいないことに気付いた嫁のミネさんは
「茂平、どこへ行った!!」
怒鳴りながら探し回っていました。
お米を量ってみれば
「五合たりない!茂平め!!」
小豆も少し減っているのが分かります。
「茂平のヤツ、大事な小豆と米を盗みやがって!!どこへ行った!!」
そう言っているミネですが、本当は茂平がどこへ行ったかは分かっていました。
「泥棒め!! 茂平のヤツ!! 覚えとれぇ!!!」
雨戸が震えるような大きな声で怒鳴ると、雷みたいな勢いで家を飛び出しました。
「茂平め、母親のところへ行ったに違いない!!!」
茂平のおっかさんの家へと続く道は真っ暗で急な坂道です。いくら気丈なミネさんでも女の足では大変でしょうに、怒り狂ったミネさんは茂平をとっちめることで頭がいっぱいで、山道なんて何のそのどんどん走っていきました。


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小豆

茂平のおっかさんも良い考えが浮かばなくて途方に暮れていました。
ふと見ると、茂平の腰に巻いた風呂敷包みの破れ目から小豆と米がこぼれていました。
それに気づいたおっかさんは、
「茂平、ええもんもろうて来てくれたな!さっそく小豆ごはんにして食おう!!」
「え!」
茂平は目をキョトンとさせて
「おっかあ、こんな時によく落ち着いていられるなあ。おら、そんなモン喉を通らねえよ」
「こんな時だからだ!だから小豆を食うんだ」
「何言ってるんだ帰りには山で首を吊らなくちゃならねぇんだよ。おっかあの顔を見れるのもこれが最後なんだよ。ここにはもう来れねえ。わずかだがこの米と小豆はおっかあが食ってけろ」
茂平は涙を流して言いました。
「茂平や、私の事は大丈夫だから、今度ばかりはこの母の言う事を聞いて、小豆ごはんを食べておくれ」
と茂平のおっかさんは諭すように言いました。
「おら、帰りには死ぬんだ。死ぬモンに飯なんか食う必要はねぇだよ」
茂平はおっかさんの言う事をなかかな聞き入れません。
「なぜ、あの時、嫌だと言わなかったんだろう。なんで吊るなんて言ってしまったんだろう。おっかあには、おらしか身寄りがいないのに」
茂平は死んでいく自分の事より一人ぼっちになるおっかさんの事が心配でなりませんでした。
「おっかあ、おら今から行って、暗闇の化けモンに吊るのは嫌だと言ってくる!」
「だめだ!茂平行っちゃなんねぇ」
「いや、頼んでみるよ。分かってくれるかもしれねぇ」
「だめだ!だめだ!茂平、だめだ!!」
おっかさんは必死にすがりましたが、茂平は行ってくると言って聞きません。



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茂平と闇の声


「おっかぁに会わせてけろ。帰りに必ず首吊るから」
だんだん足がオモリをつけられたように重くなり、見えない何かに体が後ろへ引っ張られるようで、なかなか前に進みません。
「身代わり立てろ~ 身代わり立てろ~~」
「身代わりなんかいねえ。助けてくれー。お願げぇだー」
茂平は必死で逃げました。
もうどこをどう来たのか覚えていません。
やっとの思いで、おっかさんの家にたどり着きました。
茂平はガタガタ震えて歯の根があいません。おっかさんが何を聞いても、首を振るばかりでうつむいていましたが、
ようやく先ほどの恐ろしい出来事を話しました。
「それは怖い思いをしたねえ」
茂平のおっかさんは、せがれの背中をさすりながら言いました。
「おら、どうすればええだ…。おっかあ」



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おばあちゃんの怪談話



「ねっ、おばあちゃん、今度はおばあちゃんの知ってる怪談話教えてよ!」
「おばあちゃんの話なんて大したことないよ。」
まあばあちゃんは苦笑いして言いました。
「ね、お願い!おばあちゃん」
トモちゃんは怪談話がどうしても聞きたいらしく、一つでもいいからと粘ります。
まあばあちゃんはトモちゃんのお願いコールに負けて、こんな話を始めました。

まあばあちゃんのお母さんに聞いた話です。
それは昔々の事です。村に茂平という真面目で働き者のお百姓さんがいました。
茂平さんにはミネというお嫁さんがいたのですが、このお嫁さんは大飯ぐらいで昼間から暇さえあればグーグー寝ていました。茂平さんが入り婿なもんで、顎で使うしたたかさ、それでも茂平さんは文句も言わずに一生懸命働きました。
茂平さんには山一つ越えた村にお母さんがいました。この頃お母さんの体が芳しくないので心配でなりません。
だけど、ミネさんが怖くてお母さんの様子を見に行くことができません。


