お春ちゃんの娘さん―邦ちゃん


ご近所で、ご不幸が会ったので、まあばあちゃんはジロとミミちゃんに、お留守番を頼んで駅前のスーパーにお香典袋を買いに出掛けました。
まあばあちゃんは絶対にお香典袋を買い置きしません。ご不幸があればその都度、駅前のスーパーにお香典袋を買いに行きます。
もう、夕暮れだというのにシルバーカーを押してまあばあちゃんが歩いています。お祝い袋なら山ほど買って、専用の引き出しに入れてあるのに、本当に大変です。
お香典袋を買って、
トモちゃんのためにおいしいお菓子も買って、
お利口なジロとイタズラっ子のミミちゃんの待ってるお家へと急ぎます。

(あっ! 邦ちゃんだわ)
帰り道、少し先を歩いているお春ちゃんの娘さんの邦ちゃんに気付きました。
邦ちゃんは小さい時の病気が元で少し耳が不自由になり、自転車に乗れません。最近は膝も良くありません。
右手でパンパンになった買い物カートの上にトイレットペーパーを乗せて、
左手には、はち切れそうなくらいに入れたスーパーの大袋を持っています。
まあばあちゃんは、荷物持ちのお手伝いをしようと思いました。まあばあちゃんのシルバーカーに荷物を乗せてあげようと思ったのです。
邦ちゃんを大きな声で呼び止めようと 息を吸い込みました。

“ププ~プ~プウ”

突然、クラクションの音がしました。
まあばあちゃんはビックリして振り返りました。
すると、お店の明かりに車中が映し出されていました。
邦ちゃんのご主人と女の人です。
前髪が長くて目はよく見えませんでしたが、
薄い唇でニヤーッと笑って、沢山の荷物を持って大変そうな邦ちゃんを見ていました。
まあばあちゃんはゾクッとしました。
今までいろんな人を見てきましたが、あんなおぞましい笑い顔は見たことがありませんでした。

ご主人の車は、邦ちゃんを乗せずに走り去って行きました。

まあばあちゃんには、
何故、ご主人は、自分の奥さんである邦ちゃんを車に乗せずに行ってしまったのか、
何故、邦ちゃんのご主人は助手席にあんな薄気味悪い女の人を乗せているのか理解できませんでした。

邦ちゃんは、薄暗がりの中、山ほどの荷物を抱えたまま呆然と立ち尽くしていました。


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見てはいけないもの……


まあばあちゃんは、後ろめたい気持ちでいっぱいでした。
邦ちゃんにとって誰にも見られたくない姿のはずです。

力なく肩を落として、まあばあちゃんの少し前を歩いていく邦ちゃん。
泣いているのでしょう……細い肩が小さく震えています。
でも、両手に重い荷物を持っていて、涙を拭くこともできません……
あの助手席に座っていた女の人は、いったい誰なのでしょう。
まあばあちゃんは、嫌な胸騒ぎがして心配でなりませんでした。

沢山の荷物を持ってあげたいと思いましたが、
でも、今声をかけたら、
さっきの様子を見ていたことを邦ちゃんに気付かれてしまうでしょう。
見られていたなんて知ったら、さらに酷く傷ついてしまいます。
邦ちゃんの後をゆっくりと距離を置いて、重い心でシルバーカーを押して歩きます。
よくないことが起こっていなければ良いけれど……

助手席に座って、邦ちゃんを嘲るように笑って見ていたあの薄気味悪い女の人。
それを呆然と見ていた痛々しい邦ちゃんの姿。
まあばあちゃんの脳裏に焼き付いてはなれません。
そして、むごいことに、邦ちゃんは、
ご主人と、あの薄気味悪い女の人が自動車で先に着いている家に、帰って行かねばなりません。
本当に気がかりです。
(邦ちゃん、今どんな気持ちで歩いているの……)
まあばあちゃんは、今すぐにでも抱きしめて慰めてあげたいのに、そうする事さえできない無力な自分を責めました。


