山本美香さんの映像を見て




その日本人ジャーナリストは、山本美香さんという人でした。
テレビは山本美香さんがシリアで撮った映像を流しています。可愛い赤ちゃんや屈託なく笑う子供たち。戦争中で銃撃の跡が生々しく残る街中で日々の生活を送る人々。シリアの国に住む人達のありのままの姿を……。その中に溶け込んでにこやかに笑っている山本美香さんの姿もありました。
賢そうな目鼻立ちの整った美しい人です。機材を扱いながら、こちらに向かって話しかけている山本美香さんの姿はキリッとしていました。トモちゃんはもっと詳しいニュースはないかと、チャンネルを回しました。
どの放送局も山本美香さんの姿を映していました。
戦場の町の人々がバリケードを作っている映像が映し出されたまま静止状態なりました。画面からは何も聞こえてこなくなっても……。この後、悲しくて恐ろしいことが起きるのだということは分かりました。
まあばあちゃんとトモちゃんも、しばらく呆然としていました。
「―――戦争って本当に怖いのよ。」






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山本美香さん、どうか安らかに……



「まだ、お若くて美しい人なのに…」
まあばあちゃんは声を詰まらせていました。
「どうして、シリアなんて危ない国に行ちゃったんだろう。山本美香さん」
トモちゃんはポツリと言いました。
美香さんが取材中の一場面なのか……機材を扱いながら向けている笑顔は、化粧っ気なんてまるでないのに、とても綺麗で清々しいものでした。
「戦争って本当に怖いのよ。爆弾がそれこそ雨あられのように降ってきて……! 防空壕言うても安全ちゃうねんよ。あの大阪大空襲のときは、防空壕の中で折り重なる様に亡くなった人かていたんよ。蒸し焼きになったんやって聞いたわ。それでも、逃げるところ言うたら防空壕しかないんやから……。
おばあちゃんはね、大阪大空襲のとき逃げ遅れてしまって。あの時は、おばあちゃんのお母さんが高い熱を出してて、おばあちゃんはお母さんを背負って逃げたの。お母さんは大柄な人で、おばあちゃんは体が小さいから、背負うだけでも大変だった。それでも、空襲警報の鳴ってる中、背負って表に出たけど、もう、誰もいなかった。それでも、なんとか、防空壕に走って行ったけどもう閉まっていて。
おばあちゃん達は逃げ惑った。焼夷弾が前や後ろにドカンドカンと落ちてきて…。それでも、助けて欲しくて防空壕を探しまくったわ」
「おばあちゃん・・・・・」
まあばあちゃんのしょぼしょぼした目から涙がとめどなく流れていました。
「おばあちゃん、「開けてください」って一生懸命さけんだ?」
「言うたよ。それはもう、ほんまに必死で! 入口をバンバン必死に叩いて「開けてください…。開けてください……」って一生懸命、叫んだよ。でも、ドカンドカンと落ちてくる爆弾の音で、中にいる人達には聞こえへんかったんやと思う。自分の声も聞こえへんくらいやもんね。それから、お母さんと二人であっちこっちの防空壕を訪ねて…。やっと、入れてくれる防空壕があって、こうして、命を永らえる事ができたんよ。おばあちゃん今でもあの時の事は忘れない。心から感謝してしている。」
まあばあちゃんは両手をそっと合わせて祈りました。その手に涙がぽたぽたと落ちました。
「おばあちゃん、怖かったでしょう」
「うん、怖さと助けてもらった嬉しさとで、おばあちゃん、お母さんと一緒にわんわん泣いたのを覚えているわ」
「おばあちゃん、良かったね」
「本当に有り難かったわ。今でもあの時のあの人たちの顔は忘れない」
まあばあちゃんは、感謝の言葉を繰り返し言って、防空壕で助けてくれた人たちにそっと両手を合わせていました。
「あの時の空襲は夜中から始まって明け方まで……。怖かった。やっと、爆音が聞こえなくなって、みんなで外に出たら、―――焼けて何にもないの……。原っぱよ。家も何もないの……。あっちこっちで逃げ遅れた人が焼け死んでた…。小さな子供を背負っていた女の人。杖を持ったまま死んでいたおじいさん……」
そこで言葉をきると、少し小首を傾げてから、
「……でも、戦争って不思議ね。」
「……。」
トモちゃんはどう答えて良いか分からず黙っていました。
「今だったら、人の死体なんて見るのも怖いのに、あの時は必死で分からなくなってた。
家も何にもなくなって、着の身着のままで、いつもお腹がすいていて……。今日、食べれても、明日のお米がないんだもんね。生きるだけで精一杯だった。映画やテレビでは国と国との戦いなんだけど、おばあちゃんの戦争は自分との戦いだったように思う」
「……」
「おばあちゃんね、山本美香さんのような真っ直ぐな心のジャーナリストの人があの頃いてくれたら、大阪大空襲はあんなに酷くなかったんやないかと思うの。アメリカの人も一生懸命生活している、おばあちゃんたちの姿を知っていたら、もっと、違っていたかもしれない。力のない者にあんなにたくさん爆弾を落として行かなかったかもしれない、そんな風に思うの…。山本美香さんに、もっと生きていて欲しかったわ。そして、戦争の中で生きていかなければならない、弱い立場の人のことを伝えてほしかったわ」
まあばあちゃんは、そう言って、山本美香さんの冥福を祈っていました。

―――美香さん。どうか安らかに眠ってくださいね。
   そして、戦場で苦しむ町の人たちや子供たちを
   天国から見守って下さいますように―――




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堺の町のまあばあちゃん

Author:堺の町のまあばあちゃん
堺の町に住む、ひとりのおばあちゃんのお話です。
住み慣れた町の人々との交流や孫のトモちゃんや犬のジロとの生活を通して力強く生きていく姿を物語に書きたいと思います。 
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