おばあちゃんの怪談話



「ねっ、おばあちゃん、今度はおばあちゃんの知ってる怪談話教えてよ!」
「おばあちゃんの話なんて大したことないよ。」
まあばあちゃんは苦笑いして言いました。
「ね、お願い!おばあちゃん」
トモちゃんは怪談話がどうしても聞きたいらしく、一つでもいいからと粘ります。
まあばあちゃんはトモちゃんのお願いコールに負けて、こんな話を始めました。

まあばあちゃんのお母さんに聞いた話です。
それは昔々の事です。村に茂平という真面目で働き者のお百姓さんがいました。
茂平さんにはミネというお嫁さんがいたのですが、このお嫁さんは大飯ぐらいで昼間から暇さえあればグーグー寝ていました。茂平さんが入り婿なもんで、顎で使うしたたかさ、それでも茂平さんは文句も言わずに一生懸命働きました。
茂平さんには山一つ越えた村にお母さんがいました。この頃お母さんの体が芳しくないので心配でなりません。
だけど、ミネさんが怖くてお母さんの様子を見に行くことができません。


―――ある夜、ミネさんがすっかり寝入ったのを確かめると、抜き足差し足、息を止めて声を殺して静かに家を出ました。朝、ミネさんが起きるまでに帰ってこなければ入り婿の悲しさミネさんにひどい目にあわされます。
茂平は必死で山の中を歩きました。今までに何度も夜の山道を歩きましたが、その夜はまったくの闇夜でした。月の明かりも星の明かりもありません。シーンとしています。
茂平はただ一目散に山を越えようと足を速めます。その時です。

「吊ってけ~吊ってけ~~」

茂平の耳元でささやく声がしました。首を吊ってけと言っているのです。
ゾッと背筋が寒くなるような声です。
頭の中から聞こえてくるような気もします。
茂平は首をつらねばならないような気になってきました。
でも
茂平の頭の中に病気のおっかさんの顔がよぎりました。
「帰り道に必ず吊るから病気のおっかぁの顔だけおがませてけろ」
茂平は闇の中の声に頼みました。それでも「吊ってけ~吊ってけ~」と恐ろしい声は消えません。
茂平は振り切るようにおっかさんの家に向かって走り出しましたが、尚もその声は追いかけてきました。



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茂平と闇の声


「おっかぁに会わせてけろ。帰りに必ず首吊るから」
だんだん足がオモリをつけられたように重くなり、見えない何かに体が後ろへ引っ張られるようで、なかなか前に進みません。
「身代わり立てろ~ 身代わり立てろ~~」
「身代わりなんかいねえ。助けてくれー。お願げぇだー」
茂平は必死で逃げました。
もうどこをどう来たのか覚えていません。
やっとの思いで、おっかさんの家にたどり着きました。
茂平はガタガタ震えて歯の根があいません。おっかさんが何を聞いても、首を振るばかりでうつむいていましたが、
ようやく先ほどの恐ろしい出来事を話しました。
「それは怖い思いをしたねえ」
茂平のおっかさんは、せがれの背中をさすりながら言いました。
「おら、どうすればええだ…。おっかあ」



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小豆

茂平のおっかさんも良い考えが浮かばなくて途方に暮れていました。
ふと見ると、茂平の腰に巻いた風呂敷包みの破れ目から小豆と米がこぼれていました。
それに気づいたおっかさんは、
「茂平、ええもんもろうて来てくれたな!さっそく小豆ごはんにして食おう!!」
「え!」
茂平は目をキョトンとさせて
「おっかあ、こんな時によく落ち着いていられるなあ。おら、そんなモン喉を通らねえよ」
「こんな時だからだ!だから小豆を食うんだ」
「何言ってるんだ帰りには山で首を吊らなくちゃならねぇんだよ。おっかあの顔を見れるのもこれが最後なんだよ。ここにはもう来れねえ。わずかだがこの米と小豆はおっかあが食ってけろ」
茂平は涙を流して言いました。
「茂平や、私の事は大丈夫だから、今度ばかりはこの母の言う事を聞いて、小豆ごはんを食べておくれ」
と茂平のおっかさんは諭すように言いました。
「おら、帰りには死ぬんだ。死ぬモンに飯なんか食う必要はねぇだよ」
茂平はおっかさんの言う事をなかかな聞き入れません。
「なぜ、あの時、嫌だと言わなかったんだろう。なんで吊るなんて言ってしまったんだろう。おっかあには、おらしか身寄りがいないのに」
茂平は死んでいく自分の事より一人ぼっちになるおっかさんの事が心配でなりませんでした。
「おっかあ、おら今から行って、暗闇の化けモンに吊るのは嫌だと言ってくる!」
「だめだ!茂平行っちゃなんねぇ」
「いや、頼んでみるよ。分かってくれるかもしれねぇ」
「だめだ!だめだ!茂平、だめだ!!」
おっかさんは必死にすがりましたが、茂平は行ってくると言って聞きません。