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あの人は誰


今朝は一段と冷え込みます。
まあばあちゃんの心の中まで凍えそうな冷たい風が吹いてます。
昨夕の邦ちゃんのことで、まあばあちゃんの心はとても重苦しいです。
(今日は、お春ちゃんのお家の前を通りたくない……どうしよう道を変えようかしら……)
昨日の邦ちゃんの姿は気の毒すぎて……、お家の前を通っていて、お春ちゃんか邦ちゃんに出会ったら、いつも通りに振る舞える自信がありませんでした。
(今日はこの角を曲がろう……。ごめんね。お春ちゃん)
「あら!」
まあばあちゃんはビックリしました。
お春ちゃんが、まあばあちゃんに手を振っています。
もう道を変えることは出来ません。

もし、お春ちゃんがあの女の人の話をしなかったら、いつも通りに振る舞おう!
もしも、相談されたら、しっかり受け止めよう!!
まあばあちゃんはそう心に決めました。

邦ちゃんはとっても心の優しい娘さんです。
明るくて、優しくて、シャキシャキよく働く本当にいい娘さんです。
すこし耳が聞こえにくいため、邦ちゃんは他の人より大きな声ではっきり話してくれます。それをまあばあちゃんは、とても有難く思っていました。
体が弱くて入退院を繰り返しているお春ちゃんは、どれだけ邦ちゃんに助けられていることか……それはどれだけ感謝してもしきれないほど有難いものです。
「まあちゃん、待ってたの。ねえ、ちょっといつもの公園に行かない?」
まあばあちゃんは、お春ちゃんに誘われるまま公園に向かいました。ジロとミミちゃんも一緒です。いつもと違うふたりの雰囲気にとても心配そうです。
「まあちゃん、昨日、うちの子に出会ったでしょう。」
(邦ちゃん、知っていたの……)
まあばあちゃんは、あの場に居たことを申し分けなく思いました。
女の人を助手席に座らせたご主人に、自分は置いてけぼりをされるなんて、
そんな場面を見られるなんて、
邦ちゃんはきっと恥ずかしい思いをしたに違いありません。
(ごめんね。邦ちゃん)
まあばあちゃんは涙が滲んできました。
「邦子がね、まあちゃんのこと、嬉しかったって言ってたわ。」
「えっ?」
「まあちゃんが、ずっと邦子の後をゆっくりついて来てくれてたこと嬉しかったって。ほんとに有難う。」
「そんな……」
まあばあちゃんは言いかけて言葉を飲み込みました。

―――そんな筈はない。あんな辛い思いをしているのに。
〝嬉しい″なんて言葉が出るはずがない―――

まあばあちゃんの脳裏に、
クラクションの音。
照らし出された車中の二人。
邦ちゃんを見ながら薄ら笑い浮かべていた、あの薄気味悪い女の人の顔がよみがえってきました。

「お春ちゃん、昨日のあの女の人はいったいどなたなの……」
まあばあちゃんは、思い切って聞くことにしました。


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お春ちゃん、しっかりして……



「あの女の人は、昭雄の仕事を手伝っている人なの。」
昭雄さんとは、邦ちゃんのご主人の事です。
「仕事? 去年、定年退職なさったと聞いたけど、何か新しいお仕事を始められたの?」
まあばあちゃんは、ためらいがちに聞きました。
「そうなのよ。コンピューターの仕事をするらしいのよ。」
お春ちゃんは、なんだか誇らしげです。
まあばあちゃんは、お春ちゃんの様子に肩透かしを受けた気持ちになりました。
昭雄さんが邦ちゃんを置いてけぼりにした事を気にしてないようです。
まあばあちゃんは、お春ちゃんの様子にもどかしさを感じました。
「わたしね、お春ちゃん、昭雄さんが女の人を乗せているので、飛び上がるほどビックリしてしまったの。まさか、仕事を手伝っている人だと思わなかったから、……どういうご関係なのかなって……」
まあばあちゃんは、お春ちゃんに少し、いいえ、とても腹が立ってきました。
(邦ちゃんがどんなに悲しい思いをしているか、お春ちゃん少しも気づいてないの?)
「お春ちゃん、昭雄さんのその仕事はいつ頃から?」
「さあ、いつ頃だったかしら。そうねぇ……、定年退職後、すぐだったかしら……」
「そう。」
お春ちゃんのさっきの話し方だと、
置いてけぼりにされたことは分かっているはずなのに、邦ちゃんの悲しい心はまったく伝わっていないようです。
まあばあちゃんは、邦ちゃんの心を思うと、やりきれない気持ちでした。
「成功したら、すごく儲かる仕事らしいのよ。だから、いろいろ大変よ。邦子も。」
自慢の息子が大きな仕事を始めるので、お春ちゃんは張り切っているようです。
まあばあちゃんは、それよりも邦ちゃんの事が気がかりでした。
「昨日、邦ちゃんに声をかけられなくて、ゴメンね。たくさんの荷物で重そうだったのに。
……いつもあの時間にお買い物してるの?」
「いつもあのくらいよ。あれは手伝いに来てる人の夕食の買い物帰りだったの。毎日お土産もいるから大変なのよ。」
「あの薄気味……、女の人の?」
(何ですって! 邦ちゃんはあの薄気味悪い女の人の為に夕食を作っていたの!? 
自分の言ってること分かっているの? お春ちゃん、しっかりして……)
まあばあちゃんは、お春ちゃんとお話しているのが居たたまれなくなってきました。


