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オッチャン


日曜日の朝、散歩を終えたまあばあちゃんは、今日も表の道路の落ち葉を集めていました。
ころころ転がりながら落ち葉はまあばあちゃんの目の前を走って行きます。
少し前の落ち葉は赤や黄色の色鮮やかな楽しいものでしたが、今、まあばあちゃんの掃き寄せている落ち葉は、枯葉色の淋しいものばかりです。
銀杏の黄色ももみじの赤も色あせています。
「おばあちゃん。ここにいたん。私も手伝うから。」
と、元気なトモちゃんが、まあばあちゃんの側に走り寄ってきました。
「はい! ここにどうぞ!」
そして、落ち葉 を入れやすいようにビニール袋の口を広げて言いました。
「おばあちゃん、後は私がするから。」
「いいの、いいの。トモちゃんはお家に入っていなさい。」
ふたりで、そんなやりとりをしていると、後ろから大きな声をかけられました。
「ばあちゃん。いも食うか。」
声をかけてきたのは、自転車の前と後ろの篭にサツマイモを一杯乗せたオッチャンでした。
散歩してる時に、よく出会うオッチャンです。
「嬢ちゃん。家から袋を取っといで。」
と、今度はトモちゃんに声をかけてきました。
「今日は、朝から芋掘りで、疲れたわ。」
そう、言いながらオッチャンは、どんどんトモちゃんの持ってきたビニール袋の中にサツマイモを入れています。
「オッチャン。有難う。嬉しいな。こんなに、たくさん!」
「*のうなったら、また持って来たるよ。」    ≪*のうなったら=無くなったら≫
「ほんとう!」
「おう! 芋かて食ってもらってナンボよ。」
トモちゃんと、オッチャンの楽しい会話が続きます。
側で見ているまあばあちゃんも、とっても嬉しそうです。寒い朝なのに、心は温かです。

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お揃いのマフラー


「あっ、オッチャンのマフラー!」
トモちゃんが、オッチャンの首に巻かれた黒と白の毛糸で編んだマフラーに気づいて、素っ頓狂な声を上げて言いました。
「これか、これええやろ! 嬢ちゃんのばあちゃんにもろたんや。」
「とっても、似合ってるよ!」
「こんなん、どこにも売ってないからな。重宝しとるよ。」
オッチャンは、しわしわの顔で嬉しそうに笑って言いました。
まあばあちゃんの作るマフラーは首だけを巻くことの出来る短くて小さいものです。
「オッチャン、見て。私も同じマフラーよ。おばあちゃんが編んでくれたんよ。可愛いでしょ。」
「ほんまや、よう似おとるわ。いつもばあちゃんと一緒に歩いとる和犬も同じマフラーしとるなあ。そうか! わし、似おてるか?」
まあばあちゃんは、冬になるといつもコタツで、なにか編んでいます。マフラー、手袋、靴下・・・・。この頃はジロやミミちゃんのお洋服にも挑戦しているみたいです。今までは、1色の毛糸で編むことが多かったのですが、今はボーダーが多いです。まあばあちゃんはいつも縞模様と呼んでいます。
「ほな、オッチャンは行くで。今日は小学生の見守りをせなあかんから。」
オッチャンはそう言うと、自転車を元気よくこいで遠ざかって行きました。
まあばあちゃんの住む町では、小学生の子が登校するとき、大人の人が町の角に立って見守るのです。オッチャンは、その見守りに参加しているのです。
「え?! ちょっ! オッチャン。待って、待って!」
トモちゃんが、慌てて、走りながらオッチャンを呼び止めました。オッチャンは、(どうしたのかな)っと振り返りました。
「オッチャン。今日は日曜日やよ。学校はお休み!」
トモちゃんは、全速力で走ったのでふうふう言いながら、伝えました。
「あっは。そうか、今日は日曜日か、見守りは明日の月曜日やったわ。オッチャン。うっかりしとったわ。もう、ボケてきたんか分からんな。有難うやで。」
オッチャンは嬉しそうな顔をして、ガハハハと笑うと、まあばあちゃんの編んだマフラーをつまんでウインクをすると、自転車に足をかけました。そのウインクはへたくそで、両目をつぶっていました。トモちゃんも、まあばあちゃんの編んでくれたオッチャンとおそろいのマフラーの先をつまんで、ニコッとして手を振りました。オッチャンは、トモちゃんに手を振り返しながらニコニコしながら遠ざかって行きました。

