喪服



「おばあちゃん、どうしたの? あ……ご不幸?」
まあばあちゃんが六畳間にお葬式に着る和服や小物を並べているので、トモちゃんが驚いて尋ねました。
「お豊ちゃんのご主人が亡くなったのよ」
「今夜、お通夜?」
「ううん。それがね。お葬式は家族葬っていって、もう済ませたんだって……。お線香だけでもあげに行こうと思って。こんな急に亡くなって、お豊ちゃん気落ちしてると思うから」
「以前、見かけた時は、元気そうに自転車乗ってたのにね。」
「そうなのよ。パチンコ屋さんから出たところで、フラフラ倒れて、救急車に運ばれて。そのまま……」
「へぇ……」
「この暑さだもの。みんな参ってるのよ。」
そう言いながら、まあばあちゃんは着物の襦袢に袖を通しました。
「ねぇ、おばあちゃん。着物なんて暑いよ。大丈夫?」
「大丈夫よ。大事なお友達だから、きちんとした格好で行きたいの。」
トモちゃんは、何か言いかけて黙りました。
「どうしたの?」
「ううん……」
「なあに? 気になるでしょ。」
「わたし、お葬式の事って、あんまり知らないけど。おばあちゃん、今日、知ったてことは、町内放送もなかったんでしょ?」
「そうよ。」
「お葬式、終わってるのに、和装の喪服って、重くないのかなって。その……。ひっそり? していたいのかなって……」
まあばあちゃんは、トモちゃんに言われるまで、そんな事、気づきませんでした。
お豊ちゃんは、内々に済ませたいのかもしれません。
「それに、膝も悪いし、お線香上げるの大変だよ。お洋服にしようよ。」
トモちゃんが珍しく、言い募りました。
「心配してくれてありがとう。でもね。大切なお友達だから、やっぱり着物にするわね。」
トモちゃんの気遣いは嬉しかったのですが、まあばあちゃんは、和装で行くことに決めました。


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お豊ちゃんのお家へ



「それ、なあに?」
トモちゃんが、ハンドバッグの横に置いてある紙袋の事を聞きました。
「お供え物よ。」
「シルバーカーに入れていくの?」
「そうよ」
「…………」
「さっ、出来たわ。」
最後に紗の羽織を羽織って、姿見で後ろを確認して言いました。
「おばあちゃん、送って行くよ。和装でシルバーカーは動きにくいと思うよ。」
「大丈夫よ。近くだし……」
「はい! 保冷剤を首に巻いて!」
「ありがとう」
トモちゃんは、一緒に行こうと思っていたらしく、車いすを出してきました。制服をキチッと着たままでした。
いつもと違う様子にジロとミミちゃんも神妙にしています。一緒に連れて行ってとは言いませんでした。
外に出ると、夕方といってもまだまだ蒸し暑いです。半袖でも暑いのに、まあばあちゃん和服で大丈夫でしょうか?
「暑いね。おばあちゃん大丈夫?」
「トモちゃんが、冷たいの巻いてくれたから、気持ちいいぐらいよ。」
家を出て、しばらくたった頃、
「あっ」
トモちゃんが思わず、声を上げたのは、邦ちゃんが離婚する前に住んでいた家の前を通った時でした。
割れたり欠けたりした鉢植えがあちこちに転がっていました。
木も枯れてしまって、家が丸見えです。
穴の空いた網戸をそのまま使っていました。
(もう、住んでいないのかな?)
とトモちゃんが思った時、テレビの音が聞こえてきました。
(いるんだ。でも、邦子おばちゃんがいなくなって、この家は死んだみたいになっちゃった。……幽霊屋敷みたい……。おばあちゃんは、なんて思ってるのかなぁ)
そう思って、まあばあちゃんを見ると、そっちの方を見ないようにしているようでした。
(そうだよね。もう、関係ないもんね。)
でも、この家はお豊ちゃんのお隣にあるので、通らないわけにはいかないのです。
もし、あの怖いおばあさんが出てたら、大変です。
(ついてきて良かった……)
と、トモちゃんは思いました。


