吉川さんはいるかしら?

「なあ、まあちゃん、吉川さんは何を考えてるんやろ? 私、よう分からんわ。大家さんから10万円もろといて家出る気ないみたいやし。そうかと思たら、お豊ちゃんの家に入りびたったり……いったいどういう人なんやろうな。」
大家さんと別れた後、お春ちゃんは疲れたように言いました。
「お昼に聞きましょう。おいしいもの作って。ね?」
「そやな、それがええな。」
お春ちゃんは、釈然としない様子でしたが、自分を納得させるようにうなずきました。
今日は、吉川さんの好物のレンコンやキンピラ、高野豆腐にシッカリ味を浸み込ませて煮たものを持って行くことにしました。
「いるやろか? 吉川さん。」
「大丈夫よ。お昼は毎日一緒に食べてるんだから。」
まあばあちゃんもそうは言うものの、今日に限っていないのではと内心不安でした。
でも、そんなこと言ってられません。これ以上大家さんに迷惑かけられません。
まあばあちゃんは、気合いを入れてインターフォンを押しました。


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吉川さんを訪ねたけれど……

「吉川さ~ん! 妙ちゃ~ん」
お春ちゃんがインターフォンを押して言いました。
「吉川さ~ん」
まあばあちゃんも呼びました。
お春ちゃんは、何度も呼びましたが、吉川さんは出てきません。
「留守やろか?」
お春ちゃんが心配そうに、まあばあちゃんと大家さんを振り返りました。
「お春ちゃん、改めて来ましょう。ね?」
「そやな。」
お春ちゃんは気合を入れすぎていたせいか、しょんぼりしてしまいました。
「大家さん、えろうすんまへんでしたな。私、そんなことになってるなんて全然気が付きませんでしたわ。吉川さんな~んも教えてくれはれへんねんもん。」
「そうやないかと思って、お春ちゃんを訪ねましたんや。そないに気を落とさんといてください。出て行ってもらう約束はしてるし、お金も受け取ってはるねんから、言うてる間に移ってくれますやろ。」
大家さんはお春ちゃんを励ますように言いました。


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お春ちゃんも言いたい

「ホンマになんも聞いてへんかったんやなぁ」
大家さんは、驚いたような呆れたような顔をしました。
「聞いてなかったやないわ。なんで、その10万円、吉川さんに渡すのん! 家賃は私がはろてるのに! ……知ってるやろ! あんたの嫁さんも家賃持って行ったとき言うてくれたら良かったのに!」
お春ちゃんの声は上ずっていました。
「それがな、うちの息子 が話をしに行ったんやけど、みんな気ぃよう聞き入れてくれはってな。集まってくれたらしいわ。」
「吉川さんもかいな。」
「4人ともや。」
「それで?」
「それで、話が気持ちように進んだんで、用意してた10万円をその場で渡したらしいわ。ところがや……」
「ほかの人は移ってくれたのに、吉川さんだけ居座ってるんやな。」
お春ちゃんが憮然として言いました。
「居座ってる言うか。話しに行ったら移るところが見つからへんからもうちょっと待って欲しい言うて、延び延びになってるねん。解体作業にも入られへん……これでも大分待ちましたんやで……」
大家さんは困り果てた様子でした。
「そら、2か月やもんな。……分かりました。ホンマに迷惑かけてすみませんな。」
「いや~、まあ……」
大家さんは気まずそうに言いました。
「ほな、今から3人で吉川さんの家に行くのはどうですか? こんな大事な話黙ってるやなんて。……わたしも一言いいたいから。」
お春ちゃんは腹立たしそうに言いました。


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吉川さんだけが……

「「吉川さん?」」
まあばあちゃんとお春ちゃんは同時に言いました。
「う~ん。ほんまに何にも聞いてませんか……?」
「何を言うてんのかさっぱり分からへんわ。しっかりしてや。」
「吉川さんに、出てほしい言うたんですわ。」
「えらい急に、なんでやな。家賃はきちんと払ってますやろ?」
お春ちゃんは、訳が分からないという様子です。
「急、違いますで、え~と、もう1か月いや……7月やったから、2か月になります。」
「ええ! 2か月も前ですかいな?」
「いや、それが、わしのところの長屋、戦後すぐに建てたままでっしゃろ? このままやと古なって危ないし……」
「老朽化ゆうヤツですな。」
「そうです。それに、あの長屋、吉川さんを含めて、もう4人になったんですわ。それで、思い切って今風のきれいな建物に建て替えようと思って……」
「でも、私が話を持って行ったときは、建て替えの話なんてなかったやん。」
「そうですけど……、今、借りてくれてる人に相談したら、みんなかまへん言うてくれましてん。」
「吉川さんもですか?」
「ええ、そうです。」
「そやから、こっちの都合で出て行ってもらうんやし引っ越し費用の足しにと、みなさんに10万円渡したんですわ。ほかのお人はみな移ってくれはったのに、吉川さんだけが……」
大家さんはほとほと困った様子で言いました。


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大家さんのお願い

まあばあちゃんとお春ちゃんが朝のお洗濯が終えた頃、大家さんが訪ねてきました。
吉川さんが住んでる部屋の大家さんです。
「お早うさんです。」
「どうされたんです?」
いつも明るい大家さんの暗い顔にまあばあちゃんは驚きました。
「ちょっと、お願いがありまして……」
「大家さんが、私にお願いですか?」
「どんなお願いでっか?」
お春ちゃんが遅れて出てきました。
「あ、お春ちゃん、いてはったんか良かったわ!」
大家さんがあんまり喜ぶのでお春ちゃんはビックリしました。
「な、なんやな……ビックリするやんか。」
「お春ちゃんに頼みがあるねん。」
「なんか怖いわ。」
いったい何なのでしょう。まあばあちゃんは心配になりました。
「ここで、立ち話もなんですから、どうぞお入りください。」
「いや、ここで結構です。……あの……なんにも聞いてませんか?」
「何をでっか?」
お春ちゃんは怪訝そうに聞きました。
「う~ん。」
大家さんは首をひねりました。それから、
「吉川さんのことなんですわ。」
と言いました。


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堺の町のまあばあちゃん

Author:堺の町のまあばあちゃん
堺の町に住む、ひとりのおばあちゃんのお話です。
住み慣れた町の人々との交流や孫のトモちゃんや犬のジロとの生活を通して力強く生きていく姿を物語に書きたいと思います。 
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