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嬉しいお芋


「おばあちゃん。嬉しいね。お芋さんこんなにたくさん頂いて。」
トモちゃんが嬉しそうに、頂いたサツマイモをお家の中に運んでいます。
「そうなの、いつも頂いてばかりで・・・申し訳ないやら、有難いやらで、おばあちゃん、どうしたらいいのか分からなくなってしまうの。」
まあばあちゃんは、顔をクシャクシャにして笑っています。
オッチャンのサツマイモは、湿った土が付いています。まさに今まで畑の中にあったという感じです。
「おいしそうなサツマイモやね、おばあちゃん。」
「ほんとね。」
サツマイモのオッチャンは、2年前に奥さんを亡くして今は一人ぼっちです。
いつの頃からか、まあばあちゃんと散歩のときに出会うようになって、挨拶をするようになりました。「寒いね。暑いね。」と気候の挨拶から始まって、今は畑で作った季節ごとのお野菜を頂ける親しさになっています。
近所で貸し農園を借りてたくさんの野菜を作っているそうです。でも、一人じゃ食べきれないので、いつもまあばあちゃんに採れたての野菜を持って来てくださるそうです。
おねぎに、ゴーヤに、なすびに、きゅうり。
オッチャンは何でも上手に作ります。そして新鮮な野菜をまあばあちゃんに届けてくれます。
「トモちゃん。今日は、このサツマイモでスイートポテトを作りましょう。おいしく出来たら、オッチャンに持っていきましょう。」
「おばあちゃんは、オッチャンのお家知ってるの。」
オッチャンの家はトモちゃんの家の3筋向こうにあって、そんなに遠くじゃありません。
「ええ、もちろんよ。奥さんもいい人だったのよ。」
「へえ、そうだったの。」
「町会の当番のときにお知り合いになったんだけど、本当に優しい人だったわ。」
まあばあちゃんは、オッチャンの奥さんのことを思い浮かべながら、しみじみ言いました。
「奥さんが、生きておられたらどれだけ良かったかと、あのご主人を見ているといつも思うわ。」
「そうなんだ。 ……オッチャン、そんな感じしなかったな。いつも明るいから」
と、トモちゃんが言いました。
トモちゃんは、オッチャンの笑顔を思い出して(偉いな。)と思いました。悲しみや淋しさを隠して、ガハハハと明るく笑っているオッチャンを立派だと思いました。

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まあばあちゃんのスイートポテト


まあばあちゃんのスイートポテトというのは、大学芋のことです。
どういうわけか分かりませんが、
とにかく、トモちゃんの小さな頃から、まあばあちゃんは大学芋をスイートポテトと呼んでいました。
まあばあちゃんの家では大学芋がスイートポテトなのです。
トモちゃんもそう覚えていましたが、給食とかテレビとかお友達のお家でお呼ばれしたりしる内にスイートポテトと大学いもが違うことを今は分かっています。
トモちゃんが、家庭科の実習でスイートポテトを作った日、まあばあちゃんにも食べてほしいと思って持って帰りました。
「おばあちゃん、今日ね、スイートポテトを作ったの! どう?」
「まあ、学校のスイートポテトは違うわね。おいしいわ。裏ごししてあるのねぇ! へぇ !」
「あのね……」
トモちゃんは説明しようと思いましたが、あんまり喜んでくれるので言いそびれてしまいました。
そういえば、ずいぶん前、ケーキ屋さんでスイートポテトを見かけた時も
「あら、家で作るスイートポテトと違うわね」
返事してくれました。
どうも、ケーキ屋さんのスイートポテト、お家で作るスイートポテトと分けているようです。まあばあちゃんはスーパーの総菜売り場に興味がないらしく見にも行かないので、【大学芋】のラベルにも気付くことはありません。
そのため、今でもまあばあちゃんにとって大学芋がスイートポテトです。