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嫁のミネの怒髪天


「どうしてだ? おっかあ」
茂平は必死にすがるおっかさんの手を握って言いました。
「だめだ! 茂平、お前は吊るのを嫌だと言わなんだ。だから助かったんだよ。
お前も聞いたことがあるだろう?首を吊らにゃならんような理由なんぞないのに、吊っちまったっていう話。みんな不思議がっていたんじゃ。
きっとお前と同じ化けモンにあったんじゃ!今までの者は首を吊るのは嫌だと言ったんじゃ!」
茂平はおっかさんの話を聞いてゾッとしました。だけど帰り道に首を吊ると化けモンに約束してしまいました。茂平の来るのを今か今かと待ち構えているでしょう。
「茂平や、どうか、おっかあの言う事を聞いてこの小豆を食べておくれ。小豆には魔物を追い払う力があると聞いたことがある。おっかあも食べるから、どうかお前も食べておくれ。おっかあを安心させておくれ」
茂平はそれでも気が進みませんでしたが、おっかあの炊いてくれた小豆ごはんを一口頬張ると、あまりの美味さに化けモンとの約束も忘れて勢いよく食べ始めました。お腹がいっぱいになると緊張と疲れから茂平はグーグー眠ってしまいました。

その頃、茂平のいないことに気付いた嫁のミネさんは
「茂平、どこへ行った!!」
怒鳴りながら探し回っていました。
お米を量ってみれば
「五合たりない!茂平め!!」
小豆も少し減っているのが分かります。
「茂平のヤツ、大事な小豆と米を盗みやがって!!どこへ行った!!」
そう言っているミネですが、本当は茂平がどこへ行ったかは分かっていました。
「泥棒め!! 茂平のヤツ!! 覚えとれぇ!!!」
雨戸が震えるような大きな声で怒鳴ると、雷みたいな勢いで家を飛び出しました。
「茂平め、母親のところへ行ったに違いない!!!」
茂平のおっかさんの家へと続く道は真っ暗で急な坂道です。いくら気丈なミネさんでも女の足では大変でしょうに、怒り狂ったミネさんは茂平をとっちめることで頭がいっぱいで、山道なんて何のそのどんどん走っていきました。


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もみじ谷



夜も白み始めたころ、茂平はまだグーグー寝ていました。
「茂平や、もう明るくなってきた。早く起きて家へお帰り」
飛び起きた茂平の頭に昨夜の事がよみがえります。
今から元来た道を戻らねばなりません。ここへ来るまでは一本道なのです。あの化け物のいた道をどうしても通ることになります。
今から約束通り首を吊りに行かねばなりません。
茂平の体はガタガタ震えています。これから起こることを考えると怖くて怖くてたまりません。
「おっかあ、永の別れだ。達者でいてくれよ」
涙声で言うとおっかさんの小さな体を抱きしめてから山の方へ向かいました。
おっかさんは茂平の背中に手を合わせて祈りました。
夜の明けた山を茂平は必死に上りました。きつい坂を上りきると今度はもみじ谷へ向かう急な下り坂です。そうあの化け物と出会った所です。
「たとえ化け物でも約束は約束だ。」
茂平は自分に言い聞かせ、坂を下りて行きました。