―――ある夜、ミネさんがすっかり寝入ったのを確かめると、抜き足差し足、息を止めて声を殺して静かに家を出ました。朝、ミネさんが起きるまでに帰ってこなければ入り婿の悲しさミネさんにひどい目にあわされます。
茂平は必死で山の中を歩きました。今までに何度も夜の山道を歩きましたが、その夜はまったくの闇夜でした。月の明かりも星の明かりもありません。シーンとしています。
茂平はただ一目散に山を越えようと足を速めます。その時です。

「吊ってけ~吊ってけ~~」

茂平の耳元でささやく声がしました。首を吊ってけと言っているのです。
ゾッと背筋が寒くなるような声です。
頭の中から聞こえてくるような気もします。
茂平は首をつらねばならないような気になってきました。
でも
茂平の頭の中に病気のおっかさんの顔がよぎりました。
「帰り道に必ず吊るから病気のおっかぁの顔だけおがませてけろ」
茂平は闇の中の声に頼みました。それでも「吊ってけ~吊ってけ~」と恐ろしい声は消えません。
茂平は振り切るようにおっかさんの家に向かって走り出しましたが、尚もその声は追いかけてきました。



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お散歩

おばあちゃんとトモちゃんは、
大泉緑地の藤棚の下のベンチに座っていました。
とても静かなところです。
「トモちゃん、おばあちゃんはね、百合子様、絶対生きていらっしゃると思うの」
まあばあちゃんは、ずっと百合子様の事気にしていたんだ。
「私は、どっちかっていうと亡くなっていると思うよ。」
「どうして?」
まあばあちゃんは悲しそうに聞きました。
「だって一家心中って、新聞に載ったんよ」
「ううん、そうじゃない。きっと生きておられると思う」
どうして、そんなに気になるの?
「同じ時代に、貴族様の家系に生まれた百合子様と貧しい山村の娘の私とでは大違いだけど、あの時代を生きたというと親しみを感じるんよ。厚かましいと思われるかも知れんけど…」
と、言った後で、
「おかしいね。おばあちゃん、変だねぇ」
まあばあちゃんはさびしく笑って言いました。
「ううん。そんな事ないよ。明日、エリちゃんにちゃんと聞いて来るから百合子様の事。おばあちゃん、だから、もう気にせんで」
ジロはベンチに座ったまあばあちゃんの膝に頭を乗せています。
トモちゃんとまあばあちゃんの話は耳に入ってるかな?


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母の日のまあばあちゃん


まあばあちゃんが目を覚ますと、

赤いカーネーションが2本、ベッドの横に置かれていました。
一つには、おかあちゃん、いつもありがとう!
もう一本には、大好きなおばあちゃんいつまでも元気でいてねって書かれていました。
そして、淡いベージュの糸に銀のラメの混ざった可愛い帽子が置かれていました。

「有り難う!二人とも」
まあばあちゃんは二つのカーネーションと帽子を抱いて涙を拭っていました。
「おはよう。おばあちゃん」
トモちゃんです。
「トモちゃん、これ有り難う」
まあばあちゃんはさっそく帽子をかぶってトモちゃんに見せました。
「似合う、似合う、おばあちゃん」
トモちゃんが、おばあちゃんに頬ずりして、おでこにチュッとしました。
小さな時は、肩たたきとかお掃除券とか、いっぱい作ってくれたわね。今年はこんな可愛い帽子を編んでくれて有り難う。トモちゃん。
まあばあちゃんはいつもまでもいつまでも感謝していました。



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ピアノの調べ

ある夜の事、学校からピアノの調べが流れてきました。
真理恵さんは耳を疑いましたが、確かに学校の方から聞こえてくるのです。

次の日、学校の近くに住む生徒たちにも聞こえたらしく、昨夜のピアノの話でもちきりでした。

学校の外まで聞こえてくるなんて事あるのかしら…
真理恵さんは音楽室に行ってみました。
誰もいない音楽室はシンとしています。
次の日もピアノの音は聞こえてきました。

音楽室に確かめてみたくなりましたが、
深夜の学校に行くのは怖いし、そもそも校門が閉まっているでしょう。
(それに…ユーレイが弾いているのかも?)
そう思ったら怖くなって、
布団をかぶってガタガタ震えながら眠ったそうです。