ともかく、まあばあちゃんはスイートポテトを作りはじめました。
サツマイモの土を落として、皮をゴシゴシ洗います。
今までは、皮をむいて一口大の乱切りにし、水を切って、油で揚げて、砂糖で作った蜜を絡めて出来上がりだったのですが 、
今は、切った後、お皿に並べてラップをかけて、電子レンジで軽くチンしてサツマイモを柔らかくしてから、油で揚げています。
熱々のカリカリのお芋は、甘くてとてもおいしいです。トモちゃんはついつい一口二口と、つまみ食いをしています
ジロもミミちゃんもトモちゃんの足元でつまみ食いのお手伝いをしています。いけない子ですね。
さあ、出来立ての“まあばあちゃんのスイートポテト”がたくさん出来ました。
「おばあちゃん、オッチャンの所へ早く届けに行こう。」
「喜んでくれるといいんだけど……」
まあばあちゃんは作る前は張り切っていたのに、急に心配顔になりました。
「大丈夫! おばあちゃんのスイートポテトはおいしいんだから!!」
トモちゃんが嬉しそうな顔で言いました。
まあばあちゃんを車椅子に乗せて、ジロとミミちゃんと一緒に、出発進行です!

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オッチャンの涙


「ごめんください。」
トモちゃんが、オッチャンの家のインターホンを押して声をかけると、
「ほ~い。」
と、オッチャンの元気な声が聞えてきました。そしてガラガラと玄関の戸が開いて、オッチャンが嬉しそうな顔で出てきました。
「オッチャン。これ……」
トモちゃんがそう言って、ピンクと白のタッパーに入れた大学芋を渡しました。
「うまそうな、スイートポテトやな。」
(ええ! オッチャンも大学芋をスイートポテトっていうの?)
トモちゃんはびっくりしました。そして思い切って言ってみました。
「オッチャン、これ、大学芋です。」
「へえ~、芋にも大学が付くんや。えらい出世したもんやなあ。」
と、あきれ返った顔をして言いました。
「ううん、そうじゃないの、サツマイモを揚げて蜜に絡めたのを大学芋って言うの。」
「いやあ、これはスイートポテトやで、英語であま~い芋と言う意味やで、」
(ん? 確かに……)
オッチャンの言葉が言い得てるので、次の言葉が出ませんでした。
(いや、でも……大学いもはスイートポテトではナイんやけどな。う~ん……)
トモちゃんは頭をひねってみましたが。返す言葉が見つかりませんでした。それにオッチャンの言うほうが良いような気がしました。おいしく食べれる方がいいんですから! 
「ほんとね、オッチャン。スイートポテトと言うほうがおいしそうだもんね。」
「そやで、芋もあんまり賢こなると、勿体のうて食べられへんで、まして大学なんて言われたらよけいにな」
オッチャンは、大きく頷いて言いました。
「オッチャン、スイートポテト、好き?」
「大好きやで、ほんとに、有難うな。」
「良かった。」
「いっつも有難うな。あんばいしてもろて。」
そう言ったオッチャンの目は、すこし潤んでいました。
「じゃあ、オッチャン。帰ります。」
トモちゃんが、ペコッと頭を下げてお辞儀をして言いました。その様子をオッチャンとまあばあちゃんは、ニコッとして見ています。
トモちゃんが、もう1度頭を下げて車椅子を押し出すと、しばらくして家の中からチーンとお仏壇のお鈴を鳴らす音が聞えてきました。オッチャンが、亡くなった奥さんにスイートポテトをお供えしてお祈りしている姿が浮かんできて、まあばあちゃんとトモちゃんの心がポカポカ温かくなってきました。