とうとう、約束の場所についてしまいました。怖くて膝が震えます。
「首吊りに来たぞぉぉぉ」
茂平は必死に声を張り上げて言いました。
「出てきてくれぇぇぇ」

化け物は現れませんでした。茂平の谷間に響くこだまと鳥のさえずりが聞こえるばかりです。
なんだか全然怖くなくなってきました。しばらくそこにいましたが、あの化け物は現れませんでした。
茂平は思い切ってミネのいる我が家に帰ることにしました。
でも今度は嫁のミネが怒っていると思うと胃のあたりが気持ち悪くなってきました。怒鳴り散らすかと思えばネチネチした嫌味を言うのですが、その時間の長い事と言ったら! けれど、それに耐えねばなりません。茂平の心は真っ暗です。


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ミネがいない



家に着くと雨戸が閉まったままです。まだ寝ているのでしょうか?
「ミネやーい。今帰ったど」
茂平は家に向かって声をかけてみました。シーンとして物音ひとつしません。いつもならバタバタ走ってきて茂平に当たり散らすはずです。茂平は恐る恐る家に入ってみました。
「ミネやーい」
もう一度声をかけてみました。やっぱり返事はありません。
「どこへ行ったんだろ?」
茂平は見当がつきません。村のあちこち探してみても誰も知らないと言います。仕方がないので家に戻ってきました。
そこで茂平はあっと気が付きました。
納屋へ行ってみると、扉が開けっ放しになっていました。
中へ入ると小豆や米、他の入れ物も開けっ放しになっていました。小豆はまき散らされていました。
「ああ、おらの家に行っただな。」
茂平はため息つきました。
「ん? おかしいな。どこでいきちがったんだ?」
この家からおっかさんの家まで一本道。必ずどこかで出会うはずなのに「おかしいあ」と茂平は首をひねるばかりです。
しかしそうもしておれません。茂平は再び山へミネを探しに行かねばなりません。今度はどんな声も聞こえないように耳栓をしてそれにおっかの言うように小豆が魔除けになるのならと、ミネがまき散らした小豆を拾って風呂敷に入れました。まだ昼前です。山は明るく、お日様もさんさんと木の間から降り注いでいます。今度吊ってけと言われたら勘弁してけろと断ろう。
「よし!行くぞ」気合いを入れたところへ村の若者がやってきて、
「おめぇんとこの嫁っこがもみじ谷で首吊って死んでんぞ!!」
「ええ!!」
茂平は驚いて固まってしまいました。



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おミネの墓


(まさか!!!)
茂平の脳裏に暗闇の化け物の事が浮かびました。
(うんにゃ、あの声はおらに吊れと行ってただ。
だども、身代わり立てろとも言ってなかったけ? まさか…ミネが…)
茂平が呆然としている間に噂を聞きつけた村の衆が集まってきました。
「茂平さんや、今からお前の嫁さんを引き取りに行こう…。ほら、皆もこの通り集まってきておる。」
「…よろしくお願ぇします。」
茂平は深々と頭を下げました。
茂平はミネが死んだことで不思議と涙は出ませんでした。
それより早く谷から出してやって成仏させてやろうという気持ちの方が勝っていました。
「早くミネを家に連れて帰りたいと思います。」
「茂平さん、もみじ谷で死んだ者を村に入れることは出来んのじゃよ」
「えっ? そんな…」
古くからの風習で、もみじ谷で死んだ者は村に入れてはならぬとのことでした。
そのため村の墓には入れず、山の中の墓場に埋葬します。
茂平のようにこの村からもみじ谷を通って行くものは少ないので、茂平の知らぬのも無理のない事でした。
しかし不思議なことにもみじ谷で誰かが死ぬと、不思議と見つける者がいるのです。
「茂平さんが小さい頃におった村では何人も亡くなっておるんじゃよ。そこでもそうしているはずじゃ」
そう茂平は十歳の時、病気のおとうの薬代の為に借りた金を返すとことが出来ず、ミネの家に働き手として連れてこられました。茂平は素直でよく働くので、気ばかり強く貰い手のないミネを持て余したミネの父親が茂平に婿入りをとすすめました。
「すまぬな。茂平さん、堪えておくれ」
茂平は言葉にすることが出来ず、小さく頷きました。


