友達って心強いね

「私が行くわ。」
お春ちゃんが言いました。
「お春ちゃん。」
「私が一番暇なんやし。元はと言えば、私のせいや。ゴメンやで……」
まあばあちゃんは、まだ外で何か叫んでいる吉川さんをモニターで見ながら言いました。
「それにしても、難儀やなぁ。なんでこんなことになったんやろう。おとなしいて礼儀正しい人やと思ってたのに……」
お春ちゃんはため息ばかりついています。
「ほな、明日から来るから、元気出してや。」
「ありがとう。お春ちゃん、やっぱり一人やと心細くて……」
お豊ちゃんは、すまなそうに言いました。
「わたしも家の用事が終わったら来るから元気出してね。」
まあばあちゃんが言うと、
「ありがとう、まあちゃんも来てくれたら本当に心強いわ。二人とも本当にありがとう。」
それから、フッと涙をこらえるようにしてから、
「わたしはいい友達がいて幸せやわ。ホンマに……」
まあばあちゃんはその様子に、思った以上に大変なのだと思いました。


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分からなくなる……

「お豊ちゃん、来ないな目に遭ってるて、全然気ぃ使へんかったわ。ごめんやで……」
お春ちゃんが謝りました。
「本当にゴメンね。」
まあばあちゃんも謝りました。
「ううん。そんなん……だぶん、知らん顔してたら、そのうち来なくなると思うから……」
お豊ちゃんが元気のない声で言いました。
「わたし、明日から、お豊ちゃんの家に来てもいい? 吉川さんが諦めるまで。」
「そんなん、大変やん。いつの事か分からへんよ。」
「でも、一人だと心細いでしょ? 一人より二人よ。マコちゃんのいない間だけでも協力させて。ね?」
まあばあちゃんはお豊ちゃんの手を握りました。お豊ちゃんはポロっと涙をこぼしました。
「ありがとう。……本当はすごく心細かったんよ。頭がおかしくなりそうやったんよ。」
「お豊ちゃん。」
「こういうのって、あんまり続くと、家に入れないと悪い人みたいで……」
「何を言うとんのや。この間、居座られて難儀したばっかりやろ?」
「でも、よう分からんようになってくるんよ。」
お豊ちゃんはホッとしたのかシクシク泣き出しました。



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疲れちゃった

「せやけど、吉川さん、大変な人やってんな~。おっとろしいな。」
お春ちゃんは大きくため息をつきました。
「あんな人が、毎日毎日来たら、頭おかしいなってしまうわ。」
お春ちゃんは頭振りました。
「お豊ちゃん、大変だったのね。一人で難儀してたのね。」
まあばあちゃんも疲れたように言いました。
「うちらなんかさっき相手しただけで、疲れ果てたもんな。なんか病気にされそうや。」
「本当に……」
「えらい人に関わってしもうたな……」
「うん。」
「まあちゃんが、毎日毎日、ご飯持って行ってたんかて、ぜんぜん何とも思ってなかったんやなぁ……。わたし、ビックリして次の言葉が出んかったわ。」
お春ちゃんは、目にいっぱい涙をためて言いました。
「お春ちゃんのこともなんとも思ってなかったしね。」
お豊ちゃんが、お春ちゃんの背中を撫でながら言いました。
お春ちゃんは、うんうんと頷いて肩を震わせました。



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もう、友達と違うよ……

「あ、あ、あんたな~!」
お春ちゃんは顔を真っ赤にして怒り出しました。
吉川さんもビクッとしました。
「まあちゃんが、毎日毎日、あんたのご飯作って持って行ってたん忘れたんか! そんなんしてくれる人おらんで! あんたはちっとも有難いと思ってなかったんやな!」
「お春ちゃん」
まあばあちゃんもお豊ちゃんも血圧が心配になるほど、お春ちゃんは怒っていました。
「お春ちゃん、落ち着いて……」
まあばあちゃんがお豊ちゃんを見ると、お豊ちゃんは頷いて
「お春ちゃん、こんな話していても仕方ないから、もう家に入りましょ。」
お豊ちゃんの言葉にハッとして、
「そや、あんた腰痛いのに出てきたんやな。入ろか……」
「大丈夫やよ。」
「あかんあかん。入ろ。吉川さんも早よ。帰りや。」
「お豊ちゃん、腰痛いの? 私、いた方がええんちゃうの?」
「おかまいなく……」
「ちょっと、この寒いのに追い返すの? 友達でしょ?」
この言葉にもお春ちゃんは、怯まず答えました。
「もう、友達と違うで。あんたから離れて行ったんや。」


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吉川さんの本音?

「あんた、取り壊す話が大家さんからあった時、承諾して10万円もろたんやろ。そやったら引っ越しせなアカンのに、最後まで粘りに粘って……」
お春ちゃんは絞り出すように言いました。でも、吉川さんはお春ちゃんの言うことにはどこ吹く風で
「とにかく、お春ちゃんのせいでこんなことになったんよ。少しは心配してよ。」
「吉川さん、あんた、お春ちゃんにもお金返してないでしょ。」
お春ちゃんとまあばあちゃんが驚いて振り返ると、お豊ちゃんが立っていました。
この寒いのに外へ出てきたら、また神経痛が出てしまいます。
心配で家の中に入って欲しいのですが、言える雰囲気ではありません。
「わたし、あんたにお金なんか借りてないわよ。」
吉川さんはお豊ちゃんの友達だと言い張るわりに、いつも見下したものの言いようです。
「お春ちゃんに生活費、みてもらってたでしょ。」
「でも、お宅に言われることと違うでしょ!」
「吉川さん、お春ちゃんの好意にそんな言い方ないでしょ。お春ちゃんが気の毒すぎるわ。家賃はもちろん電気代から水道代から、家の家財の面倒まで見てくれたのよ。」
まあばあちゃんが見兼ねて言うと、
「わたし、まあちゃんには何もしてもらってないわ。偉そうに言わんといて下さい。」
木で鼻をくくったような言いようでした。


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堺の町のまあばあちゃん

Author:堺の町のまあばあちゃん
堺の町に住む、ひとりのおばあちゃんのお話です。
住み慣れた町の人々との交流や孫のトモちゃんや犬のジロとの生活を通して力強く生きていく姿を物語に書きたいと思います。 
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