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まあばあちゃんのおせち料理


まあばあちゃんとトモちゃんがお家に帰ってくると、お父さんとお母さんが、コタツのテーブルの上に綺麗におせち料理を並べて、お祝いの支度をしていました。
「まあ、おいしそう、」
まあばあちゃんが嬉しそうに目を細めて言いました。
「さあ、お雑煮も出来ましたよ。」
と、おかあさん。
「なんだか、身が引き締まるね。」
と、トモちゃん。
「さっ、みんなで新年の挨拶をしよう。今年も健康で幸せに暮らせますように。」
お父さんの呼びかけで、まあばあちゃんはじめ、家族のみんなで晴れ晴れと新年の挨拶をしました。
ジロとミミちゃんもいつもと違う家族の雰囲気に、緊張して座っています。それを見てトモちゃんが、
「見て見て! ジロとミミちゃんもかしこまってる。かわいい。」
「あら、本当ね!」
と、まあばあちゃん。
「さっ、ご馳走を頂きましょう。」
と、お母さん。
「ねっ、おばあちゃん。黒豆はまめまめしく働けるようにって食べるのね。」
トモちゃんが黒豆を取り分けながら言いました。
「そうよ。くわいは芽が出るように、れんこんは向こうが見えるようにってね。」
と、まあばあちゃん。年末の慌ただしい中、2日間かけて一生懸命おせち料理を作っていたまあばあちゃん。
「おかあちゃん、牛蒡と昆布巻きを食べると長生きするのよ。しっかり食べて長生きしてね、頼りにしてるんだから。」
まあばあちゃんは、おかあさんにハッパを掛けられています。
まあばあちゃんの作る牛蒡や昆布巻きは柔らかくて、とってもおいしんです。
「ねえ、おばあちゃん。今頃、オッチャンとチビちゃんもおばあちゃんのおせち料理食べてるかな。」
トモちゃんが、ジロとミミちゃんに出し巻き卵をあげながら言いました。

大晦日におせち料理を届けたときのオッチャンの嬉しそうな顔と言ったらありませんでした。顔をくしゃくしゃにして喜んでくれました。
「これは、オッチャンの分で。こっちはチビちゃんの分よ。オッチャンの分は、チビちゃんに上げたら駄目よ。チビちゃんの分は、オッチャンが食べてもいいけど。」
と、トモちゃんが言ったら、
「おお! チビちゃんの分も作ってくれたんや! ありがとうな!」
と言って、満面の笑顔でした。

今年も良いことがいっぱいありそうな……。そんな予感のするお正月の朝でした。


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みかんのおすそわけ


家族の分をお盆に取ってもまだまだみかんはたくさんあります。
まあばあちゃんは何かいいことを思いついたらしく、ニコッと笑うとヨッコイショとゆっくり立ち上がり、 スーパーの袋にミカンを詰め始めました。
男の人の1人暮らしのところに小さな犬が来て、お世話が大変だろうと、まあばあちゃんは、あれからおせち料理に、ぜんざい、肉じゃがと、その時々に作ったお料理を届けています。
まあばあちゃんは、小犬のチビちゃんとオッチャンの喜ぶ姿が嬉しくて、ついついお伺いするのかも知れません。
今日も早速インターホンを押すと、返事の変わりに、家の中からバタバタという音がして小犬のチビちゃんが飛び出てきました。
「あっ、ばあちゃん。」
と、チビちゃんの後ろから嬉しそうなオッチャンの声。
小犬のチビちゃんは、まあばあちゃんと一緒に来たジロとミミちゃんに、まとわりついて遊んでいます。出てきたオッチャンにみかんを渡して、次に、こいもと鳥肉に人参の赤みを添えた煮っ転がしを渡しました。
「いっつも、悪いなあ。」
オッチャンは、やっぱり嬉しそうです。
まあばあちゃんも嬉しいです。自分の作った料理をこんなに喜んでもらえて……。
挨拶を終えて帰るとき、必ずチ~ンというお鈴の音が聞えてきます。
(奥さんにお供えして下さってるんだ。)
嬉しくて、まあばあちゃんの心もジ~ンとあつくなってきます。次に向かったのは、柿ノ木のあるお家です。去年もおいしい柿を頂きました。
「まあ、おいしそうなみかん。」
出てきた奥さんが、まあばあちゃんのお渡ししたみかんを袋の隙間から覗き込んで嬉しそうに言いました。
まあばあちゃんもニコニコ顔で笑い返します。
「去年は、お世話になりました。今年もよろしく御願いいたします。」
まあばあちゃんと奥さんの二人は、ちょっと遅いお正月の挨拶を交わして、お互いに笑い会ってしまいました。挨拶を終えて帰ろうとするまあばあちゃんに奥さんが声をかけてきました。
「あの~、これをトモちゃんに……」
そう言って、奥さんは、お饅頭やカステラが入った箱をまあばあちゃんのシルバーカーの中に入れて下さいました。
「主人と二人なので、頂き物がたまってしまって。」
「有難うございます。」
まあばあちゃんは、たくさんお菓子を頂いて、嬉しいけれど困ってしまいました。
(みかんをお届けして、こんなに高価なお菓子を頂くなんて……)
まあばあちゃんは、申し訳なく思ってしまいました。
奥さんはとても嬉しそうです。
まあばあちゃんは、何度もお礼を言って帰ります。
ジロとミミちゃんが、まあばあちゃんの周りをピョンピョンします。
奥さんはその様子をニコニコしながら見ていました。