ミネの亡骸それは無残なものでした。藤の蔓がしっかりとミネの首に巻きつき大きな岩の間でブラブラ揺れていました。
「早く降ろさねぇと、カラスに食われるど!」
と誰かが言いました。
山の中の墓というのは、日の当たらない場所にありました。今まで死んで往った人の墓標なのか小さな石があちこちに置かれていました。

生きているときは怖いばかりのミネでしたが、いなくなるなんて考えたこともなかったので、ぽっかり穴が開いたような何とも言いようのない気持ちでした。
「自分の家の墓にも入れず、どんなに寂しかろ…」
茂平はミネが成仏できるよう心から祈りました。
「嫁さんの事は、もう忘れろ。それが、茂平さんのために一番ええだ。」
村の衆が口々に茂平を慰めてくれました。
茂平は嫁のミネが死んだ後も朝早く起きて田畑を耕し、夜は藁を打ち、ムシロや藁草履を作っていました。四十九日が過ぎた頃ちょうど稲刈りが終わり、田んぼの仕事も一段落して茂平はミネの眠るもみじ谷へと向かいました。
体の弱いおっかさんを引き取って一緒に暮らすため、ミネの許しを請いに行くのです。小さく織ったむしろを背中に背負って、今年の新米で作ったおにぎりを小さく握って行きました。米は年貢でほとんど手元に残らないのでこれが精一杯でした。
もみじ谷はその名の通り真っ赤に色づいて言葉では語りつくせないほどの美しさでした。茂平は今から寒くなるだろうと墓の一つ一つにムシロをかけて、小さなおにぎりを置いていきました。自分は白いお米のごはんなんか滅多に食べたことないのに。茂平はミネの墓に手を合わせるとおっかさんを迎えに行くため、静かにもみじ谷を後にしました。



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おっかあ と もみじ谷

「おっかあ、迎えに来たぞ。おらと一緒に暮らそう」
茂平はそう言うとおっかあの家を片付け始めました。
「だめだ。おら行けねぇ。お前が生まれ、おとうの死んだこの家で死ぬとおっかあは決めたんだ。だから茂平、お前がおっかあを気にすることはねぇんだぞ。お前はお前の事を考えて生きて行け。おっかあは…おっかあ…は、お前をミネさんのお父に売ったんだぞ。」
「それは違うぞ! おっかあ! あれは、おとうの薬代に借りんたんだろ。それにおっかあは金を返そうと死にもの狂いで頑張ってくれたこと…おら、ちゃんと分かってる。売ってなんていねぇ!」
「茂平…」

茂平が生まれ間もなく、おとうの小助は重い病にかかり、おっかあが小助に代わって村の寄合から決められた山の仕事に出ていました。
〝お上″という偉い人から、それぞれの村に近い山の枝払いや下草刈り、そして山道を作るように仕事を与えられていました。
おっかさんも男衆に交じって辛い山仕事に耐えてきました。体がバラバラになりそうな本当に辛い仕事です。

ある日、いつものように山の下草刈りをしていました。その日は切り立った崖が多くなかなか仕事がはかどりませんでした。気が付くともう薄暗がりでした。周りで一緒に仕事をしていたはずの男衆がいつの間にかいなくなっていました。おっかあは山の中に一人放って置かれたのです。すぐに山を下りようと片づけましたが、もう真っ暗闇になってしまいました。山の中ではあっという間に陽が落ちるのです。その上この日は新月で月明かりもありませんでした。