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温度差



「もう少しで、完成するらしいのよ。そうしたらうちの家も楽になるわ。今はちょっと大変だけどね。あの女の人に毎月7万円渡さないといけないから。まあ、そう言っているうちにお金がいっぱい入ってくるから、心配いらないわ。」
「まあ、7万円も払っているの。大きなお金ね。」
「そんなの大したことないわ。私の年金があるし。仕事が成功したら、何億円も入ってくるのよ。だから7万円くらいどうってことないの。」
「年金でお給金払ってるの!?」
「ええ、そうよ。コンピューターやらプリン…デス…なんとか、とにかく何やら物入りで私も協力しているの」
お春ちゃんは、嬉しくて笑いが止まらないって顔で言いました。
「それまで、邦ちゃんはその人のご飯を作り続けるの?」
と、まあばあちゃんは聞きました。
「当たり前よ。それぐらい普通でしょ。仕事終わってから、わざわざ来てくれてるんだもの。ありがたいわ」
「どんな仕事なさってる人なの?」
「よく分からないの……」
お春ちゃんは少し言いよどみました。」
「分からないの!?」
まあばあちゃんはビックリして、思わず大きな声になりました。
「でも、なんでも出来るすごい人なんですって!」
まあばあちゃんは次の言葉が出ませんでした。
(何してるか分からないような人を家に入れて、邦ちゃんにあの仕打ち。どうなってるの?)
「お春ちゃん。お春ちゃんは邦ちゃんのこと可哀想だと思わないの。」
「なんで可哀想なの。もうすぐジャンジャンお金が入ってくるのよ。そうなれば邦子も左うちわじゃない。」
まあばあちゃんに難しい事は分かりません。
でも、
ご主人の奥さんを目の前にして頭の一つも下げられない人に、まともな仕事が出来るとは思えませんでした。
それにあの薄ら笑いの薄気味悪い顔つきは、今思い出してもゾッとします。

どうして、お春ちゃんは何も感じないのでしょうか?
どうして、邦ちゃんの気持ちを分かってくれないのでしょうか。
まあばあちゃんは、お春ちゃんに温度差を感じました。

どうしちゃったの……お春ちゃん。お金お金って。
そりゃお金は、とても大事だけど、
邦ちゃんをあんなにひどい目に合わせてまで必要なの?
慎ましく暮らしてれば、年金と退職金があれば十分じゃないの?
ほくほく顔のお春ちゃんを見て、まあばあちゃんの胸がキュッと痛くなりました。