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お彼岸団子


まあばあちゃんはおはぎを作るのが大好きです。
お彼岸の中日は、朝からおはぎをいっぱい作っています。
「これはチビチャンところ」
まあばあちゃんがおはぎをキレイに並べています。
「これは、柿の木の奥さんに、そしてこれはお春ちゃんにお豊ちゃん」
チビチャンのお父さんは野菜作りが大の得意です。今なら、大根、キャベツ、ホウレン草をたくさん作ってまあばあちゃんに届けてくれます。

まあばあちゃんもいろいろおかずを作ってチビチャンのお家に届けるのが楽しみの一つになっています。
今日は、春分の日で学校が休みのトモちゃんと一緒におはぎと晩御飯のおでんを届けに行きます。
「オッチャンいるかな?」
トモちゃんがインターフォンを押しました。縁側からチビチャンがワンワンワンと鳴きながら飛び出してきました。トモちゃんがチビチャンを抱き上げると、トモちゃんのほっぺをペロペロとなめました。それを見たミミちゃんは負けじと抱っこ抱っことピョンピョンしています。
ジロはいつものようにまあばあちゃんの側で静かにしています。
「おおきに、おおきに!」
オッチャンは縁側からトモちゃん達を見るなり言いました。
「今日はお彼岸やから、ばあちゃんのおはぎを待っとたんや。いつもありがとうな」
オッチャンの嬉しそうな顔。
「はい!どうぞ!!」
トモちゃんはオッチャンにおはぎを渡しました。
「おおきに! おおきに!」
オッチャンはおはぎが特別好きなようで、大喜びです。
「オッチャン、インターフォンに出ないと……。誰か分からないよ。」
ニュースで怖い事件をよく目にします。トモちゃんは確かめずに出てきたオッチャンが心配になりました。
「そんな事ないで。こいつが喜んでパタパタするからバッチリ分かるで。な!」
と、チビチャンの頭を撫でました
「ほんと?」
チビチャンが喜ぶと聞いて、トモちゃんは嬉しくなりました。
「おまえは、いつも賢いなあ。ほな、かあちゃんにお供えしてくるわ。」
オッチャンが感心して、おとなしくしているジロの頭を撫でました。
「オッチャン、またね。」
しばらくすると、チーンという音が聞こえてきました。
オッチャンは、奥さんの仏前で手を合わせているのでしょう、
まあばあちゃんとトモちゃんは、顔を見合わせてニッコリしました。

「あら! ジロちゃんのお母さん! 今から伺おうと思ってたんですよ!」
タロちゃんのお母さんでした。
「うちのお彼岸団子です。ぜひ食べていただきたくて」
「わあ」
「まあ」
二人とも嬉しくなりました。
以前いただいた菱餅もとっても美味しかったですものね。嬉しい春の出来事ですね。



チビチャンは小さな犬に、タロちゃんのことはタロちゃんにお話があります。読んでいただけたら嬉しいです。

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初めてのお泊り



「じゃ、わたしアンマ屋さん行ってくるわ。まあちゃん、行けへん?」
「わたしは、そろそろ洗濯物取り込まないとあかんの……」
「そう…」
お春ちゃんは残念そうです。でも、お春ちゃんもまあばあちゃんが家事でパタパタしているのを知っているので、それ以上は誘いませんでした。しばらく考えていましたが思いついたように、
「お豊さんは?」
「わ、わたし!?」
「行かへん?」
お豊ちゃんはお春ちゃんが苦手なのでドギマギしています。そこへ、
「あ! あんた! もうあそこのアンマ屋さん行ったん?」
お春ちゃんのお友達らしい人が声をかけてきました。
「今から、行こう思ててん! あんた、あれ、どないなったん?」
「ああ、あれ! あれなぁ……」
とお春ちゃんは、その人と行ってしまいました。

