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いたたまれない

「お春ちゃん、身近な方が南方で亡くなったの?」
吉川さんが聞きました。
「身近いうか、近所のオッチャンやな。魚屋のオッチャンとか散髪屋のオッチャンとかな。ようおまけしてくれたり、アメちゃんくれたり……エエ人やなと思ってた人が、いきなり出征するねん。町会みんなで見送りに行ったわ。うちの飲んべぇの父ちゃんにも赤紙が来てな。」
「まあ、帰ってこなかったの?」
吉川さんが驚いて聞きました。
「……帰ってきて、また母ちゃん泣かしてたわ。そやけど、魚屋のオッチャンと散髪屋のオッチャンは帰ってけぇへんかったわ。そやから、あんなふうに撃ち殺される場面見たら、
いたたまれんねん。あんなふうに死んだんやろかと思たら……」


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映画を見よう

今日は久しぶりにさわやかな風が吹いて、秋がちょっとだけ顔をのぞかせてくれたような日です。
「吉川さん、あんまり元気ないな~。早よ、しっかりしてもらわんと心愛ちゃんが可哀そうやわ。なあ、まあちゃん。」
「そうねぇ。」
吉川さんは、お散歩だけは必ず参加していますが、何となく元気がありません。
なにかにつけ、以前の件を自分から持ち出して、ずーっと謝り続けます。
この間、たまりかねてお豊ちゃんが、
「妙ちゃん、過ぎたことを持ち出すのはやめて、昔のように楽しくお話しましょう。」
「でも、ほんとにごめんね。」
「長い付き合いだもの。いろんなことがあるわよ。また、こうしてみんなでお散歩できるようになったんだから。」
「うん。ほんとにごめんね。お豊ちゃん。」
「そうだわ。うちで映画を見ない?」
お豊ちゃんが思いついたように言いました。
「いいの?」
吉川さんの目がキラキラ輝きだしました。
その様子に何かを感じたのか、お豊ちゃんは不安そうな表情になりました。
そこで、まあばあちゃんが、
「うちのほうが近いわ。うちでみない?」
「お豊ちゃんのうちのほうがテレビ大きいわ。」
吉川さんがシレっと言いました。
「でも、見たいものがあるの。」
「なんや?」
お春ちゃんが、興味津々で聞いてきます。
「『FOXと呼ばれた男』っていう映画でね。前に映画やってるときに見てみたかったんだけど、行くのは大層でしょ。一緒に見ましょう」
まあばあちゃんがニッコリ笑って言いました。


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お盆

「あ、今日は8月15日やな。12時に黙祷するとき教えてな。私、今から心愛ちゃんのところにお盆のおさがり持って行ってくるわ」
「ありがとう。きっと喜ぶわ。」
「うん。」
「暑いから日傘が忘れないで。」
「分かってる分かってる。そやけど、トモちゃんは朝も早よから学校行ってしもたな。今どきは盆も何もないなぁ。」
お春ちゃんはブツブツ言いながら、盆のおさがりの果物やお菓子をシルバーカーに入れました。
「もう、顔の傷もエエやろ?」
「ええ、目立たないわ。」
「まあちゃんのおかげや。」
「ううん。ご先祖さんが帰らはる時にみんな持って行ってくれたのよ。」
「そやな、盆に転んで良かったわ。ほかの時やったら、もっと大きなケガしてたかもしれんな。」
お春ちゃんは納得したように頷きました。


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気をつけようね

「はい。これで大丈夫よ。しばらく冷やしておいてね。明日、明後日は腫れるでしょうけど、三日もすれば、ひくわ。」
「まあちゃんは何でもよう知ってるな。」
「まあおばあちゃんは、お医者さんみたい。」
「そやで。まあちゃんはほんまに医者いらずや。病気やケガのこと、よう知ってる。」
「何言ってるの。ケガしないように注意したり、健康を心がけることが一番大事なのよ。」
まあばあちゃんが言うと、
「そらそうや。ここ一年くらいこけてなかったのになぁ。まあちゃんと一緒にラジオ体操してたら、つまずくこと少のうなったからなぁ。」
「邦ちゃんのことが心配で慌てたのよ。」
「これから、盆の用意もせなあかんのに、ホンマに私はドンやな。この顔じゃ、外に出られへんわ。」
「お母さん、大丈夫よ。私、良くなったから。」
邦ちゃんです。
「なんや、起きて大丈夫か?」
「はい、もうスッキリしたわ。」
邦ちゃんはニッコリしました。


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傷だらけのお春ちゃん

「お母さん、大丈夫? どうしたの?」
邦ちゃんが、起きてきました。
「邦子、寝とったん違うんかいな。起きたらアカンがな。寝とき寝とき!」
お春ちゃんは邦ちゃんを急き立てて、寝かしつけました。
「おばあちゃん、こわい……」
ひろ子ちゃんが固まってしまいました。
「まあ……」
見ると、顔中血だらけになっています。
ハッと袖を見ると、ぬぐった跡がありました。血が止まらないようです。
「病院に行きましょう。」
まあばあちゃんが言うと、
「これくらいで、行ったらかっこ悪いわ。」
お春ちゃんは頑固に言い張ります。
「とにかく手当てしましょ。ひろ子ちゃん、洗面器にお水入れてきてくれる? ごみを取らないと」
まあばあちゃんはお春ちゃんの顔の血をぬぐいながら言いました。
傷口を洗って消毒していると、みるみる腫れて紫色になってきました。
「そんなえらいことなってるか? なんやジンジンしてきたわ。ひろ子、鏡持ってきてくれるか?」
「はい。」
ひろ子ちゃんが鏡を持ってくると、
「うわ! 斬られのヨサやな。せっかくの美人が台無しや。」
お春ちゃんはカカカと笑いました。



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堺の町のまあばあちゃん

Author:堺の町のまあばあちゃん
堺の町に住む、ひとりのおばあちゃんのお話です。
住み慣れた町の人々との交流や孫のトモちゃんや犬のジロとの生活を通して力強く生きていく姿を物語に書きたいと思います。 
宜しくお願いします。
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