次の日も次の日もピアノの音は聞こえてきました。
もう駄目です。怖くて!
思い切ってお父さんとお母さんに相談しました。聞いてみるものですね。ピアノの音はお父さんたちにも聞こえていたんです。

音楽室の奇怪な出来事は先生方の間でも話題になっていました。問い合わせている親御さんもおいでだったようです。
真理恵さんの家は学校の近くにあったので、父兄代表としてお父さんが参加することになりました。
反対されましたが、真理恵さんも一緒に行きました。
百合子様の事がとても心配だったからです。
夜の学校は、シーンとしていて不気味です。
息を殺して隠れていると、ヒタヒタと足音が聞こえてきました。うすぼんやり見える人影は、

―――やはり、百合子様でした。―――

「今日はこれでおしまい」
「あら、どうして」
まあばあちゃんは百合子様のことが気になってしかたありません。
「ごめんね。おばあちゃん。この続きは月曜日、学校で絶対聞いてくるから」
百合子様の話は弾んでいたけれど、エリちゃんの家は学校の近く、トモちゃんは電車です。
トモちゃんちのお母さんたちは共働きです。家では、まあばあちゃんがひとりでトモちゃんの帰りを待っています。
だから、トモちゃんも続きが気になって仕方なかったけど、いつものように急いで家に帰って来ました。
でもまあばあちゃんがこんなに興味を持つのだったら、
百合子様の話を最後までちゃんと聞いて帰れば良かったなと反省するトモちゃんでした。


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百合子様

「音楽室のグランドピアノにはね」
トモちゃんが今日エリちゃんから聞いてきた話を始めました。
おばあちゃんもどんな話かと少し緊張しています。

そのピアノというのは大正時代、トモちゃんの学校が出来た頃に寄贈されました。
グランドピアノは今でも高価ですが、当時はもっと貴重で高価なものでした。
そのピアノは元子爵のお嬢様が入学した時に寄贈されました。

お嬢様は百合子様というお名前で、とてもピアノがお上手でした。
放課後、百合子様の弾くピアノの音色は本当に美しく女生徒たちの憧れでした。
皆に親切で優しく微笑んでいて、いつも女生徒達の輪の中心にいるのでした。
ご本人が望んだわけではないのに、女生徒達の中で特別な人となっていまいした。
廊下ですれ違うと誰もが会釈をして通りました。

エリちゃんのひいおばあさんと百合子様は同じクラスで、百合子様に憧れている女生徒の一人でした。
えりちゃんのひいおばあちゃんの名前は真理恵さんといいます。

百合子様は、
艶やかな黒髪美しく白い肌、バラ色の微笑、その微笑は天使のように愛らしくって学校中の人気者だったのです。

まあばあちゃんは目を輝かせて百合子様の話を聞いていました。

「それからしばらくして、百合子様のお父様が事業に失敗して破産してしまったの…」

―――その時から、
   百合子様は学校に来なくなってしまいました。
真理恵さんは、たまらずに百合子様のお屋敷に行ってみると、沢山の怖そうな人達が来ていて、遠くで見ている事しか出来ませんでした。
後で百合子様のあのお屋敷は人手に渡ったと聞きました。

ある日、新聞に借金苦で一家心中という記事が載りました。
百合子様のご家族のことでした。
真理恵さんは一日中泣いたそうです。




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まあばあちゃんと怪談話


トモちゃんが、学校から帰ってくると、
「今日、すごい怖い話を聞いてきたんよ!」
「怖い話って!?」
トモちゃんに怖い話と言われて、まあばちゃんはドキッとして聞き返しました。
「学校の帰りに、えりちゃんがうちの学校の怪談話を教えてくれたの!
それがすんごく怖いの!」
トモちゃんは思い出すだけでも怖いって顔で、ぷるっと体を震わせました。
えりちゃんは高校で同じクラスになったお友達です。
「どんなお話を聞いてきたの」
まあばあちゃんがトモちゃんに尋ねました。
「うちの学校古いでしょう」
トモちゃんの通っている高校は、
大正時代に建てられたもので、
今も、その当時の形をそのまま残している場所があちこちにあります。
昔はお嬢様学校と言われていて良いところの娘さんが通っていました。
まあばあちゃんも、いつかはこの学校に自分の子供か孫を通わせたいと願っていました。
だから、トモちゃんがまあばあちゃんの憧れていた高校に受かったと聞いたとき、
嬉しさに涙があふれて止まらなかったのです。
だから、まあばあちゃんはトモちゃんの学校の話を聞くのがなにより大好きです。