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邦ちゃんのこと


まあばあちゃんは、邦ちゃんのことを思い浮かべていました。
ずいぶん前から、まあばあちゃんは邦ちゃんのことを知っています。
邦ちゃんは、お春ちゃんの一番上の娘さんです。10年ほど前にお春ちゃんのお隣の家が売りに出されたので、邦ちゃん夫婦がその家を買い取って住むことになったのです。そのときのお春ちゃんの喜びようたらありませんでした。
「娘夫婦が、隣に来る。」 
と、会う人会う人に嬉しそうに言っていました。
その上、邦ちゃんのご主人の昭雄さんはとってもハンサムで礼儀正しくて優しそうな人です。お春ちゃんは、昭雄さんのことをいつも自慢していました。昭雄さんはお春ちゃんを大事にしてくれるのでしょうね。
お春ちゃんは、いつの間にか昭雄さんのことを、
「うちの息子。」
と、言うようになりました。
まあばあちゃんは、その頃、毎日のように、
「うちの息子。うちの息子。」
という、お春ちゃんの話を聞かされていました。
まあばあちゃんは、そのときの幸せそうなお春ちゃんの顔を今でもよく覚えています。
それに、邦ちゃんはとってもいい娘さんでした。
朝、会社に出掛けるご主人の車を見えなくなるまで見送っている姿をよく見かけました。
お春ちゃんもお春ちゃんのご主人も体が弱かったので、邦ちゃんは、親のお春ちゃん夫婦の為に、ご飯を作ったり、お洗濯をしたり、病院の付き添いにも必ず付いて行ってました。お春ちゃんの家の庭がお手入れの行き届いた庭に生まれ変わったのも、邦ちゃんが引っ越して来てからでした。
(なかなか、親の世話をここまで出来る娘さんは滅多にいないわ。)
まあばあちゃんは、いつも、邦ちゃんのことを感心して見ていました。
まあばあちゃんに会うたびニコニコして
「いつも、母がお世話になってます。」
と、挨拶してくれます。まあばあちゃんも邦ちゃんに会えるのが嬉しい日課の一つになっていました。
邦ちゃん夫婦には子供が恵まれませんでしたが、
夫婦仲が良くて、よくお春ちゃん夫婦と一緒に旅行に行っては、まあばあちゃんにまでお土産を買ってきてくれました。
お春ちゃんのご主人が倒れたときは、おろおろするお春ちゃんを気遣いながら、シャキシャキとよく面倒を見ていました。
そのあと、寝たきりになった父親の介護をかいがいしく見ていたのも邦ちゃんです。
本当に、邦ちゃんは良い娘さんです。
それだけに、まあばあちゃんは、邦ちゃんが辛い目あっているのではと気がかりでなりませんでした。


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寒い朝



「ちょっと! まあちゃん、聞いてるの?」
お春ちゃんの声にハッと我に返りました。
「ああ、ごめんね。お春ちゃんのお話、むずかしくて……」
「そうなのよ。最初は、私もなかなか分からなかったのよ。」
と、得意げに言いました。それからもお春ちゃんのお話は止まりません。
なんでも、昭雄さんは〝特許″と言うのを取ってから、その仕事を始めるそうです。
それを取るのは大変難しく、
そのために、あの女の人が必要らしいのですが……
まあばあちゃんは、お春ちゃんの話を聞くのが息苦しくなってきました。
「お春ちゃん、私、少し寒くなってきたから、おいとまするわね。」
「ほんとね、少し寒いわね。明日も待ってるわ。まあちゃんに聞いてもらうの楽しいから。」
お春ちゃんは満面の笑みで言いましたが、まあばあちゃんは少しも楽しくありません。正直に言えばもう聞きたくありませんでした。
まあばあちゃんは、沈んだ気持ちで、お春ちゃんと別れました。