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慰めの言葉



「おばあちゃん着いたよ。はい、私に捕まって」
お豊ちゃんの家の前に来たので、トモちゃんが車いすにブレーキをかけて、まあばあちゃんに手を差し出しました。ところが、まあばあちゃんは考え込んだ様子で、ジッとしています。
「どうしたの? おばあちゃん」
「お豊ちゃんに、なんて言って慰めればいいのか……。この歳になると、身近な人が一人二人と亡くなって、すごく不安になるものなのよ。お豊ちゃんは、娘さんがご主人の転勤で、転々としているし……。どんなに心細い思いしてるのかと思うと、言葉が見つからないの……」
「きっと、会いに行くだけで、救いになるんじゃないのかな?」
トモちゃんは、身近で年の近い人が亡くなるといった経験がないので、まあばあちゃんの気持ちが、よくかりません。でも、自分を心から心配してくれる人がいるという事が一番の慰めになると思いました。
「トモちゃんに言われてることも、気になってるの……」
「わたし?」
「ほら、ひっそりしていたいじゃないかと言ってたでしょ? 押しかけて行って大丈夫かしら……。気になって来たわ……。来てよかったのかしら……。」
「そんな事ないよ。おばあちゃんとはとっても仲良しなんだから。大丈夫。」
そう言って、トモちゃんがインターフォンのボタンに指を当てると、
「ちょっと、待って!」
まあばあちゃんが慌てて止めました。そして、すでに整っている襟元を少しなぞると、
「いいわ。トモちゃん。お願い……」
と言いました。
トモちゃんは、インターフォンを押しました。
家の中に、呼び出し音が響いています。
まあばあちゃんは、自分を落ち着かせようと胸に手を当てました。


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お線香をあげに……

「お豊ちゃん……。あの……」
《あ! まあちゃん! すぐ行くわ。ちょっと待っててね。》
お豊ちゃんのしっかりした声が、スピーカーから流れてきました。
トモちゃんは、まあばあちゃんが思うほど気落ちしていないように思いました。
パタパタとお豊ちゃんが玄関から出てきました。
「お豊ちゃんも、足弱ってるんだから、ゆっくりでいいよ。」
「暑いのに来てくれて、ありがとう! 部屋、涼しぃしてるから、上がって上がって!」
お豊ちゃんは、まあばあちゃんが訪ねて行ったことがとても嬉しい様子でした。

ご仏前で手を合わせてた後、お豊ちゃんにお供え物を渡しまた。
「気ぃ使わせてゴメンね。」
「ご主人、突然のことで驚いたわ。」
「あの人、一番暑い、昼の日中でも帽子ひとつ被らんと出歩いてたから。血ぃドロドロやったんちゃうかしら。」
「まぁ」
「あの日は、パチンコ屋の開店日とかで朝一番に並びに行ったの。一日涼しいところにいて、いきなり暑いところへ出たからやないかしら。その場で倒れ込んだらしいわ。」
「そう、今年の夏は特に暑かったから、自分で気づかないうちに弱ってたんやね。ご主人おいくつだったの?」
「私は80才やから、83才やね。」
「そう……」
「あっ、おいしいお菓子があるのよ。ちょっと待っててね。」
「お豊ちゃん、お構いなく……」
まあばあちゃんが言うと、
「ううん。まあちゃんが家に来てくれて。トモちゃんまで来てくれるなんて……! 」
お豊ちゃんは、……いつものお豊ちゃんでした。
お豊ちゃんが気落ちしているに違いないと思い込んでいた、まあばちゃんは拍子抜けしてしまいました。
お豊ちゃんはいつもご主人の事を気遣って、大切にしていたので、食事ものどを通らないくらい落ち込んでいると思っていたからです。
(ガックリきて体を壊すよりはいいけれど……)
どうも釈然としない、まあばあちゃんでした。