友達のこと、先生のこと等、なんでも・・・

トモちゃんが学校の話を聞かせてくれる時、
まあばあちゃんは自分も一緒にトモちゃんと高校に通っている気持ちになってきます。

一緒に勉強して、運動場で走って、
休み時間はトモちゃんと楽しく遊んでいる自分の姿を想像して嬉しそうにしています。

トモちゃんは、今日も学校から帰ってくると、
すぐにまあばあちゃんのそばに来て、友達のえりちゃんに聞いた学校の怪談話を話しはじめました。


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まあばあちゃんと就職活動の娘さん


まあばあちゃんとトモちゃんは、
二人でニュースを見ていました。
画面に就職活動をする娘さんが、インタビューされていました。

まあばあちゃんの娘時代って現在の日本と違って、
自由というものがなかなかなかったのです。
子どもは親の権力の下で、親の教えに従って生きていかなければならなかったのです。
まあばあちゃんの家もそうだったんです。
特にお父さんの力は絶大で、
お母さんが意見を言うなんて事は考えられません。
子どもを育てるのもそうです。
お母さんがちょっとだけ、子どもに対してこうして欲しいなと思っても、それは心の中にしまって、「はい、はい」ってお父さんの言うとおりに生きてきたのです。
「子どものためにこうしてほしい、ああしてあげたい」と思っても、
なかなか、まあばあちゃんのお母さんの希望はかなえられなかったんです。
だから、
まあばあちゃんは上の学校にはいっていません。
「女に勉強は必要ない」
お父さんにそう言われたからです。
でもそれはまあばあちゃんだけではありません。
まあばあちゃんのお友達も同じだったのです。
「本当は家が貧しくて、女の子を学校へ行かす余裕なんてなかったんよ。そういう時代だったのよ」
テレビの中の娘さんたちは希望に燃えて、「いい会社に入って、世の中に役立つ人になりたい」と爽やかな笑顔でインタビューに答えていました。
「今の若い人はいいねぇ、はきはきしていて」
と、まあばあちゃん。
「今は男女同権の時代よ。おばあちゃん、だけど、それなりに大変な事もいっぱいあるのよ。おばあちゃんの時代の大変さとは、また違うけど」
「でも、今は本当に良い世の中になったよ。女の子が思ったように、いっぱい勉強出来るんだから。勉強出来るって、とっても幸せなのよ。きっと、この女子学生さんは良い生き方をしていくと思うわ」
まあばあちゃんはくったくのない笑顔で、テレビで就職活動をする女子学生さんに「がんばってね」と心で応援していました。



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まあばあちゃんのお下げ髪


今日のまあばあちゃんは、ジロと一緒に散歩から帰って来ると、
縁側に昔の写真を出してきて、整理し始めました。
ガラス越しに当たる陽の光はとても暖かくて、
うつらうつらしてくる陽気です。
ジロもまあばあちゃんのそばで
ぐうぐういびきをかいて寝ています。
「おばあちゃんって、若い頃、すごくかわいかったんだ」
いつのまにか傍に来ていたトモちゃんが
覗き込むようにまあばあちゃんの写真を見ていました。
「お母さん。見てみて、おばあちゃんの若いときの写真よ」
お母さんも、トモちゃんの声に台所仕事の手を止めて走って来ました。
「ほらこれ、おばあちゃんよ」
「本当にきれいね。なんかこう、今の人とは違う初々しさがあって」
セペア色に染まった写真の中のまあばあちゃんは着物姿でした。
髪は綺麗に三つ編みにくくって、小さな巾着の袋を持っていました。
そして、写真の中から恥ずかしそうに笑って、こっちを向いていました。
「これ、おばあちゃんが始めて縫った着物を着たときに撮ってもらったのよ。17歳の時だったかしら」
「ねえ、誰に誰に」
トモちゃんが教えてってねだりましたが、
まあばあちゃんはニコニコ笑いながら、
ほんのりほっぺを赤くして、また、写真の中の遠い日の自分を見つめていました。