邦ちゃんのことはとても心配ですが、
今の浮かれているお春ちゃんに何を言っても、
ヌカに釘です。
(どうすればいいの……?)
暗い気持ちのまま、まあばあちゃんは、ジロとミミちゃんを連れてお家に帰ってきました。
「おばあちゃん、お帰りなさい。」
しょんぼり帰ってきたまあばあちゃんを、パタパタと制服姿のままトモちゃんが出迎えてくれました。
「おばあちゃん、杉野さんちのおばあちゃんと公園でお話ししてたでしょう。駄目やよ。あんな寒い所で座ってたら……」
トモちゃんはそう言いながら、ジロとミミちゃんの足を洗っています。
「おかあちゃん、熱いお茶入れたから早く温まって。」
「有難う。」
まあばあちゃんは、とても嬉しかったです。
「あら、お父さんは?」
お父さんのいないことに気付いて、まあばあちゃんがたずねました。
「ああ、お父さん? お父さんは今日、取引先の人と会うので、私は遅れて仕事に行くことにしたんよ」
―――本当は違います。
よいお天気とはいえ、まだまだ寒い朝に冷たいベンチに腰かけて、
楽しそうに話しているお春ちゃんと、その話を暗い顔で聞いてるまあばあちゃん……
仕事へ行く途中、トラックですぐそばを通りがかったお父さんとお母さんは、二人の様子を見ていて心配になり、今日はお父さん一人で仕事に行くことにしたのです。
「おばあちゃん、おかあちゃん。行ってきま~す。ジロ、ミミちゃん。おばあちゃんを御願いね。」
「行ってらっしゃい! しっかり頑張って!」
と、お母さん。
「トモちゃん、行ってらっしゃい。車に気を付けてね」
と、まあばあちゃん。
元気のいいトモちゃんの声とおかあさんの声を聞きながら、まあばあちゃんはコタツに入って冷えた体を温めています。
ジロとミミちゃんも寒かったのか、コタツに潜り込みました。場所取りをしているらしく、狭いこたつの中でジタバタしています。
熱いお茶をフウフウしていると、少しずつホンワカした気持ちになってきました。


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特許の専門家?


「ねっ、おかあちゃん。今、邦ちゃんの家に変な女の人が来てるの知ってる?」
(恭子ちゃんは知っていたの? お春ちゃんのお家の事。)
恭子ちゃんはトモちゃんのお母さんです。
まあばあちゃんは、恭子ちゃんの言葉に驚きました。まあばあちゃんは昨日まで全然知りませんでした。
「前髪の長い女の人?」
「そうよ。なんかずっと下を向いてるの。親戚の人かなっと思って、こっちが頭を下げても知らんぷりよ。あんな礼儀知らずな人とお付き合いしていて大丈夫かなって……」
間違いありません。まあばあちゃんが見たあの女の人です。
「どこで見たの?」
「邦ちゃんの家の前で。うつむいてジーッっとしてるから、何してるのかと薄気味悪くて見ていたら、口紅塗ってたんよ。 それもいつまでも塗ってるの。どんだけ広い口やねんって感じよ。しばらくしたら邦ちゃんが出てきたんだけど、邦ちゃんにも知らん顔してジーッとしてるの。邦ちゃんはなんでか、あの女の人に不自然なぐらいペコペコしてるし……。とにかくおかしいわ」
恭子ちゃんも、あの女の人に良い印象を持ってないみたいです。
「その女の人、毎日来るらしくて、邦ちゃんはあの人のために、毎日夕食を作ってお土産を渡してるんですって。」
「え~っ!! 毎日? なんでそんなことするの?」
「ご主人が特許というのを取るために、あの人が必要で、月7万円で雇ってるんだって。」
「へぇ、7万!? 特許?」
「そういうことに詳しい人らしくて……」
「特許って……」
恭子ちゃんは、訳が分からないという顔をしました。
「おかあちゃん。特許っていうのは弁理士さんに頼むのが普通よ。何かその話、おかしいよ。あの人、資格持ってるの?」
「弁理士?」
「そうよ。特許の専門家よ。国家資格よ!」
まあばあちゃんの頭は混乱してきました。聞いたことのない言葉ばかりで。
でも、国家資格なんて持ってたら、お春ちゃんはきっと話していたはずです。
「お春ちゃんは、弁理士って話は全然しなかったわ。なんでも出来るすごい人って…、そればかり繰り返してて……」
「お春おばちゃんの性格からして、知ってたら絶対言うと思うけどなぁ……」
「そうよねぇ……。あっ……」
まあばあちゃんは、お春ちゃんの言ってたことを思い出しました。
「どうしたの? お母ちゃん」
「女の人のお仕事の話が出た時、お春ちゃん、よく分からないって言ってたわ……」
まあばあちゃんは騙されているのではと、また心配になってきました。