「吊ってけ~吊ってけ~~」
風がざわざわして暗闇の中から声が聞こえてきました。でもおっかさんは気丈でした。
「わたしには生まれたばかりの子がおりますだ。それは無理な話ですじゃ。」
ときっぱり断りました。けれど恐ろしい声はおっかさんの周りをぐるぐる回ります。何とか山を下りたいけれど、この暗闇では右も左もわかりません。赤ん坊の茂平の事が気がかりでしたが、この化け物を退ける術が分かりません。
おっかさんは恐ろしい声が聞こえないように耳を両手でしっかり塞ぎましたが、それでも聞こえてくるのです。
「吊ってけ~吊ってけ~~」
おっかさんに、いつまでもいつまでも言い続けました。


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おっかあ と 二十文


ようやく夜が白み始めた頃、その声がゆっくり遠ざかっていきました。
おっかさんはゆっくり恐る恐る鎌を取ると下草を刈りはじめました。疲れていましたが、恐ろしいのを忘れたいのと茂平のもとへ戻りたい一心で必死に下草を刈りました。
(早く終わらせて茂平の所へ帰らねば)
それだけを思って仕事に精を出していました。村の男衆が来たころにはおっかさんの今日の分は済んでいました。
「昨日は、本当にすまんかったな。わしら帰るのに夢中でお前さんの事をすっかり忘れてしまって。なにせ、この辺は夜は不気味だで…。ほんに申し訳ないことをした。勘弁してくれ。この通りだ。」
山の仕事を束ねている人が心から謝ってくれたので茂平のおっかさんは本当に嬉しかった。意地悪で山に残さたと思っていただけに本当に嬉しかった。
「一晩中、山にいて疲れたじゃろう。今日の分の仕事はしてもらったから早く帰ってゆっくりしてけろ」
「有り難うございます。」
そう言うなり、おっかさんは必死で茂平の元へ走りました。
お腹を空かして泣く茂平を抱きしめて出ない乳房を手繰り寄せ、絞るようにお乳を飲ませました。
「茂平、茂平」
おっかさんは自分の胸の中で眠るやわらかくて暖かな息子の名を呼んで我が子を抱きしめる喜びを噛み締めした。それからもおっかさんのつらい日々は続きましたが茂平が十歳の時、二十文のお金が返せず茂平はおミネのお父に売られていきました。
しばらくして小助が死に、おっかさんは一人になってしまいました。
その後、村の衆の畑の手伝いやら藁づくりの仕事をもらい、おっかあは何とか二十文のお金をつくろうと無我夢中で頑張りましたが、わずかばかりの手間賃ではなかなかお金がたまりませんでした。それでも、おっかさんはようよう二十文貯めて茂平を取り返そうと山を越えてミネの家に行きました。


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 おっかあ と ミネの母


お金を返しに行った茂平のおっかさんは、届けに行った二十文を投げつけられました。
「今頃、何しに来たんだい!! なんだい! これぽっちじゃ利息にもならないじゃないか!」
利息の約束なんてありませんでした。遅くなったのだから当たり前かもしれませんが…ミネの母親はそう言っておっかさんを殴ったり蹴ったりしました。その上冷たい水を頭からぶっかけました。
ミネさんもきつい人でしたが、ミネさんの母親は輪をかけてひどい人でした。
「二度と来るんじゃないよ!! それぽっちじゃ、大事な働き手を渡すわけにゃいかねぇ!」
おっかさんは返す言葉もなく、持ってきた二十文のお金を丁寧に拾って、ずぶ濡れのまま山を越えて帰って行きました。魂が抜けたようになったおっかさんは、いつのまにか、崖の先っぽに立っていました。村へ帰る一本道とは別にもみじ谷へ真っ逆さまの断崖へ続く道があります。人が一人通れるくらいの普段は草むらに隠れて分からない獣道があります。
もう茂平を取り戻す手立ても希望もなく、生きる目的を無くしたおっかさんは、ここから身を投げようと思ったのです。でも、おっかさんは踏みとどまりました。茂平を一人ぼっちにさせられないと思ったのです。


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堺の町のまあばあちゃん

Author:堺の町のまあばあちゃん
堺の町に住む、ひとりのおばあちゃんのお話です。
住み慣れた町の人々との交流や孫のトモちゃんや犬のジロとの生活を通して力強く生きていく姿を物語に書きたいと思います。 
宜しくお願いします。
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