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思わぬ言葉

思わぬ言葉

「お母ちゃん、どなたか亡くなったの?」
6畳間に掛けてある喪服を見て、トモちゃんのお母さんが聞きました。
「……お豊ちゃんのご主人が……」
「この間、お見かけしたけど……。熱中症か何か?」
「え? えっと……、ねえ、トモちゃん、お豊ちゃんなんて言ってたかしら?」
まあばあちゃんの声が小さかったのか、返事がありません。
「トモちゃーん!」
もう一度、大きな声で呼んでみました。
「ハーイ。なに?」
「お豊ちゃん、ご主人の病気なんて言ってたかしら?」
「えっ? 言ってなかったよ。パチンコで負けてばっかりいてる話してたやん。あと、パチンコ屋で倒れて、救急隊員の人が連絡してくれて慌てて病院に駆けつけたって……。で、そのまま……」
「それだけだったかしら?」
「もー! 一緒にいたでしょ! それを何回か繰り返し聞いて帰って来たの。」
トモちゃんは、ぜんぜんお話を聞いていなかったまあばあちゃんに呆れています。
まあばあちゃんは、ションボリしてました。
「お母ちゃんは、突然ご主人をなくしてガックリきてる、お豊おばちゃんの事を心配し過ぎて、頭に入ってこなかったのよ。」
とお母さんがトモちゃんをいさめるように言いました。
「でも、元気そうだったよ。」
トモちゃんは、不思議そうな顔で言いました。
「お豊おばちゃんが?」
トモちゃんの言葉が意外で、お母さんは言葉が続きませんした。
「うん。なんかスッキリした顔してた。あんまり悲しそうじゃなかったよ。」
「……そう」
(気難しそうなご主人だったけど、お豊おばちゃん、すごく大事にしてるように見えたけど……)
トモちゃんのお母さんは、トモちゃんから思わぬ言葉を聞いて、考え込んでしまいました。


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笑い声



次の日、散歩や家事を済ませた、まあばあちゃんは、寂しい思いをしているに違いないお豊ちゃんと、一緒にお昼を食べようと思ってお弁当を作りました。
お豊ちゃんの家の前まで来ると、明るい笑い声が聞こえてきました。
「え?」
まあばあちゃんは驚いてしまいました。ご主人を亡くしたばかりの家から楽しそうな笑い声が聞こえてきたからです。
とにかく、お豊ちゃんは家にいるようなので、呼んでみることにしました。
「ごめんくださーい! お豊ちゃーん。」
「はーい! まあちゃんも来ると思って待ってたのよ!」
答えたのはお春ちゃんでした。後からお豊ちゃんも顔をのぞかせました。
「上がって! 上がって!」
「そうしたいんだけど、ジロ達を連れて来てしまったから、これで失礼するわ。これ良かったら食べてね。」
「何言ってんの! 気にしないで。足なんて拭けば大丈夫よ!」
とお豊ちゃんが雑巾を持って来て、パパッとジロとミミちゃんの足を拭きました。
お豊ちゃんの明るい様子についていけない、まあばあちゃんでした。


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無年金



「お料理上手なお豊ちゃんに、あれだけど、でも、簡単に食べれていいと思って…」
そう言って、まあばあちゃんがお弁当を広げました。
「わぁ! 美味しそう。」
と、お豊ちゃん。
「まあちゃんは、卵焼き上手やからなぁ」
と、お春ちゃん。
卵焼き、鮭、ウィンナーに煮豆を数種類と、お弁当の定番メニューですが、ハズレがないと思ってこの内容にしました。
「小皿、とって来るわね。」
そう言って、立ち上がったお豊ちゃんは生き生きして見えました。
「まあちゃん、不思議そうな顔して……。お豊ちゃんが明るいからやろ。」
まあばあちゃんは、顔に出ていたかしらと恥ずかしくなりました。
「朝から晩まで、小さな事をチクチク言う主人がいなくなって、ホッとしてるんよ。」
それでも、長年一緒に暮らしてきた人がいなくなって淋しくないのでしょうか……?
「あんなぁ、まあちゃん、お豊ちゃんは年金、無いんやって」
「え……」
驚いたまあばあちゃんは小皿を並べているお豊ちゃんの顔を見ました。
「そうなんよ。私にはそんなもんは必要ないって……」
お豊ちゃんは、寂しげに笑いました。