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まあばあちゃんの町の怖いお話


それはこうです。
お春ちゃんの家の近くに泥棒が入ったのです。
夫婦二人暮らしのおうちで、
どちらも80歳を越えた人達のところへ
泥棒が入ったというのです。
結局、何も盗られなかったそうですが、
とても怖い話です。
「こんな静かで良い町なのに、それで、おまわりさんたちが」
まあばあちゃんは、深くうなずいて、納得したように大きなため息をつきました。
「それで大丈夫だったの?お二人は怪我とかなかったの」
「それは大丈夫だったみたいよ。二人ともよく眠っていて、
泥棒に気づかなかったそうよ。
だけど、朝起きてびっくりしたんだって。
ほら、箪笥とか押入れが開いていて、そりゃあ、腰が抜けるほどびっくりしたらしいわよ」
「怖かったでしょうねぇ」
「そりゃ、そうよ。怖くて怖くて、こっちまでドキドキしてくるわ」
まあばあちゃんは、お春ちゃんと話していて改めてさっきのおまわりさんに感謝していました。
心から。


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お春ちゃんと立ち話

「どうしたの、まあちゃん」
振り返るとまあばあちゃんのお友達のお春ちゃんでした。
「パトカーが止まってたから、何かと思って、そうしたらまあちゃんがパトカーの人と話してるもんだから、慌てちゃって、何かあったの」
お春ちゃんが心配そうに聞きました。
「ううん、なにも。この紙ね、朝、ポストを見たら入っていたの、さっきのパトカーのおまわりさんが入れてくれたんだって。だから、有り難いなと思って御礼を言ってたの」
「そうだったの、その紙だったら、うちの家にも入っていたわよ」
お春ちゃんが、まあばあちゃんの持っている白い紙を見ていいました。
「私が眠っているときも、こうして町を守って下さっているんだと思うと、一言でもお礼を言わなくちゃと思って」
まあばあちゃんは、そっと白い紙を折りたたむと、シルバーカーの中に入っている小さなバッグに入れました。

「それ、何でだか分かる、まあちゃん」
お春ちゃんが、急に小声になって言いました。

まあばあちゃんは、いつもと違うお春ちゃんの様子に「どうかしたの」って、目で聞きました。まあばあちゃんとお春ちゃん。二人とも急に深刻になっています。
お春ちゃんは、まあばあちゃんにどんなお話をするのでしょうか。


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まあばあちゃんと警察官のお兄さん


まあばあちゃんはトモちゃんを見送った後、
ジロと一緒にいつものお散歩に出かけました。
シルバーカーを押して、ゆっくりゆっくり歩いていると、

向こうからパトカーが来て、
ちょうど、目の前の信号で止まりました。
まあばあちゃんは今朝のポストの白い紙に書かれていた事を思い出して、
パトカーに向かってペコペコと頭を下げました。
パトカーのおまわりさんはまあばあちゃんの様子に気付いて、
窓を開けると声をかけてきました。
「おはようございます。いつもお元気ですね」
30歳ぐらいの若くて爽やかなおまわりさんです。
まあばあちゃんは白い紙のお礼を言わなければとまごまごしていました。
「賢そうなわんちゃんですね。名前はなんていうのかな」
って、若いおまわりさんが尋ねました。
「ジロです」
まあばあちゃんがにこにこ笑って答えました。
ジロの事を褒められるととっても嬉しくなります。
まあばあちゃんは思い切ってたずねました。
「このはがき、私の家のポストに入れて下さったのは、おまわりさんたちですか」
若いおまわりさんは、まあばあちゃんがシルバーカーから大切そうに出してきた白い紙を見ると、
「これ、私たちです。昨夜この辺りをパトロールしたので」
「やっぱり、そうでしたか。お礼が言いたくて、本当に有難うございます」
まあばあちゃんは、パトカーの若い二人のおまわりさんに、丁寧に何度も頭を下げました、
「そんなにお礼を言われては困ります。これが私たちの仕事ですから。
よくジロちゃんとお散歩されている姿をみかけます。
気をつけて行って下さいね。
ジロ、しっかりおばあちゃんを守るんだよ」
おまわりさんが優しくジロに声をかけました。嬉しそうにしっぽを振るジロ。
「それでは失礼します、じゃあ」
そう言って、おまわりさんはパトカーを走らせていきました。



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Author:堺の町のまあばあちゃん
堺の町に住む、ひとりのおばあちゃんのお話です。
住み慣れた町の人々との交流や孫のトモちゃんや犬のジロとの生活を通して力強く生きていく姿を物語に書きたいと思います。 
宜しくお願いします。
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