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おかしいよ



「弁理士さんて何するの?」
まあばあちゃんがたずねました。
「おかあちゃんが、何か発明したとするでしょ。そしたら、先に考えた人がいないかとか、どれくらい自分の権利を取得できるかとかを調べてから、マネされないように説明書きをつけて、特許庁ってとこに申請する手続きをする仕事よ。わたしも詳しい事は分からないけど……いろんな分野の専門知識がいるはずよ」
「へぇ」
「それにしても、変よね。だってよ。あそこの邦ちゃんは、確か泉陽高校に行ったって聞いたわ。それにご主人は国立大学を出た人のはずよ。そんなことも知らないなんて、信じられへんわ。 」
それは、まあばあちゃんも聞いたことがありました。
「だいたいね。今時、パソコンをコンピューターだなんて言ってるのが違和感があるわよ。」
「パソコン? パソコンってトモちゃんがよく使ってるわね。」
「そうよ。」
「それによ。お母ちゃん。コンピューターの仕事をしているんだったら、ネットは必ずしてるはずやん?」
「ネットって、トモちゃんがお買いものとかしてる…アレ?」
「そのとおり。お母ちゃんもスーパーのチラシを一緒に見たりしてるでしょ?」
まあばちゃんは頷きました。テレビの画面にチラシを映してもらうのが大好きです。
「『特許庁』を検索したら、知りたい事を調べることが出来るのよ。発明した物についてかなりの専門知識がいるのは確かだけど……、でも、こんな言い方良くないかもしれんけど……あんな挨拶一つできないジーッと動かない人に何が出来るのかと思うよ。あんなんじゃ、仕事にならんよ。邦ちゃんの方が、百倍、ううん千倍できると思うけどなぁ……」
恭子ちゃんも働く母です。 いつも一所懸命がんばっています。仕事がお休みの日は、疲れているはずなのに、いつもまあばあちゃんを手伝ってくれます。

まあばあちゃんは邦ちゃんの名誉のために、昨日の夕方の事を話さずにおこうと思っていたのですが、恭子ちゃんの考えを聞きたいと思いました。
それに、なにかいい案が浮かぶかもしれません。

ご主人の運転する車の助手席で、
邦ちゃんを薄ら笑い浮かべて見ていたあの女の人のこと。
邦ちゃんを乗せずに行ってしまったご主人のこと。
それを聞いて恭子ちゃんは、
「なにそれー! ご主人、気でも違ったんちゃうの?」
まあばあちゃんは答えることが出来ませんでした。



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お料理を作る幸せ



まあばあちゃんは、お母さんが仕事に行った後、ひとり物思いにふけってました。

まあばあちゃんにとって、ご飯を作るという事は、
トモちゃんや恭子ちゃんやおとうさんが、
「おいしいよ」
と言ってくれるのが嬉しくて作ります。
この歳になると、ちょっと疲れてシンドイなと思うこともありますが、
大好きな家族のみんなが、おいしそうに食べてくれるから、そんなの忘れてしまいます。

みんなの健康や食卓を取り囲んで楽しくお話しすることが、まあばあちゃんにとって何より嬉しい事だからです。
おとうさんと恭子ちゃん、疲れてるみたいだから、明日はお休みだし、ニンニク料理にしようとか、トモちゃんのお勉強がはかどるように今日は青魚にしようとか、毎日いろいろ考えます。
それが楽しいのです。

でも、邦ちゃんはどうでしょう。
まあばあちゃんは自分に置き換えてみました。
―――もし、私があの女の人のご飯を作ることになったら。
酷く蔑んだ薄ら笑いを自分へと向ける人に、ご飯を作ることになったら ―――
まあばあちゃんが、ひどく貧しかった時でさえ、あんな目で見られたことはありません。
あんな人の世話をするのは地獄の苦しみに違いありません。

母親のお春ちゃんはあんな調子だし……
そう言えば、お春ちゃんは昔から体が弱くて、邦ちゃんは、幼い時から家の手伝いをしていたと聞きました。
お掃除や洗濯は、もちろん、お料理まで。
(お春ちゃん、あんた馬鹿よ。大事な娘に苦労ばかりさせて……)

まあばあちゃんは、早くあの女の人が邦ちゃんの家から消えてしまえばいいのにと、心から思いました。


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堺の町のまあばあちゃん

Author:堺の町のまあばあちゃん
堺の町に住む、ひとりのおばあちゃんのお話です。
住み慣れた町の人々との交流や孫のトモちゃんや犬のジロとの生活を通して力強く生きていく姿を物語に書きたいと思います。 
宜しくお願いします。
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