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今までの事



「今まで、どうやって……」
まあばあちゃんが聞くと、お春ちゃんが答えました。
「お豊ちゃんのご主人、自分だけ入ってたらしいわ。それで、ほそぼそ……。なぁ」
「ええ……」
お豊ちゃんの目からポタポタと涙がこぼれました。
「わたし、若い時に大きな病気をしてるから、“ワシより生きることはない”って“60代そこそこで、くたばる”って、それがこんな長々と生きてしまって……」
「…………」
「…………」
二人とも言葉がありませんでした。
「あんた、これから、どうするん……」
「娘が家に入れてくれたお金があるの。本当は娘のためにと思ってずっと貯めてたんだけど、使うことになるんやね……」
「でも、あんたとこ、羽振りよさそうに見えたけど……」
「ええ。あれで、なかなか商売上手で……。でも、みんな自分で使ってしまって、何にも無しよ。」
「でも、ご主人、あんたに財布、握られてるて言うてたで……」
お春ちゃんは、ご主人とよく話していたのか詳しいようです。
「そうね。なんていうか……。私は、ほら、あれと同じよ。大昔、庭に穴掘って、大きな壺にお金入れて貯めてたじゃない。あれと同じよ……」
「? どういう意味?」
お春ちゃんは、分からない様子で聞き返しました。
「お金をなくさない様に持たされてるだけで、好きな時に取り出せる。……パチンコで負けて負けて、スッカラカンよ。」
「そんなん、渡さんといたら……」
お春ちゃんが、悔しそうに言いました。
「そんなん、出来るもんちゃうよ。通帳の場所も知らんのに、お金を降ろしてこなかったら、怒鳴ったり、降ろしてくるまで口きいてくれへんかったり……」
「せやけど、あんた、お金、持たされてるんやったら、コソコソ貯めといたら良かったのに!」
「でもねぇ、お春ちゃん。お春ちゃんも主人に聞いてると思うけど、“嘘つき、嘘つき”って言われてると、出来ないもんなんよ。お春ちゃんかて、私の事、そう思ってたでしょう?」
「あれは、悪かったわ。ゴメンやで」
「ううん。私の父も主人にあんなホラを吹いたのがいけないんだもん。でも、結婚してからこっち、ずーっと言われてるとね。嘘つきじゃないと認めてほしくて、身動きできなくなるんよ。」
お春ちゃんも黙ってしまいました。そして、ポツリと言いました。
「いつやったかなぁ。回覧板持って行ったときかなぁ。……あんたの持ってる本見て、ご主人、“また買うて来たんか”って大声出してたなぁ。」
「そうよ。わたし、結婚してから本なんて買ったことないんよ……。でも、本は好きだから、図書館のお世話になってるの。そのことはちゃんと言ってるのに、忘れて怒るんよ。」
お豊ちゃんは、そこまで言うと、涙をぬぐいました。