「じゃあ、私たちもそろそろ行きましょうか。 あら?」
向こうからオッチャンがチビちゃんと歩いてきます。
「ばあちゃん、ここにおったんか。家に寄ったら、ピンポン押しても誰も出てきてくれへんから。公園かな思って。トモちゃんは?」
「トモちゃんは、今日は学校ですよ」
「……そうか……」
オッチャンは困ったような顔をしました。
「どうしたの?」
「わしな、この間、同窓会のハガキ来た言うたやろ。不参加にしたんやけど、電話がかかってきてな。行くことにしてん。それでトモちゃんにチビの事、預かってもらわれへんかな思ってな」
オッチャンの話を聞いて、まあばあちゃんは
「大丈夫ですよ。チビチャンなら。」
「それが、二日ほど家を空けるんや」
チビちゃんがちょんとまあばあちゃんの膝に足をかけました。
「チビちゃん、とうちゃんは、二日ほどお出かけだって、おばあちゃんの家でお利口に待っていましょうね。」
まあばあちゃんがチビちゃんを抱きあげました。
すると、それに気付いたミミちゃんがチビちゃんに吠えました。チビちゃんも負けじと吠え返します。
ジロはあきれた顔をして二匹を見ています。

チビちゃんの初めてのお泊り先行き不安です。
大丈夫でしょうか?


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●お豊ちゃんがお春ちゃんを苦手に思っているのは……
  お豊さん
●チビちゃんは小さな犬にあります。
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仲良くね!



「あれー。えらい吠えだしたなぁ。ミミちゃんはチビが嫌いかぁ……」
オッチャンは弱ったなぁというようにミミちゃんを撫でました。
「うちで預かれればいいんだけど……。うちの人、動物嫌いだから……」
「ううん。大丈夫よ……」
とまあばあちゃんは自信なさげに言いました。
キャンキャンワンワンと二匹が鳴きあうので、話も聞こえにくいです。
三人は思わぬことに黙ってしまいました。
お散歩で偶然会った時も仲悪くなかったのに、どうしたのでしょう?
ジロがゆっくり立ち上がりました。そして、
キャンキャン鳴いているミミちゃんをお鼻でチュンチュンして、チビちゃんをペロペロなめると、二人とも今までの事がウソのように、おとなしくなりました。
「あら!」
とまあばあちゃん、
「へぇ!」
とオッチャン、
「すごい!」
とお豊ちゃん。
今までのケンカはなんだったのでしょう? 
「ジロが仲良くしようねって、言ってくれたのね。有り難うね!」
まあばちゃんは感動してジロに抱きつきました。ジロはゆっくりシッポを振って、まあばあちゃんの頬をペロペロなめました。
「おまえは、ホンマにかしこいなぁ」
オッチャンが感心してジロの頭を撫でました。
「仲良うなってくれて、ホンマに助かったわ。ばあちゃん、無理言うて、ごめんなぁ。ほな、チビのこと宜しゅう頼みます。」
そう言って、チビちゃんの頭を撫でると、オッチャンは帰って行きました。
「まあちゃん、見て、さっきまであんなにケンカしてたのに、ジロちゃんのお腹で仲良く寝てるわ。可愛い~! ジロちゃんの赤ちゃんみたい。」
お豊ちゃんが目を輝かせて言いました。
「ほんとね! ジロは男の子だけど、お母さんもしてるのね!」
まあばあちゃんもほほえましいジロ達を見てニッコリしました。


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堺の町のまあばあちゃん

Author:堺の町のまあばあちゃん
堺の町に住む、ひとりのおばあちゃんのお話です。
住み慣れた町の人々との交流や孫のトモちゃんや犬のジロとの生活を通して力強く生きていく姿を物語に書きたいと思います。 
宜しくお願いします。
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