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明日は我が身



お春ちゃんは、ドッコラショッと立ち上がりました。
「どうしたの?」
と、お豊ちゃんが聞きました。
「ちょっと、あんたのご主人に、一言、いうてくるわ。」
「わたしも、お願いしたいことがあるわ。ちょっとお線香上げさせてね。」
まあばあちゃんも、膝をかばいながら、ヨッと立ち上がりました。
「わたしも、まだ、言ってない事あるから、皆と一緒の時に言うとこう。」
と言って、お豊ちゃんも立ち上がりました。
3人そろって、ご仏前で手を合わせました。
「まあちゃん、何を言うてんの?」
まあばあちゃんがあんまり長いので、お春ちゃんが声を掛けてきました。
「これまでは、お豊ちゃんに酷かったけど、今からは仏様になるんだから、お豊ちゃんをしっかり守って下さいって。頼んだの。」
「まあちゃん、そんなん聞かんと思うで。そんな気がちょっとでもあるんやったら。生きてる時に、やってるで。」
「そうだけど、あちらには神様もいらしゃるでしょ? 改心するかもしれないわ。」
「お豊ちゃんは、あんた、何言うてたん。」
「まあちゃんのを聞いてからやと、なんか言いにくわぁ。」
「なによ。言うてよ。」
「そっちの世界で、好きにしてください。お盆も帰ってこんといて下さい。って言うたんよ。この前、初恋の人が亡くなったそうやし。向こうで、楽しくしてくれた方が、私も嬉しい。」
まあばあちゃんは、良く似た言葉、どこかで聞いたなぁと思っていました。
「私、邦ちゃんみたいなこと、言ってるわね。」
お豊ちゃんが、気が付いたように笑い出しました。
「生活の不安はあるけど、なんか爽快な気分やわ。主人が亡くなって、こんな事を言うのは不謹慎なのは分かってるんやけど……。あとは、ボケたり、病気になって、娘に迷惑かけんようにせんと、これ以上の負担はかけられへんもんね。」
この言葉は、まあばあちゃんとお春ちゃんの胸にグサリと来ました。
「私もや。私は年金あるけど、ボケたらあんなお金じゃ、病院に入れてもらわれへん。邦子にどんだけ苦労させるか……」
ボケと病気、この問題はこの歳になると、誰もが恐れているものです。明日は我が身です。
(ほんとだわ。私もシッカリしないと……!)
まあばあちゃんも自分に言い聞かせていました。


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生活保護か刑務所か……



「せやけど、あんた、年金の事、きちんと話せぇへんかったん?」
お春ちゃんが、言いました。
「何度もお願いしたわよ。でもね、おんなじ会話の繰り返しよ。虚しいなってきて……」
「同じって、早よ死ぬいうやつ?」
「それとね……」
お豊ちゃんは言いよどみました。
「教えてよ。私、昭雄さんの事で、散々恥さらしてるんだから……」
「“わしが先に死ぬことになったら、生活保護でも受けるか……。刑務所に入るいうてもある”って……。“雨はかからんし三度三度の飯は出るしな”って言われたわ。」
「なんちゅう。ジジィや。手ぇ合わせて損したわ。極楽には行かれへんな……」
まあばあちゃんは、ため息をついて遺影を見ました。写真のお豊ちゃんのご主人は嬉しそうに笑っていました。
お春ちゃんがポソっと何か言いました。
「えっ? 何、よく聞こえなかった……」
「……ん……刑務所かぁ……。それ、ええかもなぁと思って……」
「「お春ちゃん!?」」
まあばあちゃんもお豊ちゃんもビックリしました。
「私、殺してやりたいくらい憎いモンが三人おんねん……。私、あの三人、包丁で滅多切りにしてやりたい……!」
三人……。
その言葉を聞いてまあばあちゃんは、ああと思いました。
邦ちゃんを苦しめたあの三人の事です。邦ちゃんを追い出した前夫の昭雄さん、乗り込んできた前髪の女の人、そしてその母親らしい年配の女性……
「ははっ。でも、こんなヨボヨボの年寄りやったら、返り討ちにあって寝たきりにされるかもしれへんな……」
お春ちゃんは、自嘲気味に笑いました。


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堺の町のまあばあちゃん

Author:堺の町のまあばあちゃん
堺の町に住む、ひとりのおばあちゃんのお話です。
住み慣れた町の人々との交流や孫のトモちゃんや犬のジロとの生活を通して力強く生きていく姿を物語に書きたいと思います。 
宜しくお願いします。
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